第六十三話 守護者
ここからまた正人君視点です。
原初により、ルーナが殺されるすこし前の話。
コンコンと誰かがドアをノックする音が聞こえる。
コンコンと心地よく聞こえる音から僕はドアの方に視線をおくり… 締め付けるメリーさんの腕から脱する。
体を絞められたまま立ち上がり、「ソイ!」と声を出し、以前基地で習った絞め技対策の技で抜け出す。
素人の僕でも力をあまり入れず、簡単に脱する技で… メリーさんは目を丸くして驚いている。
「ふぇ…?」
「ふぅ... 苦しかった」
さすがの緊急時に役立つ技にメリーさんは驚きすぎて止まっていた。
骨が折れんばかりの力で抱き締められては… 死にはしないが作戦前に怪我をしてしまいそう。
「はーい」言い僕はドアを開ける。
ドアを開けると全身フル装備で今にも襲い掛かって来そうな顔と格好のシル・バレットさんがいた。
「時間だ、来い」と端的に伝え僕もその意味を理解しメリーさんを呼び付いていく。
「あの… シルさんと呼んでも良いですか…?」
廊下を歩く沈黙から、適度な関係軟化を狙って声をかける、一応にも作戦を共にするもの同士… このままじゃダメだと思う。
「チッ… 話しかけるな、殺すぞ」
「…すみません、だけどもっとお互いの誤解を解かないと…」
「誤解、ハッ何を…? 誘拐はしてないが、お嬢様達を日本の協会基地に隠してたことは嘘だとでも? 「関係ない…僕には関係ないよ?」ってか、俺に殺されたくなきゃ… 口を縫うか喉を潰せ… 二度と俺の前で喋るな… 社長の命令が無きゃ俺がしている!」
「む…! すみません…」
ただ謝る事だけしかできなかった。
この謝罪も儀礼的な謝罪であり、僕が心から謝っているのではなく... ただ怒られて…なぜか不意にではなく反射的に謝る場面と経験則から出た...。
とても軽く、脆い言葉だった。
軽いから、今の僕の言葉はどれも軽く伝わらないから誤解が解けないと思えた。
もっと相手の事を考えて、発言には気を付けつつ… やっぱり誤解を解きたくはある。
そんな前を向きこちらを見る気配も無くただ案内するシル・バレットさん。
シル・バレットさんは武器らしきものは背後から見て無いが、腰に付けた映画等で見る手榴弾が足を重くする。
いや… もっと重くしている何かがあると思えた…。
ミルの事だと分かってはいる。
が!
今そんなことを考えては以前の浅草の時と同じで...何も出来ずに終わる、それだけは避けたい。
僕はまだやれる… 早く会うためにも...今は余計な事は考えたくない、身を削る思いはミルだってルーナ達だって同じだ…。
もう一度会うためにも... 僕はもっと削らないと大事なものを返してもらうためにも...。
必要なら心を捨てる覚悟で...!。
メリーさんが正人達を見て、あまりにも敵対的なシル・バレットに再び敵意を向ける。
瞳孔を丸く燃えるように赤い眼で浮くように踏み込み音と風圧が遅れてメリーさんの前方にいた正人にぶつかる。
「死ね…」と呟き殺意に変わる剣をシル・バレットに振りかぶる。
正人の眼には何も写らず、未だ遅れた時間に意識が向いていた。
シル・バレットは遠い過去に戦場で感じた原初の全てを無に還すような気配をメリーさんから感じ、全力をもって剣を回避し拳と蹴りでメリーさんに反撃する。
「はぁはぁ… テメェ!」
腹を殴ったはずだと、確実に溝内に拳と蹴りを入れたはずとシル・バレットは思っていた。
「…ハァ」と深く息を吐き何もないように吹き飛んだ先で立ち上がり服の埃を払うメリーさんに息を飲む。
遅れて意識が追い付き、この状況を理解できない正人はポカーンと先ほど考えていたことが吹き飛び忘れる。
「えと… 何が起こって...」
メリーさんの元にもシル・バレットの元にも走り向かいたいがどっちが先か理解できないが何かが起こったと危機感から感じる。
「よくも殺ろうとしたな… 俺を! それがお前の答えか…!」と正人を睨み言うシル・バレット。
「…正人さん。すみません…首取れませんでした… 急ぎこの男の首、取ってみせますのでしばしお待ちを…!」とシル・バレットを睨み言うメリーさん。
「…はぁ?!」と本心から状況を理解できてないから二人をキョロキョロと首を振り見る正人の三人。
「ちょっと待って! 本当に待って! どう言うこと… な、何があったか説明を…してください!」
「おいモルモット… 死ぬか首を置いていくか選べ!」
「不意打ちとは、弱者にしては良く考えたなぁ…!」
「待って何か誤解がまた一つ増えている! 一度話し合い整理して... 誤解を解きましょう!」
「…案内はやめだ。今ここでお前らぶち殺す…! 何が誤解だ… ペテン師が。死ぬ前に答えとけ… 社長達に近づいた理由をな、余さず聞いてやる聞いた後殺されるか、話す前に死ぬか選べ…!」
誤解が増えた。
なぜだ… 何があったか分からない。
風で転んび、気づいたら… 背後から音と共にメリーさんが倒れて立ち上がっていた。
呼吸の荒いシル・バレットさん、余計に誤解は増えてしまった…。
何故だ!。
「待ってメリーさん! ステイ! 落ち着いて何があったか分からないけど… 落ち着こうそして話そう…! …ね?」
「ですが! ぐぬ… 分かりました」
手に持つ剣を血に戻し体内に戻し、正人の隣に立ち正人の着ている服の腰を指で摘むメリーさん。
