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第四十四話 さらば第三基地!

 日が暮れ夜となる。

 明かりもない夜なのに眼は暗闇でも良く見えていた。

 夜の闇の中でも空に浮かぶ月の明かりが眩しく感じるほどだった。

 今日に限って雲一つ無い夜空だった。

 キラキラと細かな星が綺麗で…以前ミルと見た夜空を思い出す。

 ミルもどこかでこの空を見ているのだろうか…。

 冷えてか震える体。

 地面で無作法に寝る一六(じゅむ)さん…。

 先程まで薙だったと言われてもこれはさすがに納得は出来そうにもない。

 詳しい説明がないため帰ったら薙にでも聞いてみよう…。


「…。火の用意しますね」

「あ、手伝います…」

「なら瓦礫の上で死んでいる竜の肉から骨を取り出すのを手伝ってもらいます」


 そう言いヒシリアは竜の方を見て指を指す。


「竜の骨…ですか?」

「はい、竜の骨は良く燃えるので焚き火の燃料にしましょう… 夜は冷えるので」

「そうなんですね…」


 お互いその場で立ち上がり眠る一六を置いて瓦礫の上で死んだ竜の方に歩く。


「私が肉を切るので正人さんは肉から骨を引き剥がしてください」

「分かりました…」


 ヒシリアは持っていた剣とは別でナイフを取り出すと持っていた剣と共に器用に竜の鱗と皮と肉を骨から剥がしていく。

 正人はヒシリアの後を追い竜の大きな骨を掴み力一杯肉から引き剥がす。


「ふんぬぅわ!」

「最悪、骨は折れても良いので気にせず力一杯お願いします」


 ヒシリアはどんどん半分に切られた竜の解体を進めるとある程度終わると止まり竜の心臓を正人が骨を引き剥がすのに気を取られている間に(ふところ)にしまう。


「…。はい、そのくらいで大丈夫です… さすがに肉は食べられないのでここで燃やしていきますので離れていてください」

「あ、はい…」


 引き剥がした竜の骨の一部を引きずりながら持ち瓦礫から離れると、ヒシリアの魔術か、竜の巨体は燃える。

 まるで鳥の丸焼きみたいだった。

 この場合竜の丸焼きだろうか…異世界料理でありそうだ…。


「証拠隠滅と… では戻りますか」


 まだ燃える竜を背に一六の元に戻る。

 その後骨を小枝くらい細くヒシリアが切ると焚き火の形に組み魔術で燃やす。

 先程の竜ほどではなかったが、とても暖かでパチパチと骨についた油だろうか弾ける音がお腹を空かせる。

 匂いも美味しそうで…。


 ぐ~、と僕でもヒシリアでもない一六のお腹が鳴る。


「へぇ!?」

「ん?」


 視線を一六の方に向けるとどうやら少し前に目が覚めていたのかお腹を押さえる一六の姿があった。


「起きてたんですか…?」

「す、すみません! 焼き肉の匂いにつられて目が覚めてしまい…!?」

「…。何か食べられるものがあると良かったのですが… 今は何も無く…」

「ワガハイ、こういう時のための非常食ならありますので正人殿もたべますか?」

「…。ヒシリアさんはお腹は空いてないですか?」

「いえ、私は鍛えているのでこういうのには慣れているので... 食料はお二人でお食べください」

「では、正人殿これを!」


 そう言い一六は小さく丸まったビー玉サイズの玉を渡してきた。


「これは?」

「ふふふ、これは兵糧丸(ひょうろうがん)です正人殿! 江戸時代の携帯保存食で… 本家の味は現代人たる我々の舌には合わないのでワガハイ、オリジナルの兵糧丸ですぞ!」

