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第四十話 鎖を…いえ薬をあげましょう

 ミル視点。


 扉は閉じ前を向き歩く。

 視線の先には先ほど見た部屋と椅子の背もたれの方を見せ座り顔は見えないがあの人間がいる。

 悔しいが従いここまで来ているが… 必ず薬は手に入れてやる。


 横に共に歩くヒューズとか言う人間もいるが… その娘の姿は見えない… おかしいな… あの人間に捉えられていると聞いたが、まさか別の部屋にいるのか…。

 辺りを見ても以前と何も変わることは… 床に撃ち殺されたあの人間の血痕以外何も…。

 殺されてなお生きているのがおかしいが… まずは薬だ。


 ミル達は前に進みロビックのいるデスクに向かう。


「お待ちしておりましたよ… 姫様!」


 ぐるりと椅子を回し前を向くロビックだがその顔にミルは驚く。


「だ、誰だ貴様は!」


 ミルは驚く。声も多少若々しい好青年といった見た目に変わりはしたがロビックの声で話す、顔に傷の無い若い男が椅子に据わり話しかけてきたからだ。


「フフははは…! そうですか、この顔でもお分かりでないとは… 僕も寂しいなぁ…」

「落ち着いてください姫様。あれはロビックです。ロビック・アルメキウスのクローンです…」

「フフ… そうだね。僕はクローン。だが、ただのクローンではないことは君がよう知るところだったろ? ヒューズ・クライム先~生?」

「な、何を言ってるのか分からないが… 早く薬を渡せ。偽物ではなく本物のを!」


 震える大気、その場が凍ったと思えるほど冷たく、自身の体重が2倍になったと思えるほど思い威圧が部屋を満たし揺れて(きし)む。


「フフ… フ。 そう怒られては… 僕も渡す気にはなれませんね…」

「黙れ外道…! 貴様に従い戻り来たが、なにも全てを受け入れて来たのではない…」

「ですが、姫様。ここで口喧嘩をしていてもなにも進みはしない… おとなしくこの紙に書いてくれれば僕もおとなしく鎖を… いえ薬をあげましょう」

「だが、それが本物である保証は無い」

「そうだとしてもこの薬は今僕の手にしかない。仮にヒューズ君に作らさせたとしても材料までは揃えられない。だからこそ僕の手にある薬を頼るしかないとお分かりですよね?」


 椅子をくるくると回しながら話すロビックを見てもミルは強気な態度で誤魔化してはいるが、今にも契約書に血で名前を書いてしまいそうだった。


 だが、それは… 駄目だ…。


「はぁ… もう良いです… 一応言っておきますが… 撃ち殺されたくなくば薬を渡せ… あと私の娘はどこだ…?」


 ヒューズの手には以前と同じで拳銃が握られロビックの(ひたい)に向かって構えていた。


「どうぞ、また殺せば良い… その場合おまえの娘は帰ってこないがな… まぁ君にはもう関係の無いことか… ()()()()()()()()()


 ヒューズは銃の引き金を引こうとした瞬間、銃は二つに割れる。

 ミルが手刀で切ったからだ。


「なにを血迷っている貴様... 貴様がこの人間を殺そうとするのを私が見逃すわけ無いだろうが… 血が上りやすいなら貴様は黙ってろ…」

「…。すみません…」

「ヒュ~♪ ブラーボー! ますます薬を渡したくなくなった…」

「いや、渡せ…」


 デスク越しにロビックの胸ぐらを掴み顔に引き寄せ眼を見るミル。


「良いかよく聞け… 貴様の勝手だ。本物だ偽物だクローンだで私はひどく混乱している… 気もたっている… 分かるな… 死にたくなければ答えろ… 薬を渡せ、本物をだ!」

