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高校入学初日にいきなり女子に泣かれた  作者: バネ屋
第4章 僕たちの夏休み
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#40 久我山さんのアピール





 途中でローカル鉄道に乗り換え、目的地の駅でホームに降りると磯の香りがして、海にやってきた実感が湧いてきた。

 ちょっぴり興奮しつつ改札を通り抜けると、そこからは徒歩なので日傘をさして、海沿いの道路を海からの風を浴びながら、久我山さんの案内で歩き始めた。



 相変わらず僕と腕を組んでる久我山さんが、「まずはホテルでチェックインして、部屋で着替えてから浜辺に行こうね」と説明してくれて、正面に見える10階ほどの高さのホテルらしき建物を指さした。


「え?泊まらないはずでは?」と訊ねると、宿泊では無く休憩で予約しているとのこと。

 海水浴場の更衣室やシャワーは混むだろうし、荷物などの盗難など考慮して態々ホテルを予約してくれたそうだ。「ホントは、宿泊するつもりで見つけたホテルなんだけどね」とも言っていたけど。



 そんな説明を聞きながら歩いてホテルへ向かうと、眼前に見える浜辺はあまり混雑はしてなかった。

 これも久我山さんが言うには、目の前の浜辺はホテルが管理している海水浴場で、ホテルの利用客以外は有料になるそうだ。


 なんだかセレブ御用達みたいでちょっぴりビビり始めたけど、僕の右腕に腕を絡ませ鼻歌交じりでご機嫌な様子の久我山さんを見て、「まぁ、久我山さん居ればなんとかなるか」と開き直ることにした。


 ホテルの正面からロビーに入ると、水着姿の利用客が行き交ってて、中はそれなりに混雑していた。


 余りキョロキョロするのは宜しく無いと思い、下を向いて久我山さんに手を引かれながらフロントに向かった。


 それからは、久我山さんがチェックインの手続きを終えるとエレベーターで7階まで上がり、予約していた個室に入って、漸く一息つくことが出来た。

 久我山さんは部屋に入ると、直ぐに窓際に行き、閉まっていたレースのカーテンを全開にした。


「海が一望できるね!天気良くてよかったぁ」


「そうですね」と言いつつ、預かっていた久我山さんの荷物と自分の荷物をソファーに置くと、僕は移動で結構疲れていたので、ベッドに腰掛けた。


 部屋は余り広くは無いけど、ベッドが二つ並び、窓際にはソファーとテーブルのセットもあり、バスルームとトイレは別々になってて、ベランダにも出れる様になっているし、それなりの料金の部屋なのは僕にでも分かった。



「疲れちゃった?」


「ええ、ちょっとだけ。 少し休憩してからでも良いですか?」


「じゃあ、30分くらい休んでから着替えようか」


「すみません」


「うふふ、起こしてあげるから、少し寝ててもいいよ?」


「そうします」



 週末のアルバイトでは、毎回久我山さんの部屋で一緒に昼寝をしてたので、この日も遠慮することなくお言葉に甘えて寝ることにした。




 ◇




「アラタくん起きて、時間だよ」



 体を揺すられて目を覚ますと、超至近距離で久我山さんの顔がドアップで僕の顔を覗き込んでいた。


「うぉ!?」


「きゃ!」


 ビックリして起き上がると、ベッドの淵に腰掛けていた久我山さんもビックリして、ベッドから落ちて尻もちをついた。


「すみません!」


「大丈夫、大丈夫。驚かせちゃったみたいだね。ごめんね?」


「いえ、僕の方こそ。 って、もう着替え済ませたんですか?」



 手を取って久我山さんを立ち上がらせると、上に半袖のパーカーを羽織ってて、その下は水着でビーチサンダルも履いていた。



「どうかな?」


 久我山さんは立ち上がると、ちょっぴり恥ずかしそうな表情をしながらも、体を左右に回転させるようにして、水着姿を僕に見せてくれた。


 久我山さんの水着は、クリーム色のフリルのビキニで、パーカーの前が開いてて豊満な胸元と綺麗なおへそは見えるし、白くて綺麗な脚や水着からはみ出したムッチリとしたお尻のお肉も丸出しで、目のやり場に困った。


「凄く可愛いと思います。 でも、直視出来ないです」


「うふふ。佐倉さんや峰岸さんのスクール水着よりも可愛いかな?」


「ええ、間違いないです」


 ジロジロ見ることが出来なくて、視線を逸らして答えると、「よかった。 今日の為に選んだんだよ?」と、久我山さんは僕の顔を覗き込むようにして、ニコニコと嬉しそうな笑顔を見せてくれた。



