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第十一話 吸血鬼と陰陽JK

 ホテルの部屋でミルと休む。


 部屋内は豪華な装飾と室内バーがある高級感溢れるホテルで慣れないせいか気分が悪くなる。

 水を飲んで少し気分を落ち着け、さっきの事を思い出す。いくら力を付けようとまた死にかけてしまった事を。

 やはり今の僕では吸血鬼一人抑えられないのか。


「あまりさっきの事を気にするな、おまえの命があったことだけに感謝して今は落ち着いて人間達の指示を待て…」


 ソファーに座りながら普段元気なミルはじっとしている。今がまだ作戦内であるからかじっとこちらを見てくる。


「……」


 部屋内には緊張感から沈黙。部屋内には僕とミルと変装した自衛隊だろう隊員が3人。


 トントンと部屋の扉を叩く音。

 開ける前に自衛隊内で決めた合言葉を言ってから開けていた。

 この部屋含めたこの階はまるごと貸しきっているから関係者以外入ってこれないはずだから…。

 確認が済んでかガチャと扉を開ける。


「君はさっきの… 学生さん?」

「いかにも正人殿! 遅れた自己紹介今こそ解・禁…! フハハハ、我こそは…杜宮二八(もりむらふたば)! 隊員さ!」


 背景にでかい効果音がつきそうなポーズをしながら自己紹介してきた。


「ふふふ、どうですかこの決めポーズ日曜の朝やってるヒーローみたいでしょ! カッコいいですよね!!! ね!!!」

「あの… まず何から突っ込めば良いのか分からないけど… あまりの緊張感の無い自己紹介にミルが… 固まってしまっています…」


 ミルは顔色一つ変わっていないが… 遠く見ている。常に一緒にいた僕にはわかるこれは…。


「お腹が空いたんですかミル?」

「な! 何を言う、作戦中に… いつ吸血鬼が襲ってきても可笑しくない無いから持ってきた血を飲む暇が無かったとかではない!」

「全部言っちゃってますね。ははは! 別に今は休憩して良いですよ。警戒は仲間に任せてますから」

「ホントか!」

「でっ! 君は誰なんだ? 基地の… 隊員さん?」


 ミルは昼間に言っていた影空間からいつもの血液パックを取り出し飲む。


「私が誰か… ふふふ…。聞きたいですかそれを。良いでしょう! ミステリアスクールな私の秘密も解禁させたいと… 良いでしょ教えてましょう! ふふ、私は後ろにいる人達とは別部隊の…。、そうですね、国家の秘密部隊所属の陰陽師っすわ!」


 またもや何かポーズを決めながら話し始めた。


「陰陽師… 陰陽師ってあの安倍晴明とかのあれ? まさか陰陽師が国家の秘密部隊だったとは…」

「あー… そうですが…、ちょっと違って安倍晴明さんとかとは何も関係無いから勘違いは無しで、その部分この界隈でデリケート問題なんで…すみませんが脳内訂正お願いします」


 両手で狐でコンコンとしながら話しているが…。本当に緊張感の無い…。


「それで… 君が来たって事は作戦に何かあったとかなの?」

「いえ、私が来たのは単に様子見ですね。それとアイスブレイクを兼ねて来ました」

「あ… そうだっただね…」  

「え… まさか防衛大臣みたいに陰湿感マシマシなのが良いんですか、変態ですね… え、怖… マジで治した良いですよその性癖…」


 あー何かコイツ嫌い。イライラする!。


「とまぁ冗談はこのくらいにしてここからが本題です」

「えっ! 今までの冗談…?」

「はい注目、私の上司から指示です。作戦はこのまま継続。今は休んで明日に備えとけぇ! と伝えろと言われて来ました」


 シュバッとポーズを決めながらするのをいい加減やめて欲しいが…。作戦はまだ続くのか…。

 「では私はここで失礼」と二八が言った時、ホテルが揺れる。


「何ごと!?」


 ドタバタと一人の隊員が入ってくる。


「緊急事につき失礼します! 浅草の町中で吸血鬼らしき者が人前で暴れています! 吸血鬼によってか浅草に謎の透明な壁出現により電車の運行停止! 浅草に… 閉じ込められました!」


