第六話 囮作戦前に僕が出来ること
防衛大臣大臣が来た昨日の夜はあまり寝ることが出来なかった。
普段は一日中寝ていることもあるミルも大きなあくびでペタペタとまるでペンギンみたいな足取りで歩いてくる。
「…。おはよう… マサト…。うむ…」
目を擦りまだ眠いアピールがまた可愛らしい娘がいる父親の気持ちとはこんな気持ちなのだろうか、いや親は失礼か… お姉ちゃんくらいに今は思っておこう。
「おはようございます… ふわぁ…」
「ふふふ、でかいあくび~だな…」
「…ミルだって、さっき大きなあくびをして起きてきましたよね…」
「私は良いんだ。主人である私のあくび姿を覚えるとは… 不敬~… だぞ…」
またもミルは大きなあくびをし不敬と言われても可愛らしいなとしか思えなかった。
「そうですか。以後気を付けます。ふぅ… 顔洗ってサッパリ!」
お互い顔を洗い終え食事をしにリビングに向かう。
ミルはいつも通りの血液パックで僕はまた余り物を適当に食べた。
「ふぅ、ごちそうさまでした。…。部屋に届いた手紙からして… 今日からでしたね」
会議の後、手紙が届いた。
手紙にはこう書かれていた。
「作戦に必要な訓練に参加しろ」とざっくりと僕なりに訳すとそう書かれていた。
「…。ああ…」
食事も終え、洗い物をしながらもミルと話す。
今日は何故か泡立ちが悪く食器が洗いづらかった。
「やはり… 断って…!」
「良いんですよこれは… 僕がそう決めたことです。僕は行きます、それが今は必要なんですから… 一発殴るには必要なことですから…」
「そうか… お前は覚悟が出来ているんだな… 強いな」
「そんなことは…! 戦うのは怖いですよまだ…」
「…そうか」
洗い物を終えて訓練に指定された場所に向かう。
「では行きましょうかミル…」
「…。うむ… そうしよう!」
僕が部屋から出るにはミルの同伴が必要らしい。僕もその事を知ったのはここに来て10日ほどたってからだった。
勝手に外に出ようとしたら警報がなり大勢の武装集団がぞろぞろと来るもんだからビックリしたけど、ミルが事情を説明したら帰ってくれた。
今ではそのおかげでおっちょこちょいなやつとして見られるようになり、基地の隊員の人達が部屋に来て話す機会も増えたように感じる。
とまぁそんな事を思い出していたらあっという間に着いてしまう。歩いて5分くらいだろうそんな距離にある自衛隊の訓練所だろうか、大きく広い黒色に染まる建物前に着く。
中に入ってみるとそこに総理大臣と防衛大臣が立っていた。
「お? 来たかね、正人くん。いやぁ君の協力に今回も感謝するよ」
「いえ… そこの男を殴るためですから」
僕は睨む。
横で腕を組んでミルを見ている笹原とか言う防衛大臣を。だがただ睨んでいるわけではない笑顔で睨んでいる。
「おお、怖い。僕をそんなに殴りたいとは…。気持ち悪い野郎だ、ほらほら?」
頬を指差し相手を煽る笹原。
「ぐっ! 誰の眷属が気持ち悪いと…?」
「以前と変わり… 横に騎士がいると姫は良く喋りますね?」
「止めないか笹原くん。今日はそんな下らないことをしに来たんじゃ無いだろう?」
「そうでした総理。田中正人君。君には今日から3ヶ月間、ここで一から肉体を鍛え上げ、最低限作戦に支障が出ない範囲で動けるようになってもらう」
先ほどの人が嫌がりそうな事を好きですって顔から一転してキリッとした大人の顔に変わる。理想の上司とはこういう人なのかと思えてくる。
いやいや、あんな顔をしているが本性は…。
「はい、それは届いた手紙で確認しています」
「よろしいでは… 早速トレーニングに移る。君に一から鍛えるトレーナーを紹介しよう透来なさい」
「はい!」と笹原の呼び出しに応え、明るい返事の後にスーツ姿でメガネを掛けた男が入ってくる。
「よろしく正人くん。今日から君を最低限鍛える笹原透だ。名前で分かると思うが笹原防衛大臣の弟さ!」
まさか…。笹原の弟に教わる事になるとは…。いや、あの笹原とは違って弟はいたって真面目かも…。
「趣味は筋肉を苛めることです。兄は弱いもの苛めが好きだけど… 僕は筋肉しか苛めないから仲良くしようね?」
「おい、ちょっと待て透。誰が弱いもの苛めが好きだって? いつも言っているだろうが… 必要に応じてそうしているだけだってなぁ!」
「ほらみろ正人くん、この人が嫌がることは率先してやるぞと嫌な顔をした兄に脅されてこの作戦に参加したんだろう?」
「おい!」
「止めないか、兄弟喧嘩は他所でやれ!」
