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第三十四話 粘着する執着②

 正確ではないけど体内時計で5分が過ぎたと思う。

 僕はミルの膝の上でただ頭を撫でられ続けている。

 暗い部屋で恍惚とした顔で薄く光るミルに紅い瞳に見いられながらも理性がこの場をどうにかしようと考えている。


「…。なあマサト… 嬉しいか? 私に… こうして頭を撫でられるのは…」


 ピクリとミルの手から一瞬震えを感じた。

 

「…。はい、とても嬉しいですよ...」

「そうか! ふふ…」


 撫でる手が多少強くなるが、だんだんとこの場の空気に慣れたからか、頭を撫でられる事が安心するからか眠気が襲う。


「眠いのかマサト? ならこっちで寝るとしよう…」


 ミルは撫でる手を止め正人の手を引き布団の方に案内する。


「ミル…」


 僕はその眠気に体を任せ布団で眠る。

 飛行機での事もあってか自然と眠く… なって…。

 正人は目蓋(まぶた)を閉じ眠る。


「おやすみマサト…」


 そう言いミルも布団に入り正人の隣で寝る。






コンコンコン! 

…。

 扉を叩く音が聞こえる。

 僕はどれくらい寝ていたのだろうか扉を叩く音で目を覚ます。


「…。ふわぁ… ん?」


 隣で寝るミルを起こさぬよう慣れた部屋の構造を頼り暗い部屋内を進み扉の方に向かい扉のドアノブを掴むが扉は開かない。

 硬くドアノブが動かなかった。


「…? あれ… 壊れているのか…?」


 おかしいな… 寝る前までは動いたはずなのに?。


ドンドンドン!

 先程よりも強く扉が叩かれる。

 壊れてしまいそうなほど強く扉を叩く者が扉の向こうにいるのは分かるが… ミルが寝ているので静かにしてほしい…。

 かと言って、大声で状況を伝えてミルを起こしでもしないか…。

 いくら眠りが深いミルでも起きてしまう。


コン、コン…。

 こちら側から軽くノックする。

 とりあえず返事だけでもしようとノックだが、伝わってくれただろうか。


コンコン!

