7話 冒険者
話的には冒険者になる?
という事は無くてどういうものかの偵察
話していたら先程までの疲れが何処かへ消えていた。
この世界も生活も不思議が多いし、同じ気持ちのヒメノなら何か気付いたかも知れない。
「そうそう、現実世界…じゃなくて。元の世界とは違って変わった場所がなかった?」
「…んー? 全部が全部変わってるから、どれも気になってるけど」
そうか、まぁそうだな。建築技術はともかく、機械系から生活様式、そもそもの王政だったりと変わってるからなぁ。
こうなると捻り出すのに最適なのは、創作物系の鉄板か。ファンタジー世界かどうかなんて言われたら100%イエスと答えるだろ。
「そう…あれかなこういう世界鉄板! 冒険者ギルド、奴隷商店、教会、スラムかな」
「…知識が偏ってる。それとある一方向への圧がすごい」
ヒメノは呆れた様に再度ジト目でこちらを見てくる。その視線から俺は目線を逸らす。
「うっ…こういうの好き好んで読んでた時期があるから…いいじゃない! こういうの好きだったんだもん」
「…開き直らないで」
溜息も出して見るからに不満げである。しかしこういった施設はありえそうだし、ヒメノなら上から探して見つけたんじゃないか? 奴隷商店とかはあれだけど。
「冒険者ギルド? なら見つけた…中はこの前の襲撃があって、色々立て込んでるみたい。人の出入りが激しかったから中まで見てない」
「どうせだし、そこまで連れて行ってくれない?」
「…いいけど。冒険者になりたいの? なるなら皆に相談してからね」
別にそういう訳じゃないんだけど…さっきまでので信用なくなった気もする。
「そうじゃなくて、これからお金を稼ぐ必要が出た場合ってこと。今でも御厄介になってるし、仕事見つけるって時にさぁやるぞ! で当てもなく探したくないから内容だけでも見ておかないと」
まぁ個人的に、予想通りの冒険者だったら選択肢に入れる予定。この世界の仕組みが理解出来る様になる上、戦争から他国事情、他には人脈構成まで期待が出来る。
後は人手不足な可能性が高い、衛兵とか研究者、商人。メイドなどの従者、経営者、農民っていう選択肢もある。
ひとつ懸念があるんだよな…前者の冒険者はともかく、後者はそう簡単な話じゃないと思う。
「…となると、こういうのは国王へ直接か」
「…どうしたの? 行くなら乗って」
「あ、うん。お願い」
今すぐって訳じゃないけど、出来るなら早めの方がいい。さっきの商店街の事も含めてだけど、名声って言うのは忘れるんだ。時が経てば今の贅沢な境遇はのちに無くなると思って行動するべきだ。
歩きで行くわけでもないみたいだ。浮かせた箒の自分が座る隣をぽんぽん叩くヒメノに、少し羨ましさを感じた。
冒険者ギルドの扉の前で降りると、中から騒ぐ声が聞こえてくる。
言い争い、怒号の様な声まで外とは違って物騒だ。
面倒だなぁ、時間を改めるのも面倒だし、中へ入るしかないか。そーっと、静かに扉を開けて中の様子を伺いながら入る。
「失礼しまーす」
中に入ると屈強な大人の男2人が言い争いをしている。しかしだからといって、挟む様な位置のカウンターの女性2人は静かに仕事をこなしている。
慣れてる、というか何時もの事なのかもな。よく見ると青筋が見える気も…。
ま、まぁいいか。無視して、カウンターに向かおう。
「こんにちわ」
「あら、どうされましたか? ご依頼であれば、隣の方に…あれ、貴女は…」
「あ、いえ。お話をお伺いに来ただけです。ここは一応冒険者のギルド? なんですか?」
変な詮索される前に用件を伝える。ただここはどういう所? 聞くにも冒険者ギルドかも知れないと入っただけなのでハッキリ答えられなかった。
「何も知らずに入ってきたんですね……。ギルドというのは分かりませんが、ここは冒険者クランと言います。冒険者への依頼やなりたい方はこちらで受け付けております。細かな説明は…」
依頼方式は、提示した依頼と報酬の依頼料。また定価を冒険者側が先払いで払って受け、成功したと同時に返ってくる。失敗した場合や解雇された場合、理由と状況の提示義務。また、依頼先でのイレギュラー時の報告などなど。
大まかにはクランという名前に変わっただけかな? こう聞いてみるとわりかししっかりとした土台が作られている。まぁ当たり前なんだけど、会社や企業は他企業に信頼されないと始まらない。この場合は他国か。
内容的は主に冒険者同士の争いや依頼者との食い違い、そういう問題がメインだよなぁ……。
「ありがとうございました。またお伺いするかもしれませんが……」
いきなりガシッと肩を掴まれ、受付の方から床へ叩きつけられる。
「きゃぁ」
こういう不意な攻撃にこんな声出すのは、元男として抵抗あるなぁ……なのはいいとして何事!?
