第四十九話 世界平和(子供の夢)
協会本部内視点。
本当に大嫌いだ。
ミルはフランを掴み地面に投げ叩きつける、叩きつけられた地面はヒビ割れ揺れる結界内。
本当に大嫌いだ。
「どこに隠した…」
「はぁ…お前はどうして、変わらない…姿を変えて変わったと錯覚したか… お前の心は今も幼いのにな」
「何を言っている…! 戯れ言に付き合うほど今の私は正気ではない… 底知れぬ怒りとお前を恨む憎悪で消してしまいそうだ… それを抑え… ここに来たと言うのに… お前は!」
「ふふ、ハハハ! なんだ…分かってるじゃないか」
「く…黙れ、お前が私の何を分かってると言うんだ!」
本当に大嫌いだ。
嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで…。
まるで昔の自分を見ているようだ。
なにも知らない、知っても目を向けられない自分を見ているようで嫌いだ。
だから私はあの怪物から託されたのかもしれない、約束と言う破ってもバレない口約束だったが… この魂がそれを破らせてはくれない。
フランは立ち上がる、体に付いた土ぼこりを払い立ち上がりミルを見てニッコリと笑う。
「何がおかしい…」
「ハハ、おかしくて笑ってるじゃない、君を助けたいから笑うんだミル… おかしいのは君だけだ?」
「黙れ… 黙れ!」
「はぁ… 結果…予想を越えず… 期待してまた堕ちて… だが、約束だ、…ルルとの約束だ…」
「…! 黙れ、キサマがその名を呼ぶな!」
お前はとても幸せ者だなミル… こんなワタシに託すルルの気が知れないが…。
友との約束だ、私は果たそう…この願いを込められた思いを受け継ぎ、託すとしよう記憶と共に… いずれ消える私と共に。
フランは建物を作り替え、宙に浮いているミルを壁と柱を操り掴み下に叩き落とす。
「ぐ…壊せない…」
「当たり前だ、ここではワタシが絶対だ… それすら忘れたか? この建物事態がワタシの肉体と同様と思い出せ…」
「ぐ… 小癪な!」
ミルは瓦礫を吹き飛ばし、自身の影を大きく広げる、音もなく一瞬でフランを掴むため広げる。
建物の外に漏れた質量を持つ影が建物事フランと自分を巻き込み押し潰ぶそうとする。
「それでは、後は任せます…」
そう誰かにフランは言う、見えないはずの魂がゆらりと揺れた気がした。
ゆっくりとした声が「任せなさい我が娘よ」とフランの魂が聞いた。
血がフランの手のひらから流れ瞬きする間も無く流れる激流を作るほど流れ出る。
「どうした、その程度か?」
「うぁぁぁぁぁ!」
影と血がぶつかるがフランの血が押している、足りないと感じたミルは外に漏れた影も集め押し返そうとするが影を押しきりミルにぶつかり血で奥の壁まで流され勢い良くぶつかり壁が砕けるほどへこむ。
壊れた壁や天井は時が巻き戻るように直っていく、破片はサラサラと砂へと変わったものが元の位置に戻っていく。
「どうだ、少しは頭が冷めたか?」
壁にミルを押し付ける。
「ゴク…ゴク」
ミルの方から飲み込む音がする、飲んでいたのはフランの血だった。
「ゴク…ゴク…ゴク」
「やはり正気はなしか… いつものお前ならしない悪手だ…」
フランは血を流し続けて押さえつける。
だが、ミルは血を飲んだからか激流を押し返そうとする、どんどん押し返していく。
「私は、負けない! 必ず助けるんだ眷属を! 私は…見捨てたりはしない!」
「だったらそこで待っていろ、ワタシがお前を殺す前にな」
「… お前は私も殺すのか、やはり…貴様だけは私が殺す!」
「…そうならないことを常に祈っているよ… だから止まってくれミル!」
どんどんとフランに近づくミル、血を押し退け足を踏みしめ近づく。
ドンドン! と足を踏みしめたびに鳴る音を出し裂ける皮膚と肉を壊れるたびに治り慣れた痛みに耐え血の中を押し進む。
進むたびに重くなる流れ、目も治るたびに何度も壊され進む。
信じて進む。
「殺す… 絶対殺す... 貴様だけは殺してやる!」
「…そうだな、だがここまでだミル」
「なん…だと、ぐ…が!?」
手がフランの首にミルの手が触れる直前にフランは血を流すのを止める。
止めた勢いからミルの手はフランの首を閉めたが直ぐに体の硬直とと共に離してしまった。
「…貴様! このような小細工をして…良いわけがない…! 卑怯者…」
