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第四十三話 消えた吸血鬼

 何でヒューズは…。


 頭が痛い…。

沸騰してしまいそうなほど熱と頭痛で頭が割れてポップコーンみたいに弾けてしまいそうだ…。


「あ…ぐぅぁ…ぐぅ…!」


 僕はその場で腹を押さえて丸まりながら膝を付き腹から来る吐き気を我慢することしか出来ない。

 辺りに飛び散る内蔵などの肉片と嗅ぎ慣れた血の匂いがどこか食欲を刺激してくるが、それが余計に吐き気に変わる。

 呼吸を止めたら苦しいのは当たり前だが、パニックだからか口と鼻で呼吸することを止められない。

 グッと腹と口を押さえては先程から来るヒューズへの疑問が溢れて吐き出したくても相手がいない事に怒りと悲しみから思考はより混乱する。


「くぐ…くそ…!」


 まだ短い付き合いだったが、娘さんがいるヒューズからは娘を、家族を愛することは十分伝わってきた。

 部屋に来る度に娘と手を繋ぎ常に部屋で遊ぶ娘を見続け時に一緒に遊んでいたヒューズが何故…。

 そう考えてもヒューズのことなんて何も知らない。

 あんな死にかたを選んだ理由も娘と共に死んだ理由も知ることが出来ない。

 分からない...分からない。


「分からないんだよ…!」


 どうしてこんなに僕は怒っている…悲しいのは分かるけど、恨んでいないはずだ、なのに何でヒューズへの怒りを感じているんだ僕は...。

 死んだ理由はヒューズしか知らないが僕が怒る理由が分からないのがより怖くなる。

 情緒(じょうちょ)が、今僕がどんな顔でとかこの感情のままミル達の元に戻って良いのか…分からない。

 この場から逃げたかったが、僕は座り込むことを反射的に選んだ自分自身の行動も分からない。

 見たくもないものに蓋をするように視界を下を向き口と鼻を手で押さえ吐き気を押し殺すように腹を押さえてただこの苦しみを耐えることしか今の僕には分からないんだ…。

 だけど… あんな爽やかな笑顔で人は死ねるものなのか…ヒューズは最後は僕に謝っていたがボタンを押すまで笑顔で娘と手を繋いでいた。

 その理由だけは分かる。

 未練無く安心して死ぬ人の顔だと。

 小さい時に見た、死んだ祖父母の顔だった…。

 それだけしか分からなかった…彼のことは…。


 うずくまり下を見る正人に近づく足音が聞こえる。

 僕に近づく誰かの、きっとミルかルーナ達だろうと足音のする背後をうずくまりながらも振り返る。

 今の顔を知り合いに見られるのは恥ずかしいが反射的に誰か確認していた。


「んあ?…誰だおめぇ、モルモットの生き残りか?」

「え…? 犬?」


 背後に居たのはミルでもルーナ達でもなく人間の言葉を話す犬だった。


「ふんふん… 一応吸血鬼だよなぁおめぇさんは…?」


 正人に近づき匂いを嗅ぐ。


「…! わぁ! 犬が喋った!?」

「犬じゃねぇ! 狼様だ」

「狼が喋った…」

「ふんすん…吸血鬼なら…」


 そう言い終えると狼は体から鎖が飛び出す。血で出来た鎖は宙を舞い正人の体を拘束する。


「ぐ!? な、まさか吸血鬼!」


 匂いや喋る動物と言う点で感じた部分もあったが、視界に納めた時の威圧と今までの経験から来る危機感から狼が吸血鬼だと確信する。


「とりあえず坊っちゃんに報告だな…」

「何でここに吸血鬼が! まさか原初を狙って!?」

「はぁ… あんなチビの力なんて俺には要らねぇ… そんなことするのは原初の後釜を狙うバカどものやることだ」

「ぐぐ…ぐぅ!」


 当然だが、抵抗しようと鎖は千切れずほどけなかった。


「あー…。とりあえず… お前は連れて報告だな。クソおやじの捜索はその後で… ほら立って歩け」

「」


 鎖を引かれたと思い立ち上がると狼は人間の男の姿に変わっていた。

 

