2人で下校1日目 【神埼刹那の勘違い3】
知らない間に沢山の方にお読みいただき
本当に驚きました。
シンヤ君の居る1-Bの教室に着きました。
放課後ということもあり、扉は開いていましたので待ちきれなくて中を覗き込んでみました。
すると、扉の前にいた知らない男子が私に気付く。
そして、目を見開いて一瞬硬直しましたが
「あの、、ひょ、神埼先輩、ウチのクラスに何か用ですか?」
彼は直ぐに真顔に戻ると私の要件を聞いてくれました。かなり親切な性格なのかもしれません。
「橋本君いますか?」
「橋本?あんな奴に用事ですか?おーい橋本、2年の神埼先輩が呼んでるぞ。」
シンヤ君も驚いた表情をしていました。
サプライズ成功です!
しかし、シンヤ君をよく見てみると凄く可愛い女の子と楽しそうに話をしていました。その光景を眺めているだけで私はなぜだか息苦しくなってしまう。
でも彼が近づいてくると、その苦しさがまるで最初から存在しなかったかのように消え失せて、今度は鼓動が跳ねる。
今日は胸が忙しく働く日のようです。
「ひょ、神埼先輩、どうされたんですか?もしかして頭が痛いの?」
さっきの男の子もそうですが、彼も私が声をかけると『ヒョッ』なんて言って驚くんです。
年上のお姉さんに話し掛けられて驚いているのかもしれません。
「カバン‥」
そう、一緒に帰るのになんで、カバンを持ってきていないのかな?
私が言葉と目で合図すると、彼は急いでカバンをとって戻ってきてくれました。
どうやら、彼は私の家までついてきてくれるようでした。
物凄くドキドキします。
しかし、学校を出てすぐのところで彼はおにぎりを食べ始めてしまいました。私と歩いているのに彼はおにぎりに夢中でした。
もしかしたら、私にはあまり関心がないのかな?
私のこと好き…なんだよね?
私は彼女なんだから。
「(私のこと)好きなの?」
思っていることが声に出てしまいました。
答えを聞くのが怖くて、思わず身体に力が入る。
好きじゃない…とか言わないで下さいね。
「あー、まぁ好きかな。でも、やっぱり2番目かな?」
えっ?私は2番なんですか?
「2番なんですか?それは1番には、なれないってことなんでしょうか?」
私は俺の目を真っ直ぐに見てたずねました。
そして、『2番目なんてウソだと言って』という想いを込めて彼を見つめ続けました。
「まぁ、俺はあのふっくらした感じには敵わないと思っているよ」
しかし、彼は私に容赦しませんでした。
確かに私はふっくらしていません…
まさか、ぽっちゃり好きだったなんて…
「ふっくらですか?難しいですね。(シンヤ君好みの女の子になれる)自信ないです。」
そう、私は『小鳥みたい』と言われてしまうくらい少食なのです。
「いや、頑張れば出来るよ。何事も継続は力だからな。」
彼はよっぽどふっくらした娘が好きみたいで私を励ましてくれますが、小柄な私にはハードルが高いです。
もしかして、ふっくらしなかったら捨てられてしまうのでしょうか?
私が落ち込んで虚ろな目をしていると彼が心配そうに声をかけてくれました。
「あの、本当に大丈夫か?」
そして、なぜか私の肩を掴んで真剣な目で私を見つめています。
そんなに見つめられると恥ずかしいです。
恥ずかし過ぎて顔に火がついているんじゃないかと思うほど熱いので、益々恥ずかしくなった私は顔を隠すように下を向きました。
「ん?大丈夫。ほら元気、あうっ!」
そして、下を向いたまま先を進もうとしたけど、私は全然前を見てなかったため何かに頭をぶつけてしまいました。
その時、私は少し冷静になれたかもしれません。
2番目だって好きは好きですし、彼女なんですからこれから1番になれるように前向きに頑張ろうと私は決意しました。今は2番だけど…ね…ダメダメッ、後ろ向きな事考えちゃダメです。
「ほ、本当に大丈夫なんですか?神埼先輩。」
彼は私に駆け寄り、心配そうな顔で私を覗き込みました。でも、私はその呼び方に違和感を感じました。
『神埼先輩』って呼び方は物凄く他人行儀だと思います。例え2番目でも、恋人なら名前で呼びあったりするものじゃないでしょうか?
「神埼先輩じゃないです」
だから、私は彼に抗議しました。
「やっぱり大丈夫じゃないじゃないですか?」
しかし、彼がそんなことを言う。
あれ?聞こえなかったのかな?
「大丈夫。でも、神埼先輩じゃないです。」
私は再度聞こえやすいようにゆっくりと同じ台詞を口にしました。
「意味がわからないんですけど、神埼先輩は神埼先輩じゃないんですか?」
彼は哲学的な質問をしているわけじゃないんだよね。きっと、私の言い方が悪かったのだと思います。
だから、恥ずかしいけど、勇気を振り絞ってお願いをしました。
「気軽に‥‥名前で、呼ぶのはどうか…な?」
一生ぶんの勇気を振り絞って私を『セツナ』と呼ぶようにお願いしたけど、彼は沈黙してしまいました。
照れ臭いのかな?
