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第五十六話 他人の家

「…」


 あの…化物。


 見ているだけで…とても震えが止まらなくなる。

 嫌な震えで内蔵まで震えているようで思い出すだけで気分が悪くなる。


「…ん」


 勘違いであってほしい。

 気持ちから来る不安でそう求めての勘違いであってほしい。

 ミルと会いたい僕の勘違いであってほしい。


 車の窓から見え過ぎる景色を眺める。

 隣で座りウトウトと眠たそうにしているメリーさんに、着ていた上着をかける。

 

「…あの~ちょっと良いすか?」


 そう僕に声をかける、前の席に座る周りから後輩と呼ばれていた男性。


「えと、僕にですか?」

「はいそうっす、貴方に話しかけていますね、はい。オレ…いや、私は今回貴方と共に作戦に参加する、ソードマンとモウシマス。周りからは後輩と呼ばれていますが…はい。あ、関係の無かったすねあんたには」

「はあ?」

「いやいや、そう身を固めず、共に作戦に参加する同士がなぜ…私達に協力するのか気になって…ねぇ? ただ聞いてみただけすよ」


 重そうな武相で全身を固めるソードマンと名乗る男性が器用に身をのりだし後ろの席にいる僕の方を見る。


「またでたらめ言って…。ロシュアンでしょ後輩である君の名前は?」

「ちょっ! ばらさないでくださいよ…先輩、せっかく今朝考えたどこまで騙せるかって遊びを」

「またくだらない遊びを...車から降りてもらう必要がありそう…ね?」

「いや…すみませんって! もうしませんごめんなさい!」


 乗り出した体を戻し、元の座席に座る。


「…けど、さっきの話は真面目に聞いたやつすよ、あんたは…どうして俺達に協力するって言うんだ…」


 顔は前を向いていて見えないがロシュアンの声はグッと低くなる。


「先輩はバカじゃない、オレはバカだが…先輩達は違う。何を理由に協力するか、今ここで聞く…あんたは何がしてぇ。お嬢様達からある程度聞いた…良いやつだってことを知っているが…本当にあんたはそんな良いやつなのか? 騙して殺すために弱いふりして俺達の懐に入ろうとしているネズミじゃ無いよな?」

「違います、僕は本当に助けたいと!」

「…そこで寝たふりしたやつにも聞こうか… もう目が覚めているんだろう? いや…最初から寝てなんかいない...。先輩は優しいから気づかないふりしてた…が! 俺はあえて聞く… あんたは…何だ。気持ち悪いほどさっき先輩が消した化物達そっくりだ…。何を知っているか話してもらおうか」

「やめなさい、お嬢様達が拐われて神経質になるのは分かるけど… 客人に武器を向けてはならない」

「…そうすね、オレ…焦ってました、ですが…どうしても気になるんですよ…先輩。コイツらが白か黒か…グレーかって」

「…やめなさいロシュ、そろそろ倉庫に着く」

「…そうっすね、いやいや、すみませんす! 客人の善意を疑うとは…バカっすね俺は。善意の参加ありがとうございます」

「いえ、僕も今ロシュアンさんと同じ気持ちです…疑いたくなる気持ちも分かります」

「…そうっすか、あんた良いやつすね。話に聞いてた通りの…」

「僕のことは…信じなくて良いです。作戦の邪魔にならないよう動こうと思いますが…邪魔となれば切り捨てても良いです、それくらいロシュアンさんが...あの二人の事を大事に思っているって分かりましたから」

「…そうっ…すね。ほんと…大事に守ってきたお嬢様の父親である…ボスには…申し訳ない…と思うっす…」


 目を擦るロシュアンさん。


「…オレ。不安だったす。失敗が多い俺のせいで...以前の失踪が起こったんじゃないんかって…お嬢様方の一番近くにいて気づかなかった俺のせいで... 侵入者に気づけなかった俺のせいじゃないんかって…」

「…泣くな、客人の前だぞ…たく泣き虫は治せと前から言っただろ」

「ごめんなさい… けど先輩。オレ…俺が侵入者に気づいていれば…!」

「どのみちお前一人ではお嬢様共々逃げられていた… 特に…ルナお嬢様は… バ…! ゴホン… 楽観的に考えやすく...ストッパーであるシルお嬢様も…退屈してか…お前を振り払い着いていくと考えられる…」