 どうやら伝わったらしい。

 だが、声は聞こえずじまいだ。このくらいの扉なら向かい側の音や声が薄くでも聞こえてくるものだと思うが…。

 耳を当て耳を澄ませてみるが何か聞こえるか…。


「………テ」


 小さく微かに声が聞こえるが、小さすぎて聞き取れないな…。


「…ス…テ」

「すて?」

「タス…テ、タスケテ…」

「助けて…?」


 小さく扉の向こうから聞こえる声は何か助けを求めている。

 この部屋にいない三人のうちの誰かだと思うが、緊急事態なのかもしれない。

 そうでないかもしれないまたルーナ達のイタズラかも知れないが、助けを呼ばれては行かないといけないそう思えてくる。


ガチャリ…。


 鍵の無い扉から鍵が開く音がした。

 掴んでいたドアノブがいきなり動くようになり体勢を崩して扉に頭をぶつけてしまった。


「イテテ…」


 ドアノブが動かなかったのは原因不明だが、部屋を出て助けを呼ぶ声がそこにいると思い扉を開けると誰もいない真っ暗な部屋に変わっている。


「え? 誰もいない…」

「タスケテ… タスケテヨ…」


 声は止まらず部屋の外から聞こえてくる。

 まさか、幽霊かと思えてきたが、自然と声の方に足は動いていく。

 怖くて震えていると思ってた足はすんなり動き自身が向かうべき道が分かっているように動くまるで自分の体で無いように。


「タスケテ… イタイ… クルシイヨ」


 小さく聞こえていた声の主に近づいているのかどんどん大きくなっていく。

 てか部屋の廊下ってこんな長かったか、暗いせいかいつもより長く感じる。

 助けてと呼ぶ声に耳を澄ませて進むまま行くとひとつだけ光る部屋があった。

 だがそこに部屋なんてあったかと思える場所にあったが、似た作りなだけで向こうとは違うと思い部屋に近づく。

 どうやら声の主はそこにいるらしい。部屋に向かうにつれどんどん声も大きく聞こえてくる。


「助けて… ねぇ誰か僕を助けてよ… 痛いのも苦しいのも、もう嫌なんだよ…」


 なんか知っている気がする声だった。光る部屋の扉を開けると光は目を覆いなにも見えなくなる。


「ぐっ! 何が... 眩しい…」


 暗いところに居たからかいきなり光は眩しい。

 目をつぶり慣れてきたところでそっと目蓋(まぶた)を開ける。


「う…。あ…」


 再び目を開け理解する、これが夢であるということを。

 だってあり得ない光景が、家族が揃ってテーブルを囲みご飯を食べているところ何て今の僕にはあり得ない光景だからだ。


 視界に入れたとたんにピシャリとガラスが割れるように亀裂が光景を裂くように走る。

 また僕はできた亀裂に向かい歩く。足は亀裂に入ってからは前に進むほど重く腰が曲がってしまいそうになる。


「ぐ…」


 今さら戻れない光景に少し涙を流してしまいそうになっていた。

 失わないと思っていたものが失って訳も分からず絶望した日々はあまり覚えていない。ただその日は警察に連絡して、高校の卒業式をサボった僕を心配して家に来た担任に卒業証書を渡され… あとは何かあっただろうか…。

 後日、必要だからといって警察に家族の顔が写った写真などを警察署に渡し失踪届を書き帰宅して…。

 誰も見つからなくて… 歩いて… 探して… ミツカラナクテ…。


「タスケテ… 助けて…」


 誰かがまた助けを呼んでいる声がする。

 先程まで聞き取りずらかったが、誰が呼んでいるのだろう…。


「助けて…」


 足取りはただ前に進む。

 明るい光景を背に暗い亀裂内を進む。

 進むにつれて、小さくうずくまる人が見えた。

 誰かいたと思い出すのもあの人が助けを呼ぶ声なんだと思い近づく。


「あ、あの… 大丈夫ですか?」

「ア… 助けて… 助けテ… タスケテ… タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ…!」

「わああ!」


 砂のように崩れなながらもただ助けを呼ぶ声だけは止まない。


「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、一人は嫌だぁぁぁぁ! タスケテタスケテタスケテ…!」


 その場を這いずりながらどこかに行こうとする。

 そして、助け呼ぶ人の目の前に光が出る。


「アア… ミル… ボクヲ… タスケテ…」

「え… いや、違うよね…?」


 その崩れながらも光に向かい呼ぶ名に僕は、はっとする。

 さっきまでただの夢の中で出てきた砂の人形とでも思っていたが、それは違った。

 あまりにも醜い姿に変わった僕だった。


「いや、違う… 僕はこんなやつなんかじゃ…」

「ミル… ミル… ミルボクヲミテクレヨ… ヒトリニシナイデ…!」

「違う… 嫌だ… こんなの僕なんかじゃない!」


 崩れながも光に向かい這いずり、光の中にいたミルの形をした彫刻の前に着く。美しい女神を思わせる彫刻に見惚れている正人だったが、這いずる方の彼はその彫刻に触れようとする。


