閑話 お義父さん、セツナさんとの結婚を認めて下さい
すみません、付き合ってからの話とかご要望はちょっとエピソードがまだ浮かんでないので気長にお待ちください。
まずは、2人の結婚前の話です。
東京ドーム数個分もある神埼邸。その客間で、俺は厳ついオッサンと向かい合って座っていた。
「お義父さん、セツナさんと結婚させて下さい。」
俺は土下座して頼み込んだ。
ちなみにこのお願いをしに来たのはもう7度目になる。正直、心が折れそうです。
「ダメに決まっておろう。なんど言えば分かるんだ。それとも、その頭は飾りで中にはなにも入っておらんのか?」
セツナのお父上である神埼拳四朗は前回までと同じく、聞く耳を持ってくれない。
「そこをなんとかお願いします。命をかけてもセツナさんを幸せにしますから。」
俺は床に額をこすりつけて懇願した。
もう、1回目に氷結母には許可を取り付けていたが、父上様はそんなに甘くないようだ。
「くっ、うるさい。ワシの可愛い可愛いセツナを貴様のようなモヤシ野郎にやる訳にはいかないな。それに、確か貴様と付き合い出したあたりからセツナは一緒に風呂に入ってくれなくなったんだぞ。」
いかついおっさんは、いきなりどデカいカミングアウトをかました。
「いや、その時、セツナさんってもう17歳でしたよね?ツッコミ所が‥「うるさい、それにその頃から『パパ』とも呼んでくれなくなったんだぞ。この気持ちが貴様のような若造にはわかるか?わからんだろ?帰れ、帰るんだ。セツナは渡さん」
お義父さんは俺に発言させる気すらなく、まくしたてる。
「ふうっ、分かりました。私もお義父さんには嫌われたくはないですからね。セツナさんにお義父さんの事を『パパ』と呼ばせて見ましょう。それで、認めてくれますね?」
「セツナはワシに似て頑固な所があるから難しいんじゃないか?」
‥このオッサン、自分が頑固だと自覚してたのか?
「いや、お義父さんに認めてもらうためにやり遂げてみせます」
俺はそう言うしか手がなかった。
「わかった。やり遂げたら、認めてやろう。今日は帰るがいい。次に会う時には期待しているぞ」
お義父さんはウキウキという言葉が顔に書いていそうなほど期待に満ちた顔をしていた。
はぁ〜っ、ちょっと大口叩き過ぎたなぁ。
俺は家路をトボトボ歩きながら自分の発言を後悔した。
「ただいま。」
「お帰りなさい。ご飯にする?お風呂にする?それとも、、、」
セミロングの髪を後ろに束ねた美女がエプロン姿でそんな事を言うのだ。
俺が選択したのはもちろん‥‥
「うわぁ〜っ、気持ちいい。ふぅっ、あっ、くぅ。ふっ、ふぁっ、そこそこ」
俺はセツナのマッサージを受けていた。
彼女は筋膜の調整から本格的にマッサージをしてくれるから、そこらの整体に通うより身体が軽くなる。
「ありがとう、セツナ、いつも悪いな。」
そう、セツナは天使のマッサージと言われて1時間30万と言われているマッサージの使い手なのだ。まぁ、結婚準備の為にマッサージはやめてしまったが。
「いいよ、それより、お義父様のとこ寄ったんですよね?どうでした?」
セツナは期待に目を輝かせてたずねるので、ものすごく答えづらい。
「だ、ダメだった。そこでセツナさんにお願いがあります。いいですか?」
俺はセツナにお願いする。
でも、説得できるのか不安でいっぱいだった。
セツナはたまにものすごく頑固になるので、俺も説得する自信がなかった。
「子供‥‥を‥作る‥ん、で‥すか?」
セツナはいきなり爆弾をぶち込んだ。
この辺の会話パターンにお義父さんとの親子の絆を感じてしまうが、なんてものを遺伝させてくれるんだよ?
「いや、違う違う。そうじゃない、です。セツナさんには『パパ』と呼んでもらいます。もちろん、お義父さんの前でだけでいいですから。」
「パパって呼べばいいの?あまり意味がわかりませんけど、頑張ってみるね。」
あれ?拍子抜けだが、セツナは特に反対したりはしなかった。
「俺達の未来はセツナにかかっている。頑張ってくれよおっ」
「フフフッ、やっぱりシンヤ君といるとホッとします。なんでなんでしょうね?」
そう言って少し首をかしげる。
「うん、それは、、、まぁ、相性良いんじゃないか?少なくとも俺はお義父さんには似てないだろうし。」
そう、俺はあんまり頑固ではないんだよな。
「そうですね。もうシンヤ君と居られない人生じゃないと考えられないんですから、頑張ってお父様を説得してくださいね」
セツナはニッコリ笑った。
彼女の穢れを知らないような無垢な笑顔は最初に会った時となにも変わっていはいないんだよな。
俺はこの笑顔を守るために魔王【お義父さん】との再戦を誓った。
晩飯の片付けまで終えるとセツナは帰っていったが、帰る間際、決戦は明後日だと伝えた。
そして、明後日
「お義父さん、今日はセツナさんも連れて来ました。あらためてお願いします、セツナさんと結婚させて下さい。」
「コホン、約束はどうしたんだ?」
チラッと期待の眼差しを向けるお義父さんはなんだか可愛かった。
「あっ、セツナさん。お願いします。」
俺はセツナに視線を向ける。
「わかってます。なんか呼び方を変えるって緊張しますね。」
そう言ってセツナさんは軽く深呼吸を始めた。
「ワシも緊張するな。あっ、感激して泣いてはいかんからハンカチを用意しておかないと」
お義父さんの期待が思ったよりすさまじかった。これは結婚を認めてもらえそうだ。
「それではいきますね。『シンヤパパ』頑張ってお父様を説得して下さいね。」
○×△??
な、な、何言っちゃってくれてんの?
この天然娘は。
「シ、シ、シンヤパパじゃと?もしかして、セツナのお腹に???結婚もしとらんのに、、ゆ、許さん、貴様そこに座ってろ。今、日本刀を持ってくる。」
そう言って日本刀を持ってきたイカレたオッサンに屋敷中追いかけ回されることになったが、なんとか氷結ママが止めてくれて俺は一命をとりとめた。
セツナさんは訳がわからず、1人不思議そうな顔をしていた。
ギリギリ10万字越えました。




