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第六十二話 その一歩で痛む心

 ルーナ達視点。


 もう…駄目だ…。

 そう考えていた。

 雨が降るのを夢に見る程…私はあの日の事を忘れず、今後も夢に見ては飛び起きるのだろう。

 ゆるさない…。

 あの日の事も...ルーナを傷つける物も…あの日…ゼルに着いていった私の判断も...全部が許せない。


 倒れた姿なんてもう見たくないのに、血が抜けて消えて崩れ…冷たくなっていく温度も…思い出したくないのに…何でルーナばかりにその痛みを与える。


「…? 何か考えていますわねシーナ?」


 ルーナが無邪気にそう聞く。

 今ルーナ自身の胸に剣が刺さっていること、抜けたら死ぬと忘れてしまうほどスルッと聞いてくる。


 太陽の眩しい…笑顔で…本当に剣が抜けたら死ぬの? と思えてしまうほど…笑顔で先の期待に眼を潤わせ走る。

 いつだってルーナは私にとっては光だ。

 だから失いたくなんて無い。


「うん、無茶だけは…止めてねルーナ」

「大丈夫ですわシーナ! 私はそう簡単に消えたりはしませんわ…」

「…なら、手握っても良い?」

「…? そうですわね、はいどうぞ」


 ギュッと痛まない様に柔らかくも手を離さないように苦しくないくらいキツく握る。


「さぁ、原初様を探しますわよシーナ!」

「うん、そうだねルーナ。

必ず友達になるために!」

「えぇ!」


 ルーナの全身は既にボロボロで...今にも倒れてしまいそうなほど血を流した。

 ここに来る前にも大技を使い、その血も使い切りガス欠の状態で走る。


 全身の血を集め剣を1本作るのがやっとの状態で走る。


「見つけましたわシーナ!」

「…原初様逃げないで話し合いましょう!」

「…! 私を殺せないのに、近づくな! 私の目の前から消えろ…頼むから...」


 二人は追う。


 今しか、ありませんわ! これが最後…この瞬間を逃せば私はきっとこの先後悔してしまう。

 動く体があるのは全部はあの時の奇跡あって…の私。

 なら、その恩を返す。

 だから私は今も動けている、限界は等に越えたと思う…けど動いている。

 ならそういうことですわ。


「このご恩を返すために...止まるわけにはいきませんわ! 友達にもまだなってません、だから…! 私達の手をとってください原初様!」


 原初様は好きで初めから好きで... 伝説なども生まれつき吸血鬼だった私とルーナにとっては当たり前に知っていることだった。

 だから出会う前からすごく好きな…推しと呼ぶべき尊ぶべき崇めて当然の神様降臨だった。

 私の知る原初様に眷属が出来たと知った時は… 激しくショックし涙を流し…嫉妬と憎悪で3日枕を濡らしてしまったけど…。

 会って強制だったけど…一緒に暮らしてみたら案外普通の人間と変わらない匂いと…多少異質な私達と同じ吸血鬼の匂いが混じった変な眷属と思った。

 家の使用人ほどではないけど、周りの事をやってくれて助かるし… 暇そうにしていたら一緒に遊んだりもした。

 私達が...苦しい思いをしないよう…考えて動いてくれた。

 味はそこそこだったけど、テレビで見た美味しそうな料理も作ってくれたりもしてくれたり…。

 けど…やっぱり一番はルーナを助けてくれた事にはとても感謝している…私には出来ないことをあの眷属さんはやってくれた。

 吸血鬼一人の命なんて見ず知らずの眷属さんにとってはどうでも良いことなのに…あの人は助けてくれた。

 そんな…眷属さんのことは性格含めてまだ嫌いだけど...悲しませたくはない…。

 その悲しみの深さは私がよく知ってるから、大事であればあるほど穴は深く…残り続ける。

 ルーナの為でもあるけど…眷属さんの為でもある。


「…! だぁ~りゃあ! 帰りましょう原初様!

帰って… 一緒にテレビ見たり… お風呂入ったりして遊びましょう!」

「止めろ…」


 影の攻撃をシーナは結界で弾く。

 攻撃は重く鋭く、簡単にシーナの結界をひび割れさせる。

 ゾウに踏まれても壊れない結界も⬛⬛の攻撃では時間の問題だった。


「帰れ! もう… 貴様ら二人で...帰ってくれ…もう貴様らは殺さないから...帰って… 口を閉じ帰れ!

