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神埼刹那の決意表明

マリたん再びと時系列は同じとなります。

本当は一話前に入れたかったのですが、挿入の仕方がどうしても分からなかったのですみません。



後半はマリたん目線です。

放課後、私は帰り支度をしていると、教室の入り口近くに居た丸尾君に声をかけられました。


「神埼さん、あの一年の子がまた来てるけどどうする?」


視線を向けると‥シンヤ君がこちらを見つめています。その時ばかりは、私は戸惑いを隠せませんでした。


昨日、私をフっておいてどういうつもりなのでしょうか?


正直、まだ赤いままの目をしていますし、痛々しい姿を彼にみられたくはありませんでした。


それに、昨日一晩考えたんですけど‥‥


私なんかと居ても彼は全然面白くなかったんじゃないかと思うのです。


彼は私に気を使って話題を振ってくれたりするけど、私は彼に何か与えることが出来ていたのでしょうか


そう言えば告白してくれたのも彼からです。


それに、あの6年前だって彼から話しかけてくれたから出会えました。


『私はあの日からずぅ〜っと、彼から貰うだけで彼に何も返せてなかったんだなぁ。』なんて今更ながら思うのでした。


そんなことに振られてから気付くなんて私ってほんとうにバカです。


私は振られても仕方がないかもしれません。


それにシンヤ君と違って私はもともと面白い性格でもないですし、友達だって多い方じゃないです。

一緒に居ても楽しい筈がないんですよね。


唯一の特技の歌だって彼からもらったものだし、彼には感謝してもしきれないです。


結局…振られてしまったけど、別にまだ好きでいてもいいんですよね?


うん、決めました。


彼女には戻れなくても、彼にあらためて好きだとちゃんと伝えよう。そして、スッパリ諦めることにします。


それから、あらためて彼と友達になってからがようやく彼と対等な関係になる一歩目だと思います。

想うことすら辞めてしまう私は胸がチクリとどころかズキンと痛むけどせめて私の人生を変えてくれた恩返しだけでもしないと私の気がすみませんでした。


そうと決めたら、彼を待たせている場合じゃないです。私は急いで彼に駆け寄りました。


しかし、それに対する彼のリアクションが私にとっては最悪のものでした。


「先輩、ほんとうにごめんなさい。」

彼から漏れた言葉は前回と同じものでした。


私は目の前が真っ暗になりましたが、それでも足を踏みしめて彼の瞳を見ました。

ここで諦めるなんて出来るはずがありません。


しかし、彼の瞳は歪んでいて感情は読み取れませんでした‥‥いえ、違います。彼の瞳が歪んでいるのではありませんでした。そう、私の視界が歪んでいたのでした。


そう、私はまたも涙を流してしまっていました。


「先輩大丈夫ですか?どこか痛みますか?」

そう言って心配そうに私を覗き込むシンヤ君。


「だ、大丈夫です。心配しないで。」

私はそう答えるのが精一杯だったのです。

そう、私の答えとは裏腹に涙が止まりませんでした。


いきなり泣き出してドン引きとかされてないでしょうか?


「‥ちょっと歩きましょうか?」

彼がそう言って歩き出す。

私はまるで迷子の子供のように、よくわからないまま彼についていくのでした。


そして、屋上へ出ると彼は一際真面目な顔をしたかと思うと私の目をまっすぐ見つめて話し始めました。


「あれから、先輩とのこと色々考えてたんです。

先輩 (と)居たいのは当たり前なんですよ。それで、先輩のことを放っておいて胸が痛かったんだと思います。俺に最後まで面倒見させてください。」

えっ‥‥うそ?

それって、ヨリをもどそうってことですか?

予想外の展開に私は舞い上がってしまいました。


気付くと顔がカァ〜っと熱くなっています。

耳まで熱いです。



でも、ほんとなのかな?

信じていいのかな?



彼の言葉を信じて、またフラれたら私はもう耐えられないかもしれません。


私が悩んでいる間も彼はわたしの返事を待って頭を下げ続けていました。

それをみるとますます私の身体中に焦りが広がっていきました。


だめ、、焦りでホントに頭が上手く回りません。


そして、考えがまとまらないまま口を開いてしまいました。

「いいですよ」


焦った私は、何故かすごく上から目線な回答をしてしまいました。失敗ですら、


「えっ?先輩、あっ、そうですか。やっぱり怒ってますよね。すみません、出直してきます。」

彼も私の答えに戸惑ったようで、私が言い直す前にくるりと踵を返すと走り去っていってしまいました。



「えっ?あの、私達はヨリを戻したってことで良いんでしょうか?」

思わず独り呟いた私は暫くそこに佇んでいました。


そして、私は訳の分からないまま自宅に着きました。

これからどうしよう?


