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第六十五話 もう一度あなたに会いたい

シーナ視点。


「はっルーナ!?」


 シーナは白く清潔なベットの上で目を覚ます。辺りにも似たようなベットが並び一面白く清潔な雰囲気と消毒の匂いがした。


「ここは… それよりもルーナが!」


 シーナは思い出す。先ほどまでいた存在の温もりを乗せた声と姿を。


「あぁ…! ルーナが... ルーナが…」


 同時にそれが消えぬ様に胸にしまう自身の傲慢さを。思い出せば心を砕く信頼と絶望の裏切りが同時に来ると分かっている。涙を流してしまうこと、それであの瞬間の出来事を忘れる事が出来ずとも大切な護れない存在の輝きを忘れないために... 胸を押さえる。


 苦しさと虚しさ…。痛む心臓の鼓動が自身の生存を確かなものだと確信に変える。


「目が… 覚めたようだな… はは、吸血鬼の穣ちゃん…」


 シーナは右隣からする微かな声の方を向く。


 声の主は共にあの場にいた男。絶影だった。男も負傷してかベットに横になり治療を受けた後だった。


 丁寧に体に巻かれた包帯は先程の戦いの結果来るものだった。無くなったはずの腕にも包帯が巻かれていた。


「…と言っても、もう片方の穣ちゃんは目を覚まさないままだが… 良かったな生き残れて」


「え… もう片方…。もしかして!」


 絶影はシーナの先のベットで眠る少女を見て言う。


「…ウソ。ルーナ!」


 それは先ほど目の前で消えたルーナだった。


 肉体の消滅を目の前で見たシーナにとってそれがどれだけ嬉しい事か。


 裸足でベットから飛び降りルーナに向かい走るシーナ。


 まだその現実に夢と思える生還にシーナの体は着いてこず吸血鬼の超人的速度は出せず生まれたてのヤギや羊の様に一歩ずつ足を震わせ歩く。


 シーナは一歩く度に、ルーナの声が聞こえる気がした。今でも好きな愛している原初にルーナを殺された事はショックで、混乱絶えない思考を歩きに変え… ただ今ある幸せを噛み締めるような一歩だった。


「うそ!? うそ… うそ… ホントにルーナにの? …アァ良かった。生きてるのルーナ…?」


 大切な、家族同然の友の死を目の前にしたシーナはその声を枯らさんばかりに喉を絞め声に出し、小さく寝息を出すルーナの手を祈るように掴み温もりを感じる。


「生きてはいない…。その吸血鬼の体には魂はないのだから…」


「だれ!?」


 絶影とも違う声がシーナに声をかける。ルーナのベット横の椅子に座る女性をシーナは視界にとらえる。


 視界に入った瞬間、息が止まる。息する事が死に値するような身の脅迫に反射的に、生物として種として息を止めていた。この世のどん底を知るシーナでも膝を付くほどの恐怖が体が自然と膝をついていた。


 逆らってはいけない。何故かそう思った。


「あ…」


 シーナは息が出来ず苦しくなる。頭に酸素が回らず思考も単調になりながらもどうにかしてルーナを連れて今すぐにでも去りたい気持ちがあった。ルーナを置いて出るなんてシーナには出来ない事でした。


「卑怯…ガッ…! 私をここに置くためにルーナを利用するなんて…!」


「…すまない勘違いしないでくれると嬉しい。フランは君達を助けるために絶影を送った者だ」


 女性は椅子から立ちシーナに手を差し出す。すると先程までの恐怖は消え息が出来るようになった。


 女性の表情と身を包む雰囲気も脅迫的なものから太陽のような温もりを感じるものに変わった気がした。


「あなたは…?」


「私は... 協会(ここの)の居候ような存在」


「…何者なのあなた」


 シーナは女性の手を取り立ち上がる。


「私はそうですね…。端的に言えば元原初。今はその名すら私には不相応なほど堕ち微弱な身ではありますが… フランに... この肉体の持ち主に知恵(手)を貸す者。眷属マサト君達の旅に陰ながら協力する者と思ってくれ」


「眷属さんの…」


 元原初と名乗る女性は椅子を用意しルーナを座らせる。


「立ちながらでは、話する時窮屈に感じるだろう。すまないね先ほどフランが… あれは全部私のせいなんだ…」


「本当に元原初何ですか…? そう何度も謝られるとそう見えない…かなっと?」


「君が原初をどう思っているかは興味ないけど私は自分で思うに変わり者でね。人間を観察するのが好きで... 色々な地に行って… 趣味の実験をして結果が出ればそのまま放棄して次の地へと行く。色々とあってフランには糞外道と呼ばれているの… かな。はは」