「へぇー…」

「これ一粒で腹は満たされませんが、腹持ちは良いので良く噛んでから飲み込んでくだされ! 多少は腹もふくれましょう!」

「そうなんですか…ゴクリ。いただきます…」


 考えていても腹が空く気持ちは変えられないので今さら味とか気にせず口に放り込み歯で噛む。

 噛んでいて多少不味いのではと思っていたが案外美味しく固さはあれど和を感じられる美味しさだった。


「ん、ん、美味しいです」

「ふふふ我が研究の成果です! 趣味の副産物ですが役に立てて良かったですぞ!」


 噛んでいくうちに兵糧丸は無くなり自然と腹に入っていくと満たされはしないが一粒でそれなりにお腹に溜まった感じがする。


「ごちそうさまでした…」


 焚き火で暖をとりながら朝を待つ。

 途中ウトウトしているとヒシリアから…。


「見張りは私がするので正人さんは寝ていてください」


 と言われたが… 睡魔が来ようと今は寝る気にはならなかったが… こういう時にミルはおとなしく寝ていろと言うと思い目を閉じ横になると自然と寝れた。


 朝になり、一六に起こされると騒音と共に乗ってきた物とは別の飛行機が掃除された滑走路に着陸していた。


「…。ではお乗りください」


 ヒシリアに着いていく形で僕だけが日本に帰るのか…。

 寝ぼける頭と朝の憂鬱さからネガティブになり頭が痛い。

 今すぐ帰ることが先決なのか… 本当にそれが正しい事なのか… 手掛かりは無いけど今すぐミルを探しに漠然とそう思えてくる。

 いつものなら側で手を握るミルは今はいない。

 なぜ消えたのか… これも吸血鬼の仕業と分かっているからこそ… 守れなかった結果に僕は絶望する。

 調子に乗っていた自身がより嫌いになる。

 身を引き裂かんとばかりのミルを拐った吸血鬼に対する怒りと憎悪で気が狂いそうだが… 僕の無力感が勝り、心を痛める。

 飛行機の席に着き、シートベルトを締めると飛行機の入り口は閉まり、飛行機は揺れ勢い良く飛ぶ。


 帰っても本当に良いのか分からない…。

 一眠りすれば落ち着くと思ったが以前変わらず憂鬱さが心を飲み込む。


「…ぐ!」


 誰を殴ろうとしているのか、拳を固め椅子を叩こうと思ったが止め、直ぐ元の状態に手を戻し、外を眺める。


「…。お水いります?」

「え…あ、ありがとうございます…」


 ヒシリアが、水を持ってきてくれた。

 紙コップに入った水を手渡してくる。


「なにやら思い詰めているようですが… 私で良ければ相談にのりますよ?」

「…いや…その」

「話したください、話すだけでも...気は楽になりますよ? それとも…良く知りもしない私には話しずらい事ですか?」

「いえ…。その、ヒシリアさんは…。くっ…! 貴方には好きな人は居ますか… 家族でも良いので…大事に想っている…相手はいますか?」

「ぶっ!」と勢い良く飲んでいた珈琲を吹き出しテーブルと自身の服を拭くヒシリア。

 正人にはかかることはなかった。


「あーすみません…まさか色恋話とは思わず...え? 家族も含めてと言うなら… 居ますね、はい」

「…。もし、家族がある日消えて...どうしようもない思いから探しても見つからず… 日々に絶望して居たとして… たまたま出会った人に心が救われたとします… その人を助けたいと思っていたのに…何の役にもたってないままその人も消えたらヒシリアさんはどうしますか… 僕には今の僕がどうしたら良いか分からないんです... 何でこんなに苦しいのか… その人を見つけられるかどうか…」


 頭を抱えて泣きそうな声で話す正人。

 だが、そんな事かとヒシリアは正人の方を見て言う。


「苦しいのですか? 失った悲しみから来る寂しさですか…。なら簡単ですね、取り返しに行けば良いんです! 簡単です敵地に乗り込み殺して奪い返すそれだけですよマサトさん!」

(何だよそれ…)

「やっぱ聞いてた通り頭のおかしい人ばかりですか…協会本部の隊員も… ロビックも...ヒューズさんもみんな頭の可笑しなやつらばっかりだ… ヒシリアさん、あなたは例外ではないのですか… 僕は、今も! …心が張り裂けんばかりに苦しいのに救ってはくれないのですか…」

「救うですか… 私は神では無いので、あなたを救うことはできません、今のマサトさんが変わらない限り、心から変わりたいと思わない限り… 私にはあなたを救うことはできません難しいことです。優しさから来る同情を望むなら私はあなたの頬を叩き目を覚まさせます、理解させます今するべき行動を…。言葉は今のあなたを写す鏡となり、苦しいから救えと言うあなたの言葉は軽く...。今聞いた私ではない誰かの心を傷付けるだけです、救えませんよそんな人誰も…」

「…。すみません、冷静さが欠けた発言でした… 本気ではないんです… けどすみませんでした」

「良いんです、あなたを救えない私の至らない対応がマサトさんを焦らせてしまった… それだけ焦る気持ちも分かります」

「…あの、もし…ロビックが…もし何かミルの事を話したら僕にも教えてください…」

「そうですね。…水飲まないのですか? 手が震えている、緊張していると喉が渇きますよね?」

「あ… いただきます」


 正人は紙のコップに入った水を一口飲む。


「さっきの質問のですが... すみません、アイツの事を話すことは約束できません… 組織は秘密厳守が基本ですので、仮にロビックが原初の事を話したとしてそれはこちらで片付けるので… 正人さんはおとなしく寝ていてください…ね?」


 ヒシリアがそう言い終えるとタイミングを合わせたみたいに正人の視界はくらりと回り、体に重い倦怠感と眠気が襲う。


「ぐ! 何が... まさか水に…ヒシ… 貴方は…!」

「はい、お連れ様の方にも睡眠薬を飲ませましたので暫く目は覚めないでしょう吸血鬼には普通効かない薬も貴方には効く…。すみません、急遽正人さんが寝ている間に決まった事だったので…寝てもらい貴方だけを本部に連れていきます…」

「ぐ…! ん…」

「では…おやすみなさい…夢だけでも良い夢を見られると良いですね…」


 珈琲を一口飲むと席を立つヒシリア。別室で拘束しているロビックの見張りに戻る。

 なぜ子供姿なのかを知るためロビックに聞きに行くためでもあった。


 その後、正人の視界は閉じ深い眠りにつく。

 ポカポカと全身が暖かに感じるほど睡魔が正人の意識を閉じさせた。

 正人達を乗せた飛行機は協会の本部があるイギリスのイングランド地方に向かっていた。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 たぶん次が新章だと思います。

 気分しだいで変わるかもですが…。

 たぶんヒシリアさんは悪い人ではないと思います。

 ロビックは鎖に繋がれ縛られて別室で、ヴァンはヒシリアの影の中にいます。

 ヴァンはベースが狼の吸血鬼です。

 本部は迷った結果イギリスにしました~!なんかすごくファンタジーな雰囲気が良いかなと。


 感想待ってます。

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