20話 作戦ではなく対策
遅れた分の更新です
次も1週間以内には更新予定ですので、興味が出たという人はよろしくお願いします
語字修正入れました
洞窟の中、牢に閉じ込められた俺は脱出する意思を隣国の公爵令嬢マリーナと決めたが。相手が人間である以上、何かしらの対策や作戦を持っていたい。
ゲーム以外のリアル戦争とか、テレビの中の映画くらいしか知らなかったけど。実際、直面すると死よりも怖いかもしれない。そう思うと仲間が居るのが本当に心強いんだな。
「決めたのはよいのですけど、何をしますの? 無策で突っ込んで行かないですわよね?」
「まずはお互いに何が出来るのか、把握しましょう」
作戦を立てる上で最初は互いの戦力を確認する事。何が出来るのか、を大雑把に把握しておく事で立ち位置や戦い方を知る事が出来る。なんて、偉そうに言ったけどゲームだと職業でなんとなく分かるから単純にどんな事出来るのか知りたい。
自分の出来る事を一部適当に説明しつつ、彼女の内容に耳を傾けた。
風の精霊、クラン長が言ってた事が確かなら隣国の人間だと言うことの証明でもある。彼女はそれを使って一定範囲内の風を、刃に変えたり逸らす事が出来るらしい。その範囲っていうのは精霊の気分なんだとか。後、条件があるらしいが、教えてもらえなかった。
気分で効果変わるとか怖……じゃなくて意思は存在してるんだな。
「貴女の精霊は多彩ですのね、少し羨ましいですわ」
「ちょっと違うんですけど……説明が難しいので後で教えます」
疑問そうに見る彼女に対して、こんな時上手く説明出来たらなぁと思う。
まとめる意味合いとして作戦とは別に、確認事項を整理する為に彼女に告げる。
「目的は2人で無事にここから出る事。その為に必要になる可能性があるのは何個かあるから、それに対しての対策を出し合いましょう」
オンラインゲームでのパーティーを組む際の8割、赤の他人との協力となる。その時に目的が1番最重要視される。ボス攻略、区間練習、遊び。知らないまま参加する人は居ない筈だ。その上で対策を話し合う。作戦はどうしたと聞かれる事もあるが……よく知らない今日出会ったばかりの人、そんな人と戦う事になったら作戦なんてあっても無駄。
何時も……ゲームじゃ死んではリトライを繰り返して慣らすが。今回、リアルだから当たって砕けては意味が無い。なら出来る限りリスクを減らす方に注力する。
こういうの苦手なんだよな、攻略サイトの先人の攻略法を見ながら楽したいし。
「対策? お言葉ですけど、作戦が無いと対策しても意味は無いのではないの?」
「本当はそうなんですけど、現状で分かる事では難しくて……それなら目的に対して、何が起こり得るのか。何をしなければならないのかを明確にした方が早いんです。数年以上戦ってきた兵士や部隊であれば、即座に動けますが私達はその知恵であったり力、信頼関係がありません」
作戦と戦場は違う。俺が経験したのはゲームであってリアルではない。現にこうなってしまってるのは俺が動けなかった証明でもあるしな。どれだけ綿密な作戦を組もうが、その作戦を実行出来なかったら意味がない。そしてそれを、確実に実行に移す能力もない素人。プロでも失敗するのを、その俺達がやっても成功出来るとは思えない。
「えっと……つまり?」
言っている事がよく分からないのか、首を傾げるマリーナ。まぁ俺もこんな事言ってるが、刃物出されるだけでビビって動けなくなる情けない元男です。
作戦は目的への道筋と略すなら、対策は目的への道筋に落ちている小石を避ける方法。幸い連れてこられる時に道は頭の中に残ってる。道筋なんてそんな物でいい。
彼女には、出口は1つしか無いのに何処をどう行ってもそこに行くしか無い。と説明する。
「……それもそうですわね。不安は残りますが、他の出口を探すにも時間をかけては不利にしかならないのでしょう?」
それに頷いて返す。なんだかんだ言っても、その場に任せるしかないのだ。
「このまま誰が来るか分かりません。時間が惜しいので牢を出る方法から話し合いましょう」
