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神埼刹那の勘違い2

シンヤ君が目を見開いて私を見つめています。

きっと、驚いているのでしょう。


しかし、驚いているのは私も同じです。

正座をさせられた上に後ろ手に縛られているところをみると、どうやら彼はイジメに遭っているみたいです。


イジメ‥だめっ。

早く助けないと。


「貴方達こんなところで何をしているのですか?

彼を離してくれませんか?」

私は男たちに怒りを滲ませた声でそう叫びました。

私の想い人にこんな事をするなんて許さないです。


「あれ?足止めのボブは何をしてるんだ?屋上に姫君が降臨されるのはあと10分後のはずなのに」

しかし、男の内の1人はそれに答えず慌てていた。


あれ?見張り役が居たのですか?


そういえば屋上へ出る扉の前に人が居ましたけど『中に入れて』と言うと『録音しておけば良かった』等と言って去っていったのです。



話が脱線しちゃいましたけど、早く彼を助けないと。

どうしましょう?


あれ?


そう言えば全員見たことがある気がします。

‥‥全員が私に告白した人達でした‥‥


一瞬、大声を上げて助けを呼ぼうとしました。

しかし、そんなことよりもっと良い手がある事に気づいてしまいました。

さすが、恋する乙女は無敵です。


「‥‥聞こえませんでしたか?もう一度言います。それとも、ここで再現してもいいんですよ。『ま、ま、ま、前からじゅっとちゅきでした。俺とたまちいの牢獄にはいってもらえまちぇんか?』」

私はリーダー格と見られる少年の私への告白を再現しました。上手く、シンヤ君をたすけられるといいのですけど。


「‥おおぅっ、グハァッ、思った以上の破壊力だ。

くそぅ、皆の者、撤退だあ。」

幸いリーダー格の少年の心にクリティカルヒットしたみたい。シンヤ君の手を縛っていた紐をほどいてから全員が屋上から出て行きました。


私とシンヤ君ふたりだけが取り残されました。


2人きり。


それを自覚すると私の身体は緊張で石のように重くなり、身動きができなくなってしまいました。



「あのこれつまらないものですが召し上がってください。あと、この度は何と申し上げていいのか、、、取り敢えずわざとじゃないんです。怪我は大丈夫ですか?」

しかし昔の彼と同じく、シンヤ君の方が先に歩み寄ってくれました。それも、私を驚かせないようにそぉ〜っとなんです。

私は昔から彼のそういう所が実は大好きです。



「怪我?大丈夫です。それより、あの、お友達

(から)お願いします。」

それで、私の緊張も少しほぐれましたので、告白の返事をすることができました。


「???」

しかし、シンヤ君は戸惑いの表情で何か思案していました。もしかして、私の言い回しが断り文句なのかそうじゃないのか分からないのかな?


そういえばお友達からって断り文句なのかもしれません。



「それって1人(だけにしか言っていないってこと)なの?」

シンヤ君がそんな質問をしてきました。

きっと『オンリーワンなの?』って質問ですよね?

もちろん、シンヤ君が私のオンリーワンです。


「そうよ、(こんなこと言うのあなたが)初めてなんですから」

そうなんです。今までは振ることばっかり考えて告白の続きを考えたのは今回が初めてです。



でも、シンヤ君は当時のことを覚えていないようだし、今まで色々な人の告白を断ってきた私がいきなり『付き合いましょう』なんて言ったら不審がられるかもしれません。だからまずは『お友達から』って言ったのですけど通じましたか?


それにしても顔が熱いです。コレって相当赤くなってますよね?それに正直に言いますと、嬉しすぎて心はもう天国に登っちゃっています。


「好き(かどうか)とかよくわからないから、ちょっと時間をくれませんか?七瀬とかにも相談したいし」

しかし、彼がいきなり私を地獄に落とすような事を言葉を口にしました。



「七瀬って誰なの?」

それを聞いた瞬間、私の顔から熱が引いていき自分でも驚くほど冷たい声で彼を問い詰めてしまいました。


「えっ?あっ、クラ、クラスの女子だよ。こういうのは彼女に聞くことにしているんだ。」

か、か、か、彼女???


えっ、私って告白されたんですよね?

なんでシンヤ君に彼女がいるのっ?


あれ?