「先輩…今、お嬢様の事バカって!言いかけました? そう思っているってことすか?!」

「…よし、倉庫につきました…。おいロシュアン君? ちょっと倉庫裏に来い…」

「…。ちょっと先輩。オレ着いたらやることが! ちょ! 髪引っ張らないで…!?」

「…来い」


 目的地である倉庫に着いて早々、運転手の女性に首を掴まれ引きずられるロシュアンさん。


「ちょっ! 先輩待って! ほんとやることが!」

「…」


 倉庫裏に引きずられていく。


「…正人様」

「はい!」


 視界があの二人に集中していてか、車のドアを開け話しかけきたセバスチャンさんに、気づかなかった。


「…どうぞこちらに...旦那様方が、待っています」

「はい… メリーさん…?」

「…ん」


 目をこすり目蓋をぱちくりとし完全に寝ていたメリーさん。


「…起きてたんじゃないの?」

「…起きてましたよ… 途中から寝てしまっただけです」

「…すごい神経だね」

「…あなたには言われたくありません」

「…そうですか」


 車を降り、セバスチャンさんの案内で倉庫…。

 車庫くらいの大きさの錆びた鉄製の倉庫に向かう。


「…ではお入りください」


 倉庫のドアを開けると中は外見以上に広く… ファンタジーは吸血鬼で十分あり得たと理解してきたつもりだったが… 実際体験すると興奮から体が震えた。


「お、おお…!」

「…ふん、ふふ」

「…何が可笑しいメリーさん」

「いえ… あまりにも驚くあなたについ笑いが…ふふ」

「…仕方ないよ、こんな不思議な体験をすると… 魂が震えそうになる」

「…魂が既に不思議な正人さんがそれ言います?」

「…」


 天井は高く、外見は鉄製の錆びた倉庫だったが、倉庫内はホテルのように広く… 煌びやかな装飾の多い、僕には不釣り合いな場所だ。


「…どうしよう…慣れない場所で吐き気が...」

「ちょ…! 誰かいませんか、この人吐きそうです」

「ちょっ! 人呼ばないで…」


 ホテルに例えたが…広い煌びやかなという理由でそう思ったが、よく周りを見てみると、受付も従業員もいない無人なのかと思えてくる。


「はいはい!? 大丈夫ですかぁ?」

「…え」

「大丈夫ですかぁ? すぐ吐きそうですかぁ? ならここにゲーしてねぇ?」


 広げられた黒い袋を持った優しい声色の男性。


「…オエェ」

「はいはい、大丈夫ですよぉ… 気を楽にしてぇ、車の長旅で疲れたんですねぇ」

「すみません…」

「大丈夫ですかぁ?」


 そう言い優しく、背中を撫でられる。


「もう…大丈夫…ありがとうございます。あなたは?」

「僕はぁ…ここの案内担当管理妖精エルク~ン。ロウとぉシークに会いに来たんだろぉ? 案内するよぉ」

「僕は…」

「知っているよぉ、君の事は... 原初ルミエールの眷属タナカ・マサト君でしょ? 今、世界中で暇をしている妖精達も騒ぐほどの重要人物…! 会えて嬉しいよ僕はぁ!」

「…僕が重要人物?」

「そうだよぉ、さぁ案内するよぉ。ほら行くよぉ」


 エルクーンに手掴まれ指定の部屋まで瞬間移動し正人は案内される。


「ここだよぉ、じゃあねぇ?」

「待って!」


 止めようとしたがエルクーンは姿を消す。


「とりあえず…切り替えよう」

「…追いかけなくて良いのですか?」

「…いいよ、どうせどこ行ったか分からないし…」

「私…分かりますよ?」

「え…! けど…良いよ、今はこっちが大事」

「…そうですか」


 ドアノブを掴みドアを開ける。


「おっ! 来たか」

「…失礼します」

「失礼なら帰れ」

「いいよ、気にせず入りなさい」

「…はい」


 部屋に入るとシークとルーナのお父さんがチェスをしていた。


「君はそこの席に座りなさい」

「…何をしているんですか?」

「見て分からないかい? チェスっていうボードゲームだよ…? 君は知らないのかい?」

「いえ、僕もやったことくらいあるので知っています… が、なぜ今チェスを…」

「…君を作戦に参加させるかさせないか…チェスで決めているんだ… 互いに反対意見なため公平な勝負で」

「…」

