第二十五話 新しい朝が来た
朝目が覚める…。
杜宮の屋敷の時と同じで早めに目を覚ます。今日からまた薙の特訓が始まるからだ。
あれ? ミルがベットにいない… 何時もなら横で寝ているミルがいないのはおかしい…。
とりあえず着替えて部屋の外に出よう…。この部屋内にいるはずだし焦ることはない。
さすがにこの基地に吸血鬼が潜入してミルだけを拐うなんて事が出来るはずがない。側にいた僕が気付かないはずが無い。
よし、着替えも済んだしリビングに…。
「起きたか…」
「え… ミルが早起きしている…!?」
え… なんだこれ… 夢? 僕はまだ寝ぼけているのか… 頬をつねってみるが痛いだけでこれが現実であることになおさら驚く…。
普段朝になるまで起きないミルが… 僕以外が起こすと不機嫌になるミルが… 自ら早起きをしている!?。
「はぁ… そんなに驚くことか…?」
「驚きますね… 眷属としての付き合いはまだ短いですが… こんな朝からミルを見るのは始めてだったので… あの、本当にミルですか?」
「ほれ、さわって確かめるか? 何て事をしなくても本人だ… 眷属なら主人の事くらい分かれ… まぬけ」
「はい…。それで… 何でこんな朝から起きたんですか…?」
「なに単純なことだ。お前は少し特殊だが… 私の同行なしに出る部屋から出ることは許されはしない。最近忘れぽいぞおまえは…」
「すみません... ですが僕は訓練場までなら…!」
「…そのお前が…心配だからだ…。…分かったのなら行くぞ? あの人間を怒らせてはおまえの身がもたないからな…」
朝から驚くことがあったが部屋を出て基地内にある前回と同じ訓練所に向かえと手紙には書かれていた。
僕に3日で基礎の基礎とはいえ剣術を教えてくれた薙には感謝している。
薙のおかげで僕は新しい戦い方を身に付けられそうだと前回の戦闘で知れた。
5分ほど歩いて訓練所に着く。
訓練所の室内は前と違って薄暗く何か不気味であったが明かりの見える部屋に入ると薙が正座で待っていてくれた。
「来たか… では原初の姫は外でお待ちを…」
「待て… 貴様らはマサトをどうしたいかだけ聞かせろ… 私もこの基地に戻り腑に落ちないことが多々ある… 一つくらい答えてもらおう…」
薙とミルは距離があれど視線を合わせる。正座の薙とちょうど目が合うミル。
「それは… 俺の知るところではなありません…。俺はあくまでも田中正人の実力を上げろと上からの申し出をしているまで…」
「まぁ良いか…。ならそれを全うしろ… もし私の眷属を殺すことになれば貴様らを私が殺すと伝えておけ…」
そう言いミルは部屋を去る。怖い顔のミル相手に臆すること無く話をしている薙。
僕なら全て話してしまいそうになるのにすごい…。
「では原初の姫も行ったことだ… 訓練を開始する… 前と同じで木刀を振るところから始める…」
薙が木刀を渡す。
屋敷にいた時と同じで薙が止めるまで振り続けるが、吸血鬼の力か疲労はない。
振る時に間違いがあれば薙は直ぐに教えてくれる。
「…… よし。振りは完璧ではないがある程度形になってきている。今日は新しく刀での実践的な剣術を教える…」
「え… それは僕にはまだ早いのでは?」
「…悠長な事を言う。時間が無い… お前の意思を聞いていては誰も救えはしないぞ… 良いから教えた通りに構えろ…」
「…。分かった…!」
薙がまた一から木刀での振り方を見せてくれる。
「良いか…。木刀の持ち方は変えてない…。縦に横に切る。だが吸血鬼相手に切るだけじゃ、手足を切る以外では足留めにもならない。狙うは心臓を一突きで仕留めろ… それが吸血鬼の急所だ…」
「…。急所はミルから聞いたけど… 何で心臓が急所なの?」
「そこに血が集まるからだ。人間も吸血鬼も血の流れを止めれば死ぬ。吸血鬼の場合… 血自体が力であり命なんだ… 流す血が多ければ消費され… 弱くなる… なら心臓を止めれば全身に血がめぐらず… 肉体の再生も止まり灰になる… 首を切るのもあるが… それは手足れ相手では無意味だ…まぁお前みたいな虫相手なら有効だがな」
