第三十六話 抑制剤
朝、目が覚め起き上がる。
「ん… フワァー…」
目を擦り半覚醒した脳でふらふらと洗面台に向かう。ミルはいつも後から起きてくるから大丈夫だろう。さすがに今日は起きて…(普段の事を思い出す) 起きるだろう。うん。
「う…」
ふらふらと歩いたからか歩く途中寝ぼけて壁におでこをぶつけてしまった… イテテ…。
こんなとこ見られでもしたら少し恥ずかしいな。
洗面台に到着し、勢い良く流れる水を手のひらに貯め勢い良く顔にかけ朝の洗顔をする。
外が寒いからか水も冷たくなり目も余計に覚める。
「ふぅ! よし…」
今日はいよいよ…。
この基地に来た目的が、本当に吸血鬼化を止める方法があるのか分かる日だな…。
初対面ながらこの基地の責任者と名乗る... なんだっけ名前?。
アルキメデスは偉人で… それに似た名前の…。
アルメキウス…、そうだ!。
ロビック・アルメキウスだ。
あの人、出会って早々に僕の手に針を刺そうとしてきた危ない人だ…。
そんな人を信頼できるわけもないが… 今は信じはしないが… 話だけでも聞いておきたい… 怖いし危ない人だと思うけど…。
今はその人を頼るしか方法は… 無いのだから…。
「はぁ…」
とりあえず… 洗濯機を回して気分を変えよう!。
ふふ、まさかこの部屋には洗濯物が四つもあるとは…。広いだけあって… ここまで多いとさすがに楽しさよりも… 壮観さの方が大きいな…。
朝から全部の洗濯機に昨日種類や洗い方ごとに分けた洗濯物をそれぞれ入れ… 回す。
一度にこんなにもすぐ終わると… 後からの大変さなんて気にならないな。
最近はミルの命令もあってかルーナ達も手伝ってくれるし、たまにサボるけど…。
この量もすぐに終わるな。
「うーん! はぁ…」
洗濯機を回し、背中を伸ばした正人はリビングに向かう。
リビングに向かい扉を開くと朝から何かを焼く音が聞こえ同時に良い匂いがした。
キッチンに居たのは一六だった。
正人よりも早く起きて朝御飯を作っていた。
「あ、正人殿! おはようございます!」
「あ… おはよう一六さん」
「少し待たれよ、今取って置きの朝食を作っていますので!」
「…。あぁ… あの、ありがとうございます…」
何か手伝えることは無いか聞こうと思ったが、僕がキッチンに入れば邪魔になるかもしれないな…。
広いとはいえ、僕はプロの料理人と言うわけでもはないし、漫画やアニメみたいに協力して調理とか難しいな…。
でも… 何かしてないと落ち着かない…。
「あ…。一六さん、テーブル拭いときますね」
「あ! ありがとうございます! すみませぬそこまで気が利かず!」
「良いんですよ、僕もいつもと違い、朝からなにもしないのは落ち着かなかっただけですので…」
キッチンにある、昨日教えられた位置からテーブル拭きを取り水で濡らし絞り、テーブルを拭く。
テーブルの端から丁寧に上から下へ、半分を拭きまた同じように半分を拭く。
こうすることでテーブル全体を余すことなく拭ける。
まぁ、別に前からそうだったわけではないけど、基地に来てから掃除などをしていくうちに… 潔癖症みたいな事をするように... 主婦向けのテレビを見るようになった…。
拭き終え、水で洗っているとルーナ達だろう、二人が洗面台に向かう足音が聞こえた。
洗顔を終えたのかこちらに来る足音が聞こえる。
「…。おはようございますわ、眷属さん」
「おはよう眷属さん」
「おはよう二人とも」
テーブル拭きを絞り乾かすため掛けとき、チラリと一六の調理姿を見てテーブルの席に座る。
いや、レトルトしか無かった気がするけど… 何を作っているのか気になる。
あ、そろそろミルを起こす時間だ。
今日はさすがに起きてもらわないと… 僕が困る。
この部屋に案内してくれたヒューズさん? に怒られるか呆れられるかもしれない...。
知らない人にそう言う顔をされるのは辛い場合もあるから… 起こそう!。
寝室に戻る正人。
「…ふぅ」
布団を掴み起こす準備をする。今日はさすがに本気で起こす!。
「ミル、起きてくだ… さい!」
