表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/69

第十話 Heyジェントルマン

 予定は完璧だ。


 事前に車内で考えてきた旅行会社時代に研修で培った経験を今こそ発揮する時!。


「結局… 生かす前に退職したんだよなぁ…」


「ん? 何か言ったかマサト」


「いえ! さあ、浅草観光と行きましょうかミル」


 ミルと手を繋ぐもう見失わないために離れないために。

 浅草は観光地だ。

 人も多く、油断すれば一瞬で拐われかねない。

 二人で色んな場所を回る。有名なかっぱ橋と商店街、雷門やそして…。


「ここが最後…。浅草神社です」 


「ほほう…。神社か…」


「ここに来て最後お参りとお守りを買って締めとします」


 浅草神社。

 実際僕も来るのは初めてだけど、ここまでは順調だったんだ。このまま行ける!。 

 手水舎(ちょうずや)でお参り用の賽銭を洗いお参りに向かう。


「お参りは二回礼をして二回拍手して一礼をします。その時頭の中で願い事や目標などを言うのが一般的です」


「何かを願はなければいけないのか?」


「必ずそうする必要はありません。来るだけでも御利益(ごりやく)はありますから」


「そうか…」

 

 僕らはお参りする。

 僕が言ったようにちゃんと二礼二拍手一礼をしているミルを横目に見る。


 自分で言っておいてなんだけど。

 本当に来るだけ気分は落ち着いて感覚が研ぎ覚まされるていくようだ。

 このままミルが幸せであることを願おうと来るまで思ったが、ミルを守れるくらい強くなる事を神様と約束した。


「お守り買いに行きますか」


「そうだな…」


 ミルは祈りを終えてから何か考えているように見える。

 僕も気をより引き締めて頑張らなくては…。 


 浅草観光はこれにて終わり。

 だがまだ空は夕焼け…。浅草に一週間は吸血鬼が釣れるまではいるように言われいる。


「どうしますか…。そろそろ夕飯にします?」


「いや… 少し歩こう」


「え?」


 今度はミルが僕の手を引く。


「何処に行くんですかミル。そっちには何も無い。ほら人の気配も無くなって…」


「走るぞ…!」


「えっ! ちょっ!」 


 ミルはひょいと僕を抱えて走り始める。揺れは無く安定していたが、建物の壁と壁の間を利用して上に飛びのはかなり怖い。


「え! もしかして吸血鬼が出たんですか!」


「喋ってると舌を噛むぞ、今は… それどころではない…! あれはそこらのやつらとは違う… 私を追ってここまで来るとは…」


 何時もと違いミルの(ひたい)には汗が(にじ)んでいた。 

 屋上という屋上を飛び越え、先程までいた隅田川に着く。


「ここに… よかった今は人間はいないな…」


 ミルは僕を抱えながら着地し辺りを確認する。


「いるのだろう…。姿を見せろビクター…!」


 ミルは周囲の確認を済ませると暗闇に向かって問いかけている。


「やはり気づいてましたか」


 ゆらりと影が揺れ溶けていた化物を吐き出した、明かりのある現代の夜に影が支配する世界から来た化物が紳士服、日本に似合わない次代違いの姿で現れる。


「もう少し暗くなるまで様子見と思ってましたが、まさか、こんな所で偶然あなたに会えるとは姫…」


「偶然などではないだろうビクター… 元とはいえ同じあの人の眷属であった私の位置などあの場所を出を出た時点でいち早く他の吸血鬼よりも早くお前達なら出来るだろう… 監視のためにな、そうだろう?」


 笑みこそあれミルは吸血鬼から目を離さず見続けている。


「…お許しを姫様それも全てあのお方の考えあっての事」


 現れた吸血鬼はその場で謝罪からかミルに腰を曲げ頭を下げる。


「何でここにあの時の吸血鬼が...!」


 ミルから下ろされて気づく。あの時、ミルと初めて会ったときにいた勝手に脳内でジェントルと呼んでいた紳士姿の吸血鬼。


「おや、少年生きていたのか? 確実に心臓は突いたのだが…。いやまさか! 姫! この人間を眷属としたのですか!」


「ふん…。だからなんだと言うんだ?」


「何と愚かな事を…。匂いで分かりますよ…。そこの人間は()()()()()()()()()()。何故吸血鬼にしないんですか! 人間から同胞を増やせるのはあなたしかいないというのに…。まさか、次代を作る気は無いと?!」