そう言いミルは横になり、倒れ眠る。
フランは倒れる胸に倒れてくるミルを支え、後頭部を撫で抱えて歩く。
「卑怯者はお前も同じだ、馬鹿者が…」
本当にワタシはこの原初が大嫌いだ。
幸せになろうと足掻くお前が大嫌いだ、手にしたものを手放せないお前が大嫌いだ、直ぐ下を向くお前が大嫌いだ。
だが、私は約束を守るためお前を守ろう。
「カカカ、いやぁ良いものを見た… 実に涙が出てしまいそうだ…笑いすぎてだが...」
「来たか…」
フランは声のする方を振り返るとフランの胸に剣が刺さる。
「ぐふ…」
肺に入った血を吐く。
剣を投げた者が靴を鳴らし近づく。
コツコツと音を鳴らしゆらゆらと影を揺らし赤い瞳が種族名を相手に伝える。
「血を使いすぎたか原初モドキのモルモット? それでも…死ぬわけがない、死ねないから原初。お前達は吸血鬼から見ても化物だ…。
お前は俺を知っているのか? 知っているって顔だ」
「ふふ、あぁ知っているおまえが今日来ることも知っていたさ。だが…この後の結果はワタシにとっての賭けだ、未来が変わろうとしているが…私が勝つさ」
「なるほど…。妄言… いや違うな、賭けだと… 何に賭けた? 面白そうだ話してみろ…」
「そんな大層なものでもない、子供の見る夢、世界平和だ…。お前は原初の血を集めって何をするつもりだ…?」
「ほう理由か…そこまで知っているのか…。お前が話したんだ俺も話してやろう…。俺の使命だからだ!
古い時代を終わらせ、新しい吸血鬼による世界を創るために必要なんでな!」
「ぐ…ハハハ。そうか聞けて良かった…
実にくだらない…ユメ…だ」
フランの胸に手付け剣を掴み抜きフランを押し、倒れていく。
「ふふ、だが、お前の理想は何も意味はない。ワタシではない外なる意志が邪魔をする限り…神様とでも呼ぶべき存在が…我々の意思を踏みにじるだろうからな。はぁ、ワタシは少し眠る…後は任せた…絶… 影…」
剣に付いた血が渇き消える前に舐める吸血鬼。
フランからミルを奪い、フランも連れていこうとしたがフランは倒れながら自身の影の中に入り影も消える。
「そんなのは知っている…。
カカ、さすがに都合良くはいかないってことか…理想は…だがこれは理想じゃない願いでもない…夢なんて言葉で片付けるつもりもない…聞いているなら覚えてろ…これが俺の使命だって事をな!」
協会本部内でゼルは叫ぶ。
叫ぶ声で建物は揺れる。
「カカカ…覚えとけ…人間共が…」
立ち去ろうとするゼルの元に近づく足音が聞こえる。
だが、それよりもゼルは背後の殺気には気づいてなかったが間一髪のところで避ける。
「心臓はさすがに無理か…首にするんだったな…」
「あっぶ!」
小さく小柄な全身黒く服と肌も黒い見た目少年の人間に奇襲を受ける。
「カカカ…危ねぇな…!! さすがは本部油断も出来ないな…! …おっと、今日は逃げに専念するんだった…」
強者相手の興奮を抑え、煮えたぎる戦闘本能を抑えて結界に空いた穴目掛けて辺りを警戒しながら走る。
「曲者は逃がさない… と言っておこう…うんカッコいいワシ!」
逃げるゼル目掛けて小型の刃物が飛ぶ。
ミルを抱えながら逃げるゼル。
大勢の隊員が出口の結界前を塞ぎ足止めしていた。
「逃がすな、絶対捕まえろ! 絶影卿のため止めろ!」
「おっけー、ないす足止め!」
「…なわけないだろバカが!」
ゼルは懐からガラスの破片を取り出し宙に投げる。
それは浅草でやった戦い方と同じだった。
ガラスの破片と入れ替わり何度も移動し分身しているみたいだった。
「な! 吸血鬼も分身の術を使えた!?」
「エセ忍法だ!」
そう言い追ってきた男が驚いている様子をバカにするように舌を出し片方の目元を指で押さえ挑発する。
「はぁ…」
追っ手は一息吐く間にすべてのガラスの破片を回収しガラスを投げようとするがすでにゼルは結界の外にいた。
投てきするには距離足りず、接近しようと足に力ため腰に納めてた刃物を抜く。
「逃がさないと言ったはずだ!」
「カカカ…俺の勝ちだ!」
そう言いゼルはどこかに移動し刃物が宙を切り姿を消す。
ゼルを逃がした隊員達は結界内から出ず被害状況を調べに走る。
追ってた者は一人結界前で座る。
「はぁ…逃げられた... けどこれで任務完了ですか殿、って今は寝ているんだっけか…」
「絶影卿、報告します。原初様とあのお方との余波で隊員の負傷者10名で死者0名です!」
