2話 戦場の歌姫
更新、戦闘パートしか無い
地下を抜け、王宮の最上階までの道を切り開きながら進む。
作戦と言ってもシンプルだ。
王宮の上に立っていたドラゴンを倒す。パーフェクトテリトリー(範囲拡大)で王宮から王都全域に範囲を伸ばして俺の補助と回復で護りつつ、1区域ずつ敵を全滅する。
仮にドラゴンが王宮の上に居なくても、後半はやらなければならない。
でも不安要素しかないんだよな…。
大っぴらに言うつもりが無いが、俺の職がディーバ…様は歌姫なんだが。歌なんて物はリアルで知らんし、やった事もない。
魔法を撃てる、つまりは歌も歌えるなんて理屈であればやれる。そう言うことが出来る身体だからな…多分。歌を歌うスキルと演奏するスキル両方をしつつ、状況に応じて魔法で切り替える。それを自分でやるとか考えただけで頭が痛くなりそう。
「緊張してるのか?」
「しない方がおかしいと思うけど?」
「良いじゃん良いじゃん、なる様になるって」
心配するクリシックを余所に、シエラは人ごとの様に気軽だ。
こんな奴らと組んできたんだ、少しくらい開き直ってやればいいか、失敗したとしても…どうでもいいか。
王宮の最上階に着くと、居ると言われたドラゴンは居ない。
夜の暗闇から突き刺す様な、何かを感じる。
終わるのを待ってるのか?
王宮から眺める事が出来る王都の街並みは、荒れ果てていて焼け焦げる音、逃げ惑う足音、地面を乱暴に踏みつける音に悲鳴。
「居ないものはしょうがない。さっさと始めるぞ。パーフェクトテリトリー(範囲拡大)」
クリシックの魔法で範囲を広げる。その大きさは王都全域を覆う。
「手筈通りにシエラ、ヒメノ暴れちゃって。樹葉のリサイタル(HP再生)、鎧山のインスパイア(魔力防壁)」
俺は自分でもびっくりするくらいの歌声を出す。声は周りに響き渡り、手はバイオリンを奏でる。
その音は周りにいる者を包み込んだ。
叫ぶ声と逃げ惑う足音は少しずつ小さくなっていく。
俺が歌い、演奏をする。しかし、事の自分は冷静だ。何かをしている感覚はあっても、これが自分だと自覚できない。浮ついて地から足が離れる感覚に近かった。
口から出る声は、拡張機を通すマイクの様に広く大きく響き渡る。
王宮から見上げる街並みは酷い。崩れ落ちた家、傷だらけ人達、血溜まりになった床、焼け焦げた死体。
死んだ人は戻らない。しかし、今生きてる人は空に近いこちらを見ていた。
「どうやら、こっちにイチャモンを付けに来た様だな」
クリシックは呟く、空に打ち上がる複数の瞳。こちらへあらゆる方向からドラゴンの咆哮が響き渡る。
彼の役割はパーフェクトテリトリー(範囲拡大)だけではない。俺のスキルはその場から何も出来なくなる為、それを護る役割も持っている。
視線だけを送ると、クリシックは頷く。
「ブレスバキューム(息吹吸収)、マジックシールド(魔法軽減)、ガーディアンシールド(範囲物理軽減)」
スキル使い分けは、彼が1番得意とした物。職業の中で1番、マゾ職とか言われる程のスキル量と何時使うのか分からない謎の魔法まである、ガーディアン。
数は100個超えてた気がする。
風が描かれた大楯を持って、敵の目の前へ立つ。視界一杯に赤く容赦の無い炎は盾に吸われる。
近づく巨体はこの一帯を通さず、放つ魔法の槍ですら通る事も無い。
そこに居るのはまさしくガーディアン(守護者)と言えるだろう。
そんなドラゴンの隙間を縫って、1人中へ入ってくる。
勇気あるなぁ、本人は口元に手を当てて顔青いけど。
「…凄い、リアルで見る炎ってこんなに赤いんだ。後なんかうじゃうじゃしてて気持ち悪い」
遠くから見たらそんなに酷い絵面なのかな…。
「だったら掃除してくれ。それをずっと見てるこっちも気持ち悪くなる」
入ってきたヒメノにクリシックは軽口で返す。
彼女は跨っていた箒から降り、箒を手に持ち直して宙に向かってクルクル円を描く。
いいなぁ、歌姫ってなんか歌って演奏してってイメージが強くて、実際にも戦う事が無いんだよな。
「バキュームストーム(風吸引)、デビルハンド(闇攻撃魔法)」
風が1点に集中し、飛ぶドラゴンを丸ごと集める。数十匹の影はもがき苦しむが、黒い手がそれを握りつぶした。
あれはホラーだわ。血とか諸共闇に消えるとことか、闇魔法ってみんなあんななのか。
俺は俺で歌と演奏が終わり、スキルは終了した。効果はあったのか知らないけど、やらないよりは、かな。
「っとそれで、例のボスドラゴン? はどこに行ったの?」
「…さっきから上にいるけど?」
ヒメノの声にクリシックと一緒上を見上げる。
王都全体を覆う様な、翼を広げてこちらへ急落下。
「クリ、無敵!」
「分かってる!アイギス(全体無敵)」
見えない壁とありえない巨体がぶつかり、壮大な音が響く。
ボスドラゴンは少し遠ざかり、口を大きく開ける。
他のドラゴンと比べ物にならないその含みは、背筋を凍らせる程恐怖を覚えた。
「チェストー!」
突然に、近くの建物からジャンプしてその口を蹴り上げた。
声から察するにシエラかな…そんな芸当やりそうだし。
ドラゴンの炎は空へ吐かれ、直ぐにシエラへ視線を向け。翼で吹き飛ばす。
「ふぎゃ…」
間抜けな声を上げて宙に投げ出される。ヒメノがそれを箒に跨り救出する。
あれだけの巨体で、威力ありそうなのにあんな物で済むのか。
さてと。
なんだかんだで、この世界に来てから時間はあまり経ってない。機械を通した非現実空間とは違って俺は少しワクワクしていた。
こんな事、普段の俺が聞いたら笑い転げるだろうが、これから楽しくなりそうだと感じていた。
ドラゴンの存在、異なる世界迷い込んだとも言える出来事。日本なんて枠組みから外れた起こりえない状況。それらは新鮮でドキドキワクワクな世界だ。
俺は…もしこれから帰るか、残るかの選択を迫られたら恐らく…いや、確実に残ると答えるだろう。他の3人はどう思っているのだろうか。
一緒であれば…それは楽しくなるだろうな…。
基本的にはキリも良く戦闘した筈(自分の中では)
戦闘続くので次は今日の10時更新になります