「え…」


 シーナは感じた。ヤバい大人に出会った時と同じかそれ以上の本物に出会ったと。


 先程の事もあり、危機感の故障を疑うほど声や表情からはとても外道には見えないと。


 女性は椅子を持ってきてルーナなの眠るベット横にシーナに座らせる。


「あの…元原初様と呼べば良いのでしょうか。ルーナは目を目覚めますか?」


「呼び方は好きに呼んでくれこの肉体はフランのだからね。それと… 君が先程から心配そうにチラチラと見ているルーナと呼ぶ吸血鬼は今のままで一生目を覚ますことは無い」


「そんな… どうして!? 肉体はここに…」


「…! 見たところ君達… アカの眷属から生まれた双子なのかな? 君達で毛や目の色が違うけど… 血の匂いが似ている… アカの血の匂いがする」


「今は...! そんなことはどうでも良いんです…。 どうすればルーナが目を覚ますか知っているのなら教えてください!」


「魂が無いんだその肉体には」


「魂って… え、魂が…。どうして!?」


「君達は普段何も考えず食事をしているようだが… 吸血鬼の食事は血ではない"ライフエナジー"を吸って生きているんだ。ゆえに不老不死の怪物と呼ばれ、過剰なライフエナジーが肉体を変え魂を変え、より力強くなっていくんだ。分かったか?」


「だったらそのライフエナジーがある血を直接ルーナに飲ませれば…!」


「無駄だ。魂が無いことは心臓がない肉体も同然。肉体を動かす魂が無ければいくら血を流そうと肉体のみが生き続けるだけだ」


「嘘です…! だって前はそれで、ルーナが助かりました!。だったら今度は私の血でも…」


「説明した責任から言わせてもらおう。たとえ君の血をそこの吸血鬼に流れようとライフエナジーは吸血鬼一人で賄えない。そもそも君達吸血鬼はライフエナジーを消費して生きる生物。日本での事を言っているのならその時はまだそこの吸血鬼も生きていたから出来たこと。魂が無い今の状態で何をしても目を開ける事は無い」