 「なるほど…」と二八は冷静に言う。


「そんな… くっ! 何をしている今すぐ行かなくちゃ駄目だろ! 杜宮さん!」

「いや、少し待てマサト…。今すぐ行くのはまずい…」

「そうですよ正人さん。これは吸血鬼側の罠です。現場に姫様を呼び出すための吸血鬼による…ね」

「だとしてもこのままじゃ大勢の人が死ぬ! 良いんですかミルも!?」

「それはそうですが… 少し落ち着いてください」

「良いからおまえは落ち着けマサト。今は敵の出方を分析するのが必要だ…」


 くっ! どうしても行かないというのかこの二人は。こんな場所でおおやけに吸血鬼が出て何もできないのか。このままじゃ大勢の命が…。


「分かりました。僕一人で行きます。ミルはそこで杜宮さんに守られていてください」

「君に何ができるんですか正人さん。人より少し強いだけの君に?」

「そうだやめろ。今のおまえでは吸血鬼には勝てない。生き残ることは出来ても勝つことは出来ない…」

「それでも何もしないよりは良い方に向かうかも知れない! 僕が行くことで一人でも多くの人を助けられるかもしれない!」


 ぐっと僕の胸を掴む二八。


「いい加減にしてください正人さん…。

人助けとはずいぶんと余裕あることを言いますね…。ここで言い争っていても埒があきませんから君のために言いますね。

良いですか、ヒーロー活動がしたいなら力を付けてからにしてください。もし負けても逃げることすら出来ず君が人質となって一番苦しむのはそこにいる姫様なんですよ!。

死ねば終わりとか考えるな、今の君は人間と吸血鬼の間くらいで人よりも死ににくい…。

酷い拷問もされるかもしれない、それでどんな小さな情報からでも基地の場所を知られれば人間は… 世界は終わりです…。

いい加減頭を冷やしておとなしく私達に守られていてください」


 手を離された瞬間腰が抜ける。


「情けない…。その程度の気持ちで人助けする気でいたとは…。では今度こそ私は失礼します。おとなしく部屋にいてください正人さん…?」

 