ダメ、考えが纏まらないです。


あまりにも予想外過ぎて一瞬の沈黙後、私は絞り出すように告げました。

「えっ?どういうこと?‥‥‥‥う、うん。。‥‥わかったわ。放課後またね。」

そう、落ち着いて考える時間が欲しかったのです。


私は重い心を引きずって教室にかえるのでした。




屋上から帰ってきた私が複雑な表情をしていたからでしょう。すぐに凛が声をかけてくれたので私は先程までのやりとりを凛に話しました。


「‥‥なにそれ?そんなヘリウムガス並みに軽い奴‥刹那には似合わないよ。考え直したら?」

凛は呆れたような顔を隠そうともせず、彼をディスりました。


「でも、私が頭打ちそうな時助けてくれたり、私のせいでリンチにあっていても全然気にしたそぶりを見せなかったり。ほんとにいい人だと思います。」

それに小さい頃、本当に彼に救われたことがあった。


「甘いよ、プレイボーイは愛想が良くてマメなものなのだよ。甘いマスクに騙されてはいけないよ」

凛はチッチッチといいながら指を左右に振った後に身を乗り出してそんなことを言うのです。


凛は綺麗なのにこういう男っぽい仕草がよく似合うのです。また女の子のファンが増えちゃうかも。


「‥‥凛も私と同じで誰かと付き合ったことなんかないですよね?恋愛経験値が同じなんだから凛の言うこともあてにならないと思うんですけど?」

私はお姉さんぶる凛に皮肉で返しました。


「う、うるさいなぁ。それなら刹那だって、人を容赦なくフる経験値ばっかり稼いでるじゃない?その経験値で女王様にでもクラスチェンジするつもり?それに、アタシは部活仲間の恋愛話をいっぱい聞いてるからもう恋愛上級者なの。上級者の勘が告げてるわ。

その人は怪しいって。だから、一緒についてってあげる。」

そう言う凛の目は座っていて、こう言う時の凛は意見を曲げないことを知っています。

たから、私の意思とは関係なく、1人で屋上に行けないことが決定してしまいました。



そして、放課後。


彼は既に屋上に居ました。

手にはまた、菓子折を持っています。

なんでなのかな?


分身ダブルだと?」

と彼が呟きました。そう言えば凛を連れてくることは言ってなかったので戸惑っているのかもしれません。


そして、私たちが彼の前に来ると凛が口を開いた。

「私の大好きな親友の純情を誑かそうとしているのはそこの君かい?」


「これ、つまらないものですが一生懸命選びました。貰ってください。」

しかし、彼はそれに直接答えることはなく、菓子折を差し出しました。

もしかして、、、私だけでなく私の友達とも仲良くしたいというメッセージなのですか?


そう、大好きな人には大好きな親友とも仲良くして欲しいです。そして、3人で遊んだり出来ると本当に嬉しくなってしまいます。

付き合う時からそこまで考えてくれているシンヤ君は本当に素敵です。やっぱり、シンヤ君は他の男の子とは全然違います。



しかし、凛は彼の頰を平手打ちしました。

なぜなの?


驚いた私はとにかく凛を止めようと一歩ふみだしました。


「そっか、、、さすが一番の友達だな。神埼先輩が怒れないから、代わりに怒ってくれたんだね。」

しかし、平手打ちされたシンヤ君はそう言ってニッコリ笑っています。

ハッキリ言って意味がわかりません。



「悪かったよ。必ず責任をとるから、、、それじゃあダメか?」

彼が真顔でそう言うけど、、責任ってなに?

告白した責任ってことなの?


「‥‥わかった。刹那を泣かせたら私が許さないからね。」



「わかったよ。それじゃあ、なにかあったらまたクラスまで来てくれ。」

そう言って彼は私たちをすり抜けて屋上からサッサと去って言ってしまった。


「よかったね、刹那。彼、真面目に付き合ってくれそうじゃん」

凛はそう言って自分のことのように喜んでくれた。本当に私には勿体無い、凄く友達想いの親友です。


うん、私は友達からって言ったけど、責任とるって要は彼女と別れて私と付き合ってくれるってことですよね?


これ、夢じゃないですよね?


私は浮かれていて、午後の授業内容が全く頭に入ってきませんでした。


そして終礼が終わると、私はシンヤ君の教室へと駆け出していた。


次からとうとうメインの下校が始まります。

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