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リアル妹はデレたりなんかしない


「マリたん、みぃ〜つけた。」

俺は茶化す意味でそんな言い方をしたのだが、

それが不味かったらしい。


「いきなり…マリたんとか…なんなんですか?気持ち悪いです。」

今日はメイド服ではなく、濃紺のブレザーにチェックのスカートをはいている。

そう、ウチの高校の制服だ。


中々、ベタなデザインの制服だと思うが、俺の周りにはカワイイ知り合いが多い為、制服も可愛く見える。


赤のリボンを付けているところを見ると俺と同じ一年生のようだ。ちなみに氷結姫が居る二年生は水色、三年生が緑色なので、知らない女子に会ったらまずそこを見ることにしている。


しかし、服装より気になるのはその態度だ。


警戒心を露わにしてこっちに近づかないようにしている。



それにしても、反応が前に会ったマリたんと全く違うので中身が別に感じるが、もしかして双子なのだろうか?


「あの、マリたんさんの双子の妹さんですか?」

俺は彼女が警戒して逃げてしまわないようになるべく優しげな口調で話しかけた。


「私は水上マリです。今はプライベートでですし、キモイから話しかけないで下さい。」

ビクビク、オドオドしながらも丁寧に答える様は、やはりあのマリたんには見えないが


「もしかして、前回のは演技だったの?」


「そう、仕事で…いや、忘れて下さい。いくら仕事とはいえ、らしくないことして反省してるところなんだから。あっ、そう言えば頭に強い衝撃を受けたら記憶が飛ぶとか聞いたことがありますね。あれ?こんな所にちょうどいい被験体が?」

彼女は言葉遣いは丁寧にだが、恐ろしいことを言う。

まさかこちらが本性なのか?


でも、言われてみればそうだな。

あんな人間が世の中にいるわけがない。


「なんであんな演技してたんだ?」

俺は素朴な疑問をぶつけてみた。


「それはですね……女の子の秘密です。詮索したら、、、『チカンされた〜』って騒ぎますけどいいですか?というか話せません。諦めて下さい。死んで下さい。もういいですか?帰ります。」

そう言って取りつく島もないマリたんは俺の脇をすり抜けていく。


いや、どさくさに紛れて『死んで下さい』とか言うなよ。俺のガラスなハートがブロークンするだろ?いや、自分で何言ってんのかわかんないけど。


しかし、その立ち振る舞いは前回のようにガサツなものではなく、氷結姫のように洗練されたものだった。



前に会ったマリたんとは完全に別人だ。

女の子って怖ぇよ。


でも、ほんとになんであんなことしたんだよ?

葵に相談しちゃったじゃないか。


しかし、それに答えられる唯一の女の子であるマリたんは俺の問いに答えてくれることは無く、モヤモヤだけが俺の心に澱のように積もっていった。



その時、スマホが震える。

画面を見るとリョウスケからメッセージが入っている。


『明日の土曜の合コンだけど、昼1時半から歌太郎に集合だからその前に昼食べに行かないか?

11時半にジョバンニの像の前で待ち合わせでいいかな?』

あぁ、合コンの作戦会議か?助かるな。


俺は『オッケー』と返信してそのまま家路に向かった。




「ただいま〜」


「お帰りなさい、相変わらず冴えない顔してるね、シンヤは」

ドアを開けるとサイドテールで、キャミソールに短パン姿の我が妹、ミナが目の前に立っていた。


『こら、年頃の女の子がそんなに露出の多い格好するんじゃないよ。』なんて言いたくなるが、ウザがられそうで口にはできない。


「シンヤじゃなくてお兄様と呼んでくれてもいいと思うんだけど。」



「えーっと?もしかして、シンヤってシスコンなの?あの、死ななきゃ治らないってウワサの。でも、私に変なことしたら殺すから、殺すからっ」

ミナは俺に殺人予告を二回もした。


「いや、大事なことだから二回言わなくてもわかるって。それにしても数年前は呼んででくれたんだけどな。これがウワサに聞く反抗期なのかな?」

以前は俺の後を『お兄ちゃん、お兄ちゃん』って言いながらちょこちょこ付いてきて可愛かったなぁ。

よく頭をナデナデしてあげたものだ。


それがなんでこんなことになったんだ?



「あのね。そんなんじゃないの。私はシンヤに失望したの、失望したの。」

ミナはしっとり染み渡るような、言い聞かせるような声で俺に語りかける。


いや、別に失望されるような覚えはないんだけどな。



「…やっぱり心当たりないんだ?ほんとかわいそう」

ミナは俺を虚ろな瞳で見つめてそんなことを言う。俺は別にかわいそうではないと思うのだが


まぁとにかく、今日はミナに用事があるのでなんとか話を続けないといけない。


「悪い、兄ちゃんはオンナゴコロとか分からないけど、なんとかわかるように頑張るよ。ところで、明日合コンがあるんだけどどんな服着て行ったらいいか教えてくんない?ミナはモデルだし、そういうの詳しいだろ?」

ミナは俺が話ししている間に一旦、リビングにひっこんだ。かと思ったら、すぐに戻ってきた。


そして、俺の顔面にクッションを投げつけて、一言。


「…死んでくんない?」

そう言い放つ。


そして、ミナは大きな足音を立てて二階の彼女の部屋へ向かうと、そのまま部屋に引っ込んでしまった。


俺は訳が分からず、呆然と立ちつくしていた。










私はイライラしていた。

お兄ちゃんはお姉ちゃんと付き合うと思っていたし、私もお姉ちゃんが本当のお姉ちゃんになるかもって思

ったら嬉しかったんだ。


なのに、なんでフッちゃうのかな?

そのくせ、最近は口を開けば『モテたい』だの『彼女欲しい』だの。


お姉ちゃんをフッておいてそれはないと思う。

私もお兄ちゃんを好きだったけど、さすがに最近のお兄ちゃんは無神経過ぎて愛想を尽かしてしまった。


それで、今度は『合コンに行く』って?

やっぱり納得いかなくてお兄ちゃんに酷いこと言っちゃった。


ちょっと酷過ぎたかな?

謝りに行こうかな?


優柔不断な私は謝りには行けず、葵お姉ちゃんに合コンの事を伝えるだけにしておいた。


すると、予想外の返信メッセージが返ってきました。


『知ってるよ。シンヤに合う人が居るといいよね。あっ、ミナちゃん伝えてくれてありがとうね。』


葵お姉ちゃんはまだお兄ちゃんのこと好きだと思ってたけど…違ったのかな?


でも、葵お姉ちゃん優し過ぎる所があるから、もしかしたら私に気を使って本心を話していないのかも。


私はモヤモヤした気分のままベッドに突っ伏すのでした。





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