「そんなこと…! クッ…」


 シーナには分かっていた。まだ自分には何も出来ないことが、だが、信じたかった。


「ルーナ… あなたの笑顔が見たい…」


「…あまり気を落とすことは無い。仕方の無いことだったんだ。今の彼女は... 本人でも抑えるのが難しい状態。君達は被害者だ」


「…被害者。違う、私達は自分の意思でここまで来た…。けど、止めら無くて… ルーナが…」


 静かに眠るベットの上のルーナ。その肌は無いはずの温もりを感じる。

 触れる肌、撫でると色々と思い出していく。


 初対面となったお互い5歳の誕生日に声をかけてきたルーナの無視してしまった事…。今となっては子供の喧嘩で屋敷を半壊させたのは… やりすぎだと思っている。


 私は… 周りの家族以外の大人とは違う、私にただ友達として一人の女の子として接してくれるルーナが好き。


 喧嘩も沢山した… 仲直りもいっぱい。けど私はルーナが好き。


「ごめんなさい」と何度も謝って、「良いよ」って何度も言い合った。


 その内言い争う事も減ったけど… 謝らせてほしい。


 シーナはルーナの手を握り涙を流す。なにも出来ない無力な自身に対してベットに眠るルーナに対して… 泣いた。


 ルーナの手が僅かに動く。


「え…」


 シーナは気のせいと思ったが微かに動いていた。


「ウソ… ルーナ!?」


「まさか…」


 その場の二人は驚く。


「あ、あなたは… シ… シーナ…?」


 弱々しくも確かにルーナ自身の声で話す。肉体は僅かながら動きを取り戻しシーナを呼ぶ。


「死んだかと… 思いましたが… 生きてる… のね」


「…ルーナ、どういこと… 話と違う。死んだままって…」


「…そうか。まさか君が助けたのか…」


 元原初は、何かを察し僅かに口角を上げたがそれも一瞬のことだった。


「なんでも良い! ルーナが生きてるなら今は... それで良い」


 シーナはルーナを強く愛しく抱きしめる。


「…く… 苦しい。離してくダ… あ」


「わ!? ごめん嬉しくて…」


「ふ… ふふ。まだ… 少し… 眠いので寝させて… ください」


「…うん分かった。お休みルーナ…」


 瞳を閉じ眠るルーナ。


 その手を握るシーナ、熱の無くならないか心配で握り自身の体温か相手の体温か分からないほど握り続ける。 


 そして一つまた一つと一人の原初(少女)に対する想いが再び溢れてくる。


 今やらねばいけない。きっとあの人も来るのだから助けに行かなくちゃいけない。


 じゃないと… 私は明日の私が見れないから。


 シーナは決意を押し固めた。震える心を勇気に変え、眠るルーナもきっとそうすると。


「私決めました。もう一度原初様の元に会いに行きます!」


「おいおい…マジか穣ちゃん!? ワシでさえヤバヤバな相手に――」


「絶影~? 目が覚めましたかぁ? リンゴ切ったぞぉい?」


 扉を開け絶影の刀である神月がリンゴを乗せた皿を持ち入ってくる。


「…! 私は邪魔か絶影?」


「…はぁ、殿… あなたはどうしたいんだ…。殺気を感じれないワシでは無い。居候の影に隠れて…  起きているんだろ? 何がしたいんだ殿は…もう」


「優秀な部下は時に主人に噛みつくか…。気付かないふりをしてほしいかったな…」


 フランは立ちシーナの方を見る。


「吸血鬼。おまえはなぜあの原初を助ける。我が力で友の肉体を繋げたが… 奪われた友が憎くは無いのか」


 歩きシーナに近づき目を見る。


「そう、やっぱりあなたがルーナを助けてくれたのですね。ありがとうございます。おかげでルーナにまた会えた…。本当はそれだけで私は満足している... けど、ルーナはきっと違う」


 シーナは再び泣いていた。ポロポロと粒が頬を伝い椅子に座る膝に染みとなり落ちる。


「ルーナは諦めない。あの弱い眷属さんが悲しむから…。けど本当は行ってほしくない。また二人で「あぁ楽しい」って思いで家に帰って遊びたい…」


「ならばなぜ… もう一度会おうと思った...。今度は死ぬだけはすまない。原初はより深く堕ちている見境があったあの時とは違う」


「そんなの…! 会うのが怖いけど… 行かなくちゃいけない。凄くトラウマだけど... 話して、無理そうでも話して… 話して話して! 落ち着かせなくちゃ。あの弱い眷属さんならもう既に原初様の近くまで来ているかもしれない。けどあの人は弱い! きっと話す前に殺されちゃう…」


「…確かに眷属はお前の予想通り原初の元に向かってはいる。だが… 化物へと変わろうとする原初はとても不安定な状態。眷属と会あったとしても確かに殺されるだろう。それをおまえ達で止められると?」


「…無理だとしても行かないと。あの人バカみたいに優しいから... 見ず知らずの襲ってきた吸血鬼を助ける馬鹿な眷属さんなの。きっとルーナみたいに死ぬ気で行くと思う…。それで悲しむ私達や原初様の気持ち分かっているはずなのに… だから死なせないためにも行かなくたゃダメなんだ私が… 一番あの人の事が嫌いで好きな私が…」


 パン! 頬を両手で叩くシーナ。


「よし! 泣くのはおしまい…! ここからは私があの人を助ける番! ルーナが目を覚ましたから... 助けに行くぞぉ! オー!」


「良く分かった。…そうか、その覚悟を無駄にしないためにも今は時を待ち休め… 焦りは思考を殺し判断を誤る…」


 そう言いフランは扉を開け出ていく。


「…怖かったぁ」


 ルーナの目覚めよりも自身の死を目の前にしたような恐怖を押さえた足はフランが去ったことを確認した途端に震え始めた。


「…ワシからも何だが、頑張れ…」


「人間さんに言われなくてもやってやるから!」


 スヤスヤと眠るルーナの手を握りシーナは目覚めの時を待つ。 


「安心したらお腹が…空いたぁ」


 グゥ~と鳴るシーナのお腹。聞こえてかルーナの顔が笑っている。


「…人間さん」


 シーナは隣で横になり休む絶影の体を見る。


「…何だ?」


「血を少し分けて貰えません?」


「…はぁ。神月、治癒師達に医療用の血液パック無いか聞いてきてくれ…。吸血鬼が腹空かしてワシが襲われる前に…」


「はい、直ちに」


 神月が姿を消す。


「ワシを! …襲うな。大人しく待っていろ」


「…はぁい」


 空腹を我慢して、神月が血液パックを持ってくるのを待つこと十分。


「御用意できました絶影」


「ほら飲め」


「…またA型。ううん! 我慢して飲みます原初様…」


「いただきます」と言い2分ほど初めて見るタイプの日本の基地や第三基地にいた時とは違うパックに苦戦し管を通す穴にストローを刺し飲む。


 まだ確かめたり無い。息をする隣の愛しいルーナに目を向け、喉を通る血の味に喉を鳴らす。


 ゴクリ…。


「…ごちそうさまでした」

 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 色々とやりたいので目まぐるしい話しになると思います。

 シーナさんは天才と言われチヤホヤされてきたお嬢様で、ルーナさんは親バカ父に育てれ原初の話から想像の原初の話を作りお嬢様口調をするようになった過去がありますが… 書ききれないなぁと思います。


 協会はいわば秘密結社みたいなものなので、魔術師達が集まり世界平和を目指す組織くらいに思っていてください。


 感想等も日々待っています。


評価やブックマークも面白いと思っていただけたのならお願いいたします。

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