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第五十二話 侵入者

 ルーナの屋敷に着いて早々父親に消されかけた正人だったが、原因となる結婚については一旦終わらせ休戦状態のようになっていた。


「どうやら客人の紅茶が冷めてしまった… 替えのものを用意をセバス」

「はい、すぐに御用意いたします…」


 シークはセバスチャンに紅茶の用意をさせる。


「どうぞ…」

「あ、…ありがとうございます」

「そう固くならないで、自宅にでもいるみたいに気を楽にしてくれて良いよ」


 そう言われても気が抜けるわけない。


 色々な事が起こって理解する前に変わる映画を見ているみたいで、一時停止や巻き戻しをして状況を理解しようとしているけど、何も分からない。


 切られたテープを無理やり繋げて1本にまとめた映画を初見で理解できるわけがない。


 情報を整理して色々と考えることはできるが、ミルの事が…今どこにいるかすら分からないから、何も分からないって考えてしまう。


「…そんなに深く考えることはない、我々は君の敵ではない。娘が世話になった相手だ無下には出来ないよ」

「あ、いえそういうことではなく…すみません。こんな場は慣れてなくて…。その… 紅茶、美味しいです」

「そうか、気に入っていただけて嬉しいよ。私では香りは分かっても味はそこまで分からなくてね、口にあったようで...」


 そういえば… ルーナ達とシーナのお父さんには紅茶のカップが無い。

 どう言うことだろうか。

 ミルはよくお茶を飲んでたけど…確かにルーナ達が飲んでいることは少なかった。寒い日の朝に飲んでいるのを数回見たくらいで...あまり飲んでいるイメージはなかったけど。


「それで、今後君はどうするんだい? 日本に帰るのなら私の手で確実に家に帰してやれるが… 何かまだやり残しているように思える、失くしたものでもあるのかい?」

「もうお父さん! 眷属さんが困ってるからそこまでにして、今日はこの屋敷で眷属さんを休ませてもよろしいですか叔父さん?」


 僕がどうするか考えてる間に、答える前にシーナが間に入り話を遮る。


「…。良いだろう。少なくともルーナが世話になったと聞くし… だが私の部屋の近くにある空き部屋でだ」

「まったくお父様たら…」

「許しも出ましたし、セバスチャンさん、すぐに部屋の準備をお願いできる?」

「…そうおっしゃられると思いまして既に準備は済んでいます」

「…優秀すぎるのも困りものだな…」とルナの父は呟く。


「あの、良いのですか… 僕を泊めても... 協会の人達が来るかもしれないのに」


 座りながらルナの父に聞く正人。


「気にするな客人、まずそれはない。泳がされてか分からないが…現状来ていないのなら協会は今後来る事もないだろう。普通なら既に屋敷は吹っ飛んでいる頃だ」

「そ、そうなんですね… すみません僕のせいでご迷惑かけて…」

「ああ! 本当にそうだ! 何でおまえみたいな男を泊めなくちゃならないと… 思うが… ここは礼を重んじて... 娘が世話になったのも事実… 命を救っていただき感謝します… もしおまえの主がいるのならそのお方にも」

