第四十八話 変えれない場所:帰りたい場所
ミル視点。
サラサラと砂が流れる音がする。
カチコチと鳴る音もする。
ケラケラと笑う声が、した気がしたが笑っていたは私の声…私自身だった。
知らない部屋の中で目を覚ます、いや知っている。私が忘れていただけで知っている。
ここは、心…ここは夢…ここは私の死に場所だ。
記憶が作りし創造物の中だ。
鍵穴も大きな扉も何も無い広く殺風景な部屋。以前は沢山おかれていた物も全てゴミ箱に捨てた。手に持てる範囲に絞って自身を護っていた。
ここはそれでも分からない、何処だここは、何が可笑しい。
分からない…ワカラナイ。
もう、ナニモ、ワカラナイ。
「ふふ、愛しきお方マイ・フェア・レディ… 今宵の演目の主役はあなた様です…」
コツコツと歩く音が壁の外から聞こえる。
私の知らない声が聞こえる。記憶にもない、警戒するはずだった。
「あなた様以上にこの舞台に似合うお方はいない、小生が知る限りあなた様以上にいない…」
「私に似合う舞台…」
知らない声は私に言う。
「そうです… あなた様が落ちる地獄はここではありません…もっと躍り狂いましょう、皆に見て貰いましょう…観客席が埋まるくらい殺戮に踊りましょう…」
「そうだ...ここは寂しい… 一人は嫌だ…誰もいない、探しに行かなくちゃマサトを…」
誰かが私に囁く、「解放せよ」と。
力のまま暴れろと…。
「ふふ、…はぁ、いよいよ小生の劇は開演! 席は未だ空いておりますので焦らずお入りください、皆様のあっと驚き泣いて笑い驚きのラストな劇が...今開演いたしますので…」
手を取り踊ろう、このステージの上で、躍り続けよう、踊る手を止めずに躍り続けよう。
響くオーケストラのリズムに乗り、腰に手を添え手を取り踊ろう。
煌びやかなステージの上で糸を垂らされ躍り続けて貰おう。
愛する者の顔を思い浮かべ…。
「さぁ、行きましょうかレディ…」
「そうだな…迎えに行かなくちゃ… 一人は寂しいから… 眷属も寂しがってるから行かなくちゃ…ふふ」
豪華な装飾の服も城も宝石も初めからいらない。
たとえ変えれないとしても帰る場所さえあれば良かったから。
眠りから覚めたミル達は屋敷を出る。
誰も連れずに知らない男と友達のように歩き去ろうとする。
去ろうとする二人に追い付く目を覚ました者達が屋敷から窓や扉から飛び出し二人に追い付く。
それに気付き振り向く二人。
「お待ちを姫様! どちらに向かわれるのですか!」
「…。ダレダ…ワタシノジャマヲスルナ!」
「誰だお前は! 姫様に何をした!」
「小生はしがない演者にして脚本家… 小生の脚本に貴方達は不要ですので消えてください...そうですよねレディ?」
「ジャマヲ…ジャマ…ジャマヲスルナ!」
正気ではないミル、不適に笑む男がミル耳に囁き伝える、「消せ」と言う。
「ぐ…!」
「消えろ…キエロ…」
ミルの影が動く、生き物のように広がり辺りを侵食するように影は追ってきたビクター達の元に伸びて広がる。
足を取られ金縛りのように動けなくなるビクター達。
動けない者達にゆっくりとフラフラと体と頭を揺らし目を紅く光らせ近づく。
手には剣を持ちユラフラと近づく。
「正気を…! 目をお覚ましください姫様!」
「どうか、お覚ましください!」
「ミル様、どうか正気に!」
「ウルサイ…ウルサイ…うるさい、うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい…うるさい!」
剣を握り飛び込んで来るミル、もはやここまでかと思うビクター達。
「おい、バカミル! お前、原初になってすることがこれで良いのかよ! 消えたルル様に顔向け出きるのか!」
「…! あ、あぁ… ウルサイ…ルルは死んだ…。だから…ワタシが…。あ、あぁーーー!」
剣はビクターの胸を貫く前に止まる、ハッシュの言葉を聞きミルはひどく動揺する。
頭を抱え、持っていた剣を落とし影が戻っていく、動けるようになった者達が侵入者の男を襲うが…。
ミルが立てるように手を貸そうと手を出すが振り払れ片手を切られる。
そのまま後ろに後退し男の横に立つ。
