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第五十八話 バクバクバク

 暖かな風を肌に感じる。

 フワフワと浮いた意識の中で目を開ける。


「ヨッ! ホッ!」


 一人何もない空間で遊ぶ少年が見える。


「…何をしているの?」

「はい、あなたの記憶を読みケンケンパなる遊びを試しているんです」


 丸い円を飛び越え、ケンケンパのリズムで飛ぶ少年。


「…? 何処かで会ったことあったっけ?」

「いえ、初対面だと私は記憶しています」

「…。あの」

「そうですね、状況理解が足りない様子、無理もありませんここは夢の中。あなたの意識と無意識が混在し過去現在が複雑に混ざる記憶の海。改めて自己紹介です、お客様…。私は夢担当の管理妖精… ドリームキーパーと呼んでください、呼びづらければバクちゃんとでもお呼びください」

「あ、はい! 分かりました…?。あの、バクちゃんここは僕の夢の中?」

「はい、あなたの夢の中です。今は私が現実のあなたが目を覚まさないギリギリの状態でここに繋ぎ止めています、あなたの主が主なだけあり…とても強い覚醒力でしたが、寝ている相手に敵無しな私相手では…さしもの原初といえど眷属くらいなら余裕でした…ふふ」


 誰だと思えたバクちゃん、ドリームキーパーと自身を指差し名乗る。

 見え方が...集中して見ないところころと変わる。

 大きく見えたり見えなくなったり…人だったり時計だったり… 頭が…痛くなる。

 いや、ここは僕の夢の中だから…精神が磨耗すると言った方が正しいのかも?。


「…そうですか、それって安全なやつですか?」

「はい、寝たままなら衰弱死しますがそうなる前に起こしますのでご安心を、お客様を安全に現実に帰すのも私の仕事ですから」

「…なら良かった」


 見た目幼い少年が目の前で会釈する。

 緩く腰を折り、誰かに頭を下げるのが慣れたように仕事のプロだからか、元社会人として見習いたいほど… ここの人達は強引さはあれど美しさすら覚える。

 この少年にも感じる、同時に何か言葉で表せられないどろどろとした影… 小さな花の下に咲く地には… そういった引き寄せられる存在感があった。

 それは、とても怖いと思えた。

 話して分かる、この妖精さんたちは悪い人じゃない。けど友達にはなりたくない。

 怖いからなりたくない。

 分からないけどそう思えた。


「それでは何を… ん? 何か近づいてくる…」

「どうしたんですバクちゃん?」


 仕事中にも関わらずドリームキーパー、ホテルで夢を担当する妖精は客から視線を外しなにもない壁を見る。

 歪みを感知して、この世界を他のどの星の住人よりも知る妖精は侵入者を感知する。


「…すみませんがサービスは一旦中断してお客様には急ぎ現実に帰っていただきます…!」


 客の手取り急ぎ返そうとするが既に遅かった、侵入者が来たことにより夢は二つとなり混ざろうとしている。


「ここは、そうか…ハハ…。いや、カカカ。そういうことか…全部が...カハカカカ…」


 聞き覚えと忘れることが出来ない声と共に僕の夢の中にもう一人入ってきているものがいた。


「この場合…二回目…か…。カカ。カカカカカカカカ!。カカカカカカカ、カッカ!

俺は…ゼル…。会いたかったぜガキ?」

「五月蝿いですね…何者ですかあなたは? 予約はフロントに行き直接言ってからじゃないと出来ないのですよ…?」

「ん? 夢に潜み悪夢を見せた妖精か…こんな悪魔も食わないほど醜い魂を妖精か。カカ。そういや…妖精の血は食ったこと無いなぁ…」

「なるほど…分かりました。客では無いと… なら死なれても私に非も支配人からの罰もないと…ふふふ」

「何でお前がここに…」

「知らないだったなお前は…。眷属とはいえ成り立てのガキ、自身がどういう存在かも理解できないか、親の責任だなこれは… その親の居場所すら分からないとはな…可愛そうだ…」

