8話 現地人対異世界人
戦闘パートです、まぁご愁傷様。一応予定通り大分先の話で必要イベント(予定)
冒険者ギルド…じゃなかった。クランに来て聞くだけ聞いて帰ろうと思っていた矢先、とんでもない事に巻き込まれてしまった。
「いい機会だ。そこの調子に乗ってる馬鹿を軽く揉んでやってくれないか?」
やって来たクラン長はそう言った。受付の方が言うのだから、長なのだろう。
こちらとしては、あまり問題がでかくなって欲しくない。しかしこっちのヒメノとクリシックはやる気満々であり断れる雰囲気でもない。
「クリ」
「あぁ」
クリシックは頷く。それだけでは何かあっては困るので、取り敢えず耳打ちでクリシックに伝える。
「相手の実力が分かるまでスキルの禁止、後攻撃するのもダメ。対応出来ないと思った時だけスキルを使用してもいいから」
「ダメなのか? それじゃ相手を倒せないが」
「無理に倒す必要もないから。下手に殴って殺してしまいました、なんて言い訳にもならないし。この世界の技事情も見れるチャンスだから、泳がせておけばいい」
ゲームのステータスがそのまま反映されるとは思えないが、スキルの強さは本物だ。武器を持たずにスキルは撃てるから、人に向ける物じゃない威力なのは最初に身を持って知ってる。
「クラン長」
「どうかしたか? ここで引くなんて言わないよな?」
「そういう風に焚きつけたのは貴方ですよね…。それはともかく、武器と鎧を貸してもらえないですか? 丸腰で戦うなんて見てられないので。後はルールについてですけど…」
仕掛けられた側がこう、あれこれ言うのは構わないだろう。
こっちのルールは簡単に、そして遺恨の残らない様に…というのは無理だが納得できる形にする。
クラン長はどうもそこまで気にするのかと。不思議そうにするが、右も左もよく分からない身としてはそうした方がいい。
訓練所の稽古施設へ移動して、観戦者側から2人の様子を観る。
隣には何故かクラン長と受付の人が立っている。
「2人ともどうしたんですか」
「聞きたい事があったんでな」
「私はクラン長が変な事しないかと、不安で」
クランの方はいいのかと、思ったが。もう1人の受付の方に任せてるのかもしれない。
「そういえば名乗っていなかったな、俺はイーサク・レーン。んでこいつは、娘のメルラン・レーンだ」
そう言って、受付の人の頭に手を乗せる。
え!? 親子だと…! 似てない。全然似てない、髭の濃いおっさんと綺麗な女性、くらいにしか思ってなかったわ。少し話をしたけど正確も真反対だし。
しかし、わざわざ言う必要があるのは何故?
「こほん。私はヒイラギ、上も下の名前は無いからそのままでお願いします」
「そうなのか、それで話というのは…」
「あ、始まるみたいですよ!」
受付のメルランさんは、指を訓練所の方へ向ける。
まぁ俺も色々と聞きたい事があったし、この世界の人と。どれだけ考えても身内だけじゃ机上の空論でしかない。
2人と一緒に訓練所へ向けたと見せかけてクラン長のイーサクを横目で見ていたのを、今度は訓練所の方へ向ける。
「それでは、始め!」
司会の合図に試合を開始する。人の身長ぐらいある大楯を構えるクリシック、その視線の先には短剣を構えた先程のゴロツキだ。
先に動いたのは、ゴロツキ。いや、名前分からないしそんな雰囲気あるし。
武器は木で出来た剣だ。実際の武器では何か起きた時に問題にならない為の場所も含めて俺が提案した物。
「甘ちゃんに教えてやるよ!」
伊達に冒険者をしていないのか、素早く間合いに入り込む。クリシックの鎧が覆われていない顔部分に向けて横殴りに振られる。
「ふんっ!」
それを難なくいなす。そこに弾かれるのは予想していたのか、背中に回り込み横蹴りを放つ。