「ぐ…! 姫様…なぜ!?」
「…! やめろ! 私を姫と呼ぶな、私はそんな名前じゃない…! ミルだ! 私はミルだぁ!」
頭を片手を当てながらも手を振り払う風圧で押し返す。
吹き飛ばされ気を失う者、武器を取り元凶であろう男を殺そうとする者達がいたが、男が指をパチンと鳴らす。
「ふふ、消すつもりでしたが…良いことを思いつきました… 小生の劇はまだ誰も知らない、あなた方には宣伝役となっていただきましょう… この事を知らせなさい人間達でも、あの協会の連中にでも…」
「早く…行かないと…ここは苦しい… 私がいちゃいけない場所だ…」
「えぇ、レディを待たせてはいけない… お迎えに行きましょうか」
後ろを向き去ろうとする男に剣を投げるビクター。
「ぐ…! 待て!」
「ロンドン橋落ちた...落ちた落ちた...♪」
剣は男を貫くが…。
「な!」
風船のようミルも一緒に割れて消える。
消える前にビクター達を見て被っていた帽子を下げニコリと笑い消える。
「マイ・フェア・レディ…♪」
「はぁはぁ…これはいけない…直ぐに辺りを探せ! まだ近くにいるかもしれない!」
「ち…ちくしょう!」
「ハッシュ、お前は後で話がある…」
「え…」
「だが、お前のお陰で一瞬姫様が正気に戻った気がした、良くやったが…その事の話で後で教育し直しだ…」
「ぐ…マジすか…」
屋敷の者達は森を周辺の町を隙間無く探しに向かう。
「ふ~ん、ふふ♪」
一方屋敷を去ったミルと男達は飛行機に乗り目的地に向かう。
「まずは…邪魔なやつらに宣戦布告と行きましょうか…レディ?」
「なぜだ…? …日本に戻ろう…帰ろう… じゃないと会えない」
「いいえ、日本には戻りません…小生の知り得た情報によりますと協会の本部にあなた様の眷属様がいるそうですよ…?」
「そうか…だがなぜそこに…」
「はて、小生にも分かりませんので。ですが…もしかしたら…消すつもりなのかもですね、あなた様がいない間に…」
「…。やつらが…? そうか、やっぱりそうか…そうなるのか…騙してたのか…急ぎ向かおう…」
「はい、ですが今はお休みを万全で協会を潰しに向かいましょう…」
「そうだな…やつは強い…今は休もう…」
そう言いミルは目をつむり眠る。
海のそこに深くまで沈む鯨のように動かず眠る。
「ふふ、さて…まだ調整が必要ですか…」
ミルの頭を撫で影に触れ術を調整する男。
「楽しい演目には宣伝のパレード… 花火を打ち上げ盛り上げなくては…」
二人が協会本部に着いたのは翌日の昼頃だが、前日の夜に一機の飛行機がイギリスの上空で爆破し空港に墜落したとニュースになりました。
二人はロンドンの空港でその様子を眺めた。
「きれい…」
「たーまやー、でしたっけ日本では…?」
「知らない…急ぎましょうか…」
「はい」
「ぐ…」
「どうかしましたか?」
「いえ...空港に着いてから調子が悪くて…気分が…」
「大丈夫ですよ、きっと気負いすぎたんです、休みながら行きましょうか…」
「うん…」
二人は空港を去りタクシーに乗りロンドン市街のホテルに向かい休み、翌日またタクシーとバスを乗り継ぎ目的地に向かう。
タクシー内で男の携帯が鳴る。
「だれだこんな時に...、はい?」
『お守りは順調かキルコ…?』
「はぁ...何ですかゼルですか…今本部に向かうところです。既に敵の本拠地なので連絡は控えるよう言ったはずですが… 何か?」
『ハハ、固いこと言うなよ、仲間が敵地に居るんなら心配もするだろ…生きて帰ってこいよ…』
「はぁ...それ、今の世では死亡フラグになり得るので聞かなかった事にしますので…。だけど安心してください小生に死の文字はありません...では」
『そうか…フッ』
電話は切られ、目的地の本部のあるロンドン郊外に向かう。
「仲間か…?」
「聞いてたんですか…? そうですね…長い付き合いの仲間からの電話です…」
「そうか…お前にはいるのか仲間が…」
「ふふ、大丈夫ですよ今は小生があなた様の仲間ですから…」
「そうか…ありがとう」
やがて空港を過ぎ、市街を過ぎ何も無い郊外の田舎に着く。