「それなら良い方法がありますわ」
最初から悩ましい状況に対して、彼女は今日あった中で非常に良い笑顔でそう返した。
話し合い途中に盗賊の連中が舐め回す様に、脅しをかけてくるが。そこは彼女の領分なのか、こちらがスカッとするくらいの嫌味と罵倒を浴びせる。怒る男にも怯まない所を見ると、普段からそういう事をしているのだろうか? と少し背筋を凍らせる。
どのくらい立ったか、話し込んだ割に左程時間立ってないのかもしれない。洞窟の中では明かりなんて松明くらいしかない。でも準備と対策は全て話し合った。後は2人で進むだけ、彼女を信じて俺を信じてもらうしかない。
出る為の彼女の提案は、意外にも牢にいる監視を怒らせる事だった。所詮盗賊、罵声や嫌味など人の嫌がる事をすればすぐにキレて突撃してくるに違いないとの事。そうすると必然的に牢を開ける必要があるからである。ちなみに俺が来る前にも色々言って怒気で怖くなって泣いていたそうで、涙はその時らしい。
「私をここから出してくれませんか? 貴方達みたいな人達といると匂いが移りそうですわ。何日も洗ってないのではなくて? あぁもしかしてそんな事が出来ないくらい困ってますのね、可哀想に」
俺には真似できそうには無い。もっとも、効果があるかは分からないが。見下し方といい、煽り口調は人を苛つかせる効果はありそうだ。
「うっせぇぞ! 贅沢しかしねぇ貴族の屑共に何が分かる。俺だってしたくてこんな生活してる訳じゃねぇんだ。テメェらが居なければなぁ、俺はなぁ……!」
あれだ、逆恨み臭いけど。貴族に色々やられた口系の盗賊だ。ああ、いや同情するけどなぁ。
これはキレてるとカウントしていいのか? ちらっと彼女の方を見るとウインクで返してきた。あぁこのまま攻めるのね。確かに突撃しそうな勢いだが、大丈夫かな。
「あら、人違いではありませんの? 私は貴方の事なんてご存知ありませんわ。あぁもしかしたら何処かでお会いしました? 知っていたとしても貴方みたいな野蛮な方。もしかして外で吠えてたあの動物かしら」
「あ!? てめぇぶっ殺す!」
洞窟の壁に掛かっていた鍵を荒くぶんどり、勢いに任せて鍵を開ける。すると、彼女の掴みかかろうとする直前。
「セイントスピアー」
俺が唱えた魔法で彼の胴体を貫いた。彼の表情は驚きとも取れない表情で、ピクリとも動かず膝から崩れ落ちて動かなくなった。貫いた光の槍は空いた牢を通り過ぎて、洞窟の外壁に激しい音を立てて消えた。
少し希望持ちたかったのかもしれない。俺は胴体の無くなった彼の首元に手を置くと脈は当然の様に無かった。床に広がる血溜まりに目を逸したくなるが、意思で押し留める。平静を装い彼女の方へと声を掛ける。
「意外にも行動が早くて間に合わないかと思いました」
「あら、私は信じておりましたわよ? だってここから一緒に脱出するのですもの」
そう言いつつ、彼女の声はちょっと上ずった声になっていた。そのせいで無理しているのが分かる。
本来彼女が風で仕留める予定だったのだが、怒った彼に怯んでしまったのだろう。動けていなかったので俺が殺す羽目になったが、無事なので安心するべきだろう。
対策といったって実際はこんなものだ。上手くいく保証なし、今の騒音で不備が起きる。この時点で作戦なんて終わったも同然なんだ。
このまま脱出が出来るのだろうか。不安しかない、それでも2人で出ると決めたからには行くしか無い。
恐らく先程の音で何かしら彼らは行動を起こすだろう。対策という手札は何個も用意はした。それを互いに信じて実行する。
死ぬのは簡単、生き抜くのはどんな事よりも難しい、だけどそれ以上に楽な方を選ぶのは愚か者。強くなるのは先を見る者だけ。
彼女が対策で話し合う際に、俺が溢した不安にそう言った。彼女のお父様が繰り返し、彼女に厳しく言う時の口癖だという。それの真意は知らない、だけど彼女が俺を少しでも励ましたかった事だけはよく分かった。
次も1週間以内に出来次第投稿です




