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閑話 俺の親友達


前日日曜日の葵さん


「今日の撮影はこれで終わりで〜す。お疲れ様。七瀬さんも今日は早いけど帰っていいわよ。」



「皆さん、お疲れ様です。今日も皆さんのおかげでスムーズに撮影出来ました。本当に有難う御座いました」

私はお辞儀をすると、衣装室に戻り、着替えるとサッサと帰ることにした。


そこに3つ上の人気モデルの齋藤レンが壁ドンしてくる。正直言ってもう壁ドンは古いと思うし、ドン引きなんだけど。


壁ドンなんて例えシンヤがやってもドン引‥かないかな。

たぶん、似合わなさ過ぎて吹き出すと思う。



「葵ちゃん、今日は予定より早く終わったし、どこか出かけない?パンケーキの穴場的な店を見つけたんだけどどうかな?」

なんて誘われた。彼に誘われたのは何回目かな?


何度断られてもへこたれないメンタルだけは褒めてあげてもいいかもしれない。だけど私は笑顔でいつも通りの返事をする。


「私は好きな人以外と2人で出掛けることはないですから、諦めていただけませんか?」


「つれないな。これでも俺はモテるんだぜ、そんな俺に誘われて嬉しくないの?」


「嬉しくな‥光栄だとは思いますけど、私、クラスで好きな人が居るので。」

危なかった‥もう少しで本音がダダ漏れするところだったけど、ここは職場だから人間関係は円滑にしなきゃ。


「いや、でも、そんなやつより俺と「葵先輩、約束通り一緒に帰りましょう。ミハミサから新作のバッグ出たらしいですよ、帰りについでに寄ってもいいですか?」

尚もしつこく食い下がる齋藤レンだったけど、ミナちゃんが助け船を出してくれた。


ミナちゃんはとてもいい娘だし、シンヤと違い凄く気の利く娘で慕われていて悪い気はしないんだよね。


しかし、今日はあまり彼女と居たくはありませんでした。だって、シンヤ君とのことを聞かれることになるからです。


案の定、帰り道に彼女が口を開きました。


「葵姉さん。ホントにいいの?シンヤお兄ちゃんが他の人と付き合っても?」


「ミナちゃんの言いたいことはわかるけど。どうしようもないよ。私はもうとっくにフラれてるから」



「それでも。私は葵姉さんにホントのお姉さんになって欲しいな、、、なんで葵姉さんじゃダメなんだろ」



「そうだね。シンヤ君はもっと大人しくて綺麗な女の子が好きなのかもしれないね。ごめんね、ミナちゃん」

私はそう言って頭を下げた。


「いえいえっ、私こそごめんなさい。1番辛いのは葵姉さんだもんね。」



「ううん、私は良いんだけど、私のせいでミナちゃんとシンヤの仲がおかしくなってるのはなんとかしたいかな。」


「ううん、それは大丈夫だから。」

そう言ってミナちゃんは何か覚悟を決めたような表情をしていた。


「ホントに大丈夫?」

私はこの何処か危なっかしい妹分が何かしでかさないか心配したけど、


「はーい、この話は終わり。葵先輩また今度はゆっくり遊ぼうね」

ミナちゃんは有無を言わせず会話を打ち切って去っていった。



取り残された私は呆然とするだけで何も考えられなかったよ。






前日日曜日のリョウスケ


「はぁ〜っ」

俺は深いため息をもらす。


「どうしたのぉ〜。リョウスケ君、せっかくデートオッケーしてくれたと思ったらため息なんてついて、美嘉ショックぅ〜。」

美嘉はちょっとギャルっぽいけど、根はすごく真面目な女の子だ。


高校デビューらしく、時々素の丁寧語が出るのが面白い。


彼女をこんな方向に舵を切らせたのが何なのかちょっと興味があるけど、野次馬根性で人の秘密を暴こうとしてもきっとろくな事にはならないだろう。



話は戻るけど、同じクラスの美嘉とはそこそこ話すけど、別に特別親しいというわけでもない。


なのに、度々一緒に遊びに行こうと言われていた。普段はやんわり躱すのだけど、今回は葵の事を色々考えながら適当に対応していると、気づかない内に誘いを受けてしまったんだよね。


