プロローグ―マーシュマロウの花を添えて―
青春真っ只中の高校生二人が繰り広げる異能力バトルです。自分の文章が気に食わなくて書き直したりするかもしれませんが、是非高校生二人の変わった青春をお楽しみください
「我ら六聖帝、そしてそれぞれの国の民たちに、守護神ゲニウスの加護があらんことを……。皆、グラスを掲げよ。乾杯だ」
豪華絢爛な円卓に、粛然たる姿で座る一人の男が、天に向かって、金の装飾で縁取られたワイングラスを掲げた。それにしたがって、円卓に座っている他の五人も掲げる。
煌びやかなシャンデリアが一つ。その僅かな光源が厳かに、部屋を照らしていた。円卓の上に、寂しそうに咲いているマーシュマロウの花束が、光を受けて、所在なさげに揺れる。
部屋には六人。格好も、服装も、様々な六人が、己を未来を決めるこの会議に参加していた。
だが、そんな六人にもある共通点があった。仮面である。全員、己を誇示するかのように、何かを象る仮面を被っていた。
ある者は樹木を象る仮面を。
ある者は巨人を連想させる、雄牛を象る仮面を。
ある者は黒狼を象る仮面を。
ある者は道化を象る仮面を。
ある者は堕天使の物かと思われる、黒い翼を象る仮面を。
ある者は九尾が思い起こされる、白狐を象る仮面を被っていた。
男は、他の五人が、白ワインを飲み干したのを確認すると、手の平に顎を乗せて口を開いた。
「さて、今回の謁見会議の内容は、知っての通り、近頃開催される『天恵祭』についてだ。今年も例年通り、かなりの実力者が揃うだろう。これを受けて、皆が【継承】を結果によってするかを聞きたい。それによって、我らが守護神に、赦しを得ないとならないからね」
先ほどから五人に話しかけている男性―樹木を象った仮面を被る【聖樹木=エッダ】が話を振る。すると黒狼を象る仮面を被った、少し小柄な女性【神獣=フェンリル】が口を開いた。
「私ァ、見送るぜ。まだ私は現役だし、育ててる奴もたくさんいるからなァ。」
それを聞いて、左隣に座る、雄牛を象る仮面を被った大男―【巨人=ギガス】が答えた。
「吾も見送るであろう。まだ、その時ではない。時が満ちた時に、【継承】を行う」
ギガスの対面、黒い翼を象った仮面を被る少女―【堕天使=ベリアル】はおどおどとした口調で話す。
「あ、あのっ、その、私は【継承】!結果によってしたいなぁって思い、ます……」
その右隣にいる、白狐を象る仮面を被る、妖艶な女性―【妖狐=稲荷】は優しげな笑みで、ベリアルを流し見てから、エッダに視線を向けた。
「ふふふ、妾も、ベリアルがそうするのであれば、考えよう。まあ、そこまで強い奴がいればの話だが」
「ヘルメス。君はどうするんだい?」
エッダは自分の対面にいるどこか中性的な人物に話しかける。彼女は道化を被る仮面を被る、【道化=ヘルメス】である。
「んー?ボクは優柔不断だからねー。まあ、適当に決めるよー」
ヘルメスはトランプを弄びながら、質問に答えた。エッダはその、興味索然な態度に、思わず苦笑してしまう。そして、自分自身は皆が騒然とするであろう、答えを出す。
「私は……【継承】をしようと思う」
案の定と言うべきか、他の五人は、その言葉に驚愕した。あまり感情を見せないヘルメスでさえも。なにしろ【聖樹木=エッダ】という天恵者は、自他共に認める、六人の中で最強の存在なのだから。
「【継承】するって……。お前もう座を渡す奴は決めてるッてのか?」
「いや、まだ決めかねてはいるよ。何より、その者が勝利を手にしない限りは、渡すつもりはないがね。だが、もし優勝したなら、私はこの座を、その者に渡そうと思うよ」
五人は、やはり納得できないという感じだったが、エッダが五人に、嘘を吐いた事はないので、本当だということは全員承知していた。
エッダは、柔らかな微笑を称え、こう言った。
「今年は本当に面白くなりそうだよ。楽しみだ」
この時、『天恵祭』の展開を予想できる者は、誰一人として居なかっただろう。ただ、エッダを除いて……。
今、この小さなイリオスの地に、大きな波乱が、巻き起ころうとしていた。