「いえ…ミルは... 原初はここにはいなくて...」

「そうか、おまえの影にでも潜んでいると思ったが…」

「そうですわ眷属さん、原初様はどこに行かれたのですか?」

「…それが分からない」

「…? 分からないとはどういう…」

「ごめんルーナ… 本当に分からないんだ、それしか言えなくて… ごめん…。今は一人にさせてくれないか」

「…そう…ですか。セバス、眷属さんを部屋に案内してあげて… 今はそうすることを望まれてますし」

「…本当にごめん…寝ればすぐ元に戻るから」

「こちらへどうぞ正人様」

「…すみません」


 部屋に案内される正人。


「何かありましたらそこのベルを鳴らしてください…」

「…はい、お世話になります、それとすみません…こんな空気悪くして…ルーナ達にもそう伝えてもらえますか」

「ハハ、それはご自身でお伝えすることをおすすめしますよ…ではごゆっくりお休まりください」

「…はい」


 そう言いセバスチャンは扉を閉じ正人は一人部屋の椅子に座りまだ日が昇る窓の外を見ていた。

 何も考えず時間が過ぎ外を眺め日が沈む夕日も過ぎ夜に変わる。

 ただボーと外を眺めていた。

 何かをしようにもとたんに電池の切れた玩具のように椅子に座り外を眺めていた。

 何をすれば良いかしたいか分かっている、すぐに動いて原初を探しに行かなくちゃいけない。

 けど、分からない…居場所が分からない。

 こんな後に思うのは最悪だが、協会の基地から出ない方が良かったのかもしれない。

 あそこでなら情報も集まりもっと楽に...早く会えたのかもしれない。


 自分が嫌いになりそうだ。


 あれだけ、あの二人に嬉しさと感謝した自分が嘘だったと思いたいほどくだらなくずっと僕は悪であったと思いたいほど自分を嫌って疑似正当化したい。


 けど…正しいのは協会に戻ることだ。それは間違いじゃないと思う。


 だからか、外を見ていたと思う。

 今すぐ窓の外に出て協会に戻るって考えて。

 道は…寝ていて覚えているのはとちゅうからだが、覚えてはいる、かなり遠くだと思うけど今の僕なら1日で着く距離だと思う。


 けど動けない…。


 コンコンと誰かが部屋の扉をノックしている。

 扉を開けるとセバスチャンさんがいた。


「お食事の準備が出来ました…」

「あ、もうそんな時間でしたか…」

「では、こちらに...」


 そう言いセバスチャンさんに着いていく。

 入る時も思ったが、とても広い屋敷だ。日本のとはまた違う広さと通路や壁や天井の造りに息を飲みながら案内され皆の集まる部屋に着く。

 ザ・貴族のテーブルと思える長いテーブルに食事が置かれていた。

 名前も知らない料理に困惑しながら席に付く。ルーナ達には血だろうか赤い液体の入ったグラスが置かれ横で赤い液体の入ったガラスの容器を持った人が立っていた。


「ふふ、来ましたわね」

「…ふん、客人の口に合うか分からないが…まぁ食べてくれ、味は保証しよう」

「…はぁ、お父さんも残れば良かったのに...仕事で帰っちゃうなんて…」

「あの、僕も一緒で…」

「もう眷属さん! そんな僕なんか僕なんか見たいな声と顔でいてはダメですわ! もっといつもみたいに笑顔で食べてください… じゃないと心配になりますわ」

「…そうだ客人。こうして集まり食事をするよう言った娘の顔をたて、共にすることを許した。マナーなどは気にせず好きに食べ腹を満たせ、腹を満たせば気も晴れるだろうからな?」

「食事の同席を許していただき、ありがとうございます」

「眷属さん? そう畏まらずとも… では! いただきましょうか! いただきます」

「いただきます」

「いただきます」


「イタダキマス? ルーナそれはなんだ、いきなり手を合わせて?」

「おや、お父様? 知りませんの? いただく命に感謝する日本の儀式ですわ」

「え…そ、そうなの? いやオホン! そうなのかルーナ?」

「ふふ、行かなければ分からなかった文化でしたわ… それを原初様から!」

「ちょっとルーナ! 今は原初様の話は…」


 何かを言いかけたルーナを止めるシーナ。


「いや、その… 教わったと言う話で...」

「…そうか、無事に帰ってきてくれて嬉しいよ」

「懐かしいね、ミルも嬉しそうだったよ。ルーナ達を躾られたって笑ってた」

「え? あの、眷属さん… あまりご無理は…」

「そんなにルーナ達も気を遣わなくて良いよ…。こっちのマナーはよく知らないけど食事中は楽しくなくちゃご飯が不味くなるし…。もう、大丈夫だから。二人の話したいようにしたって元から良いんだ」

「そ、そうですか…そうですね。 なら次は… あの日眷属さんに起こしてもらった朝の話を!」

「待て、ルナ… それはどういう事だ… 朝? 起こしてもらった... 客人貴様! それはホントか…?」


 怒りから澄ました顔で食事をしていたルーナの父も顔を引きつらせ顔色を悪くする。鬼がいた。

 