「はあ…!?」

「なんだ? 人間の姿の俺は驚くほどかっこいいか?」


 狼の毛は服に変わり、骨格は狼のものから完全に人間のものに変わる事に驚く。

 まさか、吸血鬼ではなく狼男かと思ったがまだ太陽は出ているためそれはない。

 狼から来る獣臭さは元から無いが、何故か人間に変わった途端にお香だろうかそんな匂いがする。

 鎖は男の手から伸び僕を縛り無理やり歩かせる。

 抵抗することはすぐ諦め、男に着いていく。

 あの場に留まっていた僕にとっては少しありがたくもあったが、何でここに吸血鬼が…。

 ヒューズ達の血の匂いは次第に離れ男はミル達が集まり座る場に連れていく。

 ミルの目の前に座る男が居たが身を覚えは当然無いが、その場に座るミルと何か話しているようすだった。


「……ですから私たちは…」

「坊っちゃん報告だ、吸血鬼一人見つけたぜ…

てどうした眉間にシワがよって怖い顔だぞ…?」

「… ヴァンいいからその男の拘束を解け… 死にたくなかったらな…」


 鎖はすぐ消え鎖だったものはヴァンと男から言われていた元に血となりヴァンに還っていく。


「…。報告はそれだけなら責任者をさっさと見つけここに今すぐ連れてこい… 行け」

「はいはいっと…」


 ヴァンは再び狼へと変わり瓦礫だらけの基地から死んだはずのロビックを探しに行く。


「それで、姫様達がなぜ第三基地についてでしたが… 日本基地がまさか吸血鬼二匹を保護していたとは…」


 男はルーナ達に視界を移す。

 ビクとルーナ達は体を震わせたが、すぐさまミルが威嚇からわざと咳をする。


「ん、ん! 私達の事は話したが… 今さら貴様達が来た理由など知らなくても良い… 早く日本基地に帰せ」

「すみませんがそれはまだ出来ません、私が乗ってきた飛行機は操縦士含めて全員乗れますが、日本に帰るのだと距離が届かず…迎えの飛行機を呼ぶのでお待ちください」

「そうか…」


 何かと焦っていたが、帰れると聞き安堵するミル。


 スマホを取り出し誰かと電話する男。


「はい、そうです… ロビック個人で勝手にしたことらしいですので… はい、ですので迎えの飛行機の手配を… はい、了解です」


 電話を切りスマホをしまう。


「迎えは半日後に来ますのでそれまで休憩を...」

「… そうか…」


 そう言い男は崩れた瓦礫の上で体が二つに別れたロビックドラゴンの死体の方に向かう。

 男はロビックの血液と肉を一部切り取ると容器に入れ入り口を塞ぎ(ふところ)にしまう。


 僕はただミルの側で座ることしか出来なかった。

 基地に来てもう終わった事と考えヒューズの事を忘れようとするが何度もあの最後がフラッシュバックしては手が震えた。


「大丈夫かマサト… 手が震えているぞ」


 心配するミル。


「…。あのミル…!」


 そう僕が口に出した時、空はいきなり暗くなる。

 何事かと空を見上げると隕石かと思うほど大きな岩が空から落ちてくる。

 大きさから大体だがこの基地を押し潰せるほど大きさに思える。

 皆一同空の変化を感じてか空を見上げて驚いたいる。

 ミルは一人あの岩を壊そうと踏み込んだ瞬間、僕が逃げようとミルの腕を掴もうとミルを見て一回まばたきをした瞬間に一瞬見えた黒い影が見えたと思った瞬間、ミルはその場から消えていた。

 あまりの速さに消えたのかと思えたが、その場にいたはずの一六(じゅむ)を置いてルーナ達も消えていた。


「…! な!」


 あまりの一瞬の出来事から状況を理解できない。

 一六は驚きから岩に気を取られていた一瞬の間に消えた三人を探す。


「消えたってことは… まさか三名は神隠しに!?」

「ミル! ミル!? 何処ですミル!!?」


 焦りからか思考はミルの事でいっぱいになる。

 まさか、吸血鬼達の仕業!?