「ふはは! そうですね。確かに死ぬのは怖い… あなたを手に入れず死ぬのは... ですが、これを見てもまだ私の胸ぐらを掴んでいられますかね…?」


 そう言いロビックはデスクに置かれたノートパソコンを取りミルに見えるように広げた。


「これはとある部屋でリアルタイムで流れている映像です…」


 そう言い見せたのは正人が椅子に座らせられ拘束具で縛られている映像だった。

 目隠しと猿ぐつわを口にはめられ縛られていた。


「な、なぜだ… なぜそこに正人が…!」


 おかしい、おかしいおかしい。事前に飛行機の時にしたはずだ。発信器(マーキング)は済ませたはずだ…。

 なのになぜ、おかしい。基地内に入ってからは正人の位置がぼんやりとしか分からなくなっていた。

 昨日までは分かったことが… 今日になりいきなりだ… 気がつかなかった…。


 ミルのロビックを掴む手は緩み離し、ぼんやりとただ流れる映像を見ているだけだった。


「ま、待って! 貴様何をして…!」

「フフ… ははは! はぁ、本当にあなたは弱くなられた… あの戦場で敵である我々の血で手を濡らしたあの鬼の姿はどこえやら… ですが、そこがますますかわいらしい… フフ…」

「な、何を言ってるのか私には分からない… なぜかを聞いている… なぜ貴様の手にマサトが…」


 震える足を誤魔化してはいるが目は光を失いかけていた。

 目の前で小さな板の向こうで縛られ何をされるか分からない正人の姿を見たミルはただそれを見ていることしか出来なかった。


「これで、あなたがする態度はお分かりですか姫様。今後はこうならないようちゃんとこの契約書にサインをお願いできますよね?」

「だ、黙れ… わ、私は… そのようなこと…」


 震えた声で映像を見ているミル。握る拳からは血が流れ固く握っていた。


「この手は使いたくなかったのですが、あなたがそうするなら… では…」


 そう言いロビックは受話器を取り誰かと話している。


「ああ、男の口と目のを外せ」


 映像に外で見た兵が現れ、正人の猿ぐつわを外す。


『…。あ、ミル…? どこですかここは…』


「少し、痛い目にあってもらいます…」


 そう言い再び兵が現れると、見覚えのある液体が入った注射器を正人の腕に刺す。


『な、何ですか!? ぐっ… はぁはぁ… う… あああああ! 痛い…! 痛いですミル…! 助けて助けてミル!』


 泣き叫ぶ正人の姿が映像に流れる。

 手足を縛られながらもジタバタと揺れる椅子と震えている体から自身には想像しがたい痛みと苦しみが正人の体に起こっていると想像しては腹を抱え吐き気と漏れ出そうになる胃液と涙を堪え歯を奥歯を噛み締めロビックに向かい叫ぶことしか出来なかった。


