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高校入学初日にいきなり女子に泣かれた  作者: バネ屋
第1章 高校生活スタート
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#06 先輩の距離感




 引っ張られる様に歩いているととても目立ってしまい、行き交う他の生徒から注目されてしまっていた。


 なので「もう逃げませんから離して下さい」と何度も訴えたけど、結局、その女子生徒は僕の腕を自販機コーナーまで離してくれなかった。



 自販機コーナーまで辿り着いても腕を掴んだままで、「ねぇ?何飲む?奢るよ?」と話しかけて来た。


 奢って貰うほどのことはしてないので遠慮したかったが、応じないといつまで経っても腕を離して貰えそうに無いので、「じゃあ、フルーツ牛乳で」と答えた。


「え?マジ?コレ、ちょー不味いよ?」


「大丈夫です。僕は好きなんで」


「そっかそっか。じゃあ私はカフェオレで」



 その女子生徒は、漸く腕を離してくれてポケットから小銭を出すと、自販機からパックのフルーツ牛乳とカフェオレを購入し、フルーツ牛乳を僕に手渡しながら「中庭のベンチに座ろ?すぐソコだから」と言って歩き出した。


 ベンチに着くと彼女がベンチの右寄りに座ったので、僕は左寄りに座り、「頂きます」と一言お礼を言ってから、パックにストローを突き刺した。



「キミ、1年でしょ?見かけない顔だし、今年入ったばかりだよね?」


「ええ、1年3組の進藤です」


「やっぱり。下の名前は?」


「アラタです。進藤アラタです」


 僕が名前を名乗ると、その女子生徒は体ごとグイグイとコチラに身を寄せてきて、興奮気味に喋りだした。


「へぇ~!アラタね! 私は峰岸ミイナ!2年4組!」


 スカート短くて制服も少し着崩していたから先輩だとは思ってたけど、2年生だったか。


「それで、アラタはあんな場所で何してたの?」


「文化部に入ろうかと思って、部活見学巡りです。 結局映画研究部は見学出来ませんでしたけど」


「そっかそっか、でも映研は止めといた方がいいね。クソみたいな男居るし」


「どうやらそのようですね。 女性に乱暴するは、力づくで自分の意見を押し付けようとするは、見ていて気分が良い物では無かったです」


「そう!そうなの!ほんとヤになる! でも、アラタのお陰で退部する決心ついたわ」


「いえ、僕は何もしてませんよ」


「ねぇ聞いてよ。 私はさ、純粋に映画見るのが好きだから映研に入ったのにさ、『一緒に映画見に行こう』って先輩がしつこくて。 でも、映画見た後に色々感想とか話し合う時間も好きだし、まぁいいかってOKしたの。 そしたらさ、1度一緒に映画見ただけで途端に彼氏ヅラしだしてさ、何度も『また映画見に行こう』とか、『今度は遠出してデートしよう』とか、『ウチに遊びに来ないか』とか言い出して、最近は私のことも「お前」って呼ぶ様になっててさ、マジうざかったけど先輩だったしガマンしながら何度も断ってたの。そしたら、さっき『あんまり我儘言ってると、可愛げがないぞ』とか言い出して、マジこいつクソだって私キレちゃってね。それで部室飛び出したところでアラタと遭遇して、アラタに助けて貰ったって話」


「なるほど・・・」


 峰岸先輩は、これまでの経緯を話してくれたが、その間ずっと体ごと僕にくっ付くようにして、左手で僕の膝を何度もポンポン叩きながら話していた。


 本人は無意識でやってる様だけど、この距離感が近すぎるところがその先輩とやらを勘違いさせたんじゃないかと思えた。


「多分ですが、峰岸先輩のこういう距離感が相手を勘違いさせてしまうのでは? 僕のことだって初対面なのに、いきなり名前を呼び捨てだし」


「え?変かな? でも、アラタなら勘違いしても良いよ?」


「いえ、大丈夫です。僕は勘違いはしませんので」


「えぇ!?なんでよ!? こうするとだいたいの男子はデレっとするのに、その反応はレアだ・・・」


「無意識にスキンシップしてるんだと思ったら、わざとだったんですか」


「映研じゃはこんな風にしてないし!」


 あざとい行動が目に付くが、その容姿は、栗色のくるくるとカールさせた髪をツインテールにしてて、色白の頬に浮かぶソバカスがなんだか愛らしくて、ぷっくりとした唇と長いまつ毛にパチクリとした瞳が特徴的な可愛い系美少女で、その目で真っ直ぐ見つめられるとドキっとしてしまうのは確かだった。

 峰岸先輩が自分で言う様に、モテるのは間違いなさそうだ。

 それにしても、ツインテールにしている女の子、リアルで見るの初めてかも。



「もしかして、彼女居るから他の女には興味無いって感じ?」


「いいえ、僕には彼女居ません。見ての通りモテたことなんて無い冴えない男子高校生ですよ」


「そんなこと無いと思うけど・・・でも彼女居ないんだね!なら私が仲良くしてても誰にも文句言われないよね!」


 何だか気になる言い方するな。

 

「ええ、そうですね。僕自身は遠慮したい気持ちが否めませんが、誰かに文句言われることは無いでしょうね。そもそも僕が誰と仲良くしようが、他人に意見を言われる筋合いは無い訳でして、それは峰岸先輩にも言えることで、僕がもし他の誰かと仲良くしてても峰岸先輩は僕に文句を言う筋合いは無い訳でして、だから―――」


「よく分かんないけど、連絡先交換しとこ!」


「・・・わかりました」



 峰岸先輩は、スマホで連絡先を交換した後も、ずっと僕を解放してくれず、お喋りに付き合わされた。


「5分で良い」って言ってたのに、結局1時間ほどしてから解放してくれた。


 去り際、「アラタはもう友達なんだから、私のこと『ミイナ』って呼んでね! じゃあね!バイバイ!」と機嫌良さそうに手をヒラヒラさせて去って行った。


 最初は面倒な人だと思ったけど、人懐っこく喋る距離感とたまに吐く遠慮ない毒舌が面白い人で、話しているうちにがらりとイメージが変わり、好感を持てるようになっていた。

 そして、僕のことを『友達』だと言ってくれたことが凄く嬉しかったので、感謝の意味を込めて、これからは『ミイナ先輩』と呼ぶことにした。





 ミイナ先輩と別れると、もうこの日は部活見学をする気力は残っていなかったので、教室に一度戻って通学カバンを回収し、帰る為に駐輪場に向かった。




 駐輪場に着くと僕の自転車の傍で、二人の男女が何やらモメていた。


 その男女の男子の方は見た事の無い知らない男子だったけど、女子の方は佐倉さんだった。





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