「く…! 大人しく帰る気は無いのか?」

「なんだ? 夢の中の精神世界とはいえ俺が怖いか? そんなんだから大事なものを守れないんだぞ」

「…! だまれ! 僕は弱いが…お前みたいに卑怯なやつじゃない…!。

ルーナを瀕死にさせて…シーナの心を傷つけた、お前みたいな誰かの幸せを踏みにじり、利用するやつが…僕は嫌いだ。

答えろ…お前がミルを拐ったのか?」

「…違う、だが今は俺の手にある。

会わせてあげたい気持ちもあるが… だいぶ壊されていてな… 暴れ放題叫び放題… 赤子のように眠れば黙る… カカ。じゃじゃ馬姫様、とても会わせられる状態とは言えないなぁ、それでも会いたか?」

「…そうか、なら居場所を吐け。迎えに行く」

「カカ、カカッカ! カカカ! カアハハッはぁ…。ハライテェ…。

教えるヤツがいるかよ…馬鹿か?

せっかく手に入れた大事な宝を…お前みたいなキラキラしたものを集めるカラスに返すか?

元からお前のものじゃない、手に入れたもの勝ちだ? バーカ?」

「そうか… 答えないんだ…」


 僕は手に入るだけの力を込めた。

 硬く、僕の今の感情を乗せた拳が反射的に出来ていた。

 恐怖心はあった、が…それも消えるほど…燃えるように、パチッと炭火が弾けるように僕の体は瞬間的に動いていた。

 感情が昂るままに、その拳は敵と認識した目の前の男に垂直に、前に飛び込むように蹴りだした足の勢いと振るう拳の勢いのまま向かった。


「お客様!?」


 驚く夢担当妖精。

 力の差はその場にいた妖精でさえ分かるほど大きくあった。

 だが、止める間もなく動く姿にさすがは吸血鬼といった動きに驚く、半分は人間の半端と支配人に聞いてはいたが、既に人間の動きをしていなかった。

 常人なら、肉体の限界で崩壊する速度で動き、魔術師が魔力を用いた肉体強化をして出せる速度を出し…若干見えた気がした紅い瞳に魂の劣化を感じる。

 彼にはもう時間が無いのだと。


「カカ、だから弱いんだお前は」


 殴る拳は躱された、腰の剣すら抜く気はないらしい、それくらい僕はアイツになめられている。

 悔しい…。

 躱され何度も躱され殴る蹴るを繰り返す。


「く、クソォ…」

「あぁ…。そうだな。そのうち会える、嘘じゃない。近いとても近いのうちに国一つ滅ぼす厄災が降り立つ… お前はどうする、会えると言う俺を信じるか?」

「厄災? なんだよそれ…そうやって気を反らす気か? さっさと居場所を吐け!」

「…? 信じない…いや、考えないようにしている...というわけか…カカ。良いぜ、そうやって気を反らし...信じないで良い…。

そうやって自分に関わることから一生逃げていろ…。

痛い思いは自分に返ってくる…記憶と共に永遠に残り続ける...。カカ、カカ…カ。楽しめよ人生! カカカ!」

「グッ! ゲェ… ア… グッ! ァァァァ…!」


 躱され動きを読まれて殴る拳をつかまれ腹を殴られ地面に顔を踏まれ動けなくされる。

 無理に動けば背中も踏まれ、顔を蹴られ再度また顔を踏まれた。


「ぐ…! ミルに何かしてみろ! 許さないぞ… 必ず… 必ず! お前を殺す。殺す絶対に...! 殺す! 逃げるなよ卑怯者が! 必ず…! お前を殺すからな、忘れるな!」

「そうだ、刻めその感情を心を縛り… 日々忘れるな… お前の人生が台無しになっていく感触を…!

その焦燥感… 喪失感…。全部俺が与えた記憶と共に刻め! 楽しいだろ? ハラハラしてイテェからな?」

「ぐああぁぁぁぁ! ハァハァ…。許さな…い…から…な…!」


 再度強めに顔を蹴られ背中踏まれる。


「はぁ…、オット!。お客様の感情云々より、台無しなのは私の休憩時間が… 2分ほど経ってしまいました…事から溜め息が...。失礼しました」


 ドリームキーパーことバクちゃんが会話に入ってくる。邪魔するように先ほどから見ているだけの妖精が間に入る。

 コツンコツンと夢の中でも鳴る靴の音と共に何もない夢の中で当たり一面まだ夢として完成してないからか、歪む暗い景色の世界で歩いて侵入者に近づく。


「…止めるまもなく飛び込むとは… 何とも無謀なお客様…。客でなければ泣くまでビンタして廊下の掃除をさせています…が、止められず申し訳ありません」

「カカ…お前は妖精か? 邪魔するな今俺とコイツで話している途中だ…」

「はい私には関係ありません、侵入者とはいえ自己紹介。私はこのホテルで夢を担当している、夢担当の管理妖精…名前はドリームキーパー…あなたみたいな侵入者を排除するものです」

