第15話くん
「まったく、オカマをナメルんじゃないわよう」
テンチョーはねちっこい視線をぼくに投げかけてくる。うう。
彼を決して見くびってはいけないとぼくは肝に銘じたよ。
心の深いとこにがりがりと彫りこんだ。
「オカマには気をつけろ」ってね。
できることなら、お礼を言ってテンチョーから早く逃げ出したかった。
でもゼペットがガレキの影にごろりと横になって一歩も動かなくなっちゃったし、オカマも大きな石にちょこんと腰掛けてしまい、
ぼくは逃げ出すことができなくなってしまったんだ。
老いぼれ犬を危険人物の前に置いとく訳にはいかないもの。
ぼくがもじもじ立っていると、テンチョーが座るように手近なガレキをあごで指した。
ぼくは慎重に彼と少し離れたゼペットの横に腰掛けたよ。警戒が必要な相手だと思ったからね。
ぼくらはほこりっぽいガレキの山のふもとに、向かい合って座った。
「じゃあ、順番に話していくから、しっかり聞くのよぅ、トキシゲちゃん」
ぼくは背筋がぞくぞくとしたけど、おくびにも出さずに頷いた。
誰かがぼくになにかを話してくれるなんて、ひさしぶりのことのような気がしたよ。
ごくり。
「まずはナニから話せばいいかしらねぇ。ゼペット、あんた彼になんか教えた?」
ふんっっと鼻息だけで答えるゼペットくん。
あわわ、オカマを怒らすようなマネはやめてくれよ。
「あらそう、じゃあなんにも知らないボウヤなのねぇぇ。トキシゲちゃんは」
テンチョーのぼくを見る目つきが変わったような気がしたけど、見て見ぬフリをすることにした。
気のせい気のせい。
「あのう、ここはどこなんですか?」
「あらぁ、順番って言ってるのにズイブンせっかちねえ。ふーん、ま、いいわ。教えてあげるわよう」
しまった、質問しちゃまずいみたいだった。うっかり口を挟まないようにしなくちゃ。
「あんた、人体の中で一番エネルギーを必要とする器官ってどこか知ってるぅ?」
ぼくは少し考えて言った。
「脳、ですかね」
「そうよぅ、なかなか賢いわねえ」
良かった、当たったみたいだ。ほっ。
「じゃあ、その脳が大量のカロリーを消費して、毎日毎日産み出している膨大な数の思考や想像はどこに行ってるのかしらぁあ?」
想像の行くえ?なんだそりゃ?
そんなの考えたこともなかった。
電気信号?ニューロン?発明?芸術?
あんまり意味をなさない単語の羅列がぼくの頭をよぎったよ。
ぼくが頭をうんうん捻っていると彼はにやりと笑ってこう言った。
「答えは、ここよぅ」
テンチョーは大地を指差している。
????
どういう意味だろ?
「ニブイわねぇ。こぉこ。この世界が行き場のない想像の集合体、」
オカマはもったいつけて一呼吸置く。わざわざ足を組み替えさえした。
「『イマジニア』よぅぅぅ!」
よおぅよおぅ。
こだまする絶叫。
全然意味がわからなかったけど、ぼくは大げさに驚いた。
だって、そうするより他ないじゃないか。
な、なんだってぇえ?
《テンプレ『唐突な世界観説明』・・・達成》




