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第三十五話 粘着する執着③

「61… 62…」


 何回、100を数えただろうか…。


「73… 74… 75…」


 あと何回100を数えるえればこの場から出ようと思えるのだろうか…。

 あの寝室から逃げるように浴室に逃げた僕だが、再び会うことが怖くなる…。


「80… 81…。…ぐっ…!」


 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。

 頭の中でただ叫ぶことしか出来ない。

 夢だから良かった、もしあれが現実であったのなら僕は自らの喉を掻き切り生える歯を全部抜き、心臓を自身の刺し… 死んでいたのだろう…。

 考えてみたもののさすがに格好付けすぎだな…。そこまで出きるかは分からないけど、それくらい嫌な夢を見たんだ…。

 正夢にならないことを強く望む。

 僕の手でミルを殺したくはないし、彼女を失いたくない…。


「…ふぅ…。87… 88… 89…」


 はぁ…。

 今さらながら一人で湯船に浸かると嫌なことばかり考えてしまう。寂しいとか苦しいから助けてとか…。

 自身に言い訳するみたいにじわじわと頭を埋め尽くす。

 甘えているのだろうミルに。僕はミルに甘えている。

 とても甘えている。

 今もそうだし… 今生きているのもミルのおかげで... だけど夢を見て思い出した…。

 僕が初めて死んだあの日、僕は心の底から安堵していた事を。

 目が覚めて多少ガッカリしていたことを、つまらないことに巻き込まれて知らない少女と共同生活をさせられたけど心の端っこで常に膿んで、死にたいと叫ぶ感情がいたことを。

 それは、今もいる前より小さくなっているが常にいる。

 突然の事や、また知れた幸せや敵の吸血鬼との戦いで忘れてしまいそうになるが忘れていた方が良かったと思えるが、常に膿んで、心には治らない傷がある。

 痛くも痒くもないけどふと触れたり掠めるととたんに頭を支配されそうになる。

 今も数えるのを忘れていた。


「92… 93…」


 数字を数えて誤魔化しても今は誤魔化しは効かない。

 ただ、死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい... という考えが頭を支配しようとする。

 あんなのは夢だと割りきれば良いのに… あー! くそ…。


「96… 97… 98…」


 はぁ…。


「99… 100…」


 また100まで数えてしまった…。

 僕が1を数えようとした時、浴室の扉が開く。


「まだ湯を上がのは待てマサト」

「あ… そうですか…」


 ミルが脱衣所から音も無しに入ってきていた。気付かなかった。

 まぁ、一人で入っていた時とかにこうしてミルが途中から入って一緒になることはよくあり、慣れているから良いけど… 普通の家庭なら親突撃ものだな…。

 最悪身ぐるみ置いて追い出されるかもしれない…。


「ふむ、なぜ私も起こして一緒に湯に入ろうと誘わなかった… おまえがいきなり居なり驚いて部屋を壊すところでだったぞ… まったく…」

「…。すみません… 今日は一人で入りたく… て… その、起こすのは後にしてました…」

「…。そうか… なら私は出るとしよう… おまえにもそういう時があるからな…」

「…。いえ、一緒に入りましょう… ミル…」

「…。そうか…?」


 ミルは体を洗い終えると湯船に浸かる。

 僕を背もたれのようにして浸かる。


「ふー、向こうと湯加減は変わらずだな… 風呂がちと広くなっているがまあ良いか…」


 ほっとしているミルはとても可愛らしい。

 それはいつもと変わらずだが… こんな可愛らしい小さな体で... 僕を守っていてくれると言うミルがとても愛おしいと思えてくる。

 だからか僕の腕はまたこの小さな主様を抱き締めていた。


「な! いきなりどおしたマサト!」

「…。すみません…。今はこうさせてください… 嫌なら手を払っても良いので… お願いします…」

「…。分かった… 好きにしろ…」


 腕はミルの両脇から通され小さな肩を掴み抱き締めていた。

 ミルの小さな肩に頭をうずめて温もりも感じていた。

 こんなこと許されないのだろう…。

 女性にこうも積極的に触れるのは家族以外でミルしかいなかった。

 見た目の幼い少女を抱き締める僕は誰かに見られでもしたら呼吸困難になるかもしれないほど普段の僕には出来ない事だ。

 前回もそうだ。

 こんな芸当僕には出来ないはずだが、僕はその場の感情に任せて今もミルに甘えてこうして抱き締めてしまう。