「止めろ… 止めろ!」


 いくら走っても夢の中ではもう一人の自分に近づかず、這いずる彼は彫刻に指先が触れると光は消え彫刻は砂に変わる。


「…。あ...」


 これは夢だと分かっていても、胸が痛い。這いずる彼も泣いている、泣いて何かを詫びている。


「ごめんなさい... ごめんなさい... タスケテ欲しかっただけなんです…」

「許さぬ…」


 ミルの声が聞こえた。


「殺してやる… おまえだけは許さぬぞマサト!」

「はあ!!」


 僕の足元から、影からミルが顔と手を出し、足を掴み腰を掴み肩を掴み僕の体を支えに立ち上がりよじ登る。


「ハァープ!」

「ぐっ!」


 ミルが僕の首筋を噛み、牙が皮膚を貫通する。

 全身の血がどんどん抜かれていく感覚だけを感じて僕はなすがままこの現状を受け入れていた。


「はぁはぁ…」


 荒くなる息づかい、目の前にあるミルの首筋に僕は噛みつこうとした時、僕はいつものベットの上で目を覚ます。


「…。う... ん…。はあ!!? はぁはぁ… くっ… 僕は何て事を… ミルは…」


 布団をめくり横で寝ているミルを、すやすやと幸せそうに眠るミルを見ていつもは安心するところが今は不安になる。


 夢とはいえ許せなかったしたこと全てが... 夢だから分からない事があったが、殺し、殺した相手の血を飲みたいと一瞬でも考えてしまった僕が許せない。


 汗が凄く、下着は軽く透けていた。

 着ていた服も少し重く感じる。


「……。はぁはぁ…」


 どのくらいの時間寝ていたかは分からないけど、お風呂に向かうため部屋の扉を慎重に触る。

 一瞬触れるのが怖くて手を離してしまったが、再度ドアノブが動くことを確認して部屋を出る。

 リビングからの明かりが見えルーナ達だろうか声が聞こえ夢ではないと若干安心する。


 ヨタヨタと足取り重く風呂場に向かい予め一六(じゅむ)さんがだろうか脱衣場に用意された着替えに感謝しながら服を脱ぎ浴室に行く。


「…。あ…」

「え…」


 そこには服を脱いだ一六さんがいた…。


「あ! すみません!」

「いえ! ワガハイは気にしてないのでこちらで一緒に湯にでも入りませぬか正人殿!」

「え…?」


 脱衣場と浴室を繋げる扉越しに聞こえる一六さんの声。


「…。なら… そう… させてもらいます…」

「はい!」


 夢の中せいか気が疲れてか、後から(なぎ)に聞かれたら確実に殺されることを僕は承諾してしまった。

 なんだか、今日は良いかと… 思ってしまった。


「いやぁ! こうして背中流すことを薙兄様はさせてくれないのですよ! なんだか新しい兄様ができたみたいで嬉しいですな!」

「…。そう… 喜んでもらえているのなら良かったですよ…」

「…。では流しますね!」

「熱!」


 いきなり熱湯を浴び背中を曲げ飛び上がるように立つ。


「はーはは! いやすみませぬ! 湯加減を間違っていたようで!」


 シャワーから流れる熱湯を片手に当て温度を調整する一六。


「良いですよ、そのくらいで謝らなくても…」


 頭も全身も洗い終え、一六と一緒に湯船に入る。


「うーん! さすがに狭いですな!」

「いや、これでも向こうよりは広いから快適だと思う…」


 ミルとよく一緒に入ってたからか余裕ある広さに感じる。


「正人殿! お風呂は百数えるまで上がってはいけないのですぞ!」

「はいはい、そうですね」

「いーち! にーい!…」


 その後、百まで数えた一六は風呂を上がり脱衣所に向かったが、僕はもう少し入っていたかった。

 どうしても一人でいられる場所が欲しかったからだと思う…。

 一人湯船に体を休め、また一から数を数えていた。

 最後まで読んでくれてありがとうございます。

 1と2か前後編か迷いましたが、話がこうして繋がった方が面白いのかと思い変えてみました。もしかしたら前後に変わるかもです。

 正直書いていて主人公がどんどん私になってないか? と思い気持ち悪くなりましたが、後から変だと思えば修正すれば良いだけだと割りきりました。

 面白いと思ったらで良いので評価とブックマークお願いします。

感想も待ってます!。

Xもやってるのでそちらも夜街スイでよろしくお願いします。

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