「…邪魔をするな! コイツは…僕が殺す!」

「頭に血が上っているようですお客様、すぐに現実に戻り頭を冷やす事をおすすめします、もうすぐ夢の修復も終わる頃ですし…」


 コツンコツンと歩く妖精の足元に花が咲く、咲いてはちりを繰り返し、何度でも咲いている。


「修復…完了、後はあなただけですよ侵入者様?」


 妖精の崩れてない服装と白と黒、髪や目、服装に限らずさっきまで咲いていた、花に変わり妖精の足元に黒い世界にコツンコツンと踏み込む足跡は白色だった。

 白色の靴跡と安心感ある顔色で近づく妖精は見ているこっちもさっきまでの毒気が抜けていく。


「やっと… 落ち着きましたかお客様? 私を見てとなると…少し気恥ずかしいですが、良かったです」

「…邪魔をするな、妖精が… 感情を理解した風に話すな… 目眩を起こしそうだ…。

腹の底から吐き気がする…。

何を知っているという。お前らが感情のなにを知っていると言うんだ…」

「えぇ、あなた以上に理解しています。あなたが家族を思って寂しがっていることも。お客様と同じで、誰かではなく、決まった者が入らなければ埋まらない寂しい気持ちに正直になれないんですね、十分同情できます。

…そして、あなたがあなたではないことも...ね?」

「そうか… カカ…あぁ。正解…大正解だ。だがそれも時期終わる…と知った…。が止めるのか俺を、お前も…?」

「ハハ、妖精である私が貴方を止めるのは簡単で…今回は心苦しいですが、お客様を助けた後に… 貴方を殺して私の今日の業務はおしまいですかね、何か『ヤバい』らしいので」

「…なにをするつもり」


 一歩一歩と近づく足音。


「逃げても構いません、我々妖精にはどうでも良いこと… 支配人の命令にはないこと、契約無くして存在できない我ら管理妖精ですから、お客様の安全さえ確保できれば… 逃げれば、まだ助かりますよ?」

「…。カカ!」


 ゼルは僕から足を離してバクちゃんに向かって飛び込む。


「そういやぁ... 妖精と戦うのは始めてだったカカ!」

「…ならこれが最後ですね」


 足を僕から離すゼル。

 先ほどの僕よりも何倍も早い速度で動き戦う二人。


「どうしたガキから足を離してやったが、避けてばっかりでは俺は殺せはしないぞ!」

「油断大敵… お客様から足を離してくれありがとうございます。

これで目覚めの時が使えます…。それでは、おはようございますお客様?」

「…まっ! あ…」


 とたんに意識は朦朧とするまるで眠るように夢から覚めようとしていた。


「だ… ダメだ、ま、まだ…いばしょを… はか…せないと…!」

「…ご安心をお客様。時期会えます…あなたが向かう先に必ず… あの寂しがりな吸血姫はいます、妖精の戯言と受けれても構いません。ですが…人に幸せを振り撒くのも妖精らしいですよ…」

「う…バク…ちゃん…」


 目を擦り体を起こして現実に帰ってくる。


「全部…。ほんとは夢だったんじゃ」


 なったことはないけど…明晰夢だったのかも、僕の記憶から出来たとても制御が効かず都合と不都合が混じった…悪夢だったのかもしれない

 それか本当に全部が…記憶のままの出来事だったのかもしれないが…確かめる方法は当然ない、だって夢だから。


「ん? 目が覚めましたか、まだ寝ていても良かったと思われますよ?」

「…メリーさんは寝なくて平気?」

「私は先ほど寝ましたからまだ暫くは平気です! フンフン!」


 イスに座り力こぶを作るポーズで元気アピールするメリーさん。


「そうか… やっぱり全部ユメ…」

「夢、はい…全部、夢ですよ?」

「う、うわっ! …はぁはぁ! だ、誰だ!」


 頭の上に何か乗った感触が突如くる同時に声も聞こえる。


「驚かせてすみませんお客様。私ですドリームキーパー…バクちゃんです!」

「ば…バクちゃん? じゃあ夢じゃない?」

「いいえ、夢でした… ですがややこしいですけども現実でもあります、お客様の記憶に間違いが無ければ全部妄想で終わりですが…。すみませんお客様…侵入者は逃がしてしまいました… 夢の修復は済んでますが…ちゃんとサービスを提供できず…申し訳ありませんでした」


