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01 ウンディーネの読み飛ばし推奨ひとり語り




 皆様ごきげんよう。

 わたくし、水の精ウンディーネと申します。


 これから少々、ひとり語りいたしますが、読み飛ばしていただいて一向に構いませんので、お赦しくださいまし。

 そうですわね。

 この一頁が全て、そのひとり語りでしょうか。まぁ、なんて長い。

 この大変読み難く鬱陶しい口調が終わった頃に、どうぞ再びご高覧いただけたらと存じます。

 かと言って、その後に続くお話にさほどの重要性があるのかと問われますと、言葉に詰まるものですけれど。


 それはさておき。


 このひとり語り。

 今作が『仲良しきょうだい王子王女、ときどき神話の彼等』という、センスの欠片も見当たらない名を冠するシリーズの一作であり、なおかつ同シリーズである『末っ子王子は、他国の亡命王女を一途に恋う』という完結連載作品の、その中間部分あたりで起こっている物語であるということ。

 ただそれだけを、作者が読者さまにお知らせしたいがための茶番にございます。


 ほんとうなら、半年前に投稿しているはずの短編でございましたが、書きかけのまま、すっかり存在を忘れきっていたのでございます。


 ちなみにそちらはご覧になられずとも、今作には一切支障はございません。

 ええ、まったく。

 ただちょっと、お気にかけくださいましたら、こう、なんと申しますか。

 嬉しいかなぁ、なんて。

 そんな下心にございます。


 とはいえ、わたくし、あちらでは一言もしゃべっておりませんけれど。

 ええ。人の身にはありえぬ美しさだと、この美貌を褒め称えられていただけですけれど。

 美しすぎるというのは、罪ですわね


 あら。作者って、完結連載作品って、シリーズって。なんのことかしら。

 まぁ、どうせ頭の足りない愚か者と、それに連なる愚物のことでしょう。

 高尚な水の精たるこのわたくしに、くだらぬ語り部の仕事を押しつけるなど。

 まるでキューレボルン伯父さまのようだわ。


 あの狸爺め!

 次に顔をまみえるときこそ、己が命運の尽きるときだと思え!




 ……コホン。


 わたくしともあろう者が。取り乱してしまいましたわ。

 どうぞお赦しくださいまし。


 さて。

 住居である水晶宮から繰り出たときのこと。

 友人の人魚姫達と舟に乗って、水遊びパーティーを催しておりました。


 ラ○ゲルニエ埠頭ではございませんよ。

 騒々しく、外観の趣を損ねるような――個人的感想ですの、どうぞ目くじらを立てないで――工業区域の観光地ではございません。

 風光明媚で空気と水の澄んだ、水の精の訪れるに相応しい畔にございます。


 そういたしますと、勇ましく凛々しく男らしく麗しく。

 素敵な殿方がパーティーに乱入して参りました。


 そこでなんと。わたくし、うっかり一目惚れをしてしまったのでございます。

 ええ。まさに運命の出会いにございました。


 そのお方の名はフルトブラントと言うのだそうです。

 姓を問いましたところ、フルトブラント様は後ろに連れられていた陰気臭い黒髪の、チンケな小娘を振り返って、目を合わせられました。

 それを見て、わたくし、ついそのチンクシャを水責めの刑で溺死させてやりたい衝動に襲われたのですけれど。すぐにわたくしへと振り返ったフルトブラント様が、その美しく幻想的な灰青色の瞳で、わたくしの目を真っ直ぐに射抜くものですから。

 ですからわたくし、ぽうっと頬を火照らせながらも、小娘を赦してやることにしたのでございます。


 わたくしの寛大な慈悲深さに、フルトブラント様も感じ入ったご様子でした。

 そして「姓は……今は、ない」と仰せになられました。


 あら。まあ。


 てっきり下賤な人間どものうち、いくらか上位だとか自称する貴族階級に所属していらっしゃるのかと思ったのですけれど。姓がないとは。


 まぁまぁまぁ。


 フルトブラント様のようなご立派な殿方が人間の下位に置かれるなどと、本当に人間とは愚かなものですのね。


 本当に、なんて愚か。

 そのくせ魂だけは持っている。

 死ねば塵芥と消えてなくなってしまう精霊とは違い、人間は清浄なる魂だけの存在となることができる。

 おぞましく不誠実で虚実に満ちた、下等なる生物であるくせに。よもや魂とは、そういった下等であるがためのものなのかと疑惑が頭をもたげる程に。



「いや。だが、リングシュテッテンの地と城を出立前にもらい受けた。故に、フルトブラント・フォン・リングシュテッテンと名乗ろう」



 顎を反らし、ごつごつとした手を、その(そび)やかした胸に当てあそばすと、フルトブラント様はふと首を傾げられる。

 そして背に立つ小娘に「……よいだろうか? アーニャ?」とお尋ねになりました。



「ブラントお兄様ったら。わたしはずっと、お兄様の前では、妹のアーニャ、ただそれだけですわ」


「そうか。それは幸い。いずれも私にとって、アーニャは大切な妹なのだから」



 見つめ合う二人の間に体を滑り込ませて分け入ると、生温いような鬱陶しい風が髪に纏わりつくようでしたので、つい、はしたなくも手で振り払って、情愛の風を薙ぎ落としました。


 それにしてもフルトブラント様はこれからどちらにおいでになるのでしょう。何やら小娘が人魚達から祝福の歌を指南されている様子。


 あらあらあら。


 なんてみっともない歌……じゃないですわね……なんかちょっと、いい感じのお声をなさって……いえ! 違いますわ! 勘違い! そうよ、勘違いです!

 やめて! フルトブラント様! そんなチンケな小娘の声などにウットリなさらないで!





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― 新着の感想 ―
[一言] ふわおぅ!! (#^.^#) 残念!! ノリノリで読んでましたのに時間切れ… ブクマいたしましたので明日お邪魔いたします<m(__)m>
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