「はぁ...タクシー代があれほどかかるとは…さすがは観光地ですね… そして、ここですか…」
「そう、この誰もいない郊外に本部はある…」
「さすがは原初様…お詳しい」
少し歩くいたところに一軒家の綺麗な家がある、こんな田舎にポツンと建っている家だが人の気配はしない。
「ここだ…」
「…? ただの家に見えますが…本当にあれが?」
「良く見ていろ…」
ミルは剣を作り家から50メートルほど離れた位置から剣を振り何も無い空間を切る。
振る剣はまるで何かにぶつかったように動かなくなり、ミルはそこからさらに力を加える。
「以前より固い… それと…ここからマサトの匂いがする…ハァ!」
剣は空間にヒビを入れ切り裂き、見えてた家よりも大きな建造物が、城と教会を合わせたような作りの建造物が建っていた。
「ふふ、ついに見つけた…ですが小生には他に仕事が…さぁ、原初よ存分に踊ってきてください!」
「スゥハァ…やはりここにいるのか…匂いが強くなる…」
「ふふ…」
男はミルを置いてこの場を去りロンドン市街に向かう。
「お次は御嬢さん方をお二人でしたか…」
ミルは切り裂いた結界の間を通り協会内に入っていく。
門はミルの到着を知ってたか勝手に開く、中には誰もいない。
気配で分かる、人はいるが協会本部の離れの建物に隠れていることが、奇襲しに来るかと考えたが、ただ隠れているようだった。
「ふふ、ようこそミル…そして無様だ、君とは本当に…会いたくなかったよ…本当に心底会いたくもないのに、予定どおりに来るとは…」
「…お前に用は無い、さっさと返せいるのだろうマサトが...私の眷属が…! 返せ!」
「…本当に呑まれたのか… 原初の名は飾りかな? 君の血となった者が泣いているんじゃないか?」
扉は勝手に閉じる、建物内にはフランとミルの二人だけだった。
フラン歩きミルに近づく、一歩、歩く度に建物内は形を変え広々とした空間に変わっていく。
まるで手足のように自由に変えていく。
「以前も言ったけど君のことが心底嫌いだよ… 何で君はこの程度の術を解けないほど弱いのに、眷属を作ったの? バカの君の事がワタシには分からない… 本当に分からないから教えてくれ」
「…うるさい、私を騙すのかお前も騙すのか…隠しているのならさっさと返せ…!」
「…聞く耳もたずか… なら、遠慮せず君を殴るとしよう、返す云々はその後だ…。
ホイ」
突如空から月が落ち来る。
ミルとフランに引き付けられるように真っ直ぐと落ち来る。
フランの作った結界内の偽物の空の先にある再現された偽物の宇宙から落ちてくる。
「手始めに、これくらいはしなくちゃ…ね?」
「ハァ…邪魔だ」
息を入れ飛び上がり月を殴り砕く。
砕けた月は爆発したが瓦礫はミルを包み身動きを顔だけを出した状態で封じ元の形に戻る。
「少し頭を冷してもらうまで君を殴るよ…大バカ者が!」
「ぐ…黙れ! またも私の幸せを奪うのか…消すのか…やはりお前だけは…!」
叫ぶミルは月から這い出てフランに飛びかかる。
フランも飛び上がりミルに近づく。
月が砕けた音が決戦の合図となった。
「許さん!!!」
勢い良く、月を足場に蹴り砕きフランに向かい殴りに向かう。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
一応強い二人の戦いを書いてみました。
あまり原初の強さを書いてなかったので少しでもコイツやベーと思わせられたらと思います。
さすがにチート能力系作品に負けるかもですが…。
そして、良く狙われますねあの二人は...。
少し本部の補足をすると、本部は結界で覆われ結界内は外と断絶されています。
つまり普通は触れない結界ですね、その結界内ではフランが優勢になります、イメージは固有結界や領域展開です。
無限に創造できるフランの空間です。建物もフランお手製です。
結界内には学校もあり、魔術の勉強や戦闘訓練や一般科目の勉強が出来ますという設定も考えています。
今後でるかは分かりません。
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