「…」


 ミルの顔は見れてないけど、喋ってくれないのもそれなりに不安にもなる。

 僕がしたことで嫌われていないか、した行動は間違いでしかないし許して貰える無いものだ。


「1… 2… 3… 4」


 ミルは数を数えている。普段はお互いに喋りながらも楽しくなり、のぼせる前かのぼせるまで入るのだが…。

 数を数えるミルの声だけが聞こえる。


「32… 33… 34」 

「…。36… 37… 38…」


 僕はミルに会わせるように再び数えていた。


「99… 100! うむ… マサト、そろそろ熱いからさすがに離せ… おまえもそろそろ上がれ」

「そう、ですね…」


 僕はミルから手を離し脱衣所の方に向かい歩く。

 体を拭き用意された服に着替え髪を乾かしリビングに向かうおうとする僕の手をミルが止める。


「待て、忘れていることがあるだろう?」


 そう言いミルは髪をとかす(くし)を手渡す。

 ミルは脱衣所に用意してある椅子に座り髪をとかす。


「…。何があったんだマサト、先程から暗い顔で... (くし)を通す手がいつもより強いぞ?」

「…。すみません… 僕は日々ミルに甘えているなと思い… 気を付けようと…」

「…。本当にそれだけか? おまえの顔にはそれ以外もあると書いてあるぞ… 嘘は無しだ隠し事があるのなら相手に分からないようにしろ…」

「う… そうですか… ですがこれは… とてもミルに話して良いかも分からないものなので… 話せません…」

「そうか、なら良い私もおまえには隠し事をしている身だ…。私もこれ以上詮索はしないよう気を付けよう…。だが、辛いとき私を頼れ… 話しても良いと思ったらその時は話をおまえの不安を聞かせてもらうぞ? 私も… 時期が来れば… 話せぬことも話そう…」

「はい、約束します…」

「うむ、約束だ」

「なら、指切りしましょうか…」

「指切りか… 契約を結ぶとは命知らずだな…」

 「指切り拳万… 嘘ついたら針千本飲~ます指切った! これで約束は守られます」


 ニコッと笑うミルはどこかお母さんみたいと言ったら怒られるだろうか。

 こうしてした約束のおかげか、気持ちも軽くなっていた。

 風呂場での事がしこりとしてまだ心に膿んでいるけど、落ち着きいつもの自分を取り戻せていた。


「ふぅ、どうですかミル? いつも通りですが変なところは無いですか?」

「うん、大丈夫だ、おまえは良くやってくれている! 私が保証しようハハハ!」

「なら… 良かったです!」


 忘れたわけでは無い。

 消えたわけではない。

 まだ残り続けているからまた向き合う時が来ると分かっている。

 今度も向き合え無いかもだが、この約束が必ず身を結ぶと信じられたミルとの約束だから、これは契約だから守らなくてはと心に勇気を持てた。

 

 リビングに戻りテレビを見ているルーナ達と椅子で茶を飲む一六(じゅむ)さんがいた。


「もー長いよ眷属さん! 寝ていたのもそうだけど、お風呂いつまで入ってるの!」

「はぁ…そうですわ眷属さんと原初様シーナの言う通り… さすがにお腹が空いて先に食べていようかと思いましたわ… まったく…」


 用意された部屋のテーブルの上には並ぶ血液パックと先程暖めたと思えるレトルトのご飯。


「え、これ全部二人が!?」

「いえ、そこで茶を飲んでいるジュムさんが用意してましたわ、ささご飯ですわ」

「…。そうですか… ありがとうございます」


 軽く肩を落としながらも食事を五人で取る。

 ご飯を食べ終え洗い物も終えたら、また寝室に向かい明日に備える。

 明日は朝から洗濯し乾燥機を回すのも楽しみだが、明日呼ばれるこの基地に来た目的のものがあるか明日分かるため早めに寝るとしよう…。


 ベットに入り飛行機での疲れか横になった瞬間フワフワベットに吸い込まれそうになりながらも。


「おやすみミル…」

「ああ、おやすみマサト…」


 お互いおやすみと言い部屋の電気を部屋に置いてあったリモコンで消す。

 向こうにも欲しいな。

 電気を消すとミルは僕の体に抱きつくように寝る。

 いつもなら落ち着かず寝る時間は減っていたが、飛行機疲れからかまたすぐ眠ってしまった。

 最後まで読んでくれてありがとうございます。

 二人を家族として書けているか分かりませんが、いよいよ次からだと思います基地での目的は果たせるのか分かるのは! 予定どおり吸血鬼化を止めることが出きるのか次の話から分かると思います気分で変わるかもです。

 読んだ感想など待ってます。

 面白いと思ったらで良いので評価とブックマークお願いします!。 

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