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きゅーあんどえー

お待たせしました。いや、待ってませんでしたか?

良かったら感想など頂けると尻尾を振って喜びます。



「えっと‥シンヤ君のその態度はどう受け取ればいいのでしょうか?」

氷結姫は困惑気味だ。

まぁ、同じくらい俺も困惑しているが。


「う〜ん。これ、2人にしてあげた方がいいんじゃね?よく見たらシンヤ君って教室に何度か来てたしぃ、彼氏さんだったんじゃん。」

周りの人達も困惑していたが、いち早く立ち直った水無月先輩が気の利いた提案をしてくれた。



いや、彼氏さんではないんだが、、、



そして、別のルームで氷結姫と2人きりになった。


2人きりになるのは初めてではないが。

さっきの告白の件もあるし落ち着かない。


気まずい沈黙がルーム内を包んだ。



うーん、気まずい。

氷結姫はどうなんだろうな?


チラッと彼女を覗き見る。


すると、彼女も俺を覗き見ていたようで2人揃ってサッと目を逸らした。



うーん、どうもタイミングというか間が悪いみたいだ。少し落ち着いた方がいいのかもしれない。


スーッ、ハァーッ、、。深呼吸して気持ちを落ち着かせながら氷結姫と間合いを外したところで、またも彼女を覗き見る。


チラッ、あっ!


またもバッチリ目が合った。

2人はまたもサッと目を逸らした。



お、おかしいな。



今度はすぐにチラッと彼女を見る。

これで今度は大丈夫だろう


あっ?


またも氷結姫と目が合った。



チラッ‥サッ


うーん、、、チラッ‥サッ


チラッ、サッ


スーッ、ハァー。よしっ‥‥‥チラッ、サッ



ダメだ。目が合ってしまう。



「あの、先輩って俺の彼女だったの?それで別れたってこと?」

氷結姫も全く口を開かないし、この不毛なやりとりに耐えきれなくなった俺は質問してみた。

もちろん、彼女の目を見てだ。


それにしても、字面にすると頭おかしい質問だな。



「はい。」

氷結姫は一言で答える。特に補足説明とかしてくれる気はないようだ。


「あの?俺って先輩に告白して付き合ってたんですよね?ちょっと、いつだったかど忘れしちゃいました。いつからでしたっけ?」

だからまずは、『俺が告白したのはいつなのか』確認する事にした。



「9日前に告白されて、一昨日まで付き合ってましたよね?なんでそんな質問するかわからないんですけど。」

氷結姫は心底不思議そうな顔でそう答える。

いや、不思議なのはむしろ俺の方なのだが。



しかし、9日前と言えば彼女に怪我を負わせてしまった日だよな?



「告白の日って、俺がボールを先輩に当ててしまった日だと思うのですが?」

そう、あれが俺達のファーストコントタクトだった。


「あぁっ、確かボールが飛んで来ました。当たってませんけど。」

そう言って彼女は首を傾げる。

その姿はとても絵になるが‥


へっ?

当たってないの?


「だったらなぜ、先輩と一緒に帰ることになったんでしたっけ?」

そうだよ。氷結姫の 怪我の付き添いかと思っていたから一緒に帰ったんだよな。そうじゃなければ一緒に帰る意味なんてそもそもないんだけど。



「付き合ってるのですから一緒に帰るのは当たり前だと…」

言外に『何か間違ってますか?』と言われているように聞こえる。あれ?俺が悪いのか?




「ちなみに俺がした告白の言葉、覚えてる?」

うん、やっぱりした覚えがないので直球で聞いてみる事にした。



「忘れるわけありません。大好きな人から貰った大切な言葉なんですから。」

氷結姫はそう言って、ここではないどこかを見ているような夢見心地な様子で微笑む。


その瞳は潤いをたたえており、表情は幸せ感がいっぱいで、ぶっちゃけるとメチャクチャ可愛いのだが、俺は赤面する余裕すらなかった。



「ちなみに今、告白の言葉を言ってみたりできる?」

俺は告白した覚えがないので聞いてみることにした。

もしかして、俺が忘れているだけでそれっぽいことを言ってしまったのかもしれないと思ったのだ。



「『お前は俺のものだ。他のやつなんかに渡したりなんてするものか』ですね。シンヤ君が告白してくれた言葉だもん。一生忘れません。」

氷結姫のその言葉を聞いた瞬間、点と線が繋がった。繋がってしまった。



それ、主語が違う‥‥『ボールを返してくれ』って言っただけなんだが



想定外の事態に、血の気が引いてしまう。

そして、地面に跪いて地面に両手の平をつける『絶望のポーズ』をしたい衝動に駆られてしまう。


ダメだ。

ちょっとこの1週間の言動を洗い直した方がいいかもしれない。俺達の出会いは前提が間違っていたのか?