撤回しようとした時には手遅れだった。


彼女は目に薄っすら涙を浮かべて喜んでおり、周りの友達は『美嘉、本当に良かったね〜』なんて言って盛り上がっていた。


そう。このタイミングで『ごめん、いい加減に返事しただけなんだよ。テヘッ。』なんて言おうものなら、下手したらクラス全員が敵にまわってしまう‥波風を立てたくない性格の俺は断ることなんて出来なかった。


はぁ〜っ、自分のこういう流されやすい性格がほとほとイヤになる。

シンヤや葵はその辺ハッキリしてるから、こういう俺みたいな態度は信じられないかもしれない。


そう言えば、ギャルで思い出したけどシンヤも中二の時、ギャルに告白されてたよな。

確か、瓜【うり】さんって変わった苗字の娘だったからよく覚えている。

まあ、告白は罰ゲームでだったみたいだけど。


まぁ、あの娘がシンヤを選んだ理由はハッキリしてる。当時、どう見ても葵とシンヤは好きあっていたから、ギャルのあの娘が告白してその気にさせる心配がないからだ。


まぁ、なぜかその後位から葵とシンヤの仲が何かおかしくなった。相変わらず仲は良いんだけど、、何か違う。


「ホントにどうしたの?ウチ、何か気に触ることしたのかな?」

動揺で思わず素で話してしまった美嘉を見ると、彼女の瞳は不安で揺れていた。俺は自分に往復ビンタをかましてやりたい衝動に駆られてしまった。


何やってんだよ、俺は?



「ごめん。ちょっと、考え事して。ほんとごめんね。」

俺は素直に頭を下げた。


「いいよぉぅ、その代わり今日はウチといっぱい楽しもうねぇ。」

彼女は窺うような様子から一転、満面の笑みでそう言うのだ。


「うん、そうだね。せっかく遊園地に来たんだし。」


俺って最低だ。

好きな人がいるのに、フラフラと違う女の子とデートだなんてな。


とは言っても、俺の恋は実らないんだよな。

これは確定事項だからちょっと自暴自棄になっているのかもしれない。


そう、俺は葵が好きだけど、彼女は俺の親友のことが好きなんだよ。


まぁ、シンヤはそのことに全く気づいていないばかりか、学校一の美少女とイチャイチャしているんだよな。

いっそのこと葵がシンヤに告白してくれればキッパリ諦めがつくかもしれないんだけどね。


葵はシンヤと神埼先輩がイチャイチャする様子を見かけると気になるのかチラチラ見ているのに気づかないフリをしている。


元々、俺がシンヤにあんな取引なんて持ちかけなかったら、神埼先輩に怪我をさせてこんな事態にならなかったんだよな。


なぜか神埼先輩はシンヤに熱視線を送っているし、シンヤも義務感で一緒に帰りつつもちょっとまんざらでもなさそうな様子なんだよ。


だからと言って『いっそのこと2人がくっついてくれれば俺も葵と付き合うチャンスが出てくるんじゃないのか?』なんて思えないんだよ。


だって、好きな娘の恋心は大事にしてあげたいだろ?だから俺は葵を男装させてまで合コンに潜入させてあげたのに、葵ははむしろシンヤの恋を後押ししてた。


そう、彼女は俺と同じなんだよ。


『好きな人には幸せになって欲しい。例え、恋の相手が自分じゃなくても。』なんて思ってしまうんだよな。


いや、葵は本当にそう思ってるのかもしれないが俺は本当はそうじゃない。きっと、行動を起こして相手に嫌われるのが怖くて、こういった言い訳を連ねてるだけなんだろうな。


ヘタレな自分が情けない。


でも、彼女の恋は実らないだろうね。だから俺は葵の恋心が消えるまで何年でも待つ事に決めた。





残り3話ですが、次の話が5000字近くなってしまったので分けるかどうか検討中です。

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