第三十三話 粘着する執着①
飛行機を降り、顔に傷のある男の方に近づく。
男の態度や後ろにいる大勢の人がいることからここの代表だと思う。
震えそうになる手はミルに握られ安心する。
震えそうになる足はミルが前を歩き手を引いてくれるため自身が進むべき場所を示してくれるみたいで安心する。
降りる前は緊張が止まらなかったが、横を歩いて手を引いてくれる僕のご主人様の存在を感じられるだけで安心できた。
歩き男の前に着く。
僕達の後ろにはしっかりとルーナ達も着いてきてくれているようで良かった。
一六は… 任務だからかおとなしく着いてきてくれている。
そこまで慌てた様子でも不安を感じているようでもないようだ。
「どうも、初めての人はハジメマシテ! 私がこの第三基地の責任者を任せれている。ロビック・アルメキウスです!」
ニコニコと子供みたいに笑うロビックと言う男はこちらに握手のサインだろうか手を出してくる。
「あ、はじめまして日本から来ました田中正人です」
そう僕も名乗り男の手を握ろうとする前にミルに手を引かれ止められた。
「待て、知らないやつの手など握る必要など無い」
相手から僕を守るようにミルが前に出てきた。
「これはお久しぶりですね!姫様、以前と変わらずお美しい」
「知らぬものに褒められたとて嬉しいくなど無い…。それより貴様の手に隠したものは何だ? 針のようなものが見えたが… 見間違いか?」
「はい! 姫様の見間違いなどではありませんよ! 私はあなたの眷属にこの針を射そうとしましたからねぇ!」
そう言い男は手に着けていた手袋を取り手を見せてきた。
手袋の下に隠していた小さな針がキラリと光っているのを見せてきた。
「ふふ、これは姫様にたいしての私個人の挨拶です、私をお忘れでなければこのようなことはしませんでしたから…」
僕の手を握るミルの手が一瞬少し強くなるのを感じる。
ゆっくりとまたもとの強さに戻る。
「そうか… 貴様みたいな粘着質な男は昔から嫌われるぞ? だが知らぬのも事実だ、今回は許すことにしよう私の落ち度でもあるからな…」
「ははは、それはありがたき幸せ… では基地を案内しましょうか… ヒューズ君来なさい」
そう呼ばれ一人の白衣の男性が後ろにいる人を掻き分けて前に来る。
「あ、はい! すみません、そこ… 通して…!」
見た目からして… おじさんな人が来た。目にはくまが汚れてボロボロな白衣とバサバサな髪。
うん、研究者ポイ? と言えばそうなのかも知れない? 実際そう言った人には会ったことが無いから分からないが…。
「彼は、ヒューズ・クライム君、この基地で一二を競う優秀な学者で、今は研究するものが終わり暇人ですから案内役を今回の案内役を任せています。変人に見えるかもしれませんがどうぞよろしくお願いします姫様」
「どうも、ヒューズ・クライム… と申します。今日から皆様の案内役兼基地での相談役を任されましたのでよろです…」
軽く会釈し挨拶を交わす。
「では、後の事は任せたよヒューズ君?」
そう言いロビックは後ろにいた人達を引き連れ基地の奥に帰っていった。
残されたヒューズを置いて。
「では、皆様の部屋に案内させていただきますので… 着いてきてください」
「あ、はい!」
「…」
ミルは警戒してかヒューズを睨みながらも基地の方に歩くヒューズに着いていっている。ルーナ達も後に着いてきていてくれた。
「あの、この基地に本当にあるのですか… 吸血鬼化の期間を延ばす方法が…」
疲れているのか腰を曲げゆっくりと歩くヒューズに聞く。
「…。あー… それはあなた次第ですマサト君、来たからには受ける覚悟があるからですよね? なら後は結果を信じるしかありませんのでより良い結果になることを祈ってれば良いのでは?」
「…。そう…ですね…」
「…。あー… 長い文、喋って喉痛ぁ~…」
気だるげに話すヒューズは喉に手を当て痛む喉を撫でている。
正人達はヒューズに案内され部屋に着く。
「では、ここが皆様の宿泊する部屋ですので…」
そう言われ着くが… よく知る部屋の構造で… 家具こそ違ったが、ここがよく知るいつもの部屋だと思う。
ヒューズに部屋ごとの案内をされ、テレビやお風呂などが向こうよりも大きいことに軽く驚きとショックを受ける。
「では、私はこれで… 詳しい話は明日にあるのでその時迎えに来ます… ちゃんと起きるようお姫様にも言っておいてくださいマサト君…」
バタンと部屋の玄関の扉が閉じる音と共にルーナ達は、はしゃぎ出し早速お風呂に向かった。
「はあ、やっとお風呂に入れますわ!」
「まったく… 1日もかかるなんて聞いてないのですが… 乙女のお風呂がどれだけ神聖か基地の人間達は分かっていないのかな…」
