可愛い幼馴染みが嫌いな小さなフワフワでさらさらなモノは俺にとっては好きでたまらないモノ
俺には二つのミミがある。
顔の横にある耳じゃなくて頭の上にあるミミだ。
俺達には動物のミミがついた人間だ。
俺には格好いい狼のミミがついている。
そして俺の幼馴染みにはミミが二つあったと思われるものがある。
根元に小さくフワフワと毛が生えているからミミだと思う。
そんな幼馴染みは昔からいじめられていた。
だから俺が彼女を守っていた。
今も。
「よしよし。大きくなれ」
俺は彼女の小さなミミを撫でる。
フワフワでさらさらの毛が俺は好きなんだ。
「もう、大きくならないよ」
「分からないだろう。俺は諦めないからな」
「あなたはいいな。そんな立派なミミがあって」
「俺は君のこのミミが好きだけどなあ。フワフワでさらさらの毛は君しかいないよ」
「あなたは有るから、そう言うのよ」
「また、そんなふうに言うなよな。嫌いだったら君と一緒にいないっていっつも言ってるだろう?」
「だって。私も欲しいもん。可愛いミミが」
「だから俺が撫でて大きくなるようにしてるだろう?」
「何年してきてると思ってるの? 全然、変わらないじゃない」
「俺はこのままでも君は魅力的だと思うよ」
「それはあなただけよ」
「俺だけじゃダメな訳?」
「うん。だって私には友達もできないのよ」
「そっか」
彼女はミミが無いだけで友達もできない。
人と違う彼女は女子達に怖がられている。
ミミが無いのは鼻が無いなど有って当たり前のものが無いのと同じことなのだ。
見た目が違うから違和感が生まれその違和感が恐怖を生んでいた。
だから俺は彼女にミミをあげようと今日まで頑張った。
そして、とうとう彼女のミミができたんだ。
◇
「今日、お風呂から上がったら俺の部屋においで」
「えっ、何で?」
「いいから」
「何? 良いこと?」
「うん。良いことだよ」
「分かったよ。早く行くね」
彼女は夜の七時頃に俺の部屋に来た。
「ベッドの端に座って」
「うん」
俺は彼女に言うと、彼女は素直にベッドの端に座る。
「目を閉じて」
「うん」
俺は彼女のミミがあった場所に俺が作ったミミを置いた。
「目を開けて」
「うん」
俺は事前に彼女の前に鏡を置いていた。
彼女はその鏡を見て驚いている。
「私にミミがあるよ」
「そうだよ」
「触ってもいい?」
「いいよ。優しくね」
「フサフサだね。毛しかないよ」
「そうだよ。俺のミミの毛で作ってるからね」
「嘘。どうやって作ったの?」
「俺のミミの毛を引っ張ったり、ブラシでといて集めてそれの繰り返しだよ」
「どうして私の為にそんなことをしてくれるの?」
「だって、君は欲しかったんでしょう? 俺はそのままの君が好きだけどね」
「ねえ、あなたのその好きは何?」
「好き? 何?」
「私の為にどうしてここまでしてくれるの?」
「君が嬉しいと俺も嬉しいんだ」
「すごく嬉しいよ。今までで一番、嬉しいよ」
彼女は嬉しいと言いながら泣いていた。
◇◇
その日から彼女は俺と同じ狼の毛のミミをつけた。
すると彼女に友達ができた。
彼女の学校生活は激変した。
彼女は毎日、楽しそうに笑っていた。
そんなある日。
「ねえ、最近ミミの辺りが痒いの」
「何で?」
「分かんないけど。何もないよね?」
彼女はミミを外して俺に見せる。
何も変わった様子はない。
「何もないよ」
「そう?」
これが彼女の最初の異変だった。
それから何日後かには痛みだした。
「ねえ、本当に何もない? 痛いし、痒いの」
「うん。何もなってないよ。病院には行った?」
「今日、行くの」
「そうなんだ。結果を教えてよ」
「うん。うっ、いたっ」
「どうしたの?」
彼女がいきなり痛みに耐えきれず座り込んだ。
「痛い。我慢できないよ。む……り」
彼女は痛みのあまり、気を失ってしまった。
彼女は病院へ運ばれ集中治療室へと入っていった。
何が起こったのだろう。
俺のミミのせい?
俺が彼女のミミを撫で過ぎた?
