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第42話くん

恐るべき力を手にし、怪人から進化した『カイジュー』は、その産声をあげた。


がおぉぉぉぉん。


見上げると首が痛くなるほど、巨大化したコーモリオトコ。そのビルよりも太い足が高々と上がった。

ヤバイ。

エコーロケーション。反響定位。

蝙蝠の特性を活かし、その巨体はぼくの位置を把握しているんだ。



ぼくを踏みつけようと、ビックサイズの足の裏が降り落ちてくる。


ずずずずずぅううん。


と、間一髪で飛びのいた。


しゅたっ。



震度5を優に越える地響きに、埋設されていた水道管が破裂し、水柱を立ち上らせた。

街の崩壊は加速度的に進んでいる。


ぼごりっ。


足を引き抜かれたアスファルトの地面には、巨人の足型がくっきり残った。

あちこちで連鎖的に破裂音が鳴り、炎はガレキを這い、水柱が吹き上がる。


めらめら。

ぶしゅー。


まずい。場所が悪すぎるんだ。

ぼくには巻き込めない人たちがいるけど、ヤツには関係ない。

物陰に隠れようにも、一撃の威力が高くて防壁の意味をなさないんだ。


ぶうぉぉぉわん。


『カイジュー』が腕を振るい、ビルをなぎ倒す。


どごぅう。


積み木のように簡単に崩れる鉄筋コンクリートの塊。粉々に砕け散り降り注ぐガレキの雨。

パニックを起こした民衆が逃げ惑い、大混乱を招いた。

ヒステリックに鳴らされる車のクラクション。子供の泣き声。怒号、悲鳴。


くそっ、くそぅ。

どうにか、しなくちゃ・・・。



ぎりっと歯噛みしたぼくに、救援はやってきた。



びしゅーん。


暴れまわる『カイジュー』の胸に、ミサイルが着弾した。


ぼかーん。


ピンクのハート型に広がる煙。


びしゅびしゅ。ぼかぼかん。


次々に命中する攻撃に、巨体がたじろぐ。


きぃぃーん。


空気を切り裂き飛行する、銀色の機体。

あれは、テンチョーの戦闘機だ。やった!いいぞ!

世界一頼りになるオカマだっ!



《テンプレ『大怪獣にはミサイル攻撃』・・・達成》


わふっ。わふっ。

ゼペット!


「トキシゲ、これを使え!」


ぼくの『アイボー』がくわえてきたのは、あのリュックサックだった。

手にとって中を見ても、やっぱり『粗品』の箱しかないんだ。

ぼくはつい、じろっと疑いの目をゼペットに向けてしまったよ。

憮然とした表情のゼペット。


うぅぅ。


おいおい、うなるなよ。

ええい。

チープな紙箱を強引に開ける。


びりびり。


中に入っていたのは、文字盤に大きく『8』の字がプリントされたデジタル腕時計だった。

なんだよ。ちくしょう。


ざざっ。


「トキシゲちゃあああん、聞こえるかしらぁああ」


テンチョーの声だ。この時計から聞こえる。


「聞こえるよっ。テンチョー!!!」


『粗品』の腕時計が、ヒーロースーツに取り込まれるように同化した。

左手首にピンクの『8』。あんまりかっこよくないぞ。



《テンプレ『スーツは強化パーツで進化する』・・・達成》



「時間がないわっ。その装置の赤いボタンを押してチョーダイィイ」



取り込まれたパーツはヒーロースーツと同調し、通信が直接聞こえるようになったみたいだ。


テンチョーの駆る戦闘機はアクロバティックに飛行し、小さな打撃を繰り返している。

この隙に、なにか対策をしろってことだな。


赤いボタン。

えっと。ここだ。ぽちり。

デジタル表示の脇からシャキンとアンテナが伸びた。小さなパラボラがくるくる回る。


・・・。


ぼくには、なにが起こったのかわからなかったよ。

きょろきょろとあたりを見回すぼく。

ええと、たぶん、なんにもイジョーなし。


さっきと変わらず『カイジュー』は暴れ、都市は混乱の極みだ。


・・・。


ほんとにツマラナイモノじゃないか。


ちくしょうめぃ。



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