「じゃあ、アラタくんも着替えておいで」


「了解です」



 水着を持って洗面所に入り、下だけ手早く着替えて一応鏡で全身チェックした。僕の水着は今年買ったばかりで、白と黒の市松模様。ぶっちゃけると値段だけで選んで買った。

 上はTシャツを着たまま部屋に戻ると、久我山さんはベッドの腰掛けて浮き輪を口で膨らませる作業をしていた。



「僕、やりましょうか?」


「あ、お願いしてもいい?」


 浮き輪を受け取り、ノズル部分に口を付ける寸前で、ノズルの先端にピンクのグロスが付着していることに気が付いた。


 ああ、何も考えてなかった。

 流石にこのまま口を付けるのは不味いよね。

 と、ティッシュを数枚取って拭き取ってからノズルに口を付けて膨らませ始めると、向かいのベッドに腰掛けている久我山さんが僕をじっと見つめていることに気が付いた。


 ほっぺ膨らませてジト~って睨んでる。

 怖い。


 あ!僕が久我山さんをばい菌扱いしたと勘違いして、怒らせてしまったか!?

 慌てて浮き輪を膨らませるのを中断して、必死に弁解した。


「いや!あの!汚いとか思ったわけじゃなくて、女性が口を付けた後にそのまま口付けるのはマナー的に不味いと思っただけでして!」


「ふーん。 ちょっとソレ貸して」


 久我山さんが右手を出して、まだ膨らみ切っていない浮き輪を渡す様に要求されたので渡すと、直前まで僕が加えていたノズル部分を久我山さんは拭き取りもせずに無言で咥えて、「ふーふー」と数回空気を送り込み、直ぐに口を離すと「はい」と言って僕に返そうとしてきた。


 これは、暗に『今度はティッシュで拭き取らずに、そのまま咥えろ』と言っているのだろう。

 まるで罪人にでもなったかの様な心境で浮き輪を受け取ると、ノズルにはピンク色のグロスが付着してて、僕は無言でソレをそのまま咥えて空気を送り込んだ。


 その後も、久我山さんが「貸して」と言うので渡すと、先ほどと同じように拭き取りもせずに咥え、数回空気を送り込むと「はい」と言って返して来て、僕も先ほどと同じようにそのまま咥えて空気を送り込んだ。


 この謎の儀式は浮き輪が完全に膨らむまで繰り返された。

 最後にはノズル部分は二人の唾液とグロスがべっとりで、直ぐにでも口をすすぎに洗面所へ駆け込みたかったけど、多分それをしたら、また久我山さんが機嫌悪くなる気がしたので、ペットボトルのジュースを飲むだけで我慢した。



 今日の僕は弟では無く、下僕であることを改めて強く認識した。

 元々、久我山さんの気分転換の為に遊びに来てる訳で、そこに僕の希望や欲求を主張などしてはいけないんだ。 僕の行動の全てが、久我山さんを楽しく満足させることを要求されているのだ。


 僕が今日与えられている使命を再認識すると、久我山さんから新たな要求が出された。



「アラタくん、背中に日焼け止めのクリーム塗ってくれる?」


 久我山さんはそう言って僕に日焼け止めクリームを手渡すと、立ったままパーカーを脱いで手で髪を束ね、白くてシミ1つない綺麗な背中を僕に見せた。


 佐倉さんと手を繋いだり、寝相の悪いミイナ先輩に抱き着かれたりしたことはあるけど、流石に女性の背中を直接素手で触れた経験は無い。


 でも、久我山さんの命令には逆らえないので、心を無にして久我山さんの背中にクリームを塗りたくった。


「水着の下も塗ってね?ちゃんと塗らないと水着の跡が残っちゃうからね?」


 水着の下も塗るということは、水着をめくるなり下に指を差し込む必要がある訳で、脱がす訳じゃないけど、それと同等の行為では無かろうか。


「脱げたりしないですよね?」と言いつつ、恐る恐る水着の端をめくって、クリームを塗り広げる。


「ちょっとくらいなら見えちゃってもいいよ?見たい?」


 久我山さんはそう言いつつ、自分で胸元の水着の下にクリームを塗っている。


『見えちゃってもいいよ』というのは冗談だろうけど、さっさとクリームを塗る作業を終わらせる為に、僕はその言葉を無視した。



 ◇



 なんとか日焼け止めクリームを塗り終えて、フロントで渡されたリストバンド(宿泊客と証明するもの。恐らく無断でビーチを利用する人を監視する為)も装着し、浮き輪の他にタオルやレジャーシート等も用意して準備を終えると、浜辺に向かうことになった。


 途中でレンタルのビーチパラソルを借りて、なるべく人が少ないスペースを探して移動し、レジャーシートを広げたり、パラソルを突き刺して開いたりと設営作業を手短に終えて、ひとまずパラソルの日陰に二人肩寄せ合って座った。






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