 ビクターという吸血鬼はあまりのショックからか被っていた帽子を落とし頭をグシャグシャとしだした。


「以前も言ったはずだ…。私は血でしか偉ぶれないおまえ達とは違うとな。私の血は… あの日お前が殺した人間の命を救うので最後だ」


 知り合いなのだろうかミルとあの吸血鬼は、ミルは先程からどこか懐かしげな顔に見え… そして苦しそうだ。

 吸血鬼は焦りが見える、先程あった笑みも消え僕達を見て嘆き共にとれる顔をしている。


「原初としてあなたがするべき事をお忘れですか。あなたが眷属を作るという意味を! 吸血鬼にする気のない眷属は… 私が駆除させていただきます」


 ビクターは残像が見える早さで風を切る音と共に消えたと思えば、踏み込む音すら聞こえない早さで僕との距離を詰める。

 以前、僕の胸を簡単に貫いた指の突きがまた僕の胸に迫る。以前は一瞬で分からなかったが今回は見える。


「ぐう…!」

 

 今回は着ていた服を少し(かす)めて切られるぐらいですんだ…。


「さすがに避けきるのは無理だったか…」


「油断するな、やつの強さはおまえよりも何倍も上だ。避け続けろ!」


「あの! 一緒に協力してとかは無いんですか!?」


「それは無理だ。私の力は強すぎて橋を崩しかねない、もっと広い場所でなら使えるが私達はこの地を離れる事は出来ない。すまない助けが来るまで耐えてくれ!」


 避け続けながら話を聞く。どうやら僕のパーティーには魔王がいたらしい強力な攻撃メインの魔王が。

 助けって… 誰が。


人間(食料)の分際で…。良いだろう… 私の本気を見て死ね…」


 あっ、こっちにも魔王がいた。


「何かあの吸血鬼腕がどんどん赤黒くなっているですけど…!」


「以前話しただろう。吸血鬼の覚醒を。貴様は一次覚醒だが… アイツは三次覚醒した吸血鬼、通常の吸血鬼ですら恐れる化物だ…!」


「化物って、僕から見たら吸血鬼は皆化物ですよ!」


 暗くても分かるのは夜目だからか、相手の手はどんどんと赤黒くなるのが見える、力を溜めているようだ。今の内に逃げたいが、逃げきれる気がしない。前回殺されたって事もあるけど… ここで逃げたらこの先ミルを護れる自信が無い。


「気を付けろマサト三次覚醒した吸血鬼は血を吸うだけの二次覚醒とは違い皆特殊な力を持つ… やつは肉体を強化して戦う… 油断すればお前の再生力では一撃でも食らえば死ぬ…」


 ミルの焦りを感じる、感覚が直接伝わってくるみたいに心臓がドクドクと伝わってくる。

 分かる、本当はミルもここから僕を逃がしたいと考えていると、けど同時に僕の考えも伝わってか… アドバイスをくれる。


 なら、死なない程度にミルの言う助けを待つ!


「いくぞ… 人間!」


「来い、ジェントルマン!」


 心にカツを入れるために叫ぶ、僕一人ではこの吸血鬼は絶対に倒せはしないがやりきってみせる。

 僕の役割を護りきって… 見せる。


 距離を一瞬で詰められるが攻撃は先程よりも遅く妙だが…肉体強化とミルが言っていたが避けきれる。


 正人は相手の殴る拳を当たるギリギリだが避けるだが…。

 その拳は再度加速し正人の腹を掠め、拳の衝撃波が正人の腹を叩きつけ吹っ飛び柵にドゴと鈍い音と柵の歪みを作り当たる。


「グハ、な…!? どうして… 攻撃は避けたはずなのに」


 何が起こった、気づいたら吹っ飛び、お腹と背中が凄く痛い… 背骨折れたかもしれない。


「人間のままだったら少年をこのまま逃がし姫様を連れて帰宅していたが、眷属となり… 吸血鬼とならない君はもう助けることは出来ない。血を飲まなければ… 殺処分だ少年」


