真の姿
「蒼蓮!意識はあるの!?」
「僕は……大丈夫……」
大丈夫な訳ないでしょ!姉を今殴り殺そうと……って危ない!
「固……い」
あっぶない、氷の壁で……あれ?
私が今使ったのは蒼蓮と一緒に戦う用の氷、つまり
弟には簡単に壊せて、他の人から壊せない氷。
「随分と拳が痛そうねッ!」
床一面を氷で覆い、足を取る
「足……が……」
「アンタ、偽物でしょ」
「何で……そんな……」
「私の弟はね、氷を殴っただけでは痛がらないのよ!それにこの氷ならどんなに手加減しても壊せるはずよ」
弟だった物の色がどんどん薄くなっていき、そして
「消えた……これも不可思議の仕業かしらね」
実態のある幻覚を作るのか、劣化版のコピーを作れるのか、あるいは私の記憶から適当に人物を作り出していたのか。
何にせよ、何がトリガーになったのかわからないし、弟が見当たらないのが不安ね
「蒼蓮!いるの?」
全く返事が無い
来た道をもう一度見てみるが、誰も居ない
あるのは倒した目口無しの死体だけだ。
「もしかして、コレ?」
紙で出来た銃を手放してみる
…………ダメか
「工場長室、行ってみるしか無いわね」
ドアノブを掴んで回してみる、鍵がかかってる
「やッ!」
氷で拳を覆って、思いっきり壁を殴ってみた
……右手は帰ったら先生に見てもらうわ、めちゃくちゃ痛い。
「何よこれ」
最大まで硬度を上げた氷なのに、傷一つ付いていない。
「弱ったわね」
私は動いてる物には強いけど、壁や床を壊すのは得意じゃない、唯一と言ってもいい破壊手段もさっき無意味だと示されてしまった。
「蒼蓮の拳に私の氷を付けて殴れば破壊できそうね」
いや出来なければ困る、それ以上の破壊力なんて持ち合わせていないから。
「少し整理しようかしらね」
この工場長室は、入口から入ってすぐの十字路を直進してこれた場所
道中に曲道等一切無くて、ここまで繋がっていて、この先に道が無い。
なのに弟はここでどこかに消えた
道中には繁殖小屋と加工室の二部屋しか無くて、隠れる場所も、急に襲われる場所も無い。
「戻って他の道も調べるしかないわね」
一度十字路に戻りましょう、そこから落ち着いて、破壊すればいい。
それにしても本当に何処に行ったのよ、蒼蓮。
少しだけ早足で、十字路まで戻ってきた
「ジャックさんとパープルさん、二人は無事かしら」
こう言う時、とりあえず合流したほうがいいのか、それとも弟を探し出してから合流すべきなのか……
「家族だもの、私が探さなきゃ」
もしもの時の為に私が来た道を氷で塞いでおく
弟なら壊せる硬度だから、仮にまだ中にいたとしても大丈夫だろう
じゃあ次はこっちね
上から吊り下げられている案内板には
男性立ち入り禁止と、多分書かれている方だ
「男性が立ち入り禁止ね、じゃあ私だけなら問題無いわね!」
こっちの道も、さっきまでと対して変わらない
地面に変な模様が刻み込まれていて、刻み込まれた溝に赤色の血液が流れ込んできてよりはっきりと独特の模様を浮かび上がらせている
「血液はこっちからね」
……進んでいてわかった事がある
この工場は明るい、天窓や電気が一切付いてないのに、自分がいる周りは問題無く見る事ができる。
「男性立ち入り禁止って……何があるのかしら」
うーん……思い浮かばないわね
ジャックさんとパープルさんが向かった、加工前の人間と書かれた方に弟がいるかもしれない
「まぁパープルさんがいれば弟の事は助けてくれるでしょう」
あの好かれっぷりなら、絶対助けてくれる
「……パープルさんがどんな人力を使うのか知らないけど」
もしかしたら、戦闘向けじゃないとかあり得るかしら
……まぁ、ジャックさんもいるし、大丈夫かな
「彼女の人力は凄いわ、本当に戦闘用の人だから、彼女は心配しなくていいわね」
つまり、加工前の人間がいる道はほっといて、目の前の事に集中してもいいって事だ。
進むにつれて、酷い匂いがしてきた
「何よこれ……」
家でもこの匂い嗅いだことあるような……
この道もさっきの道と同じように、殆ど何も無い
そして、違う所は
「目口無しが、一体も居ないわ……さっきはあんなにうじゃうじゃ居たのに」
静かすぎて怖いぐらいだ。
早速、新しい部屋を見つけた
「えーっと……これって」
縫合室……目口無しじゃない、私と蒼蓮二人で倒したあの人間もどきの人間をここで作り出しているに違いない。
「ここは、潰さないとねッ!って!」
扉が溶接されてる!?
「こんにちは~」
「誰なの!?」
いきなり話しかけられた?
さっきまで居なかったのに?バカな!
「あ、自分はMacintoshって言います、よろしくっす!」
こんな所にいるんだ、ここの関係者よね?
「実は工場にですね、連れてこられちゃって……営業は足で稼ぐとか古いっての……」
連れてこられた?目口無しに?
「いくら売り込みたいからって、ここは無理だと思うんすけどね、おねーさんはどうしてこんな不可思議製造工場に来たんです?事務員には見えませんし……うーん」
不可思議製造工場……こいつ今そう言った?
組織紹介
Dr.Macintosh
不可思議を人工的に作り出す技術を持つ集団
作り出した不可思議は何処かがおかしく、完全な物は創り出せない。
所属する人物は皆が皆、我こそがMacintoshだと名乗る。
本物のDr.Macintoshは500年前には死んでいると推測されているが、真実はわからない。
真縅とは友好的で、UEとはあまり仲良くない。
これは不可思議をどうするかと言う方針から出た当たり前の結論だろう。