お風呂に向かい歩く道に脱ぎ捨てられる洗濯物を一枚一枚回収し二人が浴室に向かったのを確認して残りの洗濯物も回収する。
「はぁ、マサト… 向こうでの癖が出ているぞ…」
「…。は! あ、いえ… これは… 汚い道をミルに歩いてほしくないなぁ… と思いまして… その~…」
「まあ良い… 早めに洗濯物を集め翌朝に干すのはおまえの習慣だから仕方の無いことだが… 不用意に脱衣所に入るのは止めい… もしものことがあってはいけないからな… まったく…」
「…。すみません…」
持っているルーナ達二人の洗濯物を部屋に置かれたかごに入れとりあえず洗濯機の前に置く。
なんとこの部屋には乾燥機も置かれていたのだ!。
向こうにはないこともありウキウキと明日の事を考えながらリビングに戻り部屋に置かれた笹原が用意すると言っていた僕らの荷物が入ったキャリーケースと段ボールを確認する。
「ワガハイ手伝います正人殿!」
暇だったのか一六と一緒に荷物の中身を確認する。
キャリーケースの中に着替えや歯ブラシなどが揃っている。
用意が良いのか段ボールの中にはレトルト食品と日本食の缶詰が揃っていた。
海外と考えて向こうの料理と思っていたが、これは… 笹原の優しさなのか、複雑な気持ちになりながらも嬉しくはある。
箱の中に手紙が一枚入っていた。差出人は防衛大臣と書かれている…。
中身を確認し読む。
『やあ、向こうに着いた正人君、まだ生きているかい? 死んでたらこの手紙も読まれてないことだろうが、生きていてくれているようで良かった。たぶん今僕はとても忙しく君個人に庇ってあげられるほど暇でないため手紙を書きました。必要事項としてその日本食メインのレトルトや缶詰は食べてはいけません、それは一六隊員用なので食べると正人君にとても不都合な事が必ず起こりますのでお気をつけてください。
では生きて帰ってきたからっと言って殴らないでください。
嫌われもの笹原より』
僕は読み終えると同時に紙をグシャリと丸め捨てようかと考えたが… 一六の事を忘れてしまいそうなので我慢して綺麗にもとの状態に戻し封筒に戻した。
「おいマサト、こっち来い」
「…ふぅ… はーいちょっと待ってください。あ、一六さんも荷物確認止めて二人がお風呂上がったら入ってきて良いからね?」
「あ…」
荷物を確認する手を止め一六が答える前にミルの方に歩く正人。
「あ… ありがとう… ございまする…」
そのまま荷物確認を続ける一六。
正人はミルのがいると思われる寝室に向かい歩く。
部屋の構造が同じため迷うこと無く進む。
「お! マサトこっちだ座れ」
「何ですかミル、僕まだ一六と荷物の確認が...」
「良いから私の横に座れ」
言われるまま、ミルがポンポンと叩く布団に、ミルの横に座る。
「二人きりだな…」
そうミルが言うと開いていた寝室の扉は勝手に閉じ部屋の電気も消える。
「…! あ、あの、ミル… これは…!?」
「何を戸惑うことがある。おまえとただこうして部屋で過ごしたいと思っていただけだ…」
そう言いミルは僕の頭を優しく撫でた押した僕の頭は吸い込ませるようにミルの膝に着地する。
世に言う膝枕だと僕の心は不思議と戸惑いと歓喜の嬉しいさでどうにかなってしまいそうだった。
普段ミルはそこまで積極的ではない、こうして二人きりだな、とか言ってくることなんて今まで無かった分、僕も理性ある人間のままでいられたが…。
「どうしたマサト… 息が荒いぞ? どこか苦しいのか!?」
そう言い僕の頭を撫でる手に僕は発情してしまいそうになる。
抑えるは理性、出会った時とは違うまったく違う獣が僕の心に宿る。
大人として社会人として必要な理性が今それを抑えている。
「あ、あのこれ以上はいけないのでと… 思うので… 失礼を…」
そう言い膝から浮かせた頭をミルが押さえる。
強くではない。優しくだ。
押さえられた頭はまた膝に頭を着地させる。
抵抗できる強さなのにしないのは… 僕の心の弱さか!。そうなんだ…。
「マサト…」
そう呼ぶミルの方を見ると部屋の暗さに関係なく赤く薄く光る瞳が僕を見ていた。
獲物を仕留めようとする吸血鬼がそこにはいた。
僕は… 生きてこの部屋を出ることが出きるのだろうか…。
間違いだけは犯したくない… この関係が続く限りこの先ずっとそう思うからこそ、この状況は… どうしようか…。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
基地での行動は後からですね!。伏線などは苦手なので行き合ったりばったりの素人作品をよろしくお願いします。
私は恋を知らないので素人の恋愛みたいな話になるかもですが、読んだ感想など書いてくれると嬉しいです。
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