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高校入学初日にいきなり女子に泣かれた  作者: バネ屋
第1章 高校生活スタート
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#01 希望を抱いて高校入学



 真新しい制服を着込み、新品の自転車に乗っての初めての通学路。

 朝日に照らされ、見るもの全てがキラキラと輝いて見える。


 今日から高校1年生となった僕の心境を表している様で、自然と胸が躍る様な高揚感を感じながらペダルを漕いだ。



 丘の上にある校舎を目指して桜並木の緩やかな坂道を上り校門に到着すると、先輩と思われる係員の誘導に従って駐輪場へ自転車を停め、クラス分けが掲示されている中庭へと向かった。


 掲示板前では自分と同じ新入生だと思われる人込みが出来てて、その中をかき分けるようにして前に進み、自分の名前を探した。


 クラスは1年3組。

 確認を終えると速やかにその場を離れ、校舎に入る為に下駄箱へ向かった。



 どんなクラスメイト達が居るんだろう。

 5年も地元を離れていた僕には、中学からの友達はゼロ。

 クラスメイト達は、同じ中学同士でグループとか作るのかな。

 そんな中で上手くやっていけるだろうか。

 でも、友達は作りたいな。


 上履きに履き替え、期待と少しの不安を抱えながら1年3組の教室に向かう。




 教室に入ると、既に半分程の生徒が居た。

 一人で席に座っている人も居れば、2~3人でグループになってお喋りしている人も居る。


 まずは自分の席を確認しようと、黒板に掲示されているA3サイズの座席表を確認した。

 男女別々に出席番号順(あいうえお順)に決められており、僕の席は窓際の一番後ろの席だった。



 おぉ、コレは結構いい席。

 教室全体を見渡せるし、グラウンドの様子も見れるし、初日からラッキーだ。



 この喜びを共有出来るような知り合いはまだ居ないので、一人で喜びを噛みしめながら自分の席に向かう。


 通学用のバッグを机の横に掛けてイスに座るが、前の席も横の席もまだ誰も来ておらず、一人で教室の様子を眺めていた。



 今の時間は、7時40分。

 徐々に教室の席が埋まって行く。


 合格通知に同封されていた入学に関する連絡事項に、今日は8時30分から入学式があり、8時には教室に入っている様に書かれていた。

 恐らくその30分の間に出欠を取ったり、担任の挨拶などがあるのだろう。



 時間が近づくにつれ、少し緊張してきた。


 担任はどんな先生かな。

 男性かな、女性かな。

 怖い先生だとヤダな。

 優しい女性の先生とかだったら良いな。


 色々一人で考え事をしながら教室内を眺めていると、前の席の男子がやって来た。


「おっす!よろしくな!」


 その男子は僕に向かって元気よくそう言ってイスを引いたので、僕も「よろしくね」と微笑み返した。


 男子はイスに座ると、次に隣の席の女子にも「1年間よろしくね!」と元気よく挨拶をしていた。


 隣の席(僕から見て斜め前の席)の女子は、彼にニコやかに微笑みながら挨拶を返していた。

 その子は艶々黒髪のストレートロングで、チラリと見えた横顔は凄く整ってて、美人だった。


 一言で美人と言っても色々なタイプがいるけど、彼女の場合は、小顔でキリっとした目つきに鼻筋かスッと通った、清楚で凛とした雰囲気のある綺麗系美少女で、そんな彼女のニコリとした笑顔には思わず見惚れてしまいそうだった。 この子は相当モテると思う。


(こんな綺麗な子がクラスメイトなのかぁ)と感心しながら、二人が続ける会話に耳を傾けていた。


 男子の方は、人懐っこくて元気があって、話しやすそうなキャラという印象。

 女子の方は、落ち着いてて礼儀正しくて、真面目な印象を受けた。


 そんなことを考えていると、彼の頭に桜の花びらが乗っていたのに気づいた。


 隣の女子と会話を続けている彼の肩をつんつんして、「頭にサクラの花びら、乗ってるよ」と声を掛けてから花びらを取ってあげて、「ハイ」と渡してあげた。



「おぉ!ありがとう!お前良い奴だな! 俺、古賀!古賀ケイゾウな!これからよろしく!」


「僕は、進藤アラタ。コチラこそよろしくね」


 隣の女子との会話を中断して、僕から花びらを受け取りながら自己紹介してくれたので僕も自己紹介をすると、それまでニコやかに古賀くんと会話をしていた女子が僕の顔を見ながらいきなりガタッと音を立てて立ち上がり、「うそ!アラタくん!?」と叫ぶ様に声をあげた。



「へ?」


 間抜けな声を出して戸惑う僕とは対照的に、彼女は両手で口を押え目を見開き、僕を見つめながらワナワナと震えていた。


 誰だろう。

 僕の名前を知ってるってことは、小学校の頃の同級生かな。

 でも、顔見ても誰だったか全然思い出せない。

 こんなに綺麗な人なら覚えていると思うんだけど。


 改めて彼女の顔を見つめると、目にいっぱい涙を溜めて今にも泣き出しそうだ。


 うーん・・・ホント誰だっけ。


 周りのクラスメイト達が、何事かと僕達に注目していた。


 何か言った方が良さそうだと、話かけてみる。


「えーっと・・・進藤アラタです。よろしくお願いします」


 とりあえず自己紹介と挨拶をすると、その女子の目からホロリと涙が零れ、返事もせずにフラフラとその場から離れて教室から出て行ってしまった。


 なんだか、僕が入学初日から何かやらかして女子を泣かせてしまったような状況になってしまった。


 そんな空気の中でも、古賀くんは最初からやり取りを見てて、僕が何も可笑しなことはしていないのを分かってる為か、普通の態度で話しかけてくれた。



「佐倉さんって進藤くんと知り合いだった?」


「どうなんだろ・・・見憶えが無いんだけど。 僕、3月に引っ越して来たばかりでこの高校には同じ中学の同級生が居ないんだよね。 でも、小学5年まではコッチの学校に居たから、その頃の知り合いなのかな?とは思うんだけど・・・」


「なるほど。 あの様子だと、相当な因縁ありそうだな。あとで聞いてみたら?」


「うん・・・でも、あんな風に泣かせる様な何かを、昔しでかしてたんじゃないかと思うと、ちょっと怖いかも」


「確かにな。 まぁ、情緒不安定な子なんでしょ。一人で不安なら俺も一緒に立ち会ってやるよ」


「ありがとう。そうして貰えると助かるよ。古賀君は良い人なんだね」




 その後、8時を知らせるチャイムと同時に佐倉さんも教室に戻って来たが、担任の先生もやって来たので佐倉さんに話しを聞くことが出来なかった。




第2話、本日17時更新

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