「あ、いや…それはその… シーナに頼まれてしたことです、はい。だよねシーナさん…」

「…。私は何も知りません、あれは事故ですから、それに私は原初様に怒られてもう何も覚えていません」

「何を分からないことを…本当か嘘かはっきりと言え! やはりルナが結婚すると言った理由は手を出して!」

「落ち着いてくださいお父様、嘘では無いのですから! 確かにあの朝は眷属さんに起こしてもらったと私の記憶にありますわ」

「そうか、なら... おいセバス… ナイフを持ってこい、飛びっきり鋭いヤツをな! 厨房からありったけ持ってこい…」

「食事中ですわお父様、おすわりになって…」


 ルーナは血で椅子に父親を縛り身動きを封じる。


「な、外しなさいルーナ! 私は認めない、アイツを殺さぬ限り認めないぞ!」

「さぁ眷属? 食事を続けましょうか?」

「…いや、お父さんを…」

「いえ、必要ないですわ。邪魔者は外にでも… セバスお父様を外に…捨ててきなさい…」

「部屋に戻しときます…」


 ルナ父は執事やメイドにイス事運ばれていく。


「ま、待て! まだ食事中だぞ! 待て待てェェ! 誰がこの屋敷の主か分かっての…!」


 バタンと扉を閉じても声は聞こえ次第に聞こえなくなる。


「これで静かになりましたわ… では食事を続けましょうか?」

「…良いのあれで?」

「お気になさらず、お父様の最近ある発作ですから」

「…そう」


 食事は続き、話をしながらもやがてごちそうさまを言い終え。席を立つ。体が自然と扉の方に歩く。


「まさか、眷属さんが我が家に来るとは… これはチャンスですわ… フフフ」

「…聞こえてるよ、けど…ありがとう色々と…」

「なら血を!」

「…ごめんなさい、それは無理です来世まで諦めてください…先約がいますので…」

「…はいはい、ルーナ部屋に戻るよ? あ、眷属さんも来る? 朝まで本読んだりトランプしたりの映画鑑賞会」

「…まぁ、気が向いたら行くよ」


 部屋を出ようとする正人達、扉に手が触れようとする時。


「コンコンコン、誰か居ますか?」

「え…?」


 今いる部屋の扉を叩く音と共に知らない声からルーナ達も驚く。


「誰ですか、ふざけているのは…セバスに言いますわよ?」

「あぁ、そこにいたか… 小生はやはり運が良い」


 扉に触れる手からゾワリと背中と足先まで伝い頭で理解するまで遅くなる。


「誰(だ~れ)かさんが~誰かさんが~…見つけた…」

「誰だ歌っているのは…!」


 扉向こうから聞こえる声に警戒してたが、気づけば扉を開けていた。

 そこには誰もいない、ホラー小説かと思うほどホッとした気持ちを一瞬持ちすぐさま後ろを向くが誰もいない。 

 声の主はどこにもいない。


「ざんねん、小生は下だ…」


 下を向くが影しかなく...。影から手が勢いよく伸び正人の口を掴みゆっくりと影から生えるキリコと言う侵入者。


「あれ~君…何でここにいるの? まずいなぁ…君がいるのはかなりまずい、実にマズイ…どうするかなぁ…」

「誰なんですか貴方は!」


 聞きながらも正人を掴む腕に目掛けて剣を振る。


「おや…いた…。君達が血に覚醒し魂の双子か…。小生は運が良いよ…」

「何を言っているか分かりませんが…腕を切られても正気とはあなたも吸血鬼ですわね…」

「なら…手加減は入らないってことだね」

「眷属さん、大丈夫ですか… 平気なら…すぐに立ち上がり隠れるか離れていてくださいね…」

「わかった…頼んだ二人とも」


 三人から距離をおき部屋を出る機会をうかがう。


「あぁ…けどね、君がいたのは予定外… 実に予定外だったが… 君をここで消せる機会だ…小生は実に運が良い…! 消せば良い、いらない役者は…セリフごと消せば良い」


 切られた腕が切られた断面から生え、ルーナ達を無視して正人の方に向かう。


「行かせませんわ!」


 シーナの結界もルーナの剣もキリコの体には効かず、すり抜ける。


「な!」

「どうして!」


 幽霊みたいにすり抜け実態が無いと思ったが正人の口を掴んだのも切られた腕は本物だった。

 正人との距離は一瞬で縮まり、正人の胸をキリコの腕が貫こうとする瞬間。


「この舞台にいらない…小生の作る劇から降りてもらう…君は必要ない」


 キリコとの距離が縮まり正人の身の危険に反応して腕に書かれた消えてた血の文字が光る。それは以前ミルが正人に書いたものだった。

 両の腕が光ると同時に血の文字は腕から剥がれ、正人の影に触れ影からミルの姿をしたものがキリコの胸を貫き飛び出す。


「カハ… なぜ原初がここに… いや、事前に防犯グッズとは…ここまで過保護な原初とは…」

「本当にミル…何ですか?」

「…」


 血のように赤く身長そのままの原初ミルの姿をしたものが正人の前に何も喋らず立っていた。

 石のように動かない、ただ目の前にいる外敵に向けた視線だけは外さず正人の前から微動だにしない。

 この場にいる皆がそれを見て唖然とする。

 胸を貫かれたキリコは距離をおきミルの姿をしたソレを見ていた。

 これから始まる戦いに向けた前半戦が始まった。

 同時刻、それに気づく者達も集まり向かっていた。

 屋敷内でも使用人達、屋敷の主も現場に向かう。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 久しぶりの続きです、今後も書き換えたりもすると思いますが、なるべく内容は変えたりはしないと思います。

 

 感想を書いてくれると嬉しいです。


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