「そか、、、さっきの返事はちょっと色々考えてから答えを出したいんだけど、時間をくれないか?」

色々聞きたいことはあるが、さすがにキャパオーバーだ。


「では、また月曜日の放課後に一緒に帰るという形でどうですか?来週はシンヤ君のウチまで一緒にかえることにしますね。歩いて20分くらいですし。」

そう言って彼女は皆んなのところに戻ろうとしたけど、その時2人同時にLIONのメッセージ着信があった。



「今日は2人で抜け出していいよ。こっちはこっちでやっとくから リョウスケ」

氷結姫もコトハ先輩から同じような内容のメッセージが来ていたようだ。


2人とも気が利きすぎるのも考えものだが、今日はありがたく帰らせていただく事にしよう。


そうして、2人だけで解散して氷結姫とも別れた後

俺は自宅に直行するのだった。





家に帰ってベッドに飛び込むと、9日前の出来事から順に思い出していた。




『(ボールは)俺のものだ。他のやつなんかに渡したりなんてするものか』

あれは決して告白なんかじゃない。


‥なのに氷結姫は『一生忘れない大切な言葉』なんて言うのだ。



それに、頭を打ってないなら打ってないって言えばいいだろ?



それに何故、付き合ってると思い込めるんだ?

好きだなんて一言も言ってないだろ?

普通、勘違いに気付きそうなものなんだが、思い込み激し過ぎだよ。


挙げ句の果てに合コンにまで潜入して俺が彼女を作るのを潰しにかかったってことなのだろうか?



‥‥なんかこういう女の子のこと漫画とかで見たような気がする。


そうだ、、、京‥あれだ。氷結姫はヤンデレとか言うやつなのかもしれない。


よく考えたら、俺、家を教えたりしていないんだけど‥なぜ歩いて20分なんて発言が‥


考えれば考えるほど恐怖で背筋がさむくなるのだった。





【はぁ〜、土日は恐怖で全然落ち着かなかったよ。】


月曜日、俺は登校して自分の席に座るなり、ため息をついた。


「シンヤ、どうしたの?溜め息なんかついてたら幸せが逃げちゃうよ。」

世話焼き屋さんの葵がまたも心配して声をかけてくれる。


「いや。『俺を好きになってくれる人ってきっと頭がオカシイ人しかいないんだろうなっ』って思って悲しくなってきただけだから気にしないで、ほら今日小テストあるし勉強した方がいいぜ。」

俺は彼女に気を遣わせないようにわざとぞんざいに手をフリフリして葵を追い払おうとしたが、



「あのね、余計に聞きたくなるような事言って『気にするな』はないと思うわよ。どうしたの、あれから?」

葵は俺から離れていくことはなかった。


「葵??あれからって??」

合コンの後ってことはないよな?

葵は参加してなかったし。


「あっ、しまっ、、えっと、、、あの、、あれよ。メイドにストーカーにあったとか言ってたじゃない?」

あぁっ、そう言えばそんな相談してたな。


あれがマリたんの演技だとわかった今は正直どうでもよくなった。しかし、葵はアレが冗談だと思わず真剣に考えてくれていたかと思うと、なんだか満たされた気持ちになる。


「心配してくれてありがとう。アレはもう解決したよ。」

そう、マリたんは家まで来ていたし、きっとマリたんは氷結姫の手先だったんだろう。

マリたんのアレは偵察用のキャラをあえて演じていたのだろうしな。


確かに氷結姫は美少女だし、成績も良いし、お金持ちだし、品もある。でも、オッケーしてしまったらきっとヒドイ事になる気がしてきた。


ああやって、使用人を偵察に使って俺の個人情報は丸裸にされてしまっているのかもしれない。


きっとその偵察網を使って異性と話すの禁止(教師、老人、子供含む)なんて当たり前の生活を強いられるだろう。



俺は小テストも授業も適当に流して、放課後にそなえるのだった。









おまけ

(合コンのその後)


「6人になっちゃったけど、ちょうどいいんじゃないかな?そう思うよね?水無月先輩。」

リョウスケはなんとか盛り上げようと他力本願で水無月先輩に話をふる。


「あーね。あの2人なんか可愛くない?だって、2人とも初心初心すぎだよ。ちょっとキュンと来ちゃったじゃあん。」

水無月先輩は完全にシンヤと氷結姫2人の恋愛模様に夢中だった。


「まぁ、2人みたいな関係がここから生まれるといいな。こっちはこっちでたのしくやろうぜ。そう言えば、どんな異性がタイプか皆んなで言っていこうか?俺は会話しててとか一緒にいて落ち着く奴かな。次は水上さんから頼む」

怪しい格好の男子が見た目に反して盛り上げようとしていた。



「私は男の子自体がちょっと苦手なのでなんとも言えませんがまぁ一途な人とかいいんじゃないでしょうか?というか‥ちょっと耳貸してくれませんか?」

水上マリはそう答えながら怪しい男に顔を近づけて耳打ちすると、怪しい男が思わず席を立って驚く。


「な、なんでわかったんだ?」



「まぁ、わかりますよ。私を誰だと思っているんですか?心配しなくても黙っておきます。さぁ、次は水無月先輩どうぞ」

そう言いながらマリたんは怪しい男から目を離さずにジィーッと見ていた。



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