私の心にそのような言葉を吐いて…ぶつけるな…

息が出来なくなる…」


 息が出来ない…苦しい...どうして…こんなに苦しい思いを…全部私の選択…私の意思…私が選んだ道なのに…誰かの意思でも...押し付けられた使命でもないのに…。


「どうして…こんなに苦しいの…」

「ルーナぁ! 今しか無い、走るよ!」

「えぇ! ここで決めますわ!」


 ルーナは1本の剣を作る。

 自身の血を極力節約し、普段の剣と比べれば細い剣を...片手で触れる剣を作る。


「…ゴホ…ゲホ…うっ!」


 もう体を再生する血も無くなり、崩壊を待つか胸の剣の吸収を祈るかの二つになる。


「…行って! 攻撃は私に任せて... 行って! 原初様の心を叩いて来て!」

「…えぇ、任されましたわ… ここで死ぬ私ではありません… 私は月…私は竜を倒し吸血鬼… 私は…シーナ…あなたの友達で…原初様と友になろうとする…無謀な愚か者なのですわ… けど…あなたも…ただの普通の吸血鬼(女の子)と知る私に…もう誤魔化しは聞きませんわよ…原初様…。ゲホ…」


 何でこの小娘に過ぎない者は来るんだ… 私の事など何も知らないのに…知ったとして…同情しかしない者が…なぜ…。

 貴様は…ルルじゃない…眷属でもない…私を殺す者でも無い…。

 私をこの穴から救おうと一緒に飛び降りる愚か者だ… 水を掬うことが...当たり前と思う様に…手を差し出し…私がその手を切らないと安心して…近づく…光を歩く憧れ。

 だから…! ここで消さないといけない灯りなんだ…。


 ⬛⬛は手を伸ばす、ルーナに刺さった剣めがけて…。


「なっ… ぐっ!

どうして…」

「全部は...私が悪い… お前は何も悪くない… だから…私を許すな…!」

「まって!!!」とシーナが叫び飛び込むように走る。


「…許すな…私を決して!」


 ⬛⬛は剣を抜く…。


「あっ…」

「ありがとう…。お前で一つ目だ…」


 苦しむ時も無くスルリと抜ける刺さっていた剣。

 間に合わず、後ろに倒れるルーナを受け止めるシーナ。


「…いやぁぁ!」

「…!」


 抜いた剣を血に変え体に吸収する、ルーナの血と思いの付いた剣を。


「…暖かいな、お前は。

だから…言ったはずだ私はもう…! 生易しく無いと… ぐっ!

去れ!!! ここでお前を殺しても良いんだぞ…!」

「去らない!!! 原初様と一緒に帰るまで…帰らない…。

じゃないと…ルーナが消えた意味が…無くなちゃう…ます…」

「なら…貴様にも...消えてもらう!」


 影がシーナ目掛けて襲う。

 シーナは体に触れたルーナの残した体温が冷めていくのを…さっきまであった繋いだ手を眺めて...影から結界で身を守る。


「ぐ…。帰らない…帰らない。

私は絶対に...帰らない!」


 ドクンと小さく⬛⬛の体を鼓動する。


「ぐっ!」


 暖かな光を⬛⬛は感じ…胸を抑える。


「はぁはぁ…来るのか…ここに…」


 同時にこの場所に近づく知っている者の気配…以前にやったマーキングの持ち主が近づくのを感じる。


「…マサトか」

「…どうして、どうして原初様! 私達は本当に…原初様の手にただ触れたい…だけなんです!」

「…貴様で二つ目だ」


 シーナに向かい影を伸ばす⬛⬛。


 あと二つだ…私を繋ぎ止める者は...!


「全員消す…! だから邪魔をするな!」

「うっ! ぐっ! 引けない…このまま帰れない! ルーナはまだ消えてない!」


 シーナはわずかにこの場に、⬛⬛の中でルーナの気配と息を感じる。

 まだ眠っている状態で血の中で目を覚まそうとする魂の欠片とも呼べる小さく輝く強い意思を。


「…! ダリャァア!」


 死んでない!!! まだ死んでない...!!!

