神埼刹那の勘違い
感想など頂ければ幸いです
私の名前は神埼刹那。
17歳の高校2年生です。
これだけじゃ『名前しかわからない』ですよね?
わかりました。
自分語りは本当に苦手なのですけど、、、、、、、
なんとか頑張ってみますね。
私はどうやら、モテるらしいです‥‥
ダメです。
いきなり自慢話を始めたとしか思えない語りです。
でも、私自身なぜ話したこともない人達に告白されるのか分かりません。
そして、今日の放課後はまた告白の為に手紙で屋上に呼び出されました。
ただ、今日の告白はいつもの告白と随分勝手が違ったんです。
1つ目に終わりのHRが早く終わってしまったので相手より先に屋上に来てしまったこと。
2つ目に相手の告白が強引だったこと。
「ハァハァハァ、《お前は》俺のものだ。他のやつなんかに渡したりなんてするものか?」
と、大声で叫んだんですもの。
こんな告白は初めてでした。
しかも、私の方を見ながらハァハァハァと興奮でもしているのか息を荒げていて、一目見て気付きました。
あれがウワサの『変質者』って人種なのですね。
「‥信じられないです。」
そう。信じられないのはその変質者が私の知っている人だったからです。
いえ、知っている人というか‥‥実は『私の想い人』なんです。
まさか、しばらく会わない内に変態さんになっているなんて想像もしませんでしたけど、、、、、
時の流れというものは残酷なものなのですね。
昔会った彼は私にとってはヒーローみたいな人だったのに、、、
「‥‥‥‥‥えっ?」
私の不機嫌な態度がかなり意外だったのか、彼が驚きの声をあげました。
そう言えば、私に告白の返事を待っている男子の態度は大体2パターンだったりします。
パターン1
死刑宣告を受ける前のような青白い顔で待っている。
パターン2
まるでご褒美を貰える前の犬ように目をキラキラ輝かせている。
もちろん説明するまでもないとは思いますけど、パターン1の男子は私にヒドイフラレ方をするのを予測して身構えているからそうなるんですよね。
そして、パターン2の男子は逆で、『もしかしたらいい返事が貰えるかも』なんて絶望的にポジティブな男の子なんです。
しかし、パターン2の男子のパターンですけど、私がフッた後の方が笑顔だったりするから手に負えないです。フラレてもまだポジティブで居られるってどんな精神状態なんですか?
話は戻りますが、『えっ?』って言いたいのはこちらの方です。
『私の想い人が告白してくれたと思ったら、変態さんだった。』なんかラノベのタイトルとかになりそうですよね。
まぁ、そんなタイトルの本を手に取りたいとはまったく思わないのですけど。
‥‥彼を散々けなしておいてどうかとは思いますが、そんなことで彼を嫌いになったりはしません。
彼は『私が私である事』を誇らしく思えるようにしてくれた大事な恩人です。
しかし、それだけではありません。
私は彼をお慕いしています。
そして、彼から告白してくれるなんて想像もしていませんでしたし、まるで夢のようです。
ごめんなさい、ウソをついてしまいました。
引っ込み思案な私は、入学式で彼を見かけた時から彼に告白される妄想をしていました。
それも、毎日‥‥これもウソです。
1日に3回か4回はしてました。
「悪かった。俺に責任を取らせてくれ。頑張って働くから」
しかし、そこで予想外の出来事が起こりました。彼はいきなり土下座したのです。
頑張って働いて私を養ってくれるってことなのでしょうか?
それって、けっこ‥‥ん?
床に額を擦り付けてすらいるのですが、男の人がこんなにプライドを投げ捨ててまで‥‥ほんとうに私のことが好きなんだ。
「‥そんなに私のことが、、、あっ」
彼が土下座の体勢から顔を上げたことで私のスカートの中が見えそうになりました。
反射的に私は後ろに下がったのだけど、
その際に事件が起こってしまいました。
私はたまたま床に落ちていたバナナの皮に滑って仰向きに転倒してしまった。しかし、カラダが地面に激突してしまう直前に彼が私を抱きかかえていました。
女の子の憧れ、お姫様抱っこです。
シンヤ君って本当に王子様みたいな人です。
彼はなぜか私をお姫様抱っこをしたまま階段棟の扉をあけて、階段を降りていくのでした。
その時、下から上がって来た誰かと彼はぶつかりそうになってしまいました。
思わず相手が私を見ると
「告白が」
とか言っていたけど、暗黙の了解で告白は事前に下駄箱に手紙を入れた人と決まっているのに、、、
いきなり告白に来るなんて、ちょっと困ってしまいます。
しかし、そこでシンヤ君から予想外の言葉が飛び出しました。
「重いな。」
えっ‥‥重いですか?