 だけど吸血鬼あの狼以外なんて何処にも...。


 辺りを見渡しミルと拐ったと思われる吸血鬼を探す。

 岩が落ちてくる状況もあり焦りが全身を震わせる。


「ミル! ミル!?」


 ただ探しながら名前を叫ぶ。

 だが、それらしき吸血鬼もミルも見つけることが出来ずにいるとロビックの死体の方にいた男が正人に近寄って来る。

 手には男の武器である剣が握り近づく。


「…。まさかお前か? この状況を作ったヤツは…」

「何を言っているんですか! それよりもミルが消えたんです探すのを手伝ってください」

「…! そうか…。原初を探す必要なんて無い」

「そんなわけ無いだろ! 消えたんだぞ原初(ミル)が!」


 男は正人の話を聞く耳もたず、その場で高く飛び上がると岩に向かって剣を突き刺す。


「アイツ本当に人間かよ…」



 それがミル達をどう見つけるのかと思ったが、男が刺した岩は岩と思えない音で風船が割れる音が聞こえパーン! と派手に破裂する。


「はあ!?」

「これは吸血鬼が作った幻覚だ… 気づけゴミ虫…」

「え? 今薙の声が…」

「ここだ…」

「え… 一六さん?」

「そうだな… 今は16号を依代にしているが…

話している暇はない… すぐに戦闘態勢だ!」

「は、はい!」

「これを使え…」

「どうも…」


 薙の声がする一六に戦闘態勢と大声で言われ体は薙の訓練の時と同じで木刀は無いが一六から渡された刀を構える。

 一六も持ってきた二本目を構えて何もない空間を切ると刀は停止する。


「ぐっ… どうしてバレた…!」

「…! ルーナ、シーナ!」


 眠っているのか気絶しているからか無抵抗に背負われた二人と二人を背負う吸血鬼二人と一六の刀を受け止める吸血鬼と他含めて三人いた。


「…ならミルも!」


 そう思い三人の吸血鬼を見たがミルはいなかった。

 だけど、ルーナ達も助けなくては…。


「おい、お前は女の吸血鬼を背負っている方を殺れ…!」

「分かった…」


 今さら殺す覚悟なんてやっている暇は無い。

 そもそも今度殺されるのは僕かも知れない…。

 せめて二人だけでも助けなくては…。


「…! おいゲートはまだか!?」

「待ってください… 向こうとの連携がまだ…」

「く… お嬢様達は任せた… 誘拐犯は俺が殺る…!」

「ちょ、先輩!? 装備置いてきてるんですよ!? 協会相手に素手って… 無茶です!」

「うるさい、お前は…死んでもお嬢様を逃がすためのゲートに集中しろ! じゃないと俺が殺すぞ!」


「くるぞ!」と十六は言う。


 こちらに向かって血の弾丸だろうか、赤い玉が飛んでくる。

 それを刀で払いながらも前に走りこちらに来る吸血鬼との距離が縮まる。


「ぬ!」

「ぐ…!」


 互いの刀と拳がぶつかる。

 相手は素手とはいえ、刀を弾くほど丈夫であり、人間ではない事がより分かる… 知って浅いけど、今まで会ったどの吸血鬼とも違う… 僕と同じ…人間にも近い気配がする…。


 ミルが居なくなった焦りからか刀に余計に力が入り震える刀。


「この…誘拐犯ごときが...」

「誘拐犯はそっちだろ! ミルは…原初は何処だ!」

「原初など知らん…! 拐っていたとしてお前みたいな誘拐犯に話すことはない」

「…! なら…ルーナ達を返せぇ!」

「ぐ…黙れ下郎が! お前らがお嬢様達の名を呼ぶなぁ…!」


 吸血鬼からの攻撃はより激しくなる。

 時折挟む血の弾丸も払いながらも拳の連打がさばけなくなる。

 躱すのも限界だが、同時に相手も焦ってか一瞬の隙を見つける。

 だが、連打の一瞬ある血の弾丸を撃つ間の隙だ。

 僕の実力なら一度だけのチャンスとも言える。

 二度目は無い。


「死ね、誘拐犯!」

「…!」


 慎重にタイミングを合わせ… 今だ!。


「…!」

「な!」


 ギリギリまで近づき待ち、出した刀での心臓目掛けた突きは躱され吸血鬼の腕を切るだけだった。


「…! マズイ…!」


 カウンターと言わんばかりに吸血鬼は血の弾丸を僕の心臓目掛けて撃とうとする。

 マズイ、死ぬ!。

 だが、弾丸が撃たれる前に一六は駆けつけ吸血鬼の背中を切り付ける。