 バタンと扉は閉じる。

 僕は何かを間違っていたのだろうか。僕の胸を今刺すようなこの痛みはなんだろう。


 ヒーロー活動がしたいわけではない。

 力を試したいとか調子に乗っているとかでもない、だってさっき死にかけたばっかりで… 僕に出来ることをしようと…。


 でも… そうだ。僕はまだ死に場所を求めているのか…。最後を人を助けて死ぬという格好の良い死で終わろうとしていたのか。


「ぐっ…。うっ!」


 胃液が逆流する感覚にトイレに走る。


「おぇ… おぇぇぇ…! ハァハァ… おぇ… おぇぇぇ…」


 どうして忘れていた…。僕は… ミルを守るために、必要だからとかそうではない…。たとえあの防衛大臣からしたら捨て駒の一つであってもミルを守ると決めたんだ。


「それなのに僕は… くっ! くそ…」


 頭が冷えていない… おかしいのは僕の方だった…。


 部屋に戻りミルに謝ろう…。あと次会ったら二八にも…。


「…。ミル… 僕は…」

「今はまだ作戦中だ。いつ襲われていてもおかしくないと言ったはずだ…。だから謝罪は後にしろ。終わったらいくらでも叱ってやる…」


 言おうとした言葉を「ごめん」の言葉を飲み込む。


 外は騒がしく、吸血鬼が暴れているのだろう。

 こうしてまた多くの犠牲者が出るのだろうか…。


 ミルはいつもこうした経験をしてきたのだろうか…。

 ただ時間だけが過ぎていく。渡された腕時計の針が揺れる。

 爆発音か大きな音が、浅草の街に止まず聞こえる。それでも僕らはソファーに座りながら次の指示を待つだけだ。

 焦る気持ちと何も出来ない虚無感が、時間を忘れさせる。


 ドンドンと扉を叩く音。合言葉を交わし扉は開く。


「とう! 先程ぶりですが正人さんどうやら落ち着いてくれたらしい…」

「…。さっきはごめん… 僕が悪かった…」


 言えた。

 杜宮二八に謝ることが出来た。


 「謝る余裕は出たか。なら場所を移しますか! 姫様吸血鬼の結界を解くためにお力を…」 

「…。だろうな… そうしなくてはここから出られない。協力しよう…」

「現在、作戦本部との連絡が出来ない状況で… 連絡がとれるまでの間、私のお兄が指揮を出すらしいから…」


 ホテル内を走る。安全のため非常用の階段を利用して降りる。


「らしいって… 何も知らされてないのか…」

「いや、お兄… 上司が、姫様の結界解除の協力するよう頼んでこいと部下に命令して一人で吸血鬼を全員倒す気で出ていったんだよね…」

「…。大丈夫かこの部隊…」


 外に出ると遠くで明かりが見える。


「燃えてる…」

「…。吸血鬼の仕業だよ、ほらボーとしない。術を使った吸血鬼を探すよ!」


 「ん…!」とミルに手を引かれて走る。


「ん? なんだあれは…」


 ふと遠くを見ると何かが光っていた。光が見えたと思えばミルが掴む僕の左腕は切られていた。


「な! マサト!」

「ぐっ… あぁぁ…。何が起こったんだ…」

「カカカ… 外したか…。男の方を真っ二つにしたかと思ったが…」


 カランカランと下駄を鳴らし近づく男が一人。こんな時に出会うのなんて吸血鬼しかありえない。


「正人さん! 姫様を連れて死ぬ気で逃げてください!」

「…! 当たり前だろ!」


 ミルの手を掴もうとした瞬間僕とミルの間に入る男。

 何も見えず一瞬だった。


「ン? よく見たらおまえ…。お嬢達が言ってた姫とか言う原初の吸血鬼の眷属じゃねぇか! あぶねぇ切り殺すところだったぜ」


 男は腰に刀だろうか刃物を鞘にしまう。


「なんの真似だ貴様…」

「というと… おまえが姫様か…。何だ、運が良いじゃねぇか今日は。目当ての男と原初の姫にこんなすぐに出会えるとはなぁ…」

「な! 逃げろマサト! 狙いはおまえだ!」


 逃げる暇もなく首を掴まれる。


「じゃ、帰るわ」


 目の前が歪みだす。歪んだ瞬間、男と共に知らないここは何処かのオフィスだろう場所に着く。ついた瞬間手を離される。


「くっ! ゲホゲホ…」

「ほい、連れてきたぞお嬢…。いつもの青い方のお嬢は留守か…?」

「そんなことよりも、ちょっとゼル! 原初の眷属さん怪我しているじゃない!」

「眷属は生け捕りの契約だったはずだぜ? 腕の1本くらいで…。まだお嬢との仕事があるんでね失礼するぜ…」


 男はその場から姿を消す。まるではじめからいないと思えるほど一瞬で消えた。


「まったく雑なのよ… はぁ…。ようこそ原初の眷属さん!。いきなりでごめんなさい、今からあなたには人質になってもらいますわ!」


 目の前でドレス姿の少女は決めポーズだろうポーズで椅子から立ち上がる。

 頭の可笑しそうな少女を前に、ここからどうやって逃げ出せば良いんだ…。

 最後まで読んでくれてありがとうございます。


 グロいですかね、これくらいなら許されますかね?

 面白くないと感じたところなど面白かったところなどの感想待ってますそれが励みになります。

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