昨日、調子に乗って海老のフリッターを食べ過ぎてしまったからでしょうか?
「ごめんなさい。」
今日も朝からご飯をお代わりしてしまいました。
「いや、ひょ、先輩が謝る問題じゃないですから。」
しかし、シンヤ君から謝ってくれました。
本当に優しくて紳士的な男の子です。
わたしがシンヤ君の素晴らしさに感動している間もドンドン景色は流れていきます。
『普段からお姫様抱っこをやり慣れた人なのかもしれません』等と一瞬思いついたけどそんな訳ないし、単に運動神経がいいだけかもです。
そうだよね、確か私たちが小さい時も彼は自転車を持ち上げてたし、運動神経は凄くいいのかもしれません。
瞬く間に保健室に着きました。
というのは言い過ぎかもしれませんけど、かなり早くて私は安心してしました。
何しろ私達はかなり目立っていたようで、いろんな人が振り返ってまで私たちをジロジロ見ていたからです。
彼は行儀悪く足で保健室の扉を開けながら口を開きました。
「彼女が大変だ。重症かもしれないから早く見てくれませんか?恐らく頭をぶつけた筈なんです。」
そう言って私を椅子に座らせると、彼は保健室を出ていってしまう。
転んで頭をぶつける前に彼が抱き上げてくれたから、勿論頭なんて打ってません。
『彼の勘違い』だと保健の先生を説得するのに私は頭をフル動員するのでした。
やっと説得が終わり扉を開けると彼が扉の前に立っていました。どうやら私が出てくるのを待ってくれたようです。
彼は私に向かって心配そうな表情を浮かべています。どうしたらわかって貰えますか?
私が複雑な表情で思案中のその時‥
「完全下校15分前です。部活をしている生徒は片づけをしましょう」という声が校内に響き渡りました。
それがタイムアップの合図だったかのように、そのままなし崩しに解散となってしまいました。
どうしよう。
まだ、告白の返事してない。
私はモヤモヤした想いを抱えたまま天蓋のついたベッドに潜り込み、今日の出来事を反芻しました。
彼の告白を思い出すと嬉しい気持ちが溢れ出して、思わず枕に顔を押し付けて足をジタバタしてしまう。
枕に顔を押し付けたのはあまりにも嬉しすぎて叫び出しそうだったからです。
お母様がみていたら『はしたない』と叱咤されるのでしょうけど、この衝動はちょっと止められそうにありません。
結局、それから夕飯までは抱えきれない程の喜びや、返事を出来なかった焦ったさをジタバタに変えて、ひたすら足をばたつかせるのでした。
翌日は1限目が終わったら勇気を出して彼の教室に行き、昼休みに屋上で会えるように約束しましょう。
そうだ、指切りなんてするのもいいかもしれないです。
そう覚悟が決まった私は、結局いつもより早い午後9時には眠りに着くのでした。
翌日の朝、教室にて
「ねえ、刹那。朝から虚ろ70パーセントなんだけど、何かあった?」
なんて親友の凛がいうものだから私は1から100まで凛に打ち明けました。
「へぇ〜、刹那って座右の銘が『告白は100%断る』じゃなかったっけ?」
凛は相変わらず軽いノリでそんなことを言うのでキッチリ否定しました。
「気になる人に告白されたら断ったりなんてしません。」
「へぇ〜、よっぽど気に入ったのね。」
凛にそう言われて初めて自分の頰が緩んでいることに気づき、私はいつもの無表情に戻すのでした。
結局1限目終わりまで待てなかったのでそのまま朝一で彼の教室に押しかけ、昼休みに屋上で会う約束を取り付けました。
そして、私は昼休みになると屋上まで急ぎました。
き、緊張しますぅ。
そう、今から告白の返事をしないといけないのです。
今日は授業中に何度も返事のシュミレーションをしたので、授業はほとんど聞いてませんでした。
ざわつく心で扉を開けたわたしの視界に入った光景は、、、頭から袋を被った軍団に囲まれて、後ろ手に縛られて座っているシンヤ君でした。
よく見ると袋頭の軍団はguiltyと書いたプラカードを掲げていました。