彼女が心配でどうにかなりそうだ。
◇◇◇
俺は集中治療室の前の長椅子に座って彼女の状況が聞けるまで待った。
朝になっても彼女の状況は分からない。
俺はただ長椅子に座っていた。
彼女のお母さんが俺を心配しておにぎりなど食べ物をくれた。
自分の娘の方が大変な時なのに俺なんかを心配してくれた。
お腹なんて空いてなかったが彼女のお母さんが作ってくれたおにぎりを食べないなんて失礼だ。
味のしない変な食べ物でも食べているようだった。
彼女のお母さんには美味しいと言った。
今度、味がちゃんと分かる時に食べたいと思った。
二日も寝ないと俺の瞼は重い。
うとうとしていると彼女のお母さんが家に帰りなさいって言った。
でも俺は首を横に振って帰らないと言った。
彼女のお母さんはそれなら少し寝なさいと病院のベッドを借りていた。
俺は彼女の状況が分かったらすぐに教えて欲しいと言ってベッドに入った。
すぐに夢の中へ落ちて行った。
「何してるの?」
「えっ、何って君を待ってたんだよ」
昔の幼い頃の彼女が現れた。
俺も幼い。
俺は夢の中で昔の幼い俺と彼女を近くで見ていた。
「どうして?」
「だって君を一人にしたくないからね」
「違うよ。どうしてそんなに優しいの?」
「だって君のことが好きだからだよ」
「こんな私の何処がいいの?」
「全部だよ」
「全部?」
「うん。君の大きな目も小さな鼻も可愛い口もその可愛い小さなミミも」
「こんなミミの何処がいいの?」
「だって君のミミだよ? 嫌いになんてなれないよ」
「私の?」
「そう。君のミミだよ」
「私のミミも好きなんだね」
「うん。君のその笑顔も好きだよ」
「嬉しい」
やっぱり彼女は可愛い。
ミミなんかなくっても可愛い。
可愛い彼女には無くてもいいんだ。
「ねえ、起きて」
誰かの声で俺は目を覚ました。
目を開けると彼女のお母さんが涙目で俺を見ていた。
まさか、彼女が。
俺は起き上がり集中治療室の前に行く。
すると自動ドアが開いた。
俺の目の前にはベッドから起き上がる彼女がいた。
ちゃんと目を開けて俺に向かって笑っている。
そして頭には白い長いミミが二つあった。
俺はゆっくりと彼女に近付く。
「見てよ。私はウサギだったよ」
「良かった」
「うん。ミミが生えてきて良かったよ」
「違うよ。生きてて良かった」
俺は彼女の手を握った。
彼女は俺の手を握り返してくれた。
◇◇◇◇
お医者さんによると、彼女のミミは出てこれなくなっていて彼女が成長期に入ってミミも出てきたみたいだ。
彼女のミミはウサギのミミ。
長くて真っ白でピンっと立って存在感がある。
触るとあの小さなミミと同じでフワフワでさらさらだ。
「ねえ、私のミミを見てよ」
「うん。毎日、見てるじゃん」
「もっと見てよ」
「俺は君のミミより君の笑顔を見たいよ」
「笑顔は今まで見てきてるでしょう?」
「何言ってんの? 君の笑顔は毎日違うよ?」
「えっ、そうなの?」
「そうだよ。お腹空いてる時の笑顔とか頭が痛いのに作る笑顔とか、俺が一番好きな笑顔は俺が君を好きって言った後の笑顔」
「ねえ、大好きよ」
「俺も大好きだよ」
彼女は俺の好きな笑顔を見せた。
◇◇◇◇◇
何十年後
「こらっ、二人とも逃げないでよ」
「やだ。ママとまだ遊ぶの」
「そうだよ。まだ寝ないからね」
二人の男の子は彼女に捕まらないように逃げている。
「こらっ。二人ともママを困らせたらダメだろう?」
俺は二人を両脇に抱えて捕まえた。
「パパに捕まった。もう寝ようか」
「そうだね。パパとは遊びたくないもん」
「おい、それはどういうことだよ」
「だってパパはママを離さないもん」
「そうだよ。ママはみんなのママなのに」
「ママはみんなのママだよね。続きは明日ね。早く寝ようね」
「何か眠くなってきた」
「僕も」
そして俺の息子達、猫ミミの双子の男の子達は布団に入り眠った。
「俺ってそんなに君を一人占めしてる?」
「何? 気にしてるの?」
「だってあんなに小さな子供に言われたんだよ?」
「どうだろう? でも今は一人占めしていいよ」
「おっ、やったあ。それじゃあ膝枕」
狼のミミを持つ俺はウサギのミミを持つ彼女に膝枕をしてもらう。
彼女は俺のミミを撫でる。
「ねえ、顔に睫毛がついてるから顔を近付けて」
「本当?」
彼女の顔が近付くと俺は彼女の後頭部を押さえてキスをした。
「ちょっと強引よ」
「だって俺は狼だから」
「もう。それなら私は逃げなきゃね。ウサギだから」
「それは無理だよ」
「どうして?」
「君をもう、離さないから」
「私も離れないよ」
俺は起き上がり、彼女にキスをした。
彼女の長いミミがゆっくりと力を無くした。
彼女のミミは幸せを感じると力を無くし、ミミがたれる。
彼女は幸せのようだ。
俺も幸せだとキスで伝えた。
読んで頂きありがとうございます。
見た目だけで判断しないで下さい。
それを伝えたかった作品です。
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