「嬢ちゃん、さっきから邪魔なんだよ。ここは嬢ちゃんみたいな貴族のボンボンが来る場所じゃねぇんだ。さっさと帰って執事やメイドに泣きついてくるんだな!」
ガハハッと大柄の男は笑う。
「大丈夫ですか!? ちょっと、あまり問題を起こさないでくださいと言ってるじゃないですか! いくら結果を出せていても今回ばかりは許せませんよ!」
「何をどう許さないっていうんだ? あの嬢ちゃんと同じく、お前も同じ風にしてもらいたいか?」
突き飛ばされたが、痛みは左程ない。とりあえず、立ち上がり服に付いた埃を取るために服を軽く叩く。
巻き込まれる前に帰りたかったけど、そうも行かないのも現実。しっかし、貴族と勘違いしてるなら尚更手を出さない方が良いのは分かってるんじゃないか? いやこの世界の貴族の立ち位置は分からないが。
実力で黙らせるのはダメだ。相手の力も分からず、こちらの攻撃がどれくらい有効なのかも分からない。下手をすれば喧嘩じゃなくて殺し合いになってしまう。それくらいはあの騒乱時に理解した。本気を出すまいが、人が死ぬということを。
「私は大丈夫です」
「良かったー。これでお客様にお怪我があったらと思うと、私達の面目もありません」
先程受付に入っていた彼女が隣までやってきて、俺の安否を確認する。
さてどうしたものか、そう思っていると。
「リーダー、遅い」
「おぉ、やっぱりヒイラギだったのか。起きていたのなら先に言って欲しかった」
声をする方を向くと、入り口の方にヒメノとクリシックがこちらへ歩いてくる。
受付の……この人の名前聞いてなかった。凄く呼びにくい。どうも顔が真っ青になっていく、その表情はだいぶ無理している顔で。
「私より貴女大丈夫!?」
「い、いえ……もしかして、なのですが。貴女はその…歌姫様ですか?」
「あ、えっと…はい。そうみたいです」
「やっぱりぃ……」
なんとなく、予想は付いていた様だけど2人が来たことによって確信に変わったようだ。彼女の中で何があったのだろうか。凄く、泣きつく様にすがり付いてくる。
状況が読めない。
確かにあの騒動を収めた功績者と言われればそうだが、それでこの反応はおかしい。今にも処刑される死刑囚みたいな顔になってる。
「ごちゃごちゃうるせぇんだよ! さっきから、早く依頼持ってきやがれ!」
「…何この人。頭大丈夫?」
「何やら訳ありの様だが、ヒイラギ何かあったのか?」
ヒメノの言い方も酷いが、妙に冷静なクリシックも気になるし。周りも何事かと騒ぎ立てる様に声も聞こえ、頭を抱える。
事の発端はよく分からんが、説明できる範囲で2人に状況を説明する。
「なるほど、黙らせればいいんだな」
「突き飛ばすとか最低」
「ま、待って。落ち着いて、今事を起こしたら大変な事になるから」
「そうです! ヒイラギ様の言う通りです。ここは少しでも穏便に、ただでさえ私達の問題に巻き込んでますので」
2人を俺と受付の人で一緒になだめる。
「ふん、お前らなんか俺様にかかればそこらのゴミとかわんねぇよ」
どういう威張り方!? 独特過ぎる。
こういう奴って大抵、覚えてろよ! って言って漫画辺りだと走り去っていくよな。
「お、面白い事になってるな。救世主様と自称上級冒険者、どっちが勝つかやって見るか」
「クラン長…これ以上ややこしくしないでください」
新たな訪問者にまた騒ぎの予感。
先が見えないまま歩くってのは怖い。歩くにも行動するにも情報が必要だからだ。
情報っていうのは馬鹿に出来ない。ゲームで言えば攻略本や攻略サイトがそうだ。現実で言えば感性、五感を頼りに。なんて言うそれだ。
暮らし方1つ分かっていない俺達は情報を1つ1つ集めてようやく同じ地に立てるんだ。手当たり次第にあるキノコを食っても死ぬし、与えられる物だけ食っていればその内喰われるだろう。
次は6月25日更新します!




