第04話くん
その手紙はこんな内容だった。
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拝啓 ゼペットさま
ぜひともヒーローになりたくてお手紙しました。
わたしは腕っぷしに自信がありますし、なによりあふれる勇気と熱い情熱があります。
わたしの腹直筋はエッジが効いてます。仲間内でもキレテルキレテルと大評判なのであります。
わたしの大胸筋はヒーローになりたい気持ちで、ぴくぴくと波打つのです。
変身できるなら、肉体を強調するぴったりしたスーツを身に着けて悪をけちらしてやりたい。
てやっ。むきっ。とおぅ。
はあ、うっとり。
わたしは、ほにゃららら…………。
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なんだよ。こりゃ。
ようやくここで朝の出来事を思い出したんだ。いくらぼくでもそりゃ思い出すよね。
えーと。でも待てよ。
ここでぼくはあごに手を持っていき、足を組んだ。
何事もポーズが大事なのだ。
ふむふむ。
いくらなんでも朝の広告を見て書いた手紙が、その日の夜に届くなんて早すぎる。
そうだよね?
あわてて封筒の消印を見てみたら、なんと次の日の日付になってたんだ。
こりゃおかしいよ。
ぼくは他のも消印をチェックしたよ。山から無造作に取り出して見てみたら、まるででたらめなんだ。
先月のもあるし、来年のもある。どれもヒーローの応募者から。
来年?先月?いったい郵便屋さんはどうしちゃったのさ?
ぽいぽい。
山をかき分けて進むと、しわくちゃになって色あせた緑色の封筒に目を止めた。
作業をする手がぴたりと止まる。
ゼペットがぼくの手元を見てワフと吠えた。
これは、この手紙は見覚えがあるんだ。
そう。ぼくのだよ。