「止めろ!!! 今すぐ薬を渡せ!」

「はい、ではこれにサインを?」

「ぐ…」

「良いんですか? 彼死んじゃいますよ… 灰に変わる前にこのたかが紙切れに血で名前を書くだけでおしまいですから...ね?」


 ヒラヒラと手に持ち見せびらかすようにミルに見せるロビック。

 部屋に聞こえるは正人の叫び。

 だが、それもすぐに止んだ。

 映像に流れる正人がまるでスライムのように溶け出したからだ。


『アア…。ミ、ミ、ミル… ル、ル… ミ…ル、ル…』


「え…」


 それは吸血鬼からしたからとてもおかしな最後だと言える。灰になり消えるはずの吸血鬼は溶けて死ぬことはまず無いからとミルには分かっていたからだ…。


「どう言うことだ… これは… マサトが溶けた…?」

「フフははは! いやぁまさか耐久性に問題があったとは… 失敗失敗…」

「え… どうして溶け…」

「あれは正人君のクローンです姫様… ロビックはあなたを苦しめるために用意したと思われる偽物です…」

「に、偽物だと…?」


 ミルはポカンとしていたが、以前にしてなぜ発信器(マーキング)が正しく機能しているのか分からなくなっていた。

 基地に入る前は機能していたことを思い出してはやがて分からなくなり考えるのを止めた。


「フフ… ですが、姫様。あなたの眷属もこうして苦しんで死ぬことに変わりはない… さぁサインを?」


 以前にしてロビックは強気にサインを促す。


「断る… 黙って薬を渡せ…!」

「そうですか… では手法を変えます…」


 パチと指を鳴らすロビック。

 それに反応してか部屋にある本棚は扉のように開きそこからゾロゾロと兵が入ってくる。

 その中にヒューズの娘のポラリスがいた。


「お父さん! 助けて… 怖いよぉ!」

「それで、今度は私ですか… ロビック…」

「あくまでも基地(ここ)にとどめるための道具としか思ってなかったが… 姫様は知らないからな君と娘の秘密を…」

「何をする気だ貴様は...」


 ロビックは立ち上がり、コツコツと歩きミルに近づく。

 ミルの横に立つと、ニコッとミルを見て笑い右手をあげる。

 それに合わせてか、兵もポラリスの手足を掴み床に押さえ付けると、一人の兵が斧を持って現れる。


「処刑ごっことでも言っておきましょうか… ヒューズ君の娘を殺されたくなければ… サインを... もちろん薬もお渡しします」

「気にせず殺してください… 私は構わない…」


 ヒューズは眉ひとつ動かさずにそう言っていた。


「な、貴様、自身が何を言っているのか分かっているのか!? 貴様の娘なんだろ!?」

「えぇ、娘だったものです…」


 それはまるで自身で作ったものを壊される子供のような目をした男だった。

 口は冷静に現状を受け止め、ただ真っ直ぐと視線をそらさず見ているヒューズだった。

 ミルは驚き、現状の理解ができずより混乱していた。

 助けると思っていた協力者の娘だったが、親である男は娘を助けることなどはじめから無かったと思える目をしていたからだ。


「何が目的だったんだ貴様は...! 娘を失う悲しみは無いのか!?」

「ありましたよ私にもですが… それは今関係の無いこと… ここでポラリスが死ねばあなたを縛るものもひとつ減る…」

「いやぁ… 怖い… 痛いよ… お父さん助けて!」

「止めろ... おい、貴様の兵だろ! 止めさせろ…!」

「えぇ、ですから… これにサインをと言っているんです… 皆を助けるにはこれにサインをする以外にあなたがすることはありません、と私はさんざんお教えしたはずですよ姫様?」


 ニコッと笑い、ミルをロビックは見ていた。

 ミルは自身の手にある二つの命に戸惑いと焦り、失う怖さを自身の過去と結びつけて考えてしまっていた。

 自身が過去に親同然に育てられ吸血鬼として長い時間過ごしたルルと言う先代原初を失った過去と。


 いや、いや… 怖い… 無理だ私には何も出来ない… 決められない…。

 助けてくれ… 誰か… 助けてくれ… ルル…助けて…。

 マサト…助けて…。


「はぁ… ではその首とはおさらばって事で…」


 ロビックは上げた腕を下げる。


「いやぁぁ!」

「止めろ… 止めてくれ…」


 叫ぶ声は外には聞こえない。

 防音防火防弾などあらゆる事を防ぐために特注で作られたロビック専用の部屋には。


 ロビックの指示で兵は斧を構え振り落とす。

 斧の鋭く重い刃がポラリスの首の皮膚にとどく前、ロビックの部屋の壁を扉事吹き飛ばし瓦礫が斧を振るう兵と周りの兵を巻き込み吹き飛ばす。

 下敷きになる兵とただその現状を待っていたばかりにその一点を見るヒューズと自身の計画の失敗に驚くロビック。

 ミルは下を向きポラリスの首が切られたと思い目を閉じていたが、壁の吹き飛ぶ音が聞こえ前を見る。

 だが、それは無駄だった、気づけば自身の体は浮き誰かに抱き抱えられていたからだ。

 その匂いや温もりはよく知るものであり、安心し側にいてほしいと思う日々が無いと思うことが嘘になるほど大事に思っていた相手だったからか、思考は遅れて理解していた。


「え… 何でおまえが...」


「だって助けを呼ばれた気がしたから…」


 その声はよく知る男の声だった。


 ここに来た意味であり、自身の生きる全てになってすらいるとミルはまだ知らないが、互いを思い大事にしている相手がそこにいた。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 次の話ではなぜこの場に正人君が来られたかを回復できたのかを書きたいと思います。

 ロビックさんの会話が長くてあー飽きられないかと思い短くした方がとも思いましたが彼の個性を大事にしたから最後の登場が輝くと思います。

 ヒューズさんの過去も書けたらと。クローンとはそのまんまの意味なので、作ったのがヒューズさんですボソ…。魔術師であり研究者でありお父さんです奥さんは死んでます。

 最後はイメージダンダダンのオカルンで書きました。

 感想をお待ちしています…。お願いしますください!

 評価とブックマークも面白いと思ったらで良いのでお願いします。 

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