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第12話くん

ゼペットの背中からえっちらおっちら降りると、ひさしぶりの揺れない地面だからか頭がぐらぐらしたよ。

乗り物酔いしたみたいだ。


ええと、この場合、犬酔いって言うんだろうか?たぶん誰にもわからないよね。


風を切る音もしないはずなのに、まだびょうびょう聞こえる気がする。


うへえ。まいった。


ぼくがぐったり膝をついていると、赤い『竜』はゼペットと二言三言交わしてうなずいた後、こちらを向いた。


「救う者よ、その本能に従うが良い・・・」


ぼくを見たその黄色い瞳はなにかを伝えたがっていたように見えた。

でも、ぼくは何も言えなかったんだ。

何を言えばいいのかわからなかった。


でもこの時にちゃんと聞いとけばよかったんだと今は思うよ。


竜は折りたたんでいたその翼をばさりと広げた。

ぶわりぶわりと羽ばたかせると、巻き起こった強い風にぼくは吹き飛ばされてしまいそうになった。小石がぴしぴし顔に当たる。


いてて。


この苔むした塔のてっぺんはかなり高い。落ちないように必死で踏ん張ったよ。なにしろ落ちたら危ないもの。

万が一落ちちゃったりしたら、いくらぼくでも笑って済ますわけにはいかなくなりそうだ。

局地的な突風が止んだときには、もうその姿は遠くに行ってしまっていた。


ばさりばさりとかすかな羽音が届いてくる。


ぼくはぽかんとして彼を見送ったよ。

出会ったときと同じようにね。


「行くか」


その声に振り向くと、いつのまにかゼペットがどっしりとした木の扉の前に座ってぼくを見上げていた。

まあ、いつも瞳はもじゃもじゃの毛に隠れてあんまり見えないんだけどさ。見上げてるように感じたってことだよ。

あれれ?

ぼくはまた不思議なゲンショーを見てしまった。


ゼペットくん、今度は小さくなってませんか?


彼はすっかりもとの大型犬に戻ってたんだ。

ぼくの目玉はおかしくなっちまったのかい?


「ねえもしかして、小さくなってない?」


ぼくは失礼に当たらないようにごくごく控えめに驚きを表現した。

なんたって、個人の身体的特徴についての話題はいつだってとてもデリケートだからね。


「でかいと中に入れねえじゃねえか」


なるほど。その通りだ。


ぼくはひさしぶりに満足のいく回答をもらったことですっかりうれしくなっちゃって、ついニコニコしちゃったよ。

いやあ良かった良かった。さすがはぼくの愛犬だ。

よしよし、行こう行こう。

どんどん行きましょうとも。


ぼくは朽ちかけた両開きの扉に手をかけた。

長い間手入れされていないだろうそれは、予想以上に分厚く重たくて、かなりの力が必要だったよ。


ふうふう。


ぎぎぎいいい。


《ロール『ヒーロー』がワールド『イマジニア』へ開門要求・・・許可》


さてはて。


どきどき。


続きはまた明日。Good night, world!

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