「血は、飲まない。そう約束したから、絶対に… 飲まない!」


 まさかわざと遅くして… いやそれよりもまずい倒れて息がまともに出来ない… 起きろ倒れず、起きあがれ僕の体、このまままた失うゾ…。


 正人は体を起きあがらせるが腹を掠めた一撃から体を揺らし立っているのがやっとだった。


「寝ていろ少年… 起きあがればより辛い死が待つだけだ」


 近づく吸血鬼、一歩がゆっくり見える… 走馬灯が見えそうなほど僕は今死にかけていると言うことなのか…。

 人は死ぬ前視界がゆっくりになるらしい… だから走馬灯が見えたら…。

 あの朝の記憶もより鮮明に呼び起こされるのか。


「立て… 立って護れ!」と自身を鼓舞する、立てと心をそう奮い立たせる。


「やめろビクター! 私はもうお前達とはいられないんだ」


 ミルの声を聞き吸血鬼は止まりミルの方を見る。このまま襲いかかっても僕では勝てない、ここは回復に専念するお腹も背中の痛みも段々治まってきている。

 

「この眷属を処分した後は、姫様… あなたを連れて帰ります。あなた自身の役目を果たす日までおとなしくしていただくため… 外敵に襲われない安全な場所に」


「止めろビクター、その眷属を殺すとなると… 私もお前を殺さねばならない」


 ミルはビクターに向けて手のひらを向ける、それは今にも発射される銃口の如くミルは相手に対して警告していた。

 

『やっと見つけた…』とミルの警告と同時に正人の頭の中に再び聞こえる。


「え? 今の声は… まさか!」


 聞こえた声に辺りを見る正人、駅前で聞いた声と同様だと辺りを警戒する。


「姫様… あなたに捧げる命なら苦では無い!」


「ハッ! しまっ――」


 正人を再び襲う吸血鬼、注意が周辺にあった正人を走り襲う吸血鬼に正人は気づくのが遅れる。


「グッ!」


 痛みを覚悟で咄嗟に防御体制をとったが吸血鬼の攻撃は正人に届くことは無かった。


「え?!」


 突然聞こえた声の後に突如目の前に何処の学校のかは分からないが制服姿の女性が吸血鬼の攻撃を受け止めていたからだ。


「よっと! やぁ、危ない危ない。間に合ってよかったですなぁ。いきなり姫様が監視するカメラの前からも消えるからビックリでしたよ」


 持っている棒状の武器で吸血鬼の攻撃から正人を護る女性は武器を振り攻撃を弾き吸血鬼を払う。

 

「えと、君はダレ?!」


「遅れて参上で理解足りない所で私こと救世主! あなた達の味方です。今はそれだけを信じていやがれです。君はそこでみていなさい。じゃあ一仕事しますか…!」


 突如現れた制服姿の女性はミルがビクターと言っていた吸血鬼相手に勇猛果敢(ゆうもうかかん)に持っている武器を振り回し飛び出す。


「ぐっ! また君かレディー…」


「そうだが何か? まさか同じ女性とは踊れなくてジェントルマン?」


「いや、今は君の相手をしている暇は… 無いんだ! どけ‼」


 棒状の武器で戦う女性はまるで相手を翻弄するように戦っていた。

 正人は女性の戦い方に、蝶のように舞い蜂のように刺す、その言葉が似合う空中や地を生かした戦いに呆気にとられる。

 だがおかしい。

 聞いてた話だと吸血鬼一人に人間百人でもやっとだと聞いていた...。あんなに強いのもそうだが、本気を出した吸血鬼相手にあそこまで戦えるとは… 本当に人間なのだろうか。