「メリーさんも落ち着いた事ですし… シル・バレットさんも… 落ち着いて話しましょう? 何が原因かは分からないですがやはり誤解があったようで、話し合いましょう…?」
「何が… 誰がお前と…!」と言いオットアイとなり片目だけ赤く光るシル・バレット。
手には何処からか取り出した銃がシル・バレットの両サイドに一丁ずつ浮いている。
良く見ると…それが吸血鬼の血で作る武器と同じに思えた。
「死ね!」
「正人さん、私の後ろに!」
そう言い、薄く丈夫なシーナの結界に似た血で作った板を出し銃弾から正人の身を守る。
「…誤解があるんですたぶん! 今僕から貴方を襲う理由はない!」
尽きない銃弾の音から聞こえていないようすだったが… それも直ぐに止んだ。
シル・バレットに向かい再び剣を向けるメリーさん。
「やっぱ…殺す」と呟き、正人の前に板を残し再び音もなく飛び込む。
板が壁となり風圧から身を守れた正人。
「…まさか、メリーさんが原因!?」
気づいてももう遅く、剣が雨のように撃たれる銃弾を全弾切り銃を切り、シル・バレットの首を狙う。
剣がシル・バレットの首を襲う前に「お客様!」と大きなスピーカーのような声と共に止まる。
コツコツと靴を鳴らし、突然背後から現れた男に正人は驚く。
「初めまして…原初の眷属様、お初な顔ぶれでワタクシは実に歓喜に満ちていますよ…」
現れた男は、僕を見て二人を見て中央に立ちくるりと一回回ると再び僕を見る。
「ワタクシ等ホテルの支配人です」と言い男は軽く会釈する。
「は、初めまして…」
僕はまだスピーカーのような声に驚き目を丸くしていた。
「なにやら物騒な事になっているようですので、ワタクシがお客様達を目的地まで連れていって差し上げましょう…」
「…チッ」
「では」と言い目の前のドアを開ける支配人。
開けた先は外で青空広がる世界だった。
「支配人からのサービスです…」そう言う支配人の開けたドアを通り、僕らは外に出ると扉は閉まり元の古い倉庫前だった。
「なんか… 夢を見ているみたいだ」
「チッ... あとちょっとで…」
「そうだ、メリーさん! これはあくまでも僕の予想だけど... さっきのシルさんが怒ったのって… メリーさんが先に襲ったからじゃないの?」
「怒ってますか…? だってそれは、正人さんに対して殺すとか言うから先にあの男を私が殺しておこうと…」
喧嘩早いを通り越して… 殺意の塊なのかこの護衛ちゃんは…。
何も発せず、一瞬こちらを睨み無言で外にいる他の仲間だろう服装の人達の元に向かうシル・バレットさん。
「あ、シルさん! はぁ... シルさんに謝ってきて、ごめんなさいしてきなさい… 怒らせたままじゃ駄目でしょ?」
「嫌です。謝る理由は無いので嫌です。先に殺意を向けてきた方が悪いので、私は私の役目を果たしたに過ぎません…」
「…分かった、なら僕がシルさんに謝ってくるよ」
そう言い正人はシル・バレットの元に向かう。
「待ってください!」と一瞬で目の前に立つメリーさんは正人を止める。
「正人さんがなぜ謝るのですか!?」
「メリーさんの護衛対象は僕なんでしょ? なら…メリーさんがした事は僕の責任でもあるから、メリーさんが謝罪しない時は僕が変わりに謝るんだ…」
「だからなぜ正人さんが謝るんですか、正人さんは何もしてないじゃないですか!」
「ぐ… それはちょっと胸が痛い…」
「…分かりました、謝ってきます私が正人さんの変わりに謝ってきます!」
そう言い走りメリーさんはシル・バレットさんの元に向かう。
「あ、待ってメリーさん!」
足の速さでは追い付けないが、まだ遠くに行ってないシル・バレットにメリーさんを追う追い付く正人。
「おい!」とシル・バレットの前に立ち呼び止めるメリーさんだったが… とても謝罪する態度ではなかった。
「…何だ」
「ぬ…グヌヌゥ… さっき… 悪かった、いきなり襲って... ご、ゴメ、ぬん! ごめんなさい!」
メリーさんの握る拳は震え一瞬殴ろうとしているように見えたがしっかりと謝っていた。
「はあ?」
そう言い、通りすぎるシル・バレット。
「私は…謝った。だから正人さんはもう謝る必要は無い!」
「…! うん、ありがとうメリーさん」
褒めて伸ばす方が、良いのか?
そう思いながらメリーさんとの今後のつきあい方を考え、たくさん褒める正人。
そして僕らはシル・バレットさんの後を追い、作戦を共にする仲間と合流する。
一部顔見知り程度の人達と知らない人達がいたが… 身を震わせ軽く挨拶し用意された車に乗り発車を待つ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今も見ている人が居るか分からないですが中々書けないことが多く、初心者ながらスランプです…初めから思い付くまま書いていたので辛いですね、目指せ完結!。
ホテル設定は軽くある程度でスカスカな部分も多く、ここで一端区切り次に進みましょう。
もう少しで... 目的地でもある場所に向かいます。
メリーさんもかなり攻撃的になってしまい… もっと不思議ちゃん系でいこうかと思いましたが、こっちの方が書きやすく。
シル・バレットさん達についても...書ききれるかは分からないですが、補足として半分は吸血鬼ですが、正人君とは違います。
とある事情からそうなった人達が今も生きているという設定です。
感想など書いてくれると嬉しいです。
評価やブックマークも面白いと思っていただけたのならお願いします。




