怖い話
ボ「あのさ、この前凄い怖い話聞いちゃってね……。」
ツ「え、何々?」
ボ「本っっっ当に怖いから覚悟して聞いて欲しい。」
ツ「よしわかった。」
ボ「俺の友達が実際に体験した作り話なんだけど、ある日……」
ツ「ちょっと待って! 作り話って言っちゃったよ。」
ボ「友人が学生時代、夏休みのある日の事。」
ツ「いや無視かよ!」
ボ「その日は事故で亡くなったお婆ちゃんの一周忌でな……、家族揃って親戚の家に集まる為に、友達のお隣さんは居なかった。」
ツ「お隣さん!?」
ボ「友達はその日から夏合宿が始まるんで、少し早く家を出ようとしたんだよ。そしたらさ……、玄関で何だか違和感を感じるんだよ……。」
ツ「うんうん」
ボ「「母さん、何か玄関変な感じしない?」って友達は母親に聞いたんだけど、母親は意味深な表情を浮かべているように見えるだけのいつもと別に変らない薄ら笑いを浮かべて……」
ツ「普段通りって事ね!?」
ボ「「湿気じゃない、昨日雨だったし。」って答えるだけ……。」
ツ「お母さんは気付いてないんだ?」
ボ「でも違和感が消えない友達は勿論、「ああそっか、じゃあいいや。」って納得して玄関を出たんだよ。」
ツ「いや納得してるじゃねーか、素直かよ!」
ボ「友達の家から学校までの近道はさ、頭が半分欠けてる薄気味悪い地蔵がある道を通った先に墓地があって……その墓地から5キロ程離れた所にある公園を通るんだけど、」
ツ「地蔵とか墓地関係の話必要だった? 5キロってもう目印にもならないよ?」
ボ「でも何故かその日だけは、「違う道から行ってみようかな。」って思って、いつも通る公園の中央の道ではなく、その横にある芝生の上を走ったんだよ。」
ツ「違う道ってそういう事!?」
ボ「その時だよ、玄関で感じた違和感をまた覚えたんだけど、別に何事もなく公園を通り抜けた所で険しい顔をした老人に出会ったんだ。」
ツ「違和感何だったんだよ!」
ボ「老人は友達を見るなり「おまえ何をした! まさかあそこに入ったのか!?」って。」
ツ「それっぽい話になってきたじゃん。」
ボ「そう、友達は【入るな】って書いてあるのに芝生に入っちゃったんだよな。」
ツ「そりゃ怒られるわ! 当たり前だわ!」
ボ「自分のした事を理解してガタガタ震えながら顔を真っ青にして謝ったんだけど、「謝ってももう無理じゃ、後は儂が何とかするしかない……。」って老人は芝生の方にフラフラと行ってしまったんだよ。」
ツ「封印を解いた奴と何かを封印してた一族がするやつだなそれ。」
ボ「まあ集合に遅れる訳にはいかないから友達は仕方なくその場を後にして、ひとまず学校に向かう事にしたんだよ。」
ツ「うん、まあ、まあね。急いでるしね。」
ボ「学校に着くと顧問の先生が……、あ、この顧問の先生ってのが霊感が凄くて、俗に言う【見える人】なんだけど、友達を見るなり凄い剣幕で「おまえ! ちょっと来い!」って職員室に引っ張って言ったんだよ。」
ツ「あ~、こっから本番か……」
ボ「で、カーテン閉め切っていきなり友達の背中を叩き出したんだよ。「お前の様な奴はこの世にいてはいけない! 迷惑をかけずに早くあの世に行け!」」って叫びながら。」
ツ「除霊も出来るんだ、凄い先生だな。」
ボ「あまりにも激しく叩かれてたら、その内フッと力が抜けてさ、友達は膝を付いちゃったんだよ。そしたら先生も何か安心したみたいに叩くのをやめて、友達を椅子に座らせて話し始めたんだ。」
ツ「おお、除霊成功したのかな?」
ボ「先生は良い霊も悪い霊も散々見て来たらしい。」
ツ「一目で悪い霊だってわかったんだ?」
ボ「「来る前からわかっていたんだ、悪い奴だって。周りの人間にも悪影響を及ぼすかもしれん、そう思ったら居てもたってもいられなかった、許してくれ。」って言ったんだけど、」
ツ「まあ他から見たら体罰だからなぁ。」
ボ「公園の芝生の件、老人が学校に連絡してたんだよ。」
ツ「本当にただの体罰じゃねーか!」
ボ「その後バスで合宿先の寺へと出発となった訳よ。寺の住職に出迎えられて、まずは寝泊まりする本堂の掃除をみんなでやる事になったんだよ。そしたら友達だけ住職に呼び出されたんだよね。」
ツ「やっぱり何か憑いてたのか?」
ボ「住職に連れていかれた先で、友達はあり得ない物を見たんだ……」
ツ「え、何よ?」
ボ「公園で会ったあの老人だったんだよ!」
ツ「……は?」
ボ「老人は先代の住職で、今は市の要請で公園の管理をやってるらしい。」
ツ「あーうん、だからいたのね。公園に。へー、そうなんだ。」
ボ「友達は老人と和解して楽しく合宿を終えたんだよ。」
ツ「平和に終わったじゃねえか!」
ボ「うん。で、友達の隣人は」
ツ「親戚の家に行ったんだろ、聞いたよ。」
ボ「親戚の家からの帰りに事故で全員死んじゃったんだけど、今でも夜中に家族団らんの声が聞こえて来る時があるんだってさ、その中にはお婆さんっぽい声も混ざってるらしいよ。」
ツ「こわっ!」