第三十八話 準備+執着=愛(からっぽ)
「じゃあ… そこの男から薬とってください…」
ロビックを拳銃で撃ったヒューズはミルにそう言う。
ロビックの手にはまだ割れていない薬の入った注射器が持たれていた。
「では正人君に射つので薬を渡してください…」
殺されたロビックを背にヒューズを驚きながらも見つめるミル。
ロビックが殺された事に驚き、あまりにも突然の事に驚いていた。
ヒューズは驚くミルに近づく。
警戒されないため手に持っていた銃を地面に置いてから近づく。
だが、ヒューズはすぐ止まった。自身を疑う目をしたミルのプレッシャーと威圧感に息が詰まり自身はまだ彼女に信頼されていないと知ったからだ。
「それは無理だ、目の前で仲間を殺すようなやつを私は信用することは出来ない…!」
ミルの手には死んだロビックから奪った正人を治せるだろう薬。
渡せば助かると知っているが、先程から起こった起こるロビックの裏切りとヒューズがロビックを撃った事から、また裏切られるのではとミルは疑う。
「…。貴様がマサトから離れ、私がこの薬をマサトに射つ…」
「ですが… 時間がありません。刺しちゃダメな血管とかの脈分かりますか? 私が射った方が早く終わります…」
「くっ…!。分からない… だが! 貴様に任せるほど私は貴様を信頼できない…」
「そうですね…。はい、分かりました… ならこうしましょう…」
そう言いヒューズは白衣から薬の入った注射器を持つ。
「ぐっ! まさかまたその手で!」
「あー… 勘違いしないでください…」
ヒューズは手に持つ注射器を腕に射つとグッと顔色が悪くなる。
荒い息づかいは部屋にいた時の正人ほどではないが苦しそうだった。
「はぁはぁ… これは、吸血鬼には効きはしませんが人間には猛毒です… それを射ちました… 私はあと一時間ほどで毒が全身に回り死にます… なので!」
そう言いヒューズは割れないようミルの方に向かって一つの注射器を転がし渡す。
「その注射器にはこの毒を治す… ぐっ…はぁはぁ… 薬が入ってます… 裏切りが怖いのならそれを渡します… だから…! あなたの持つ薬を渡してください…!」
「…! な、なぜそこまでして…!」
「…。今は時間がないので… 彼の薬を渡してください! 私もまだ死にたくないので…できれば早めに…」
ミルは考えるが、苦しむ二人を見て見殺しには出来ないと思いロビックから奪った薬をヒューズに渡す。
「ご協力感謝します…」
「勘違いするなマサトには時間がないからだ… だから助けてくれ… 頼む」
「…。はい」
そう言い先程まで毒に苦しみ震える手は嘘みたいに止まり的確に脈を注射器で刺し薬を血管に送る。
「…。これで… 彼は助かります…」
「そうか! ならおまえも早く!」
そう言いミルはヒューズにもう一つ注射器を渡す。
「あ、大丈夫ですよ、これ風邪みたいなものなので… あと薬は別であります…」
そう言いヒューズは白衣から錠剤を取り出し水無で飲む。
「な…! おま… 貴様! 騙したのか!!!」
「まぁ、命をかけた風にでもしないと渡してはくれなさそうだったので… あなたの優しさにつけこみました」
「な!?」
「カッ… ゴホゴホ!」
「マサト!」
二人の言い合いをよそに正人は呼吸が平常のものになってきていた。
呼吸が安定した正人にミルは抱きつく勢いで近づく。
軽く咳き込む正人であったが手に触れたミルの温もりが嬉しく呼吸も安定していく。
ミルは寝転ぶ正人の顔色が良くなるのを見て安心から涙が出そうになったが堪え、ここから出たら沢山泣こうと決めた。
「あぁ… 良かった… 本当に、良かった…」
「あの…。私に感謝するなら今ですよ?」
「…。感謝しようにも、その発言で消え失せた。そう言うのは本人の意志からだろう?」
「あ、あの… どういう状況ですか今…?」
かすかに開いてた目は戻りミルをちゃんと見られるくらい戻る。
目の前に上から顔を覗いてくるミルの顔と自身の頭をカーテンのように包むミルの長い髪から現状把握が遅れる正人。
「あぁ… 良かった… ミルがそこにいる…」
だが、今までの苦しみを忘れるほど目の前で顔を覗いてくるミルを見て改めて安堵し、沢山の薬を飲んだり射ったりしたせいか気絶するように眠る。
「あー感動しているところ悪いですが… 早く動いてください... たぶんそろそろ…」
「待て、マサトは薬を射ったばかりだぞ!」
ビー!ビー!