「りょりょ、りょ! 了解でござる…」
「ふざけてないで次の任務に迎えでござる…」
「あ、神月、お前もふざけてるだろそれ? 楽しんでいるだろ!」
絶影卿と呼ばれた背後から音もなく一人の人形のように美しい女性がたっていた。
座り隊員からの報告を受ける絶影の背後から現れる。
「神月はふざけてないでござる、任務とはいえ手を抜き過ぎなカラの方が…」
「おい神月… 今のワシは絶影だ… 名もなき者絶影だと言うことを忘れたか…神月」
「…! 申し訳ありません…若… この命に変えて償いを…!」
背後に立つ神月と呼ばれる女性は絶影から距離を離して持っていた腹切刀で腹を刺そうとする。
「やめろ…、安心しろ神月、ワシはそこまで怒ってはいない。ワシにはお前が必要だ、いない日など考えぬほどにな…」
「若…」
絶影は、神月の頬を撫で腹に刺そうとした腹切刀を奪い声をかける。
「バカ言う前に任務にいくぞ神月!」
「はい、若の側でこれからもお手伝いさせていただきます…」
「仲がよろしいですねいつも絶影卿」
「ヘシリア卿、なんだワシの見送りか?」
二人に近づき話しかけるヘシリア・ロボス。
「いや、一つあのお方より伝えるように言われてた事がありまして、…原初は見つけ次第殺せ、とフラン様より言伝てを…」
「…ヘシリア卿、それはなんだ...ワシに死ねと言う殿のお言葉か…?」
「いえ、ですが、そう言えと言われましたのでお気をつけを… あのお方はあなたを信じての言葉です絶影卿」
「はは、忍者のワシをか… なら忠義示すだけだなワシは! 失礼ヘシリア卿これより任務ゆえ…」
そう言いドロンと絶影は神月と共に消える。
「さて、賭けは勝つか負けるか… 降りるか降ろされるか… 破滅するのはどっちか… すでに賽は投げられた… このゲームは誰も降りることは許されない… 誰一人欠ける事が許されない…」
絶影を見送り、ヘシリアは空を見る、毎日晴れた空を外に出れば曇り空と雨が降るかもしれない空を眺め光の眩しさに手で光を遮り空を見る。
「だが、勝つ我らが信じるあのお方なら必ず勝つ…私たちはただそれを信じていれば良い…盲信でも良い、世界平和の柱となれるなら… この命を燃やすべき日もいつか来るだろう…」
ヘシリアは歩いてフランの部屋に向かう。
コンコンとノックをする。
扉は開き今日の世話係の当番の隊員が開ける。
「まだ、寝ているのですか?」
「いえ、先ほど目を覚ましました…」
部屋に入り、フランと目が合う。
「どうだ、ヘシリア卿。ヤツは上手く逃げたか?」
「はい、今頃仲間と会っている頃でしょう…」
「そうだな… ヘシリア卿はワタシを信じてくれるか… 愚策かもしれないこの策を考え命令した私を…」
「信じますよ、世界平和の礎となれるとあなた様が言ったあの日から私はあなた様を信じています…」
「すまない、少しアイツに会って不安になっていたようだ… まだ少し寝る…一時間後にまた起こしてくれ…」
「は、はい!」
「では、私は私の任に戻ります… それとこの事は秘密ですよお嬢さん?」
「あ、はい! 誰にも言いません、ですから… お命だけはご勘弁をヘシリア卿!」
当番の隊員にそう言い布団にくるまり深い眠りにつくフランを見てヘシリアはゆっくりと扉を閉じ部屋を出る。
足はそのまま結界の外に戻り、割れた結界の警護をする、ゆっくりと直っていく結界が元に戻るまで立って守る。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
何でここにな吸血鬼となんか知らない人達が出たなって感じですね。
絶影とか中ニかよ、と思いましたが一応幹部です。
フランの手のひら感出してみましたが出しきれるか私にも分かりません。
神月かみづきです、なんかいきなり日本?とか思われてるのでしょうか、一応幹部の部下です特別枠みたいな部下です。
協会本部は自然に直りますので結界は時間がかかりますが直ります。
そしてフランは疲れて寝ました。
コロコロ視点が変わり大変ですみません。
まとめて書いているとドンドンアイデアが溢れてきて書いてしまいました。
感想待ってます、いつも待ってます一番に待ってます。
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