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第11話くん

ぼくが混乱してる間にも、2匹の空飛ぶ生き物はびゅんびゅん風を切って進んでいく。

どういう仕組みで飛んでいるのかは、考えてもわからない。

だいたい、飛行機の仕組みもふんわりとしか知らないぞ。えっへん。


「お、お、おい、ゼペット、一体全体どういうことなのか教えてくれよ」


言い終わるや否や、ばふううんとゼペットは盛大にくしゃみをしたんだ。



おかげでぼくはぼんぼん背中でバウンドして、危うく舌を噛むとこだった。

シートベルトしててよかったよ。ほんとにほんと。


「さすがに寒くなってきたな」


照れ隠しなのか、ぼそりとゼペットがつぶやいた。

またも、ぼくの質問は宙ぶらりんに終わったよ。

もうぼくは、このまま死ぬまで誰にも質問を答えてもらえないんじゃないかな。

珍しくそんな悲観的な考えにとらわれて少し落ち込んだけど、さっきよりはずっと落ち着いたよ。


ぼくは、

愛犬の背中に乗って空を飛び、

鈍い赤色の『竜』をお供にして

『カミサマクン』のところへ向かっている。

そして、誰も質問には答えてくれない。


OK。


状況把握はできたよ。

今のところ、ぼくにできることは何一つ無い。

なすがままだ。

けせらせら。

結局、いつもこうなんだよね。

やれやれ。


「下だ」


短く竜が合図を出した。

びゅるるーんと、赤い巨体が宙返りをして雲に突っ込んでいく。

わお。あきれるほどかっこいい姿だ。


「行くぞ」


ゼペットも短くぼくに合図を送った。

ぼくの心の準備なんてたぶん彼には関係ないから、自分自身に向けた合図だったのかもしれないね。

もちろん返事なんか待たずに、ゼペットはびゅうううんと雲の海にめがけて飛び込んでいった。

ぼくはどんなスリルライドもこの時の恐怖には勝てないと思うよ。

レールの見えないフリーフォールだもの。

しかも雲の上からね。

もう少しでちびるとこだったよ。


《ロール『ヒーロー』、ロール『バディ』がワールド『イマジニア』に到着・・・確認》

《シナリオ『女神の夢』が進行》


《Hello, world!》


ぼすんと雲を抜けると、青い海の真っ只中にぽっかり『島』が浮いていた。

どうやらそこに向かってるみたいだ。

少し先にさっきの赤い竜が飛んでるのが見える。

ようやくこのロングフライトもゴールが目前になって、ちょっとほっとしたよ。

毛むくじゃらの背中にも慣れてきたけど、やっぱり固い地面の方がいいなあ。


上空から見るその島は緑豊かで、本当に美しかった。

きらきら光を反射してて宝石みたいだったよ。

島の周りにはサンゴ礁が不思議な模様を作っていたし、真ん中あたりには滝みたいなのもあった。


高度を徐々に落として木々の枝ぶりがぼんやり見えるようになると、赤いやつが先導してぐるりとその島を周回したんだ。

南国風っていうのか、ぼくには全然わからないような植物ばかりだったけど、おいしそうな果物がなってるのもたくさん見つけたよ。

それに色とりどりの花も。あと極彩色の鳥とかね。

そして、なんとなくだけど島全体に甘い香りが漂ってるような気がした。くんくん。

ここがどこか知らないけど、いっぺんにぼくはこの島が気に入ったよ。なんだか良さそうなところだぞってね。

でも、ぼくの良い予感ってだいたい外れるんだけどさ。


やがてぼくらは島の入り江にそびえる、石造りの塔のてっぺんにぶわりと着地した。



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