ビユピユー!
ガーガー!
「あー…」とヒューズは言い現状が悪い方向に向かってきていることを察する。
辺りが、基地内が騒がしく警報が鳴る。
『緊急事態! 緊急事態! 研究員達はただちに避難シテクダサイ!』
「あー… やっぱり仕掛けてた…! あのくそやろう…ちっ!」
「な! 何が起こっている…!」
「説明をしている暇はありません、とりあえず正人君を連れて部屋に戻り次第逃げます!」
「な! 待て」
そう言いヒューズはミルの制止を聞かずこの部屋に一つしかない扉に向かう。
ミルも正人を背負いながらあとを追う。
ヒューズは扉に手をかけたがガチャ… と音はしたが部屋の扉は動かなかった。
『緊急事態につきロックされています』
「いつのまに仕掛けたんだよ... 予算オーバーだってのに…」
扉横に付けられたモニターが説明する。
この部屋はシェルターの役割もあり、安全になるまで誰も出さない設計だった。
「…。おい、閉じ込められているぞ…」
「…。そうですが… ここを弄れば…」
ヒューズは持っていた工具でモニターを弄り外側のカバーを開け、内部を弄る。
『カ、カ… カカ、解除… カ… イジョ、ジョ…』
扉を無理やり開ける。
「では行きます…」
「…ふん」
ミルはまだヒューズを信頼していない、彼の嘘とは言え勇気ある行動には多少ながらも心動かされたのも事実なことが気にくわない…。
背中に背負う正人含めた皆でこの基地を出るまでは行動を共にするくらいは許そうとは思っていた。
ミルとヒューズは部屋に向かい走る。道中煙たい何かを感じたが走り続けた。
二人は部屋に付き扉を開け入る。
「皆あつまれ!」
ミルがそう言うと部屋で過ごしていたルーナ達はリビングに集まる。
「何ですか原初様… まさか… 眷属さんに何か…!」
「え… 嘘…」
ルーナはその場で腰の力が抜けてか座り込む。
「違う、今は説明する暇は無い、急ぎ荷物をまとめ、ここを出る!」
「眷属さん! 眷属さん… マサトさんは大丈夫なんですか…」
ルーナはミルを見つめながらも背中に背負われる正人の事を気にしてた。
「あぁ、今は疲れて寝ているが… 生きている」
「よ… 良かったぁ…」
一番始めに正人が倒れるとこを見たルーナは恩人が倒れたってこともあり、ずっと心配していた。
「ではみな準備しろ!」
それぞれは寝泊まりした部屋に行き荷物をまとめ5分ほどで戻っていた。
一番早かったのは一六だった。
二番目はミルが、三番目にルーナ達が部屋にリビングに戻り、部屋を出る。
ガチャと扉を開けると薬品の匂いと同時に霧が開けたとたんに部屋に入ってくる。
「…。まずい... 吸血鬼の皆さん、口を塞いでください…! 何か… ハンカチとかでも良いので口を塞いでくさい」
ヒューズはこれが霧ではないことに瞬時に気づいた。
煙でもないこれが抑制剤を霧状に基地内に散布しているものだと。
ロビックの死に反応して起こる緊急事態にここまでするのかとヒューズは思った。
まるで最初から自身が裏切ると分かり、原初の姫様を苦しめるために抑制剤を作ったとさえ思えてくる。
吸血鬼達はヒューズに言われ、ハンカチを当て部屋を出る。
正人には一六が持っていたガスマスクを渡していた。
「なぜ持っていたそのようなもを…」
「一応日本基地の戦闘員ですから!」
「では、走りますので見失わないように…」
ヒューズの合図に合わせ部屋を出てヒューズについていき走る。
走るとき起こる風により避けら用に霧を分けて、ヒューズは人間だが、ミル達は吸血鬼ゆえの視界の良さから見失うことは無く、人間のヒューズの足の遅さについていく形でついていくことにイライラとしながら走る吸血鬼達と一六。
ヒューズは道に迷うこと無く基地を進む。
だが、突如基地内に警報と違う放送が流れる。
