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第五十七話 フェアリーズホテル

 チクタクと部屋にある大きな古い時計、子供の頃に歌った時計と同じかそれに似た古い時計が、チクタクチクタクと鳴る。


「あの…」と僕は部屋に入ってきた男性に話しかける。

 なにかと勘違いもあり、この際謝りたいと思ったから。

 だけど、男性はこちらを強く恨む目で睨み続ける。

 社長と呼んでいたシークさんの命令とやらでも...まず仲良くはなれなさそうだ。


「クソ…」と小さく呟く言葉と声にどれだけ僕を嫌っているか分かる。

 だけど、そう呟き一呼吸入れた男性はスンと顔色を変え、穏やかとはいかない、睨むのもやめ真顔に変わる。


「ふふ、驚かせて悪かった。彼は私の部下で名をシル・バレット、愛称はシルバー、好きな食べ物がリンゴとかわいらしい一面もある、とても優秀な私の部下の一人だ」

「は、はぁ?」

「…どうも… シル・バレット… 今作戦であなた方と。と、共に! お嬢様方を救出に向かう仲間です… クッ…!」


 どこか苦し気に話すシル・バレット。

 愛称のシルバーはたぶんずっと言えないのだろう。


「…では私達は他にやることがあるので」と言い部屋を出るシークとロウと呼ばれていたこの日初めて名を知ったルーナの父親。


 心の中で待って! と叫び。まだこの人と同じ部屋は気まずい…。


「シルバー、眷属君を部屋に案内よろしく?」

「はい、こちらにどうぞ…部屋へ案内します」

「は、はい…」


 出る父親達二人とは別方向に歩く。

 別方向に向かって歩く二人の足音が消え、ふと振り返ると消えていた。


「え、消えた!?」

「…管理妖精が社長達を別の場所に運んだ…それだけだ…」


 社長と呼ぶシークが消えたからか、口調が若干元に戻るシル・バレットさん。


「あ…あの!」

「あ? 何だよ…」

「この前はごめんなさい... 何も理解してなかったとはいえ誘拐犯扱いして…」

「…!」


 シル・バレットの歩く足は止まり。残像を残して僕は気づけば壁に強い力で押し当てられていた。

 ドキドキする壁ドン…とは少し違く、恐怖でドキドキする壁ドンだった。


「…謝んなよ。謝る気持ちがあるならあの時…。俺に殺されたくなきゃ、大人しく黙って着いてこい…」


 何か言いかけたように見えた。


 とても強い力で体は押さえ付けられる。首を掴まれ、目の前には今にも襲いかかりそうな獰猛な獣に見えたシル・バレットさん。

 緊張と恐怖から乾いていく喉。苦しさはさほど無い。とても強い力で絞められているが、苦しさはさほど無い。


「あ、あ…」乾いた喉ので精一杯出した声はそれだけだった。

 何も言い出せなかった。


 そんな僕を見てか、襲われていると思ってかシル・バレットさんに斬るためか剣を準備するメリーさんが視界の端に見える。

 どんな顔をしていたかは歪む視界で見えなかったが止めようと声をまた出そうとする。 


「ダ…ダ、ァ…!」


「…ちっ。着いてこい…」


 掴まれた首を離してもらいその場で腰が抜けてしまい座った状態になる。


「はぁはぁ…」

「…大丈夫ですか? 殺すアイツ?」

「はぁはぁ…! だ、大丈夫だから! 殺しちゃダメ絶対… はぁはぁ…。はぁ…行こう」

「…そう」


 膝をつき立ち上がり、着いていく。

 長い廊下を会話もなく歩く、メリーさんは先ほどのこともあり出会った時よりも距離感が近くなったように感じる…。

 側をずっと僕の歩く速度に合わせて歩き周囲とシル・バレットさんを警戒して歩いている。

 シル・バレットさんの背中しか見えないが、僕が歩く速度を早め近づこうとすると、本人も歩く速度を早め近づけない。

 会話無しで...とても気まずい空気だけが…流れ続ける。

 何度か角を曲がり階段を上り降りた後でシル・バレットさんは止まる。


「ここだ… 大人しく指示を待っていろ… それと…朝食は食べたか? 無いなら準備させよう」

「…食べてないです」

「そうか、なら部屋に届けさせるとしよう…。話は聞いているが… チビの分も用意するか?」

「いえ、私は分身。食事は必要ありません」

「…分かった、大人しく待っていろ」


 そう言い部屋の扉を開け、僕らが入ったのを確認すると扉を閉じ鍵を閉める。


「…はぁ」

「どうしたのですか? やはりアイツを殺しに向かいます? それとも妖精探しに?」

「…いや、違う、凄く落ち込んでいるだけだよ」

「…? なら頭を撫でてあげましょう。よしよし」


 なにか言い返すまもなく、頭の上に感じる柔らかく暖かな感触。


「ありがとう。だけど何で頭を撫でるの、何かした僕?」

「いえ、こうすると良いと本体からの記憶から読み取りました。してほしいこととも感じられますが。ハグに継ぎこうされるのも本体は好きらしいですだからやってみただけですが」

「…そうか、ありがとうメリーさん」


 部屋を少し見て回るとホテルのようになっており、ベットや冷蔵庫、シャワールームなどありせっかくだから体を洗うことにした。

 湯を張ろうとも考えたが…時間に余裕があるか分からないのでシャワーだけで済ませサッパリとした気持ちで部屋シャワールームから出て脱いだ服を置いた位置に戻ると服は無く… 変わりに着替えだろう服が置かれていた。