薙は淡々と説明してくれた。正直以外だった…。
訓練中は訓練以外の事を話してはくれないのかと思ったが… 案外話せる人なのかもしれないな…。
友達とかにはなれなさそうだけど…。
「これで一通り振り方、足や全身の動きは見せた…。今のお前の目ならそれなりに見えただろ…?」
「うん… 全部ではないけど... でもやっぱりこれは僕にはまだ早いのでは…?」
「…。早いか遅いかは関係ない… ただでさえお前には時間がないんだ...」
「……」
淡々と剣術を教える薙。
僕は言われるままさっき見ていたイメージに合わせて教えられるまま木刀を振る。
今は吸血鬼化が進んでいる事は忘れてない…。安心感から一時忘れていたことはあったけど…。
だからか剣術の訓練に身が入る。
「動きが固いぞ…! 肩の力を抜け… 関節など体の動きにも意識を向けろ!」
「は、はい!」
こうして薙に注意されながらも木刀を振る。
前回と違い覚えることは多いけど、ミルを守るためと思うと辛くなんて無い…。
「…。よし、今日はこれで終いだ…。木刀を構えろ…」
「…」
最後は今日も打ち込みで終わる。
「はぁ!」
「腕の振りすぎで脇が空きすぎだ…。肩も力むなと教えたはずだ…。下半身にもちゃんと気をくばれ… なによそ見してんだ… 頭割るぞ…?」
「ぐっ…! はぁ!」
「相手の全体を見て反射的ではなく動きに合わせて躱せ…。お前… 躱すのだけは上手いんだからそれくらい出来ろ…。木刀もやみくもに振るな… スピードは少しずつ上げていくが… 体で覚えろ…」
息をする余裕すら無い…。
薙は時に僕の木刀を受け、わざと隙を見せてそこに攻めれば僕に向かって木刀を振る。
痛い…。
「…。今日はこれで終わりだが… 明日はもっと厳しくしていく… 遅刻厳禁だ…」
「ハァハァ…」
「…。ちゃんと休め… じゃあな…」
薙は部屋を去る…。
僕も息を整えて部屋を出るとミルが椅子に座り待っていてくれた。
「お疲れ様ですミル。すみません待っててもらって…」
「…」
ミルは声をかけても無反応だった…。
まさか… 僕に対して厳しい訓練をした薙に怒っているのか…。
「ミ、ミル? どうしましたか… あれは… そういう訓練だからしょうがないと…」
「…」
「…。あれ… これって… 寝ているだけ?」
よく見たからただ座ったまま寝ているだけだった。朝から早起きしたから寝たり無かったのだろうな…。
よし、ミルを背負って帰ろう。
部屋に着きミルをベットに降ろす。そっと起きないように慎重に…。
「… ヘヘヘ…」
「…ふぅ…」
よし、僕も一眠りしたいけど… 朝食の準備に…。
そう思ったがミルに手を掴まれる。
何事かとビックリしてしまった。
「…。行くなルル… 私をおいて… 行かないでほしい…」
「…!」
ミルは何か嫌な夢でも見ているのだろう…。ルルは先代の原初でミルにとっては親みたいな存在。
そんな原初との別れだろうか…。
僕はそっと頭を撫でたり手を握るくらいしか出来なかった。
「…」
ミルも寂しいかったのかな…。
掴んだ腕も離され… もう大丈夫だと言われているようだった。
そう思い、僕は洗面台に向かい顔を洗う。
最近やたら早起きが多くなったからか… 朝日が気持ちいい体になる…。
「う~ん…! はぁ…」
体も朝日を浴びて伸ばすと気分が良く今日も1日頑張れそうだ。
今日からまた新しい生活が始まる。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
毎日投稿を目標にしていますが… 理想に少しでもと思うと書きの手が止まり… 考え込んでしまいます…。
投稿されたか早めに知りたい方はXで夜街スイと検索してくれればありますのでそちらでご確認を。
感想なども待っています。