「ぐは… く…」


 致命傷ではないからか血を流すだけですぐ止まる、が命拾いした。

 一六の方は片付いたのかと思ったが一六はすぐに自身が相手する吸血鬼の元に一瞬消えたと思ったが再び戦っていた。


「下手くそ…」と去るときに言い戻っていく…聞き間違いで...薙の声で聞こえているのだと思えたがうっすらと十六が薙本人に見えた。


「何でルーナ達を拐う… 彼女らはルーナはともかく原初と何も関係はないはずだ…」

「マジで黙れよ… 何でそこまで自身が正義とばかりに言える誘拐犯が… 頭おかしいのか…」

「二人を置いていけ! そうすれば命までは奪わない!」

「おい何を勝手な事を言っている!?」


 一六からそう言われたが、無理に殺す必要は無い。

 それに三人は知らないと言っていたが、ミルの事を隠しているかもしれないと思い捕まえて尋問しなくては…。


「ち…!」


 一六が舌打ちをする。


「何勝手なことを言っている… お前らが悪いはずだ… 悪いのはお前らのはずだ… 先に手を出してきたのはお前らのはずだろ…! なのに置いていけなどと… ふざけるなぁ…!」


 再びこちらに飛んでくる血の弾丸と共に勢い良く飛び掛かってくる。


「ぐ…!」

「待って先輩! 繋がった、向こうと繋がったよ! 帰れる、帰れるよ先輩!」

「ぬ…! く…」


 刀が拳に触れる前、吸血鬼達は一斉に何もない空間に出来た黒い影みたいな人一人が余裕で入るくらいの次元の穴とも思える穴に入って行く。


「ち… 追えないか…。これも...」

「待て!!!」


 追いかけはしたが、全員が入り追えるとさっきまで戦っていた吸血鬼の恨みと憎しみに満ちた睨むを最後に穴は閉じる。


「あああーああー!!! くそぉぉ!」


 手掛かりが消えた…。

 ミルは消え、ルーナ達は拐われた…。

 何も守れなかった…。


「おい、立て… まだ戦いは終わってない」

「え…」


 そういえば… 岩を割った男は何処に...。


「立て」

「…! な!」


 歩き基地の大扉から外に出ると大量の吸血鬼の死体が灰になろうとしていた。

 吸血鬼達全員が心臓に一発の銃弾と剣での一突きで死んでいた。

 だがそれよりも、まだ吸血鬼達の数は増え、外には何処から現れたか分からないほど多くの吸血鬼の大群がいた。

 そんな吸血鬼の中で血の道と血の雨が見える。

 全て吸血鬼からのものであり、響く重々しい銃声と吸血鬼達の断末魔の中心で素早く動く人間がいた。


「行くぞ…」

「え… あそこにですか?!」


 刀を構えて吸血鬼の中に入って行く。

 近づけば近づくほど濃くなる血の匂いと薬莢の匂い。

 死にたくないので、一六から離れないように着いていく。

 刀を振り以前戦った吸血鬼とは違いまるで意思の無いゾンビと戦っているみたいだった。


「うー!」や「わー!」としか言わない吸血鬼だからか人間味は無くさっきよりは楽に戦えてはいたが…切った感触も…無かった。

 数は多かった…いくら切っても減らない吸血鬼。


 だけど…丁度良かった。


「ち…! 旋回風…!」


 一六は囲まれながらも辺りを切り薙払い竜巻を作り吸血鬼を空に吹き飛ばす。


「ぐ!」


 先程までの悲しみを忘れるように敵を切る。

 終わらない攻防から焦りすら消え、生きることへの必死さだけが残っていく。


「うおおおお!」


 切っても切っても減らない吸血鬼だったが、終わりは突然きた。


「ウー! ワオーウォーン!」


 狼の遠吠えと共に。

 吸血鬼達の視線も遠吠えをした狼に移る。 

 狼から伸びる鎖は吸血鬼達を捕らえ全員の心臓を貫く。

 鎖は吸血鬼の血を吸いより強度と鋭さがまし枝分かれする。

 先程までの苦労は嘘みたいにあっさりと素早く終わっていた。


「遅い… それで見つけたか?」

「えぇ、基地の地下に隠れて逃げようとしているところを… 坊っちゃんの眼のおかげてすお見事!」

「…。それよりも… 原初が消えた… ヴァン追えるか?」

「それは俺でも無理ですね、匂いは追えます、ですが基地に匂いは残っていても… この感じは… 空間を飛ぶ系…で。無理です、坊っちゃんの目でも追うことは難しいですねぇ?」