「へぇ、それが噂の原初の分身体か… 意思ある分身とは…」

「シーク手を止めるな、お前の番だ」


 イスに座り観戦することしか出来ない。

 シークさんは…どこか余裕がある顔だ。ルーナのお父さんが優勢に見えるが…。


「チェック…」とシークさんが言う。


 手を止めず、素早い指の動きで互いに駒を動かす。


「チェック…」とルーナのお父さんが言う。


「…ところで眷属君」

「…はい、何ですか」

「君は… どこまで原初や、吸血鬼について知っているのかな?」

「…ざっくりした原初の事と吸血鬼という生き物についてくらいです…」

「それは…どのくらい? 吸血鬼の子の作り方は知っているのかな?」

「はい、人間と同じですが、人間とは子は出来ないとミル… 原初から聞きました」

「…そこまで知っているか…。なら五百年前にあった原初ルミエール誕生と同時に失踪したことは?」

「…あのエルクーンっていう妖精さんからも聞きましたが…ルミエールとは誰の事ですか?」

「そう、知らないか…」

「…おいシーク勝負中だ… お前私との勝負中お喋りとはなめられたものだ」

「…ロウ、君との勝負は既に決した… 私はこの一手で、チェックメイトだ…」

「…私もチェックメイトだ…」


 互いに駒を動かし、チェックメイトと言い終えるとシークは深く溜め息を吐き目の前にいる男性を見る。

 かつて、殺しあった相手である男性を、チェスを何度もした相手である男性を見て溜め息一つ吐く。


「…ロウ、なぜ君はあの少年に肩入れする、邪魔者だったはずだろ?」

「…娘の恩人を無下には出来ない…。それにこの作戦で流れ弾にでも当たり死んでくれれば良いとわりと本気で考えている」

「…そうか、変わらないのは私だけか」

「変わるさ。何百年生きたと思っている…。あの日…ルナ母である、お前の姉スカーレットを殺した日から私は変わり続けた...。何度も折れる度に...あの子に繋げて貰えって今の私がある」

「…。シルは良い子だ…。あの子は凄く良い子で、ミルちゃんに会わせてから側から離れようとはしないくらい…仲も良い。きっとルナちゃんを守ってくれるさ…」

「そうだな、さてシーク娘達を迎えに行こう」


 何を言っているのか何も理解できないまま勝負は引き分けで終わった。


「…引き分けか、勝者無し敗者無し… つまらないなぁ」

「どうする、また勝負するか?」

「いや、ロウ。もう飽きたし、君のその話を聞いたら私も彼を認めることにしたよ…」

「…ありがとうシーク」

「よせ、男からましてや…仇敵主からの感謝は寿命を縮める」

「…あの、僕は来てよかったのでしょうか?

「お前は…来なくても良かった…。イスに縛り付けておいていこうと思ってた私は」


 そう言い、微笑むルーナのお父さん。


「さて… そろそろ本題だ。入ってきなさい」そうドアに向かって誰か呼ぶシーク。


「失礼します…。…お前は...! どういう事ですか社長!」


 ドアを開けた時から、見覚えのある顔と目付き。

 第三基地でルーナ達を連れて消えた男が、入ってきた。


「お前はあの時の!」


 あまりにも典型的な驚きを僕はする。

 

「社長…。まさか、助っ人てコイツですか?」

「そうだよ?」

「…そうだよって… 社長。俺は...コイツとは組めません」

「いいや、組んでもらう... これは私からの命令だ…」

「ぐ…命令ですか、わ、分かりました…」

「うん、ありがとう」


 こうして来て早々に不安が残る。

 僕を睨む視線が精神的に痛く、拐ったと理由を理解してからは…凄く胸が痛くなる。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 わりと書けた方だと思います。


 ロウはルーナのお父さんの名前です。


色々と過去にあった風の話多めで飽きさせてしまわないか心配です、書きたいように書いているので。


 吸血鬼がなぜとか、原初とか、妖精とかルミエールとか。

 ルミエールに続いてさらに長く名前が付きます。


 感想待ってます。


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