さい!と言う同時に布団を引く。
いつもどおり丸まったダンゴムシみたいになって寝ている。
今日は布団に引っ付いてなくて良かった...。
それはそれでめんどいから...。
「…ぐっ… 寒い… フトン、カエシテ…」
「ダメです、今日は時間どおり起きてもらいます…」
自身の昨日とのテンションの差で僕は頭が痛くなりそうだが、言い続ける。
「さあ! 起きてください!」
「…。抱っこ… 抱っこしたら起きる…」
「…。はいはい、抱っこですよ…」
お姫様抱っこのまま洗面台に向かう。
洗面台に着きミルをおろす。
「冷た!」
水の冷たさにビックリしながらもミルは顔を洗い、洗い終えたら正人からタオルを受けとり顔を拭く。
「ん… ふぅ…」
「目… 覚めました…?」
「うむ! スッキリだ! では続きを...」
抱っこの続きをするよう言われたが、目が覚めた起きたので断り、二人でリビングに向かう。
「あ、おはようございますわ、原初様」
「おはようございます、原初様、今日は起きれたんですね」
「ぐっ… うるさい… …おはよう」
一六さんがミルの到着を予期してか朝食と血のパックがテーブルに並ぶ。
全員椅子に座り、いただきますと挨拶し食べ、食べ終え洗い物を一六さんがやってくれると言ってくれたので... 僕は洗濯物を干すため洗い終えただろう洗濯機を見に行く。
そして… ついに使おう乾燥機!。
さすがに全部を乾燥機に入れる時間も無いし… 服が痛んだりすると聞くので初回は僕の洗濯物を半乾燥ぐらいに設定し回すことにした。
残りは自然乾燥だ!。
うん、さすがに全部をベランダに運ぶのは大変だ…。
ベランダに洗濯物を運び終えると、ルーナ達がトボトボと何かに怒られた後のように歩いてきた。
椅子に座りお茶を飲みながらもこちらを見てくるミルと後ろを気にする二人からある程度予想ができた…。
またか…。
「け、眷属さん…! その洗濯物を干すの手伝いますわ!」
「うんうん! そうだね手伝わないと… そういう原初様との約束だったしね!」
「あ、そうだね… ならまた二人の洗濯物を干してくれると… 助かる… かな… ははは…」
茶を飲みこちらを睨むミル。
そして怯えながら洗濯物を干す二人は以前の楽しそうに干す様子とは違う。
まあ約束破る方が悪いし、覗きをした罰だしね…。
洗濯物を干し終えて、リビングで椅子に座り笹原が寄越したお茶を飲んでいると… チャイムが鳴る。
鳴った瞬間、体はビクリと反応し… 今までの空気感を一掃しいよいよと言うみたいに僕だけかもしれないが緊張感が走る。
リビングに備え付けられたモニターで外を確認するとやはりヒューズさんだった…。
今日は眼鏡をしていた。
「はい…」
『フューズです… えー… お迎えに来ました…』
「今開けますね…」
ガチャリと部屋の鍵を開け、まだ全員準備出来ていなかったのでヒューズさんを部屋に入れ、待ってもらうことした。
「いえ、連れていくのは… 姫様と正人君だけと言われています…」
「え…」
「すみません… この基地は… あー他の基地もそうですが… やたらと規制や秘匿された物や場所が多くて... その… 知る人は少なくする必要があるのです…」
「…。そうだったんですね… なら… 一六さん、二人をお願いしますね…」
「あ! はい! ちゃんと保護します! それがワガハイの役目ですから!」
「ご理解ありがとうございます… では行きましょうか…?」
二人を置いていくのは若干不安ではある、色んな意味で... 命の危険もそうだが、普段部屋でおとなしくしているとはいえ… 変なことをしないかやはり心配だ…。
ヒューズさんに案内され途中目隠しや耳栓などされながらも部屋の開く音と共に部屋に入る。
そこで目隠しなどを外すと…。
「やあ... 昨日ぶりですね、姫様… それと眷属の… 正人君だっけ…」
ロビックさんがテーブルを挟んで椅子に座っていた。
僕たちも椅子に座り、ヒューズさんは扉の横で立っていた。
座ると同時に扉は閉じた。
「それで… 本当にあるのか… 吸血鬼化を止める方法が…」
