暖炉のなかの魔法のダンジョン
窓のそとは雪が舞っている
ぼくはひとり遊んでいると、どこからか女の子の声がした
「たすけて。だれか、わたしをたすけて」
それは暖炉のほうからきこえる
ぼくはレンガのなかの炎をみつめて、夢からさめた
目をこすりながら暖炉をみると、火は消えていた
やっぱり夢だったんだ
でもへんだな 暖炉にぽっかりと穴があいている
ぼくは気になって、入ってみることにした
穴から下におりると人影がみえた
「やぁ勇者、おそかったな」
友達のタイチが言った 戦士の姿をしている
「さぁ、早く奥へ進みましょう?」
リーンは近所の女の子だ いまは魔法使いみたい
それにしても、ぼくが勇者?
よくわからないまま、ぼくはふたりのあとを着いていった
洞窟のなかにはモンスターがいた
「ソードバスター!」
「マジカルウィンド!」
恐ろしい敵を、ふたりはあっというまに倒した
どうしてそんな技が使えるの? タイチにきいてみた
「いいか勇者、その心にイメージするんだ」
こんどは巨大なヘビが現れた そうとう強い
「おれの剣がきいてない。どうしよう、リーン」
「もう時間がないわ。勇者、あなただけでも先にいって」
「それでどうしろって言うの?」
「いけばわかるわ」
ぼくはモンスターをふり払いながら、洞窟の奥にたどりついた
そこにあった大きな扉を、ゆっくり押し開けてみる
すると向こうには、きれいなお花畑が広がっていた
ぼくは驚きながら、丘のうえの家にむかった
家のなかには、可愛らしい妖精がいた
「きてくれてありがとう。わたし、わるい魔法使いにつかまってしまったの」
妖精はおびえながら、たすけてと言った
ぼくは扉のほうをみたけど、タイチもリーンもまだきていない
かわりに黒い人影が、こっちをみていた
わるい魔法使いは、ローブを羽織ったガイコツだった
「勇者よ、その妖精は我輩のものだ。邪魔をするなら命はないぞ」
手には大きなカマをにぎっている
こわい、帰りたい でも……
ぼくがあきらめたら、あの子はどうなるんだろう?
今ここには、僕しかいないのに
いちかばちか、心のなかにイメージしてみる
なんでも切り裂く、光のツルギを
ぼくはガイコツに向かって、かけだした
気がつくと、お花畑によこになっていた
タイチとリーン、それに妖精も、ぼくを心配そうにみている
「どうなったの?」
ぼくが起きあがりながらきくと
「勇者さんが勝ったんですよ!」
妖精の女の子が嬉しそうに言った
こわいのも痛いのも、ごめんだけれど
彼女が笑ってくれたことが、なにより嬉しかったんだ