 かわいらしいバクと思われるぬいぐるみが喋る。

 どうやら現実だとこの姿らしい。


「…そ、そうなんだ…。さっぱり分からないけど… 夢での事は...ほんと…色々とありがとう…」

「いえ、仕事の範囲の事をしたまで感謝は必要ありません。それよりもやはり…夢を提供できず申し訳ありません」

「…ううん、言いたいんだ…こういう時も…。伝えないといけないから、例え一期一会…だったとしたも...一生に一回来れて終わりだとしても、感謝したいんです。ありがとうって。

助けてくれてありがとうございます」

「あ…。…。はい」


 目が変わらないぬいぐるみが笑ったように見えた、ぬいぐるみかは分からないけどバクの形をしたぬいぐるみが笑ったように見えた。

 手に持ってたからか、はたまた照れてかぬいぐるみの温度も上がった気がする。


「誰ですかあなた、可愛らしいぬいぐるみとはいえ敵なら…!」

「お嬢様、私はバクちゃんと申します、このホテルで夢担当をしている管理妖精です。こちらのお客様には先ほど夢の中でご説明しました…。ですから、手に持つナイフで私を切ろうとしないでください! 綿が飛び出ます」

「…メリーさんこの…、ぬいぐるみ?

妖精さんは敵じゃない。けどぬいぐるみが喋るのは少し不思議だね」

「不思議ですが、そこにあまり興味を持たれないようにしていただければ… 私は秘密主義でして…」

「大丈夫。そんなに気にならないから、てか今さら喋るぬいぐるみじゃ驚かないから」

「…そうですか、なら私の仕事は以上です… 何かありましたらベルでお呼びください... 手の空いた者が参りますので」ペコリ

「…色々とありがとうございます」

「はい、ではお客様方…」ペコ、ペコリ


 雲のように最後は姿が薄くなり消えるドリームキーパー。


「…はぁ」

「大丈夫ですか、すごく疲れた顔をしていますよ?」

「…うん、寝たはずなのに…なんか…疲れが」

「そうですかなら…疲れた時はこうです!」

「え…?」


 突然ハグをするメリーさん。


「どうですか、癒されませんか私のハグで?」

「えっ…うん、ありがとう」

「…役不足かもですが、元気出してくださいね」

「…うん、けど…力緩めようか… 骨が軋む…から」

「え…?」


 ミシミシと鳴る音と感触が和らぐのを感じる。


「う、ウウ…」

「泣いているんですか?」

「…うん、なんか折れそうになった。けど…ありがとう…」

「…そんなに感謝したらあなたは疲れてしまいます…」

「…ううん、言いたいんだありがとうって」

「…。なら私からも...ありがとうございます…。優しいあなたに感謝したいからありがとうって言います… 私は時が来れば崩れる偽者ですが、人として接してくれるあなたに感謝します…」

「…ウウ…。会いたいなぁ…ミルに」

「えぇ、会わせてあげます私が本体に...」

「…ありがとうメリーさん、もう大丈夫だから離して」


 涙は引っ込む。

 目の奥にまだ残っている涙を止める。

 じゃないとずっと泣いてしまいそうだから。


「ダメです、私がまだ満足してません」

「…苦しいから離してください」

「ダメです…」

「…。ありがとう返して!」

「返せません、受け取ってすぐに食べてしまったので返せます…」

「…」


 ドアにノックする音が聞こえるまで続いた。


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 夢をテーマにした話は難しいですね。

 色々と考えながら書きましたが…明晰夢と同じ感じで良いのだろうか?

 妖精とは何かふんわりと書きましたが…それほど理解しなくても良いことです、あくまでも設定と思っていただければ。

 目的不明なゼルさんは今後も出てきます、色々と裏で動いていますが… 裏の話も書きたいけど… 大変です。


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