「ふふふ… いきなり本題ですか… ありますよこの基地には… あらゆる叡知があるこの基地でしかえられないのですから...」
ロビックはふいに自身の左腕を掴む。
機械音と共にロビックの左腕は肩から下が外れテーブルの上に置く。
「正人君… 君は魔術を知っているか?」
「え… ファンタジー的なあれなら…」
「そう… ファンタジー… 奇跡の技だ! 私の腕は遠の昔に無くてね… 今はこの魔術を使った義手を付け生活している…」
テーブルに置かれた腕をまた腕に付け直すロビック。
「…。現代の技術では何年も先だが… 魔術と組み合わせればこうして… 本物と見間違うほどリアルに動かせる! 私は魔術と出会った時、これを奇跡の技だと感じた… 無くした腕が返ってきたとね…」
狂信的に語る口と目はどこかイカれていたがさい切るのも悪いと思い話を聞く。
「それで… 魔術が… 吸血鬼化を止めるのに必要だと?」
「そうだよ… そうだよ! この基地では魔術と現代技術の研究などもやっていてね… その中でなんと… 魔術との融合で、吸血鬼の抑制剤を作ることに成功したんだよ!」
「抑制剤…」
「そうさ、まだ二次覚醒した吸血鬼までしか試してないけど… 力の抑制から吸血鬼が使うあらゆる力を弱め飲む量によっては完全に使えなくさせることに成功したんだ…」
「…。待て…」
テーブルに乗り出しながら説明するロビックを押し退け間に入るミル。
「それは… 本当に安全なものなのか…?」
「安全かどうかは… あなたの眷属に飲ませるまでは分かりません… 眷属や正人君みたいな事例はあったかもしれませんが… 私達が知る事ではないので…」
「そうか… お前はどうする、ヤツの話を聞いても… 飲むか、それとも日本に帰るか?」
「ミルのお気遣い痛み入ります… ですが、それではここに来た意味が無い、今する行動は事前に決めてきたはずです、なら…薬をもらえますか、ロビックさん…」
「そうかやはり…飲むか…! よし、ヒューズ君、正人君に薬を…」
「はい…」
彼の着る白衣から取り出される錠剤タイプの抑制剤を正人に渡す。
「ん… 水いります?」
「これが…。いえ…大丈夫です… お気遣いありがとうございます」
渡された薬を覚悟を決め飲む正人。
飲んだが… さして変化はなかった。
「…。なにも起こらない…」
「そうですね… 薬ですが… すぐに効くわけでは無いので… 毎日飲む必要があります…」
「それを先に言え!」
「…。すみません…」
なんか緊張の糸が少し緩んだからか、肩の力が少し抜ける。
「では、説明は終わりですので… 私はこれにて… 何かありましたら… ヒューズ君にでも…」
そう言い椅子から立ち上がり去るロビック。
「ん… 僕たちも帰りますか…」
「ではこれをお付けください…」
また渡される目隠しなどを付け部屋の前で外され部屋に着く。
「正人君のお薬ですので… 朝昼晩の食後に一回一錠でお飲みください…」
渡された袋には一週間分と書かれていた。
薬局かここは!。
と心の中でツッコミんでいるとヒューズさんは疲た様子で帰っていき、それを見送り部屋に入る。
なんか… 多少は良いところなのかここは!?。
部屋に入り、乾燥機を見に行き… ちゃんと半乾燥になっていた。
うん、これくらいなら…。
ミルやルーナ達が着る高そうな服はダメかもだから、様子見しながら適度に使っていこう…。
乾燥機から洗濯物を取り出し残りは自然自然乾燥に任せベランダに干しに行き、茶を飲みながら午前を過ごす。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
魔術と言えばFateですね。
基地の研究者は魔術師と普通の研究者がいると思ってください。
まぁ、何かしらロビックさんにも何かあると考えている人達もいたら良いなと思っています。
この話でルーナ達も出来たらかつやくさせたいなと思っています。
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