「そうか…そうだな。まぁ予定どおり本部に相談だな。

原初を拐ったのは、眷属達だ。居場所は分からないが… 悪い方向にだけは行かないはずだ、良い方向にも向かわないが… ルルの眷属はあくまでも中立…私達が対処すべきは別吸血鬼だ…」

「はい…」


 男はスマホを取り出し誰かに電話する。


「はい、私です…。現場に着きましたが…原初は拐われてしまい…現在行方不明です。ですが拐ったのは原初の眷属達で間違いありません。

はい、迎えが着き次第急ぎ帰ります…では。

はぁ…休暇…無くなった… 早く…寝たいのに」


 地面には灰になろうとする吸血鬼達の死体が…。

 その死体の中央で死体を椅子に座る男が頭を抱えてため息を吐く。


「おい… 俺は帰るが… 妹に変なことをしたら… 殺すぞ…」

「え… まさか…ウソ? 本当に薙だったの…?」

「ち… じゃあな… 生きて帰ってこいよ…ゴミ虫」

「おっと!?」


 そう言い一六は脱け殻みたいにへたりと膝を着きそうになっていたので受け止める。

 え…本当に薙だったのか…?

 そう唖然(あぜん)としながらも現状把握からか狼の主人らしき男が近づいてくる。

 狼からは1本の鎖と鎖に縛られた小さな男の子が拘束されていた。


「止めろ! 離せ! バカ犬が!?」

「うるせぇ、俺は狼だって言ったはずだ」

「こんにちは、あなたはロビックさんとお見受けします。基地の責任者でありながら…勝手な判断と任せていた研究を利用しての悪事… 貴方の処分は本部に戻ってからで…。今はそれよりも… 初めまして原初の眷属田中マサトさん。

私は協会本部の者で... ヒシリア・ロボスと言います… 以後お見知りおきを…」


「あ… はい…よろしく…」


 そう言いヒシリアと名乗った男は僕の目の前で足を止め、紳士的な会釈をする。

 派手さは無く慣れたように流れる動作に呆気に取られていたが、ロビックと言う名を聞き正気に戻る。


「待って! 今ロビックと言いました?! ロビックは死んだはずじゃ!?」

「はい、死んでいますが... どういうわけか魂はこの少年の肉体に留まり生きています。

ですが、それは私共が彼に後程聞きますので今は帰りの飛行機を待ちましょう」


 眠る一六を抱えて聞いていたが、とりあえず納得はしておこう。

 肉体とか魂と聞いておかしな話をしていると感じはするが、魔術や吸血鬼と言った事を経験してかすんなりと納得できた。


「待て、ヒシリア! 僕を助けろ! そしてそこにいる男を殺せ… さすれば原初の居場所を…!」

Shut up(シャラップ)! 黙れロビック・アルメキウス… 既にお前の今後は決まっている… 裏切りをおこなったお前はただ私の質問が無い時以外、黙りその時を待っていろ…」


 ヒシリアは子供の口を手で覆うように掴み持ち上げるとロビックは苦しみ足をバタつかせる。


「ま、待て! 止めろ!」

「吠えるな…。協会を利用したお前の罪が… 死で償えると思うなよ…」


 バッと手を口から離しドサリ尻を着きながら陸に上がった魚のように酸素を吸うロビック。


「では、死体は時期消えるゆえ、中で待ちましょうか?

ヴァン、滑走路の清掃をやっておけ」

「へい…はいはいっと」


 ヴァンは手からでる鎖を千切りヒシリアに端を渡すとダッシュで滑走路に向かう。

 残った僕たちは眠る一六を抱き抱えてながらも基地内に戻り飛行機を待つ。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 急展開にしすぎかも? 拐われたミルとシーナルーナ! 結構分かりやすく書いてみましたから拐われたと言うのは語弊ではあります。

 主人公が鈍感すぎませんかね? 書いていてそうは無いと思いたいですが、あり得なくもない…。

 そして、一六を依代に現れた薙と杜宮兄妹の謎も書いてみたりとヒューズさん達のことは謎のまま番外編ですかね。

 そして生きていたロビック。

 ミルは何処に消えたのかは素直に拐われちゃったと思ってください。

 感想を書いてくれると嬉しいです。

評価やブックマークも面白いと思ったらで良いのでぜひお願いします。

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