『は、ははは!!! いやぁ、ヒューズ君… まさか君に裏切られるとは… 私も驚いたよ! とでも言っておこう... フフ...』
その声は死んだはずのロビックの声だった。
『だけど... 君も詰めが甘いのかな… 基地内に娘を連れてくるとは、君の妻が死んだ時同様、じつに君らしいつめの甘さだ... ははは!』
ヒューズの走る足が止まる。
「…。はぁ… すみませんが… 皆さんはそのまま逃げてください… あとは道を真っ直ぐいけば出口なので…」
『君は今、姫様達と逃げて逃がそうとしているようだが、それを私が許すとでも! 姫様あなたは一つヒューズ君と同じ勘違いをしているようだが… まだ姫様の眷属は助かってはいない‼ 抑制剤を受けた吸血鬼がそう簡単に治るわけ無いでしょう!』
「どう言うことだ… あれで...あれで助かるのだろう…? なぁ、貴様がそう言ったはずだ!」
「眷属さんがまだって… どう言うことですか原初様!?」
『たぶんヒューズ君が射った薬は確かに効果がありますがそれも一時的、この瞬間のために私がどれだけ準備したか、必ずあなたを手にして見せる! ただその時のためにどれだけ費やしたか…。ですから…心の準備が出来たら私の部屋で待っています、場所は先程知ったはずなので迷うことはないかと… 来ないのも良いですが… 時間はそれほど無いとお考えを… 眷属が死ぬ前に来てくれますよね?』
そう言い、放送は止まり、再び警報が鳴り続ける。
「はぁ…」
赤いランプが照らす道を前ではなく来た道を戻るように後ろを気にするミル。
「原初様だめだよ!」
シーナはミルの前に立ち、戻ることを止める。
「そうですわ。今の眷属さんには… 貴女が必要なんですわ…」
ルーナはミルの腕を掴みながら小さく聞こえないほど小さく、「私ではなく貴女が…」と心で思っていたことを下を向きながら呟く。それはルーナにとって無意識でそう言ってしまい、ルーナも気づいていなかった。誰にも聞こえない彼女の本心と願いから出た言葉だった。
「すまないな二人とも…」
「…。とりあえず… 基地を出てから話ましょう… ここはあなた達には毒ですから...」
「分かった…」
背中に揺られる正人の呼吸音を聞き再び走るミル。
先導するヒューズも足を前に進める。
全員は基地内から外に出る。
空は曇り泣きそうなど、ゴロゴロと雷音が聞こえるが雨はふらずじっとりとした湿り気を帯びた風だけがふく。
「すみませんが、移動しましょう… ここで立っているより私の研究室で正人君を休ませましょう」
「…。分かった…」
ミルは下を向きながらも答えた。
今にも雨が降りそうだと思ったヒューズは皆をこの日のために外に用意した自身の予備の研究室に案内する。
そこは基地の敷地内にありながらヒューズが寝泊まりしながら研究するための部屋だった。
壁は真っ白で部屋の本棚には多くの資料が詰められていた。
研究室にしては薬品の匂いもしない無臭の部屋だった。
疲れて寝ている正人はヒューズの寝室に寝かせ、皆は研究室にある広い部屋でソファーや椅子に座る。
ミルが寝室から戻るとヒューズは話始める
「…はぁ。ではここからどうするか決めましょうか、この基地からどう逃げるか考えましょう…」
ヒューズは皆の方を向いて聞く、各々席に座り聞いていた。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
はい、実は生きてましたロビックさんは。
あっさり殺されたでしょと思っていた相手は実はって展開が書きたくて書いてみたした!。
今後は基地の事やそれに関係するヒューズさんやその他を書きたいと思います、もちろん主人公達の活躍も書きます。
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