「え…?」


 誰が…そう感じ、入念に服の隙間や置かれた位置などを見て触ったり嗅いだりしてみたけど素人目では何も異常は無いただのシャワールームと服だ。


 とりあえず着替えを終わらせシャワールームから出ることにした。


「メリーさんですか? 着替えを用意してくれたのは…」と言いながらシャワールームを出るとまたも知らない人達が二人部屋に入ってきていた。


「ねぇねぇ? お姉ちゃんこっちの服の方が似合うと思うよ?」

「待ってヘンゼル? こっちの服もこの子には似合うと思うわ」

「わー、凄い凄い! お姉ちゃん天才!」

「ヘンゼルのお姉ちゃんだから当然よ!」

「はぁ…。あ、見てないで助けてくださいよ...」


 溜め息を吐き諦めた視線でこちらを見てくるメリーさん。

 姉弟らしき二人の着せかえ人形になっていた。


「あら? もう出てきたのですかお客様? はじめまして私はこのホテルで衣装担当をさせて貰っている管理妖精のグレーテルと申します… 隣にいるのは弟のヘンゼル… ヘンゼルとグレーテルって覚えやすいでしょう?」

「はじめまして! 僕ヘンゼル! お姉ちゃんと一緒にお嬢様や旦那様方の衣装を揃える担当なんだ! 凄い凄いでしょ?」

「へ、へぇ... それは凄い…ねぇ?」


 とても熱ある目で見てくる幼い容姿で見た目も子供な二人は自身を妖精と名乗りヘンゼルとグレーテル…なんてよく聞くおとぎ話の本の主人公の名前で…色々と言いたいことはあれど…。


「この服は君達が?」

「えぇ、もちろん。こちらの流行に合わせるのも考えましたが…やはり日本の流行にも合わせた英国と日本どちらの要素も加えた完璧な服を揃えました… どうです? 着心地も悪ないでしょうお客様?」

「うん、とても動きやすくて良い、締め付けられる服は…締め付けられる服は苦手だから…こういうのが良い」

「それは良かったです。ヘンゼル? そっちの準備は?」

「無理だよお姉ちゃん… このお客様、服を全然脱いでくれない… 肌に吸い付いてるみたいに脱がせられない…」

「はぁ…。そう。お客様、食事の準備は済んでいますのでどうぞ奥の部屋に…」


 ドタバタと音がする。

 暴れていると思って覗いたら… ただメリーさんの脱がそうと躍起になったヘンゼルの姿が見える。


「あの、そんな無理に脱がさなくても…良いんじゃ」

「…。そうですね。ヘンゼル帰りますよ?」

「は~い」

「ではお客様、何かあれば、このベルを鳴らしていただければ… 手が空いたものが向かいますので」


 グレーテルはベルを渡してくる。

 金で作られ木の取っ手がついた装飾一つ無いシンプルながらも美しいベルを渡す。


「はい、服ありがとうございます」

「それでは…」


 部屋を出る二人を見送り、グレーテルに言われた通り部屋の奥に向かうが…そもそもこの部屋に食事がとれる場所なんて…。

 奥と言われて部屋を見渡すとさっきまでなかった扉が現れていた。

 見間違いもしくは記憶違いにも思えたが…無かったはずだ。

 恐る恐る扉を開けると丸いテーブルに椅子が向かい合うようテーブルを挟み一つずつと… 静寂と異質な空気感が流れていた。

 テーブルを照らす様にライトが天井から一つ、回りには誰もいなく...警戒しながらも席に座る。

 たぶんここで正しいはず…。

 席にすわったとたんに料理が何もない所から出てくる…。

 ご丁寧に食べ方や食器類の持ち方等が書かれたメニュー表も出てくる。

 それを見ながらも緊張で味がほとんど分からなかったが…完食する。

 コップに入った水が無くなり次第コップから沸いてきたのも驚いたし…こんな静か食事は慣れていたはずだけど…とても緊張した。


「…もう、何もないよね? デザートらしきものも食べたし… 最後だよね?」

「はい、これで私の演出は終わりです、楽しんでいただけましたか?」

「うおっ…わ!」


 突如は背後から聞こえる声に驚く。


「ふふふ。はじめまして。私は調理を担当の管理妖精… ルラフと申します…。原初ルミエールの眷属様のお口に合いましたでしょうか?」

「は、はい…結構なお手前で...」

「ふふふ。それは良かったです」

「あ、あの。皆が言うルミエールって結構誰なんですか?」

「それは…。既にあなたも察しているのではお客様? 」

「…」

「お出口は元来た扉を開ければ部屋に戻れます」

「ありがとうございます、とても美味しかったです」

「そう、ですか…。また来る日を楽しみに待ってますね…」


 バタリと部屋を出て扉を閉じると扉は消え静寂と共に満たした腹のままベットに倒れ込む。


「やっぱ…そうだよね」


 なんかズルした気分だ。

 疲れたからか…はたまた現実逃避からか眠る。


「…ミ…ル」

 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 今回は不思議な部屋を中心に、このホテルとそこで働く従業員達についての話多めでした。

 戦闘はまだ多少先になると思います。

 修行パートもなく戦いになると思います。


 感想など待ってます。

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