「包囲!!!」と女性の合図と共にぞろぞろと隠れていた銃を持った人達に囲まれていた。

 中には基地で見た武相より軽装の自衛隊の人や私服の人、もしかしたらすれ違っていたかもしれない人達が吸血鬼を包囲する。


「人間程度が集まっていようと無駄だ!!!」


 吸血鬼は中腰の体制に変え両手を広げ突進しようとしている。


「隙あり~!」


 吸血鬼も油断してか、周りに気を取られた吸血鬼は制服姿の女性の一撃を腹に受ける。


「ぐっ! ぐは… まさか、協会の魔術師か貴様…!」


「さあ? あなたがそれを知る事は出来ない…! 私にここで倒されるのだから!」


 どうやら吸血鬼にとって致命傷となったらしい。体をよろけさせている。

 そんな中でも現れた女性と戦えるタフさがあった。それほどミルを連れていきたいからか目はよりギラついて見える。

 女性の攻撃を避け、殴る。


「グッ! イテテ… 手擦りむいちゃった」


 武器である棒で受け止め包囲する人達の一部を巻き込み突き飛ばされる。


「吸血鬼相手にあそこまで戦えるのか人間が…」


「姫…。どうして帰らないのですか… どうしてそこまでその眷属を… グッ!」


 吸血鬼は腹を押さえながらもミルに話続ける。


「すまないビクター。だが、お前も今日は帰れ。そして… 今の私の事など忘れろと。姫にはなれない私の事など忘れろと皆にそう伝えといてくれ… もう会うことはないと」


 ミルは目の前で苦しむ吸血鬼に手を伸ばそうとしていたがそれを自分の手で押さえる。グッと拳を固め手を下げる。

 涙を流し、もう会わないと告げる声は震え聞き取るのも難しい小ささで話す。


「いいえ、あなた様は世界に狙われる存在。次こそ必ず連れて帰らせていただきます… 私達にはあなた様が必要なのですから」


 川の柵に飛び移る吸血鬼。


「逃がさねぇ~つ~… のっ!」


 吸血鬼は飛ぶ勢いでジャンプする。吸血鬼を追うように武器を投げる女性だったが宙で躱され、結局あの吸血鬼には逃げられてしまった。武器は女性の腕に戻る。


「ぁあー。逃げられたじゃん。これ、どう報告したら上司に怒られないかな… くぁー!」


 頭を抱える女性、どうやら危機は一旦去ったらしい。


「なあマサト。おまえに一つ本当は言わなければいけないことがあったんだ。だがそれを今まで隠して私自身を誤魔化していた。そんな私をお前は嫌いになるか?」


 ミルは僕の手をギュウと握る。彼女の感じる不安が伝わってくるみたいに力強く握られている。


「ミル、ミルが何を隠していようと僕は嫌いになりません、これからもずっと僕はミルの眷属ですから」

「そうか。そうだよな、ありがとうマサトその言葉は今の私には何よりも嬉しい言葉だ」


 ギュと握る手は強く結ぶ絆にも思えた。


「あー、あれが姫と眷属とのイチャイチャ。報告と同じですね、ヤラシイ」


 小さくボソっと周りの自衛隊の人と話す女性。


「おっと! 気付かれた。では帰りますか、車用意して!」


 誰かは知らないが味方なのは分かる、助けてくれたし…。

 女性の声と共に統率のとれた動きで周りの人達は散っていく。

 

「あの、助けてくれてありがとうございます。あなたは?」

「あ? 今忙しいので帰ってからにして、あんな吸血鬼が二度も来たとか、作戦どうしましょうかまったく…」


 忙しそうだ、他の人達と何か話しているようす… 邪魔をしてしまったらしい。


 名前を聞くのを断られてしまった。

 足早にこの場を去り今日止まる予定の基地が予約したホテルに向かう事になった。


 車に女性も共に乗り出発する。

 最後まで読んでくれてありがとうございます。


 マジでここまで読んだのなら評価や感想の一つくらい欲しいですね。まぁ読みづらいとかキモいとか言われてもおかしくないと思っています。


 吸血鬼について分からないことなんかも答えられる範囲で答えますしお願いします。


 ちなみに吸血鬼は今後出していこうと。もしかしたらグロい展開も来るかもしれませんがこの場合… 何処まで許されるのだろうか…。怖くて書きづらい。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