 生きてる生きている...! ルーナはまだ生きている! 感じる目の前で消えても...原初様の中でまだ!。


 シーナは結界で影事⬛⬛を押し返し壁に押さえつける。


「無駄だ… 貴様の体力と血を無駄にするだけだ…」


 パキリと剣が結界を刺しシーナに刺さろうとする。


「ぐっ!」


 押さえつけているのとは別で胸にもう一枚の結界を作る。


「まだまだ!」


 結界を多重に重ねシーナは⬛⬛を囲む。

 以前見た浅草の結界よりも小規模であるが、一枚一枚強度を増した結界を。

 

「はぁはぁ… これで…少しは…諦めてくれますか原初様?」

「無駄だと言っただろう…」


 剣を振るまでもなく、指で弾く⬛⬛。


「あの時と変わらない、次元の違う相手だと理解しても...これ程離れていたと気づけなかったのか…?

だから…死ぬのが怖いのなら帰れと言ったんだ…」

「何で! そんなに帰ってほしいんですか… 殺したいのなら… もっと早く殺せたのに…」

「貴様らに時間を使うのが惜しいだけだ… どっち道世界を…星事消すのに変わりはない… だから…」

「嘘です… そんなのは全部嘘! 原初様はそんな怖い吸血鬼じゃない… 私の知る原初様は…もっと優しいから… 私達を本当は殺したくないんです… うわぁ~ん…!」


 突如無くシーナ。


「…気配が近づいてくる、やはり来るのか…。

ここに…」


 二つ目を消し… 次は…それかお前が先になるのか眷属マサト…。

 お前であっても私は…!。

 影がシーナを襲う。


「もう… 良いんだ、お前も消えろ…」

「くっ!」


 シーナは結界で身を守るが結界は大技を使い血が足りず影により貫かれ砕け散る。

 生き物のようにニョロニョロとクネリ心臓目掛けて進む影にシーナは怯えていた。


 私には…ルーナみたいな勇気は無いんだ…無謀な愚か者には勇気なんて言葉は似合わない。

『ソンナコト… アリマセンワ…』そう耳に聞こえる確かな声に身と心を震わせる。

 あぁ…ありがとうルーナ…。


「うおぉぉ、気合いだぁ!」


 こんなの…無茶だけど! これは…して良い無茶なんだ!。

 シーナは結界を何枚も張り壊れる度に新しい壁として張り威力を弱める事にした…。

 だが一向に弱まらない。


「無駄だと言ってるのに… バカが…」


 ここでお前らで二人を殺す…それが私の選んだ道だ、私の意思だ。

 だから…。


「私を恨んで死んでくれ…」

「ぐっ!」


 止めたら死ぬ...手を止めるな…生きて生きて生きて! 帰るんだ…。

 ルーナも生きてる…きっと生きてる…。

 だから…ルーナ目の前で私だけ諦めるなんて出来ない。


「…お友達になりましょう原初様! 私達と…うっ! 友達に!」

「また…そんなことを言うか、消えろ…消えろ!」


 結界を張るよりも早く影は加速シーナの胸を貫こうとする。


「終わりだ…」


 シーナの死を⬛⬛は確信した。

 これでまた一つ解放されると、思っていた。


「…!」


 が… そう上手くはいかなかった。

 シーナを連れて外に出る者の姿が見えた。

 同時にか、絶影の姿も消える。


「そうか…助かったのか… 運が良いなお前は...」


 そっと呟き、空間の拡張を待つため、木の椅子に座る。

 ドクンドクンと感じる胸の鼓動とは違う者による鼓動がするが、気づいてはいない。

 強い光と意思が血の中で溶けていく。


「もうすぐ…会えるのか…ルルに…私は…」


 シーナを連れて出た者を追う理由はない。

 ただその時を待つ…。

 どうかマサトは死なないで欲しい…。


「私の手で殺すまでは…」


 そう、誰もいない刻々と広がり全てを虚無に変えようと空間の中心で椅子をギコギコと揺らし待ち人を待つ。

 最後まで読んでくださりありがとうございます。

 今回は普通くらいの長さです。


 前回書きすぎてしまい…読みづらい思いをさせていませんでしょうか?

 悲しいこと続きで、もう読みたくないと思うかもしれませんね…。

 ここで一旦この話は終わり、次の章に進みます。

 区切りは悪くありますが、まだまだ続きます。

 ルーナは…本当に死んだのか、⬛⬛さんは救えるのか、友達になれるのか…。

 マサトさんは何をしているのか、それはまだ少し先の話とさせていただきます。

 すみません。少し話を整理して続きを書きます!

 キャラだし過ぎて…整理の時間と…心の整理が…殺した判断は正しかったのか、考える時間と創作の時間に掛かります。

すみません…。

 目指せ完結!


 感想や質問など待っています。


 評価やブックマークも面白ければお願いします。

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