総理大臣が怒る形でその場は収まる。
「とまぁ、正人くん、今日から君はここで笹原くんの弟の教えで鍛えてもらう」
「分かりました」
見ているだけで疲れる弟さんだったが怒られてか兄である笹原に大臣の後ろで弟の脇を肘で突いているが…。
「ぐふ…!」と小さく弟の声が聞こえた。
「じゃあ私たちは帰る。行くぞ笹原防衛大臣。弟を苛めてやるな」
総理大臣と防衛大臣は部屋を後にする。
「いや~大変だったね。兄は厳しいから怖いよね? 正直嫌いでしょ兄のこと?」
「いえ、そんなことは…」
「…。君って分かりやすいね…。隠さなくても良いのに…。まあ今日から訓練を始める! 時間も少ない、最初からハードに行くよ!」
「はい!」
「マサト… 辛くなったら止めてくれても良いんだぞ?」
「いいえ… やりきります。ミルを守るために僕は…」
「おっ! カッコいい、でも僕の訓練はそんな生易しいものでは無いよ…」
僕が知る広い体育館よりも広い畳が敷かれた部屋に案内される。
「じゃあまずこれを着て」と透さんから服を渡される。
「なんかこの服ちょっと重くありません…?」
「うん、特別製の10キロの服だよ。今日はそれを着て訓練をしてもらう。君の事は生まれた病院から高校を卒業するまでなど全て調べあげた。学生時代は運動部だったとか、それくらい余裕でしょ?」
「え… 怖…」と思いながらも服に着替える。
「まずは準備運動だ。はい! 筋肉を伸ばして~」
指示に従いアキレス腱やら腰など全身を伸ばす。
「うん、次は腹筋100回! それが終わったらスクワット50回だから」
「はい!」
腹筋100回を終えすぐに休む暇も無くスクワット50回を終えて、またすぐに別の部位の筋トレをする事5セットほど…。
「ハァハァ… あれ… 重りありであれだけ運動したのに…。そこまで疲れがない」
「何を今更。おまえは半分は吸血鬼なのだから疲れにくくて当たり前だろう?」
「うん、準備運動は終えて今度は走りに行くよ」
地面からランニングマシーンが出てくる。どこの未来工場かと思えるほど畳のしたから畳を開く形で出てくる。
「さあ! 走ろう! 今日は様子見だから…。50km走ってもらうよ!」
ひたすら走るだけでつまらない。
今何キロくらいで走ったいるのか確認してみると…。60キロで走っていた。知ってはいたがこうして目に見える形で出ると胸に来るものがある。どうやら僕は人間ではないらしいと、一応人間部分はあるらしいが… チートを使ってゲームをしている気分だった。
初めはスゲーと思えても... だんだんと強さに飽きてくる… そんな気持ちだ。
そんな今の僕よりも強い吸血鬼とはどのくらいか... 初めは雲を掴むような話だったが現実味を自身の訓練中に感じる。
「うん、どうやら僕の見積もりが甘かったなぁ…。良し準備運動も終えて訓練もここらが本番だ。次は鬼ごっこだ…」
「鬼ごっこ… ですか?」
「うん、ルールは普通の鬼ごっことは違って君はそこの少女と共に逃げてもらう。そして追うのは僕じゃない…」
何かボタンを押す音がしたとたんに地面や壁が揺れる。天井と壁が全部がひっくり返り始める。
「この無数の銃口から逃げてもらう。中身はインク。事前に狙われている場所を赤いライトが知らせてくれるから。1時間逃げきってね」
「ちょっと待て! 私の服が汚れるだろう!」
「服は洗えば良いんだから。少女と共に逃げる訓練なんだから… それくらい気にしない気にしない。じゃあ外で待ってるから、僕が出た瞬間から扉のロックも掛かり訓練開始だ」
「じゃあ、訓練開始」と言って外に出ていく透さん。
同時に赤い線が僕ではなくミルに向く。
「くっ! 失礼しますミル!」
「え? おわぁ!」
僕は考える暇も無くすぐにミルをお姫様抱っこする。
「やめろ離せ! こんなの恥ずかしい…」
「すみません、舌噛みますよ! 今の僕にミルを気遣う余裕は、ありません!」
周りに無数の赤い線が一直線にミルを指す。
1や2なんて生易しい数てはなく…。初めから前後左右上から10本それぞれ線が指す。
「くっ!」
バンバンバンとインクが飛ぶのが見えるが、全部避けきって見せる… こんなのすら避けなれなくちゃ… 作戦で足を引っ張ってしまう。
避けられないと思わず、当たりに行く気でギリギリで避け続けていった。
これがあと一時間もあるのかと考えるとそれだけで気が滅入りそうだ。
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