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ゲニウスの天恵~Genius' blessing~  作者: shiki.tea
第一章 新星《ニュービー》~天恵祭編~
2/5

謁見 『我、汝二力ヲ授ケル者ナリ』

 青年は夢の中を揺蕩たゆたっていた。泳ぐ暗黒の雲の中で、遠い、昔の風景が、鮮やかに、或いは朧気おぼろげに目に映った。

『では、行ってくるよ。りく、良い子で待っているんだぞ』

『おとーさん!おとーさん!もう行っちゃうの?仕事?』

『あぁ、颯が大好きな、ウィンドの手伝いだよ』

『わぁ……。やっぱりおとーさん、すげぇや!あんな強い天恵者ギフターと一緒に仕事してるなんて、本当に信じらんないよ!!』

 なんの記憶だろう?

 青年はそう、ふと思う。いつの記憶かとさかのぼる間に、夢は知らず泳ぎ続ける。

貴方あなた、本当にやるの?』

『颯の幸せの為だ。やるしかない』

『でも貴方、颯は貴方に憧れているのよ?その可能性を潰すのは残酷なんじゃ……』

『何度も言わせないでくれ、澄美すみ。これはそれ以前の問題なんだ。絶対に、颯には不幸になってほしくない』

 世界が突然輝き、しらむ。再び闇に戻った時、青年は病院にいた。

『おとーさん!おとーさん!!なんで、なんで……』

『どうしてこんなことに……』

『ごめんな、颯、澄美……。父さん、駄目そう、だ』

『居なくならないでよ!嫌だよ……!おとーさんが居ない世界なんて、そんなの嫌だよ!』

『颯。聞き、なさい。弱い、人を守るんだよ。父さんや母さんのように、能力者になれなく、ても、助けてを求めている、人を助け、るんだ。カッコいい人間になるんだよ……』

『おとーさん!おとーさんっ!!』

 あぁ、これは幼い頃の記憶だ。ずっと昔の。

 青年はふと、そう思った。懐かしさと悲しさ。色々な感情が溢れ、目を閉じる。もう少し、夢にひたっていたいと思えた。

 そして、まだ浮かんでいる頭に、声が唐突とうとつに響く。


『起キテ。モウ目覚メル時間ノはずダヨ』


 五月蝿うるさい、まだ俺は寝ていたい。

 青年は顔をしかめて、身をよじった。この暗い空間には「奴」と青年しかいない。どんな抵抗をしても、逃げることはできない。


『僕ハ君二力ヲ授ケタノニ、君ハ何モクレナイノ?』


 「奴」はまた、青年に話しかけてきた。だが、口を開こうとしても、一向に口は開かない。

 そんな青年の様子に、返事が出来ないと思ったのか、「奴」は構わず続ける。


『私、知ッテル。如何ナル物ニモ、手二入レタナラ、何カ払ワナキャ、ダメ。代価ガ、必要』


 そんなの、どうやって払えばいいか、分からないよ。

 青年はやっとの思いで口を開く。対して「奴」は残念そうに、見えない顔をうつむかせた。


『ソウカ、分カラナイナラ、仕方ナイ。俺ハ君ガ分カルマデ待トウ。ダガ……』


『デモ、コレダケハ覚エテオイテ』


『我、なんじ二力ヲ授ケル者ナリ』


『我ガ名ハ◇◇、汝ヲ助ケル者ナリ』


『イズレ、マタ会ウダロウ』


『ソノ時マデ……少シノ間、サヨナラダ』


 記憶が薄れる。覚えていなきゃいけないと思った。だんだん明るくなる。見えなくなる。青年は、どうしようもなくて、声が、――声を……!


「待って!まだ俺は君を……!」


 消える、消えた。




 そこで青年の「キオク」が、完全に途切れた。

 

 朝が来る。


 ―◇◇◇◇◇◇◇◇―

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