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高校入学初日にいきなり女子に泣かれた  作者: バネ屋
第1章 高校生活スタート
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#08 生徒の自立と自由を守る使命



 僕は、本気で自分がモテない男だと卑屈になっている訳では無かった。


 小学生や中学生の頃、同級生の女の子から好意を寄せられたこともあった。

 だけど僕には、女の子との恋愛を楽しむ様な余裕が無かった。

 ウチの事情は仕方のないことだと納得してたし、部活動や恋愛が出来ないことも我慢出来ていた。そんなことを考える余裕も無かったと言うべきか。


 でも、自分では納得出来てても、周りの同級生たちは同じ様に理解してくれてる訳では無かった。


 母さんの実家のある田舎では、小学校の5年で転校してきた僕は余所者だったし、転校当初から婆ちゃんの介護で忙しく、放課後の友達との付き合いも無かった。


 そんな小学生時代を過ごし中学に進学したけど、中学でも相変わらず僕は余所者だった。


 部活動はしてないし、放課後の付き合いも無い。

 学校でも休憩時間になる度に、先生のところに行っては授業内容の質問をしたり相談をしていた僕は、同級生たちからは異端者の様に見えていたんだと思う。


 まだ、いじめや嫌がらせは無かったけど、距離を置かれて常に壁を感じていて、いついじめなどの標的になっても可笑しくなかった。


 義務教育というのは残酷な物で、そんな環境でも3年間、通い続けなくてはいけない。

 だから、僕は自分を守る為に同級生たちの前では自分を卑下して、道化を演じ続けた。


 高校生になり時間に余裕が出来た今となってはその必要は無いのだろうけど、3年間毎日習慣の様に繰り返した今の僕には、同級生たちとのコミュニケーションの取り方がこれしか分からなかった。




 佐倉さんとの何かしらの過去のトラブルは、道化を演じるようになる前のことだろうから、もしかしたら、過去に僕が身の程を弁えない様な振る舞いをしてしまい、何か傷つけてしまったのかも知れない。

 相変わらず佐倉さんのことも、過去に何かトラブルを起こしたことも思い出せないままだけども。



 何にしても、僕は女性との交際は考えて無かった。

 そんな僕が周囲の女性に勘違いさせない為に、自虐してでも『恋愛なんて興味ありません』とのアピールが必要だった。

 少なくとも、婆ちゃんの1周忌が過ぎるまでは恋愛等にうつつを抜かすことなく、学業に部活動と高校生活を頑張るつもりだ。




 ◇


 


 この日は、今年度始めての総務委員会の集まりがあった。


 放課後になり、事前に連絡のあった集合場所である会議室へ行くと、既に多くの総務委員メンバーが集まっていた。



 それほど広くない会議室では机やイスが全て廊下に撤去されてて、30名を超える委員が集まり、肩寄せ合う様にみんな座っていた。


 なんだか異様な雰囲気だ。

 男女の割合は、半々だろうか。

 各クラスから最低1名は参加しているだろうから、ひと学年10クラスで3学年だから、やはり30名以上は集まるのだろう。


 定刻丁度に顧問の職員が入って来て、挨拶を始めた。


 本日の集まりは、総務委員会の委員長(代表)や他の役職の選出、一般委員の役割分担に、年間スケジュールの確認などなどをするとのことで、まだ慣れていないせいなのか、それとも総務委員会の伝統なのか、最初から緊張感が漂う空気の中で進められた。



 今年の委員長には、3年の久我山くがやまさんという女性の先輩が選出された。

 どの様な方なのかは存じなかったけど、微笑みを浮かべておっとりとした柔和な雰囲気を醸し出してると思ったら、次の瞬間にはキリリとした表情に切り替わり、周囲の人間を緊張させてしまうような独特のギャップを感じさせる女性で、ほぼ満場一致で決定された。


 久我山委員長は選出を受けての挨拶で、「本校は、生徒の自立、自由な校風が伝統だと言われていますが、自立するにも自由に学校生活を送るにも、管理する人間が居るからこそ成り立つ物だと思います。 そして、緑浜高校の象徴たる多くの部活動の管理を担うのがこの総務委員会です。 これからの1年、生徒の自由な部活動を守る為に委員長として微力ですが頑張りますので、どうぞよろしくお願いします」と委員全員を前に眼に力を込めた面持ちで述べると、会議室内が緊張に包まれたが、ぐるりと全員の顔を見渡した後、ニコリと表情を緩めた。


 なんと言うか、顔に似合わず人前でも随分と余裕と貫禄がある人だった。

 こういう人は今までに見たことのないタイプだ。



 続いて執行部の他の役職を決めていく中で、僕は書記に立候補した。

 折角自ら進んで参加した委員会活動なので、総務委員として積極的に関わっていくつもりだったからだ。


 書記という役職は、毎日の活動日誌の作成と、会議時に議事録を記録するのが仕事だ。

 緑浜高校は生徒の自治運営を重んじてはいるけど、何も生徒達が好き勝手にすることを推奨している訳では無い。


 当然、職員会への日々の報告が必要で、要は活動日誌とは毎日の活動内容の報告書のことだった。 なので、日々の活動内容を翌日に作成し、委員長に提出するのが僕の日課となる。

 因みに、久我山委員長は僕の作成した日誌をチェックし、承認してから職員会へ提出することになる。



 一通り役職が決まると、集まった総務委員会所属の生徒全員に「総務委員会」と書かれた緑色の腕章が配られた。 普段は付ける必要ないそうだけど、総務委員の仕事をする時は必ず付ける様にと説明があり、早速みんな腕に通していた。

 因みに、他の委員会も同じように腕章があり、各委員会で色が違うらしい。


 それと、今日の集まりに参加して知ったことだけど、生徒会を始めとした各委員会にも個室があるそうだ。


 部室棟の最上階である4階ワンフロアがそのまま委員会用の個室フロアとして宛てられてて、総務委員会の部屋の隣は、生徒会と生活指導委員会らしい。

 そして、その個室には各役職のデスクがあって、書記である僕にもデスクが割り当てられるそうだ。


 まぁ、総務委員会の集まりが終わった後に実際に行ってみたら、教室で使ってたであろうボロの机が並んでて、デスクと聞いて洒落たオフィスみたいなのをイメージしてたので、少しガッカリしたけど。


 それと、今後は書記として総務委員会上層部の打ち合わせに参加する機会も多いそうで、これで僕は総務委員会の幹部の方々と強力なコネクションを作ることが出来たと言える。



 このコネクションは、ミイナ先輩と一緒に『邦画研究部』を立ち上げるのに、きっと役に立つだろう。





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