それとも、付き合って2日目で下の名前で呼ばせるなんて傲慢だと思われたかも、、もしかしたら、シンヤ君は怒ってしまったかもしれません。
怒られるのになれていない私は思わず身構えました。
「重ね重ねすみませんでした。今度からは先輩と呼ばせていただきます。今後ともご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします。」
しかし、私の不躾なお願いに対して彼は怒るのではなく、身体をくの字に曲げて謝罪しました。
名前で呼ぶのはまだ恥ずかしいから名前で呼ばないようです。
私がワガママ言っただけで、断った彼はなにも悪くはありません。それなのに私の顔を潰さないように謝ってくれました。
以前と変わらない、優しい彼を見ているとまた頰が熱くなってしまいました。
そして、真っ赤な自分を見られるのが恥ずかしくて下を向いて歩いていると、
「ここは暫くまっすぐなんだよな?」
彼は全然照れた様子もなくそう言いました。
私ばっかり照れて、なんかズルイです。
「うん、、あっ、、うそっ」
私はやっぱり赤面が恥ずかしくて下を向い歩いてていたら、彼が手を繋いでくれました。
今度は私の顔が油で揚げられてるんじゃないかというほど更に熱くなった。
もう、私の頰は赤を通り越してキツネ色になっているかもしれません。
そして、そのまま手を繋いだ状態で幸せに浸りながら歩いていると、あっという間に家に着いてしまいました。
夢の様な時間は長くは続きません。
気付くと自分の部屋にいました。
幸せ過ぎて彼と別れてからの記憶がないんです。
『明日恥ずかしいけど凛にいっぱい惚気よう。』
そう思いながら私はベッドに潜り込みました。
今日はいい夢がみれるかもしれません。
明日もシンヤ君に会えるのが楽しみ過ぎます。
私は遠足前日の子供並みにドキドキしてなかなか眠れませんでした。
翌日
「なに?どうしたの?そんなにニヤニヤして。気持ち悪い」
凛がいきなり、変なことを言ってきました。
私はいつも、わりと無表情なんですけど。
「そんなにニヤニヤしてた?」
「いや、口の端が少し上がってただけだけどね。それでも、珍しい。」
うん、昨日の嬉しさが顔に出てたのかもしれません。
「そう?嬉しいことがあったから」
「なになに?昨日、刹那が一年生君と一緒に帰った話?」
凛は揶揄うような口調でしたが、私は素直に頷きました。
「‥うん、手‥‥を繋いで帰ったの。」
「わぉっ、彼から?」
「うん。」
「うわぁ、顔が赤いよ。そう言えば手のつなぎ方は恋人繋ぎだったの?」
凛から知らない単語が出てきた。
「こいびとつなぎ?」
私の頭に沢山のはてなマークが浮かんだ。
「うん、あれ?知らないの?ほら、小さい時に私とよく手を繋いでたでしょ?手のひらを合わせるように繋ぐ繋ぎ方。それと違う繋ぎ方だよ」
うん、今はあんまり繋いたりしないけど、小学生の時は凛とよく手を繋いでいた。
「うーん、それとは全然ちがうから恋人つなぎなのかな」
「いやぁ、刹那達は早くもラブラブだね。刹那はこの手の話にまるで興味を示さなかったから今までつまらなかったんだよね。そんなんだから、恋人繋ぎすらしらなかったんだよ」
凛は私を扇ぎながらそんなことを言うのだけど
「ぅん、そなのかな?こういうの初めてで、
よくわからないの。」
そう、私ばっかり照れているのも普通なのでしょうか?
「一緒に帰るの楽しかったんでしょ?今日も一緒に帰るの?約束してるの?」
「うん?約束?」
私は思わず首を傾げた。
あれ?普通、付き合ったら一緒に帰るものだと思っていました。
「いや、首を傾げた刹那もカワイイよ。カワイイんだけどその反応は明らかに約束してないよね?電話かメールか、LIONで連絡してみたら?」
凛は私に優しげな表情でそうアドバイスしてくれたので私は素直に首を縦に振るのでした。
「わかりました。」
私はそう言ってスマホを取り出しメッセージを送りました。
「あっ、ごめん、LIONのメッセージが入ってきたみたい‥‥‥‥葵、、、なんで私に『橋本君、今日も一緒に帰ろっ』メッセージ送ってるの?」
「‥だって‥‥シンヤ君と連絡先、交換してないですし。」
そう言えば交換するの忘れてました。
「取り敢えず、終礼が終わったら、急いで誘いに行くしかないね。」
凛が呆れた様な困ったような口調でそう言いました。
「うん、頑張る。凛、ありがとう。」
そして、終礼になると私は急いで一年の教室に向かうのでした。
今、初めて恋愛ジャンルの他の人の作品を何個か読んでみました。
‥‥私の作品って、、果たして恋愛ジャンルなのか?‥‥って思うほど毛色がちがうのですが‥‥
ちょっと心配になってきました。