23話 残る疑問は後に
えっと、申し訳ありませんが、気まぐれ更新に切り替えます。
出来るだけ更新しますが、遅くなる可能性が多くなった為です
この状況を想定していなかった訳では無い。しかし、いざその状況に陥ると、衝撃と恐怖で何も考えなくなる。
そもそも、俺はこんな頭脳労働なんかあまり好きじゃない。どちらかと言えばシエラの様な前衛で戦ったり、クリシックの様に味方を守って戦う方なんだ。こんな時なんかそうだ、本当ならこんなちまちま逃げ周るよりも、あいつに対して直接殴りに行きたいくらいだ。
今更こんな状況で愚痴っていても始まらない。
そこらの木は薙ぎ倒されながら、こっちに元の人間の怪物はこっちに迫ってくる。
するとその上空、小さな影がこちらに落ちてくる。
「ヒイラギ様、マリーナ様ご無事ですか?」
「シーナ!? ここは危険だから下がって」
「お話は後で、先に移動しますね。走りましょうスピンス」(精霊付与)
降りてきたのはシーナだった。俺はそれに驚きながらも注意すると、有無も言わさず俺とマリーナの手を取ると視界が捉えられない程の速度で動いた。
視界が落ち着くと、そこは先程の地面ではなく。大きな石に座らされていて、困惑は治らず。先程の怪物を視界で探す。
すると目の前でシーナは微笑み、大丈夫ですよと心配そうな俺に声をかけた。
よく見ると空には黒い影が1つ、ヒメノが乗っている箒が見えていた。そこには2人の人物、1人はヒメノで確定だろうけどもう1人は誰?
「すみません、救助が遅れてしまって。本来ならば、ヒメノ…に言われてすぐに駆けつけようとしたのですが、実は……」
胡散臭い話だが、隣国の国王がそのマリーナ公爵令嬢と一緒に会談をする予定があったらしく。それでマリーナの到着が遅れているという情報、そしてクリシックやシエラは確認出来たが俺とヒメノの姿が無く。そいつらが主犯じゃないのか、と疑いをかけてきたらしい。しかも、それに対して王様も疑っている節もあり、2人を拘束した上で探しだせとなったとの事。監視役のシーナはそれで呼ばれて、探しだす任を受けていた所。ヒメノが現れ、状況を説明したのだがシーナが疑ったせいもあり、時間がかかってしまったの事。その上で弁解した所、盗賊案件でクランの方に要請しクラン長直々に赴く事で承認を受けたらしい。
一気に情報があって、分かりにくいが。マリーナと話が違う所がある。彼女は友達に会いに来ただけだ、それにこの国の状態を知らなかった。他にも何故、王様が俺達の存在を知っている? というより、あそこに乗ってたのってクラン長!?
遠くに見える影は相当怒っているのか、ヒメノが魔法を連発しているのが見える。木の影になっているとはいえ、それでも見えるくらいの大規模な魔法をぶち込んでいる程派手な音が先程から響いている。
「ヒイラギ様、それよりも。勝手に行動しては行けません! 今回はなんとか誤解が解けたから良かったものの、私だって貴女達を疑いたく無いんですよ? 探索するなんて言って、首を突っ込んでしまっては怪しまれるんですから」
「は、はい……ごめんなさい……」
なんだろう、こう。普通は説教されのはいいとしても、やっぱり少しは疑ってたんだなぁって。それでも信用しようとしてくれていたのも、彼女の気持ちなのだろう。
それでも終わらないシーナの心配していた説教は続く。その横でずっと無言のマリーナはこちらを見ていた。そして、呆気から戻ってきたのか、シーナに対して疑問を投げかける。
「貴女…確か王妃様の使用人の方ではなかったかしら」
「はい、ですが訳あって。今はヒイラギ様達のお世話をさせてもらってます」
シーナはあっさりとそう答えた。
意外というよりは、びっくりの方が上だ。確かに身の軽さや色々出来る所を見ると、上の方の人間な感じはしていた。しかし、王妃の使用人かぁなるほど。それよりもさっき、普通に精霊使ってた気がするんだけど移動系なのかな?
精霊にも色々種類がある事は分かったけど。今の所風くらいで違いが分かりにくい。
「はぁ……あの嬢ちゃんも大概だな。何で俺の周りにはおっかない女性ばかりいるんだか」
「イサークさん、あっちはもういいんですか?」
「ヒイラギか、良いも悪いも俺が居ても何も出来ねぇよ。ただの盗賊だから、取っ捕まえて吐かせるくらいかと思ったら化物はいるし。それに肝心のアジトとやらは壊滅状態。こんなのどうまとめて報告しろってんだ……」
クラン長は頭に手を置きながら、疲れた様に溜息。着ている服の端は焦げていたり、霜みたいに凍っていたり、静電気の様に跳ねている。よく生きてたなぁ。
「一応、分かった事をお伝えします。私も色々整理したい事があるので聞いてくれませんか?」
「あ、あぁ頼むよ。しかし、ヒイラギも思った程タフなんだな。隣の貴族様は緊張が切れたのか眠っちゃってるのにな」
「あ、あはは……今はまだ大丈夫ですので」
あの問いかけの後、静かだったマリーナは眠っていた。無理もないか。
イサークにこれまでの出来事と聞いた事を話した。
すると彼はなんとも言えない表情で腕組みを始める。
次節俺の方を見て嘘を言っていないか、尋ねて来ては考え込んでいる様子だ。そして、その考えがまとまったのか俺に対して口を開く。
「これは俺の憶測だが、隣国はこの国に対して戦争を仕掛けようとしてるのかもしれないな。少しそこのメイドにも聞いたが、内容の齟齬と不明な点が多い。一番の謎はその龍族の存在だが。それでも今回の訪問から、クランに来た隣国の冒険者。知っているはずの無い情報。そして彼女の失踪に対しての挑発。これは難癖をつけて攻め込む算段だろう」
「クラン長をそうは言いますが、私達の国を攻め込み得る物があるのでしょうか。貿易は上手く行っていると聞いておりましたが」
「さぁな、憶測を重ねても良いことは無い、が。王族だけが知っている祭壇が狙いかもな。国が滅びれば、国間の約束なんて無いからな。そこに何があるのかが俺にはわからない」
うーむ、真面目な話なのだろうけど。眠くなって来た。
頭が左右に揺れ、欠伸も出てきた。あぁダメだ。
「ヒイラギ様! クラン長、この話は後で王様に報告します。今はあの化物の回収と、安全な場所に移動しましょう」
意識が遠くなる時に、シーナがそう呟いていた様な気もするが、眠気に負けて意識を手放した。