見切っていたのか体と盾をそちらに向け、同じく弾く。
その一部始終を見て、イーサクは呟く。
「なるほど、やるなぁ」
「どうでしょうか。相手側も負けてはいないと思うのですが」
「いや、あれはあいつには勝てないな。手加減されてるのが丸わかりだ」
メルランの呟きにイーサクは溜息混じりに返す。
これだけで分かる物なのか。確かに手加減する様には言ったが、あの数回の動きではよく分からないだろう。
その視線に気付いたのか、イーサクは語り始める。
「俺はお前らの戦いを少し見ていたんだ。あんなのを見せられたら、誰だってこんなの笑い者にしかならん」
「あぁ…確かにあれを見ちゃうと、なんか同情しちゃいますね」
「俺達はいつの間にか知らずに守られていた、それは原理は分からないが予想は出来る。あいつなんだろ?」
そう言われてしまえば頷くしかない。正確に言えば俺のスキルではあるのだが、クリシックの功績もありボスドラゴンの攻撃で崩壊しそうな攻撃を受け止めたのはそうだし。
どちらにせよ、あれを見ていたら本人の技量はともかく、お遊びにしか見えない。
しかし、それならと口を開く。
「あの襲撃は偶然だと思いますか?」
「…そうだなぁ。偶然にしては、都合が良過ぎる。お前達が来るのも含めて」
「その割には疑っていない様に見えるんですが」
「元冒険者のカンと、お前らの人柄という奴だな。実際、偶然なんだろ?」
そうか? と思ってしまう程、信頼は有る様だが。100%偶然かと言われると、あの姫様に聞かないと答えようがない。
「あえて言うならば…ありえない。と言っておこう。あそこまでの規模の大軍団は見たことも無い」
「もう、2人とも難しい話していないで試合みましょうよ」
メルランにそう言われてしまい。取り敢えず今行われている試合へ視線を移す。
余裕の表情で相手が向かってくるのを待つ、クリシック。その視線の先では息を切らし、汗をダラダラと流すゴロツキの姿が。
「てめぇなんで攻撃してきやがらねぇ。余裕ぶっこいてんのか、殺すぞ!」
「…」
クリシックが一歩踏み出す、するとゴロツキは慌てる様に一歩下がる。
すると一瞬、意を決した様にゴロツキはニヤリと表情を変え、腰へ手を隠す。
出て来た物は金属の剣。試合違反の物だ。
「違反するのか?」
「お前を殺せれば、なんだっていい! スプライト(精霊付与)」
そう唱えた瞬間、ゴロツキの姿が消える。クリシックの真後ろへ。その刃先は首元へ向かっている。
「ぬん!」
その剣先を見る前にクリシックは動く。そのまま剣を弾き返し。空いた左手で、彼の右手を掴み。地面へ叩きつけた。
一瞬の出来事で周りは静寂に包まれ、その後起こった事を理解したのか歓声が上がった。
「結局攻撃しちゃってるし…まぁ今のは自業自得かな。相手も無事みたいだし」
「懸念があったみたいだが、結局何を心配してたんだ?」
「秘密」
バラす訳にはいかない、というのもあるが上手く説明も出来ない。
強すぎる力で叩きつけた訳ではないのか、気絶程度で済んでるみたいだ。
加減は出来る、と。あのゴロツキには悪いとは思うけど、ちょっとムカっとしていたし良い意味で勉強になった。
クリシックの方へ向かおうと歩き始めると、後ろからイーサクの声が。
「この先、お前達が何か困ったら内に来い。仕事くらいなら紹介してやる。うちの娘を救ってくれたのは他でもないお前らだからな」
「私は…」
「あぁいい、言わなくて。独り言だからな、だからそうだなぁ…その言わせてくれ…ありがとう」
俺は横目で照れ臭そうな彼の顔を少し見ると、嬉しくなり笑顔を作った。
それは良かった、とそう思えた。
次は7月2日更新です