私は制服のままベッドに寝転んでテディベアを抱いて何度も寝返りをうちました。


そこにメイドのマリがノックもせずに入ってきました。これはマリに相談しろって恋愛の女神様からの啓示なのかもしれません。


「刹那お嬢様。ちょっと聞いていただきたい話があるのですが。」

いつも、無駄に笑顔なマリに似つかわしくない真剣な顔をしています。


「私もマリに相談があったからちょうど良かったです。まずはマリからどうぞ。」


「えっと‥‥言いづらいんですけど、あの男はやめた方がいいと思います。スカートの中を覗くくせに、マリの魅力がわからないなんてクズです。あと、たぶん、同じクラスの女子とつきあっているんじゃないでしょうか?」

どういうことですか?

本命の彼女がいるってことでしょうか?

う、嘘ですよね?


私は目の前が真っ暗になって、フラついたところをマリが支えてくれました。


「だ、大丈夫ですか刹那お嬢様。やっぱりショックですよね。諦めましょうね。」

マリは小さい子をあやすように右腕でわたしを抱きしめながらもう一方の手で私の頭を優しく撫でました。


そのまま『わかりました』って頷いてしまいそうになりましたけど、そう簡単に諦めるわけにはいきません。


「私は諦めたりしないし、やっぱり彼の言葉を信じます。」

これは私の決意表明です。


そして私はそのまま机の前に座り、放課後にシンヤ君にかける誘い文句を考え始めるのでした。










お嬢様はやっぱり諦めませんでした。

あんな男のどこが良いのか理解に苦しむのだけど。


いくら私がちょっとイタい女の子を演じたからといって、バカシンヤは全速力で逃げる事はないと思う。


あんなに必死に逃げられたら。

側から見たら私が変質者に見えてしまうじゃない?


男子ならレディの失敗には寛容でいるくらいの広い心を持ち合わせてくれないと。

‥やっぱり、あの男は器が小さい



対して、私はお嬢様ほど可愛い女の子を他に知らないのです。普段の私のお嬢様に対する態度から言ってそう見えないかもしれないけど、本当なんです。


どこが可愛いのか具体的に話すと、お嬢様は『お金持ちのお嬢様っぽくない。』のです。


もちろん、立ち振る舞いは英才教育の甲斐があり優美そのものだし、私はこんな綺麗な女の子は見たことがありません。


じゃあ、何がお嬢様っぽくないかと言うと、彼女はお金持ち特有の傲慢さが全くない上に妙に頑張り屋さんな所があり、年上にもかかわらず妙に庇護欲をそそられてしまうところだ。



こんな逸話があるんだけど、


私はI.Qは180あり、努力も怠らなかったので小学四年の時には高校三年のお嬢様のお兄さんである克樹様に勉強では優ってしまった。


それが良くなかったのだと思う。プライドの高い彼はいたくプライドを傷つけられたようで、私を屋敷から追い出そうとさえしました。


父と母が旦那様にとりなしてはくれたけど、克樹様は私の有る事無い事を旦那様に吹き込むようになって、私の立場は次第に悪くなっていった。


そんな時、とりなしてくれたのがお嬢様だ。

しかし、当時の私は救いようのないくらいのバカでした。




ある日、救世主であるお嬢様が持って帰ってきたテストの答案を見て、間違っている所に全部正解を書き込んでしまった。


その上、『こんなのも解けないんですか?恥ずかしくないですか?』なんて生意気な口を聞く始末でした。


ホントに昔の自分を殴ってやりたいです。

モチロン、平手じゃなくてグーでです。



しかし、お嬢様は一瞬ポカンとした顔を浮かべた後、優しく微笑んで


「ありがとう。うん、頑張るね」

なんて言うのです。


いや、そこキレるとこです。

なんでキレないんですか?

お嬢様は菩薩様か何かですか?


思わず手を合わせそうになりましたが、それからの彼女は必死に勉強するようになり、数ヶ月で学年一位の成績になっていました。


そんなつもりは毛頭なかったというのに、お嬢様か一生懸命に勉強する姿を見て私も自分からお嬢様に勉強を教えてあげたりするようになっていました。


まぁ、私の力を借りなくてもお嬢様はやっぱり頑張って一位をもぎ取っていたと思います。



人が目に見えて成長していく様をこんなに間近に見ることができて感動すらしていたら、いつのまにか無意識にお嬢様を目で追うようになっていました。



『同年代なんてバカしか居ない』なんてひねた考えを持っていた私がこんなにお嬢様に興味を持つなんて私自身が1番驚いてしまいました。


そして、私の優先順位の一位がお嬢様になるのにそんなに時間はかからりませんでした。



今でもお嬢様は学年一位の成績を維持しているし、私を真似て始めた楽器もなかなかのものです。

まぁ、1番すごいのはやっぱり歌なのですが、お嬢様にとって歌=シンヤ君となってしまっているので、なんとも言えない複雑な気分になってしまいます。


実はそれが私がバカシンヤを1番気に入らない理由なのですが、このことはお嬢様にもヒミツだ。お嬢様に悲しい顔をさせる人間は例え自分でも許さないから。



私は今日もお嬢様のことを考えながら幸せに眠りにつくのでした。


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